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一次データ (Primary Data) は調査者が自ら収集した未加工データで、 既存統計を再利用する二次データ (SSDSE 等) と区別される。 SSDSE-B-2026 は政府統計の二次利用形態だが、 別途アンケート/実験/センサーログを取れば一次データとなり、 研究倫理審査・個人情報保護法の遵守義務が発生する。
これらのキーワードは「primary data の理解 → 適用 → 検証」という一連のプロセスを構成する観点である。
🍰 まずはやさしく
自分で集めた、作りたてのデータです。
目的にぴったりの情報を得るために使います。
クラスメイトにアンケートを取るのが例です。
この章では1次データの基本を学びます。
1 次データは、 分析者自身が目的に応じて新たに収集したデータ。 既存データを使う「2 次データ」と対比される。
ここまでが要点です。 ただし実際に使う前に、 このページの「⚠️ よくある落とし穴」で挙げた 便宜サンプリングを「ランダム」と誤称/質問設計の癖 — 順序効果・社会的望ましさバイアス/倫理審査 (IRB) の事前承認漏れ には必ず目を通してください。 つまずくのは知識が無いときより、 知ってはいたが確認を飛ばしたときです。
🍰 まずはやさしく
データの出どころを分ける考え方です。
レポートで正しく使い分けるために必要です。
大学の課題で自前で調査をする場面などで出ます。
どんな道具として使うのかを解説します。
本サイトの SSDSE-B-2026 は2 次データ(政府が公開した既存統計)。 一方、 大学の課題で自分でアンケートを取った場合は1 次データ。 両者の区別はレポート執筆で必須。
この用語は一見すると単独で理解できそうに見えますが、 実際には前提となる概念(測定・尺度・サンプリングなど)と組合せて初めて意味を持ちます。 「定義を覚える」より「どんな問いに答える道具なのか」を捉えるのが効率的です。
🍰 まずはやさしく
料理に例えると、自分で食材を集めることです。
自由な設計でデータを集めたいときに使います。
街を歩いて世帯訪問をするのが例です。
他人が集めたデータとの違いを説明します。
「1 次データ」とは 自分(または所属組織)が、 特定の研究目的のために、 直接観測・測定・収集したデータ のこと。 対して「2 次データ」は他者が別目的で収集して既に公開/蓄積したものを再利用するデータ。 SSDSE-B-2026 のような公的統計はすべて 2 次データである (総務省統計局が国勢調査等で収集 → 我々が分析に再利用)。
| 場面 | 1 次データ (自分発) | 2 次データ (他者発) |
|---|---|---|
| 人口を知りたい | 広島市内を歩いて世帯訪問 (n=200, 自前) | SSDSE-B-2026 A1101 (47 県全件) |
| 高齢化率を比較 | 老人会に協力依頼してアンケート | SSDSE-B-2026 A1303 / A1101 → 比率算出 |
| 病院数の地域差 | 研究室で県庁に問い合わせ → 集計 | SSDSE-B-2026 J2503 (医療施設調査経由) |
| 所得と健康の関連 | 追跡コホート研究 (3 年, n=500) | A4101 (出生数) + J* 系健康指標を pandas merge |
🍰 まずはやさしく
データの集め方を決めたルールのようなものです。
正確に意味を伝えるために定義を使います。
質問紙(アンケート用紙)を作る作業が例です。
数式を使った定義と、実際の作り方を読みます。
直感の次は、 厳密な定義を確認します。 数式は言語の一種で、 一度書き慣れれば「言葉より速く伝えられる」便利な道具。 慣れていない方は、 各記号が何を表すかを「🔬 数式を言葉で読み解く」で 1 つずつ確認してください。
1 次データの代表格である「質問紙調査」を題材に、 紙の質問票が CSV に変換され、 統計分析にかかるまでの実装の壁を、 大学のゼミでありがちなトラブルとともに洗い出します。 ここで紹介する Tips は、 同じ大学の別ゼミ・別研究室で再現性高く効果を上げてきたものです。
| ミス | 具体例 | 影響 | 対処 |
|---|---|---|---|
| 二重質問 | 「スマホとパソコン、 どちらが好きで使いやすいですか」 | 回答者の解釈がブレる | 設問を分ける。 「好み」と「使いやすさ」を別項目に |
| 誘導質問 | 「忙しい現代人にとって、 SNS は必要だと思いますか」 | 中立性が失われる | 前置きを削り、 質問の核だけ残す |
| 選択肢漏れ | 利き手を聞くのに「右」「左」しか用意しない | 「両利き」が無理矢理どちらかに分類 | 「どちらでもない」「その他」を必ず用意 |
| 尺度の混在 | 同一質問群で 5 件法と 7 件法を混在 | 比較・合算が不能 | セクション単位で統一 |
| 必須項目過多 | 30 問すべて必須回答 | 途中離脱が増える | 必須は核となる 5〜10 問に絞る |
| 自由記述の濫用 | 「ご意見をご自由にお書きください」を 5 箇所配置 | 分析コストが急増 | テーマを絞った自由記述を 1〜2 箇所のみに |
下の対応表は、 紙の質問票を Python で扱う CSV に変換するときに、 ゼミの全員で必ず合意しておく必要があります。 「はい」と「Yes」と「1」が混在すると、 集計時に同じ意味のセルが別カテゴリに割り当てられて事故が起きます。
| 尺度 | 紙の表記 | CSV 上の値 | 分析時の扱い |
|---|---|---|---|
| 2 値(あり/なし) | 「はい」「いいえ」 | 1 / 0 | ロジスティック回帰の応答変数として可 |
| 名義(3 値以上) | 「都内 / 都外 / 海外」 | "tokyo" / "outside" / "abroad" | One-Hot エンコーディングしてから回帰 |
| 順序(5 件法) | 「不満〜満足」 | 1〜5(昇順固定) | 原則ノンパラメトリック、 補助的に平均値も可 |
| 連続(年齢など) | 数字記入 | そのまま整数 / 浮動小数 | 範囲外(年齢 200 等)は欠損扱い |
| 日付 | 「2026/05/12」 | ISO 8601("2026-05-12") | pandas.to_datetime で読み込み |
| 自由記述 | 手書き文章 | 文字列(前後空白除去) | テキストマイニング前にトークン化 |
1 次データの収集規模は、 卒論や実務調査では「予算と時間」によって決まりがちですが、 統計的にも最低限の目安があります。 下表は単純な比率の差を検出する場合の参考値です。 厳密にはパワー分析を行ってください。
| 目的 | 目安 n | 補足 |
|---|---|---|
| 記述統計だけしたい | 30〜100 | 層別したいなら層あたり 30 を死守 |
| 比率差 10%pt を検出 | 約 400 | 両側 5%、 検出力 80% |
| 相関 0.3 を検出 | 約 85 | 両側 5%、 検出力 80% |
| 多群比較(3 群以上) | 群あたり 30〜50 | 分散均一性も要確認 |
| 回帰モデル(説明 5 変数) | 100 前後 | 変数数 × 20 を最低ライン |
| 機械学習(小規模) | 数百以上 | 過学習を避けるための交差検証は必須 |
配布期間中は、 1 日 1 回「回収数の推移」「想定 n に対する達成率」「離脱率(途中棄権)」を可視化し、 必要なら追加配布や設問削減を行います。 紙ベースの調査ならスプレッドシート、 Web フォームなら Google Forms や Microsoft Forms の集計ビューが利用可能。 集計フェーズに入ってから「回収が想定の半分しかなかった」と気づくのは最悪のパターンです。
数式を眺めるだけでは身につかないので、 各記号がどんな役割を担っているかを言葉で押さえます。 「数式を音読する習慣」がつくと、 論文や教科書を読むスピードが体感で 2 倍ほど上がります。
「1 次データ」を表現する関係式 $$\text{Primary Data} = f(\text{Researcher's Design}, \text{Subjects}, \text{Instruments}, \text{Context})$$ を 1 文字ずつ 言葉に翻訳してみます。 数式と日本語の対応を作っておくと、 論文を読むスピードが体感で 2 倍以上になります。 ここでは、 1 次データを「研究者が能動的に設計・実施した観測プロセスの出力」と捉え、 関係する各因子を 役割・典型値・失敗時のリスクの 3 軸で展開していきます。
第 1 因子 Researcher's Design(研究設計)とは、 仮説・対象母集団・標本抽出法・質問項目・尺度水準といった「設計図」の集合です。 1 次データの品質は、 ここで 80% が決まります。 たとえば 大学生の睡眠時間と学業成績の関係を調べたいとき、 設計を誤ってオンライン公募で広島県の医学生だけ集めれば「広島県医学生限定」のデータになります。 これを「日本の大学生」と呼んで分析するのが代表的な失敗例で、 外的妥当性を失います。 設計時には「誰の何を、 どんな尺度で、 どの精度で測るのか」を必ず 1 文に書きましょう。
第 2 因子 Subjects(対象者)は、 1 次データに固有の倫理的責任が発生する変数です。 SSDSE-B-2026 のような 2 次データは「対象者が既に集約・匿名化済み」ですが、 1 次データでは個人を特定可能な情報を直接扱うため、 インフォームドコンセントと IRB 審査が前提となります。 日本では「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」(2021 年改正)が、 学部生の卒業研究にも適用されることがあります。 「友達 30 人に Google フォームで聞いただけ」でも、 公開する瞬間に倫理問題が発生します。
第 3 因子 Instruments(測定器具)は、 質問紙・スマートウォッチ・脳波計などの「測る道具」を指します。 1 次データの再現性を担保するには、 道具のメタ情報を必ず記録します。 質問紙であれば 項目数・回答時間・尺度(リッカート 5 件法か 7 件法か)・回答方式(強制回答か任意か)、 デバイスであれば 機種名・ファームウェアバージョン・サンプリングレートを残します。 第 4 因子 Context(文脈)は、 観測が行われた時刻・場所・天候・社会状況です。 2020 年のコロナ禍中に「対面授業に関する意識」を聞けば、 平常時とは全く別の分布が出ます。 1 次データを論文で引用するときは、 必ず取得年月日と社会状況を併記しましょう(これを欠くと「いつのデータか分からない」と査読で必ず指摘されます)。 以上 4 因子のうち どれが欠けても 1 次データの価値が損なわれる ため、 「設計 → 倫理 → 道具 → 文脈」の順で確認する習慣をつけてください。
「1 次データ」は教科書の中だけのものではありません。 実際の産業現場で 事業判断・政策判断・科学的発見を引き起こした象徴的な例を 6 件取り上げます。 SSDSE-B-2026 の 2 次データ分析で得た仮説を、 1 次データで検証する流れを学ぶうえでも参考になります。
| 事例 | 業界 | 1 次データの内容と意思決定インパクト |
|---|---|---|
| P&G の「7-Eleven 店頭観察」 | FMCG | 店頭で買い物客の動線・棚前滞在時間を 研究員が直接観察し、 商品配置を再設計。 既存の POS データ(2 次データ)では分からなかった「子連れ動線」が判明し、 売上が二桁伸長。 |
| Spotify の Discover Weekly | 音楽配信 | 数千人のヘビーユーザーに 独自インタビューを実施し「月曜の朝に新曲を発見したい」というニーズを特定。 ログ(2 次データ)では見えなかった「発見の文脈」が分かり、 週次レコメンド機能を実装。 |
| トヨタの「現場 5 回 Why」 | 製造 | 不良品が出た瞬間に 現場に行って計測値を取得。 既存の品質ログ(2 次データ)には記録されていない「金型温度の微変動」を 1 次データで捕捉し、 不良率を 1/10 に低減。 |
| 国民健康・栄養調査 | 公衆衛生 | 厚労省が毎年実施する 食事記録 + 身体計測の 1 次データ。 SSDSE-B-2026 の集計表(2 次データ)の元になる「個票」で、 食塩摂取量と血圧の関係を全国レベルで把握。 減塩政策の根拠データ。 |
| Google の HEART 評価 | Web UX | UI 改修時に UX 評価アンケートを独自実施し、 Happiness/Engagement/Adoption/Retention/Task success の 5 指標を 1 次データとして取得。 Google Analytics(2 次データ)と組み合わせて Gmail の Material Design 移行を成功させた。 |
| 気象庁アメダス | 気象 | 全国 1300 か所の 自動気象観測所から 10 分毎に温度・湿度・降水量を取得する 1 次データ網。 災害予測モデル・農業計画・交通制御の基礎データとして公開され、 派生 2 次データが多数生成。 |
共通する教訓:1 次データは「2 次データに記録されていない次元」を捕捉する道具。 SSDSE のような集計表で全体像を把握しつつ、 鍵となる仮説は 1 次データで検証する 「2 → 1 次の補完」が王道のワークフローです。
「1 次/2 次/3 次」の区別は教科書では曖昧に書かれることが多いので、 ここで 10 軸の比較表として整理します。 SSDSE-B-2026 はどこに位置するか考えながら読んでください。
| 観点 | 1 次データ | 2 次データ | 3 次データ |
|---|---|---|---|
| 収集主体 | 分析者本人 | 他者(政府・企業・先行研究者) | 2 次データの再集約者 |
| 代表例 | アンケート、 インタビュー、 実験計測 | SSDSE、 e-Stat、 政府統計 | OECD レポート、 白書のグラフ |
| 設計の自由度 | 高(質問・尺度を自由設定) | 低(既存項目に依存) | なし(要約済み) |
| 取得コスト | 高(時間・金銭・人手) | 低〜中(DL 数分〜) | 最小(PDF 1 個) |
| 標本サイズ | n=数十〜数千 | n=数万〜数百万 | 既に集約済み |
| 粒度 | 個票(最も細かい) | 中間(地域・年齢階級) | 粗(全国合計など) |
| 外的妥当性 | 設計次第(偏ると弱い) | 高(公的統計は層化抽出) | 高(既に検証済み) |
| 倫理審査 | 必要(IRB) | 利用規約のみ | 引用ルールのみ |
| 再現性 | 難(同じ被験者は二度集まらない) | 高(同じ CSV を共有) | 最高(同じグラフ) |
| 本サイトでの位置 | 主に 調査 ページ | SSDSE-B-2026 は 2 次データ | 教材内グラフ |
この表のうち 「粒度」と「外的妥当性」が同時に高いデータは存在しないのがポイント。 だからこそ、 1 次と 2 次を組み合わせる必要が出てきます。
「1 次データ」を本当に使えるかを確かめる演習問題。 紙とペン、 あるいは Notebook で実際に手を動かしてください。 解けないところは、 上のセクションに戻って復習する流れを推奨します。
過去に著者や指導院生が 実際に踏み抜いた失敗事例 5 件。 「やってはいけない」と分かっていても、 締切直前のテンションでやってしまうのが人間です。 印刷して机に貼っておくとよいでしょう。
状況:n=100 のアンケート途中で「思ったほど差が出ない」と感じ、 質問 Q5 を別の文に変更。 後半 50 件と前半 50 件が 異なる質問への回答になった。 報告書では n=100 のまま合算してしまった。
正しい対応:途中で気付いたら、 そこまでのデータは破棄するか別データセットとして扱う。 「いつ変更したか」を必ずログに残す。 事後修正は HARKing(Hypothesizing After the Results are Known)と呼ばれる重大な研究不正の入り口。
状況:「大学生の就活意識」をテーマに、 同じゼミ 12 名 + サークル仲間 38 名にアンケート。 全員が同じキャンパス・同じ専攻・同じ偏差値帯。 結論を 「日本の大学生は…」と一般化してしまった。
正しい対応:便宜抽出を全否定する必要はないが、 結論を「本標本の範囲内」に限定する。 「広島大学経済学部 3 年生 50 名における…」と書けば、 査読者も納得する。 一般化したいなら層化抽出 + n=1000 程度が最低ライン。
状況:1 次データの回答率が 60%。 未回答セルを 0 で埋めて df.fillna(0) を実行。 「アルバイト時間」の平均が極端に低く出た。
正しい対応:未回答(欠損)と「0」(実値)は別概念。 NaN のまま残すか、 多重代入法・回帰代入法など 欠損補完手法を明示的に使う。 SSDSE のような 2 次データでは「-」「...」が欠損記号なので na_values=['-'] を指定。
状況:「満足度(1:不満〜5:満足)」のリッカート尺度の 平均値を「3.7」と報告し、 「ほぼ満足側」と結論。 だが順序尺度の平均は厳密には未定義。
正しい対応:順序尺度は 中央値または 最頻値で代表値を取る。 平均値を使うなら「等間隔と仮定した」と注記。 さらに 分布のヒストグラムを必ず併記。
状況:1 次データの「分析結果が面白い」と興奮し、 個票 CSV を Twitter にスクショで貼った。 学生 ID・所属が映り込み、 個人特定可能に。
正しい対応:1 次データの個票は 未来永劫公開しない。 公開するなら必ず k-匿名化(同じ属性が 3 人以上いる状態)を実施。 不明なら指導教員 + 研究倫理事務局へ事前相談。
「1 次データ」を扱うときに頻出する周辺用語を、 50 音順ではなく ワークフロー順に並べました。 1 つずつ意味が分かれば、 論文や報告書を読むのが楽になります。
1 次データを取得しただけでは分析の品質は保証されません。 取得後に「このデータはどの程度信頼できるのか」を体系的に確認する 7 つの品質指標を整理します。 行政データの品質枠組み (ISO 8000) や DAMA-DMBOK のデータ品質体系を、 学部生・修士課程レベルでも扱える形に簡略化したものです。
| 指標 | 定義 | 代表的な計測方法 | 合格目安 |
|---|---|---|---|
| 完全性 | 必須項目がどれだけ揃っているか | 欠損率の集計 | 5% 未満 |
| 正確性 | 値が真実を反映しているか | 外部基準との突合・再測定 | 誤差 1%pt 以内 |
| 一貫性 | 表記ゆれ・矛盾がないか | ユニーク値リスト確認 | 矛盾 0 件 |
| 適時性 | 分析時点で古くなりすぎていないか | 取得日 vs 利用日の差分 | 用途による(即時 / 月 / 年) |
| 妥当性 | 値が想定範囲・型に収まるか | バリデーションルール適用 | 違反 0 件 |
| 一意性 | 重複が含まれていないか | 主キー・タイムスタンプ重複検出 | 重複 0 件 |
| 追跡可能性 | どこから来たか説明できるか | メタデータ・収集ログ | 全行で取得元を記録 |
| 指標 | チェック内容 | 起こりがちな問題 | 対処 |
|---|---|---|---|
| 完全性 | 学籍番号と身長の対応が全員揃っているか | 欠席者の行が抜けている | 後日補測または「NA」明記 |
| 正確性 | 記載値と実測の一致 | 自己申告は誤差大 | 実測または「申告値」と明記 |
| 一貫性 | 単位が揃っているか | cm と m が混在 | 単位列を明示し変換 |
| 適時性 | 測定日と分析日の差 | 学期途中で成長期があり古い値が使えない | 測定日を必ず記録 |
| 妥当性 | 範囲(100〜220cm 程度) | タイプミスで 1700 等 | 範囲外検知 |
| 一意性 | 学籍番号重複 | 学籍番号誤記入で重複扱い | 本人確認 |
| 追跡可能性 | 誰が測ったか | 担当者が不明だと監査不能 | 「測定担当者」列を追加 |
7 指標は概念だけでなく、 数値として記録できると報告書が書きやすくなります。 以下のようなテンプレ関数を用意し、 自分のクリーンナップ済み DataFrame に対して呼び出すと、 1 ページのレポートが自動生成できます(実装イメージのみ示します)。 ゼミの中間発表で「データ品質スコア 91 / 100」と一言示せると、 検証作業の説得力が一気に増します。
| スコア帯 | 判定 | アクション |
|---|---|---|
| 90〜100 | 公開可能 | README に品質スコアを記載のうえ公開 |
| 75〜89 | 分析利用は可能だが要備考 | 不足指標を限界事項として明記 |
| 60〜74 | 追加クレンジング推奨 | 該当列を再収集または欠損化 |
| 60 未満 | 再収集または対象外化 | 分析範囲を狭め直す |
7 指標すべてが同じ重みではありません。 例えばリアルタイム広告分析では「適時性」が最重要、 卒論の量的調査では「正確性」「一意性」が最重要、 公開を見据えるなら「追跡可能性」が最重要、 と用途で優先順位が変わります。 7 指標を「総合点」で扱うとブラックボックス化するので、 報告書では指標別の点数を必ず併記しましょう。 そうすれば、 弱点指標を見抜きやすくなり、 次回調査の改善ポイントが具体化します。
1 次データを「自分で取りに行く」以上、 法令と倫理規範の準拠は避けて通れません。 ここでは、 卒論・修論・実務調査でよく踏み外しがちな論点を、 個人情報保護法(日本)、 GDPR(EU)、 大学の研究倫理ガイドラインの 3 軸で整理し、 早見表として示します。 厳密な法務判断は専門家に委ねるべきですが、 「これは要相談」というレッドフラグを察知できる程度の判断軸を身につけておくことが、 安全なデータプロジェクトの第一歩です。
| 論点 | 日本 (個情法) | EU (GDPR) | 大学倫理規範 |
|---|---|---|---|
| 同意取得 | 利用目的の明示・取得時通知 | 明確かつ具体的な同意 (Article 7) | インフォームドコンセント |
| 未成年 | 原則保護者同意 | 16 歳未満は保護者同意 (Article 8) | 学校・保護者の二重同意 |
| 要配慮個人情報 | 本人同意原則必要 | 原則禁止、 例外条件あり (Article 9) | 追加審査 |
| 海外移転 | 本人同意・契約等 | 十分性認定または SCC (Chapter V) | 海外サーバー保存に留意 |
| 保管期間 | 必要最小限 | 必要最小限 (Article 5) | 研究終了後の廃棄手順を明記 |
| 削除権 | 利用停止請求 | 「忘れられる権利」(Article 17) | 同意撤回の手段を提供 |
| 漏洩時通知 | 本人・委員会通知 | 72 時間以内に監督機関通知 | 指導教員に即報告 |
EU 在住者を含む調査では、 GDPR の規定が日本国内であっても適用されます。 標的地域に EU 在住者が含まれそうな web 調査では、 同意取得画面を多言語化し、 データ保護担当者 (DPO) の連絡先を提示する必要があります。 米国・カリフォルニア州在住者を含む場合は CCPA、 カナダなら PIPEDA、 中国は個人情報保護法(PIPL)など、 国別の上乗せ規制があります。 国際共同研究を計画する段階で、 リーガルチェックを必ず受けましょう。
この早見表は「自分の調査に法令上の論点があるか」を判定する第一段階のフィルタです。 該当しそうな項目が一つでもあれば、 必ず指導教員・知財/法務担当・倫理委員会に相談してください。 1 次データ取得は、 取得時の意思決定がそのまま研究の生命線になります。 法令違反は研究停止・論文取り下げにつながるだけでなく、 機関の信頼を傷つけ、 後輩の研究機会も奪います。 「分からないことを分からないと認める」のが、 安全な 1 次データプロジェクトの第一歩です。
「1 次データを取りに行く」とは、 実際にどんな調査になるのか。 学部・修士の卒論レベルで扱われた典型テーマを 30 件カタログ化します。 自分のテーマを決めるときの「具体例の引き出し」として活用してください。 取得方法を「アンケート / インタビュー / 観察 / ログ / センサー / 実験」の 6 タイプに分類しています。
| # | テーマ | 分野 | 取得方法 | 想定 n |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 大学生のキャッシュレス決済利用実態 | 経済学 | アンケート | 300 |
| 2 | 商店街の歩行者通行量と曜日効果 | 都市工学 | 観察 | 7 日 × 8 時間 |
| 3 | 高校生の睡眠時間と成績の関係 | 教育心理学 | アンケート | 500 |
| 4 | ランニングフォームと膝痛発症の関連 | スポーツ科学 | センサー | 40 |
| 5 | 飲食店の店内 BGM と滞在時間 | マーケティング | 観察 + 実験 | 200 客 |
| 6 | SNS 投稿時間帯と「いいね」獲得数 | メディア研究 | ログ | 2,000 投稿 |
| 7 | 地域コミュニティの絆と災害復旧速度 | 社会学 | インタビュー | 15 |
| 8 | 園児の遊具利用パターンと社会性 | 幼児教育 | 観察 | 30 名 × 2 週間 |
| 9 | 大学図書館の貸出傾向と試験期間 | 情報学 | ログ | 1 年分 |
| 10 | 大気汚染と通学路の喘息発症率 | 公衆衛生 | センサー + アンケート | 200 世帯 |
| 11 | 外国人観光客の道案内ニーズ | 観光学 | インタビュー | 25 |
| 12 | 中学生のスマホ依存と部活動継続率 | 教育学 | アンケート | 400 |
| 13 | 高齢者の買い物難民と公共交通 | 地理学 | アンケート + 地図 | 150 |
| 14 | 救急車到着時間と地形要因 | 公共政策 | ログ + 地図 | 1,200 件 |
| 15 | 大学講義の発言数と理解度 | 教育工学 | 観察 + テスト | 90 |
| 16 | 飲料自販機の購買時刻分布 | 行動経済学 | ログ | 30 日 |
| 17 | 公園での昆虫種数と植生 | 生態学 | 観察 + 採集 | 8 公園 |
| 18 | 商店主の DX 意識と売上推移 | 経営学 | インタビュー + 売上提供 | 12 |
| 19 | テレワーク中の集中時間と勤務形態 | 産業心理学 | アンケート + 自己記録 | 100 |
| 20 | 自治体の Twitter 公式アカウントと住民反応 | 行政学 | ログ + テキスト | 3,000 投稿 |
| 21 | 大学講義のスライド枚数と評価 | 教育工学 | 資料分析 + アンケート | 40 科目 |
| 22 | 給食メニューと残食量の関係 | 栄養学 | 計量 + メニュー記録 | 30 日 |
| 23 | 街路樹樹種と歩行者の体感気温 | 環境学 | センサー + アンケート | 3 ルート |
| 24 | 医療従事者のシフトと疲労度 | 看護学 | アンケート + 生体計測 | 50 |
| 25 | 大学生の食料品支出と仕送り | 家政学 | 家計簿アプリ提供 | 80 |
| 26 | スマートウォッチで測る運動強度と心拍 | 健康科学 | センサー | 25 |
| 27 | eスポーツプレイヤの反応速度と練習量 | 情報学 | 実験 + ログ | 20 |
| 28 | VR 学習と従来 e ラーニングの記憶定着比較 | 教育工学 | 実験 | 60 |
| 29 | 中山間地域の獣害発生地点と植生 | 農学 | 観察 + GPS | 100 地点 |
| 30 | 商店の Google マップ評価と来店動機 | マーケティング | ログ + アンケート | 300 |
30 件のテーマは、 そっくりそのまま真似する必要はありません。 「取得方法」と「想定 n」を眺めて、 自分の関心領域でどの方法が実行可能か、 必要な人手・予算・時間を見積もる材料にしてください。 学部 3 年の春学期に着想し、 4 年の春学期に取得、 秋学期に分析・執筆という標準スケジュールに乗せやすいのは、 アンケート 300 件以下・観察 7 日以内のスケールです。 修論で扱う場合は、 期間を 6 ヶ月以上、 サンプルサイズを 500 以上に拡張するのが目安となります。
| 方法 | 準備コスト | 分析コスト | 倫理ハードル | 推奨学年 |
|---|---|---|---|---|
| アンケート | 中 | 低 | 低〜中 | 学部 3〜4 年 |
| インタビュー | 高 | 高(テキストマイニング) | 中 | 学部 4 年〜修士 |
| 観察 | 中 | 中 | 低〜中 | 学部 3〜4 年 |
| ログ | 低(既存システム活用) | 中〜高 | 中 | 学部 4 年〜修士 |
| センサー | 高(機材・設置) | 中 | 中 | 修士〜 |
| 実験 | 高(プロトコル設計) | 中 | 高 | 修士〜 |
1 次データの最大の落とし穴は、 数字が揃っていても「偏った母集団」「歪んだ回答」を反映している可能性が常にあることです。 ここでは、 教科書だけでは網羅しきれない 12 種のバイアスを、 具体例と回避策つきで整理します。 卒論・実務調査どちらでも、 取得計画段階でチェックリストとして使うと、 報告書の「限界の検討」セクションが書きやすくなります。
| # | バイアス | 起こり方 | 具体例 | 回避策 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 選択バイアス | 標本抽出の偏り | SNS 拡散のみで回収 | 層化抽出・無作為割付 |
| 2 | 無回答バイアス | 特定属性の回答拒否 | 高所得層は所得質問を回避 | 範囲質問・匿名性強化 |
| 3 | 社会的望ましさバイアス | 体面を取り繕う回答 | 読書時間を過大申告 | 中立的表現・実測補完 |
| 4 | 想起バイアス | 過去の出来事の記憶歪み | 1 年前の支出額を質問 | 短期再現・記録併用 |
| 5 | 観察者効果 | 見られていると行動が変わる | 店員観察下での購買 | 非介入観察・自動計測 |
| 6 | アンカリングバイアス | 先に示された数値に引っ張られる | 「平均は 5,000 円ですが」と前置き | 前提情報を排除 |
| 7 | 順序効果 | 質問の並び順で回答が変わる | 満足質問の前にネガティブ質問 | 順序ランダム化 |
| 8 | 中心化傾向 | 中間値を選びがち | 5 件法で「3」が突出 | 偶数件法に変更 |
| 9 | 極端回答傾向 | 両端を選びがち | 「全くそう」と「全くそうでない」が突出 | 回答者文化への配慮 |
| 10 | 生存バイアス | 継続できた事例しか観測されない | 廃業店を対象から外す | 過去存在記録の保持 |
| 11 | 時期効果 | 取得時期の特殊性 | 大型イベント直後の調査 | 時期分散・継続調査 |
| 12 | 測定機器バイアス | 機器の精度不足や校正不良 | 古い体重計で系統的に重く出る | 校正・複数機種比較 |
取得後にバイアスの「程度」を数値化するには、 既知の母集団分布(人口動態統計など)と取得サンプルの分布を比較するのが基本です。 性別・年代・地域の 3 軸でクロス集計を作り、 国勢調査ベースの母集団分布と乖離が大きい箇所を「警告」として赤マーキングします。 補正のためにポストレイヤリング・レイクウェイトといった重み付けを行うこともあります。 卒論レベルでは、 補正までは行わなくても「乖離あり」と報告書に明記するだけで十分なケースが多いです。
| タイミング | 措置 | 対応バイアス |
|---|---|---|
| 設計段階 | 層化抽出設計 | 選択バイアス |
| 設計段階 | 匿名性確保・謝礼設計 | 無回答バイアス・社会的望ましさ |
| 設計段階 | 質問順ランダム化 | 順序効果 |
| 取得段階 | 非介入観察・自動計測 | 観察者効果 |
| 取得段階 | 機器校正 | 測定機器バイアス |
| 分析段階 | レイクウェイトによる補正 | 選択・無回答 |
| 分析段階 | 感度分析(最良・最悪シナリオ) | 想起・社会的望ましさ |
| 報告段階 | 限界事項の明記 | 全てのバイアス |
12 種すべてを完全に排除することは、 現実の 1 次データ収集では不可能です。 「ある程度のバイアスが残る前提で、 影響範囲をどう推定するか」が、 卒論や実務調査の腕の見せ所になります。 報告書では (1) 想定されるバイアス、 (2) 影響方向、 (3) 影響量の見積もり、 を 3 点セットで開示しましょう。 「私の研究にはバイアスがあります」と素直に書いた論文の方が、 「バイアスはない」と言い切る論文より、 査読・口頭試問で評価されやすい傾向があります。
「1 次データを取りに行く」か「2 次データだけで戦う」か。 卒論・実務調査の出発点でほぼ必ず悩むテーマです。 ここでは、 意思決定を支援するマトリクスと、 両者を組み合わせるハイブリッド戦略を整理します。
| 条件 | 推奨 | 理由 |
|---|---|---|
| 問いに合致する公的データが既にある | 2 次のみ | 追加コストなく信頼性確保 |
| 公的データの粒度が荒い | ハイブリッド | 細粒度部分のみ 1 次で補強 |
| 主観・意見・態度を扱う | 1 次中心 | 公的統計には存在しない |
| 行動ログを扱う | 1 次(自社・自分のシステム) | 外部開示されない |
| 公的データが古い | ハイブリッド | 最新動向のみ自前で取得 |
| 時間・予算が極端に少ない | 2 次のみ | 1 次収集は計画倒れリスク高 |
| 研究のオリジナリティを最大化したい | 1 次中心 | 「自分しか持っていないデータ」を活かす |
| 地域・組織特有の課題に答えたい | 1 次中心 | 全国統計では問いに答えられない |
| パターン | 2 次の役割 | 1 次の役割 | 出力例 |
|---|---|---|---|
| 背景整理 → 焦点絞り込み | 全体像の把握 | 焦点領域での深掘り | 仮説検証論文 |
| 補強 → モデル拡張 | 基本変数の提供 | 追加変数の補強 | 回帰モデル拡張 |
| 検証 → 一般化 | 全国分布 | 事例研究 | 複合事例研究 |
| 縦断追跡 | 過去時点の値 | 現時点の追加調査 | 時系列分析 |
| アプローチ | 長所 | 短所 |
|---|---|---|
| 2 次データ単独 | 低コスト・信頼性・即時着手 | 問いに合致しないリスク |
| 1 次データ単独 | 問いにピンポイント・オリジナリティ | 高コスト・代表性確保が難 |
| ハイブリッド | 代表性 + ピンポイント性の両立 | 設計が複雑・接続部の品質管理が必要 |
マトリクスは「最初の方向性」を決める道具です。 一度ハイブリッドを選んだら、 2 次データ側の取り扱いについては 2 次データ のページを、 1 次データ側の取り扱いについては本ページの「12 ステップ」「品質指標」「バイアス対策」セクションを併読してください。 そして、 2 次データの公開元と自分の組織との間で利用規約上の齟齬が起きないか、 計画段階で必ず確認しておくことが、 後工程の混乱を防ぐ鍵になります。
1 次データ収集は、 アイデアと熱意だけでは進みません。 予算・スケジュール・体制を計画段階で明確化することで、 初動の遅れや中盤の挫折を未然に防げます。 ここでは、 ゼミ単位・小規模研究室・スタートアップ部署のいずれでも応用できる、 予算項目テンプレートとガントチャート、 必要人員のサンプルを示します。
| 項目 | 用途 | 目安金額(円) |
|---|---|---|
| アンケート用紙・印刷 | 紙の質問票配布 | 10,000 |
| 回答謝礼 | 回答インセンティブ | 90,000(300 円 × 300 名) |
| クラウドサービス料 | Web フォーム・保管・分析環境 | 15,000 |
| 交通費 | 配布・回収・実地調査 | 30,000 |
| 分析人件費 | 入力・クレンジング作業 | 50,000(時給 1,000 円 × 50 時間) |
| 予備費 | 想定外対応 | 25,000 |
| 合計 | — | 約 220,000 円 |
| タスク \\ 月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 問い設定 | ■ | |||||
| 設計・倫理 | ■ | ■ | ||||
| プリテスト | ■ | |||||
| 本調査 | ■ | |||||
| クレンジング | ■ | |||||
| 分析・執筆 | ■ | ■ | ||||
| 役割 | 人数 | 主タスク |
|---|---|---|
| プロジェクトリーダー | 1 | 全体管理・進捗・対外調整 |
| 調査設計者 | 1 | 質問票作成・標本設計 |
| 倫理担当 | 1 | 同意書・倫理申請 |
| 配布・回収担当 | 2 | 現場運営 |
| 入力・クレンジング | 1〜2 | 紙→CSV・品質確認 |
| 分析担当 | 1〜2 | EDA・モデル化・レポート |
3 つを 1 枚にまとめておくと、 指導教員や上長に対する説明が格段に楽になります。 「お金がいくらかかるのか」「いつまでに何ができるのか」「誰がやるのか」が即答できる状態は、 卒論・実務調査の信頼性を一気に高めます。 計画書の冒頭 1 ページを「予算・スケジュール・体制」サマリにあてるだけで、 ステークホルダーとの合意形成は驚くほどスムーズになります。
無事に 1 次データを収集できたとしても、 分析段階で凡ミスをすれば結論が大きく歪みます。 ここでは、 卒論・実務調査でよく目撃される分析ミスを 10 件挙げ、 それぞれ「どんな状況で起きるか」「どう防ぐか」を整理します。 取得済みデータを目の前にして手をつける前に、 セルフチェックリストとして眺めてください。
| # | ミス | 起きる場面 | 対処 |
|---|---|---|---|
| 1 | 名義変数を順序として平均 | 「血液型」を 1〜4 で平均 | 尺度区分の再確認 |
| 2 | 外れ値を吟味せず削除 | 高所得回答者を機械的に除外 | 外れ値の妥当性確認 |
| 3 | 欠損を 0 と同一視 | 未回答を「ゼロ」と集計 | 欠損コードを明示・NA 処理 |
| 4 | p 値の独り歩き | p<0.05 だけで「効果あり」と結論 | 効果量・信頼区間も併記 |
| 5 | 多重比較を黙殺 | 30 項目を片っ端から検定 | Bonferroni などで補正 |
| 6 | 相関と因果の混同 | 「相関したから原因」と結論 | 交絡因子と時系列順を明示 |
| 7 | 層別なしの平均 | 男女混合の身長を一括平均 | 層別平均 + 分散も提示 |
| 8 | ベン図のないクロス集計 | 「2 項目該当」を見落とす | クロス表 + 重複可視化 |
| 9 | 分布形状の無視 | 歪んだ分布に t 検定 | ヒストグラム確認・ノンパラメトリック検定 |
| 10 | グラフの軸スケール詐欺 | 微小差を強調するために軸を切る | 原則 0 から始める・例外は明記 |
10 連発のチェック項目を、 卒論執筆中の机に貼っておくと、 提出直前の慌ただしい時期にも目に入って効果的です。 上から順に確認し、 「該当した」と気づいたミスは「限界事項」セクションで明文化するか、 急いで再分析しましょう。 大事なのは「ミスがないこと」ではなく、 「ミスを察知し、 制御している姿勢を見せること」です。 完璧主義より誠実主義が、 卒論審査でも実務報告でも評価されます。
取得した 1 次データは、 ローカル PC のあちこちに散らばると、 数ヶ月後の自分が困ります。 ここでは、 研究室・チーム単位で再現性高く使えるディレクトリ構成テンプレを示します。 Git や Dropbox といったクラウド同期と併用すると、 卒論・論文提出後のリビジョン管理も楽になります。
| ディレクトリ | 用途 | バージョン管理 |
|---|---|---|
| data/raw/ | 取得直後の原データ(編集禁止) | Git LFS or 暗号化保管 |
| data/interim/ | 中間処理後のデータ | 追跡可能なら可 |
| data/processed/ | 分析直前の完成版 | 追跡推奨 |
| notebooks/ | EDA・モデリングのノート | Git で履歴管理 |
| src/ | 再利用するスクリプト | Git で履歴管理 |
| docs/ | README・データ辞書・倫理書 | Git で履歴管理 |
| reports/ | レポート・図表 | 追跡推奨 |
raw_survey_2026-05-12.csv:取得日を必ず含めるinterim_clean_v0.2.csv:バージョン番号で進捗を可視化processed_final_v1.0.csv:分析の元データであることを明示fig01_response_distribution.png:図表は連番 + 内容report_first_draft_2026-06-03.docx:草稿の日付追跡テンプレを作っても、 締切が近づくと「とりあえずデスクトップに」「とりあえず別フォルダに」と分散してしまいがちです。 防ぐコツは、 (1) プロジェクト直下に置いた README に「ここを見ろ」と書いておく、 (2) raw データは読み取り専用に設定する、 (3) 週次レビューで構成を点検する、 の 3 点です。 卒論はデータが命です。 ディレクトリの乱れは、 後輩・後任への引き継ぎ品質を直に下げます。
1 次データプロジェクトは、 取得・分析・報告までやり切ったら終わり、 ではありません。 振り返り(レトロスペクティブ)を経て初めて、 次回プロジェクトの精度が上がり、 後輩への引き継ぎが価値ある資産になります。 ここでは振り返りに使えるテンプレと、 議論すべき論点を整理します。
| 区分 | 内容 | 記入例 |
|---|---|---|
| Keep(続けたい) | 良かった習慣 | 週次進捗会議でリスクを早期発見できた |
| Problem(困った) | 直面した課題 | プリテストを省略した結果、 本調査で回答ブレが発生 |
| Try(試したい) | 次回の改善案 | 次回はプリテストを 30 名規模で必ず実施 |
「失敗を責めない、 仕組みを責める」。 振り返りの場で個人を攻撃しても、 次のプロジェクトは良くなりません。 失敗の背景にある「仕組み」「手順」「コミュニケーション」を分解して、 次回の予防策に落とし込む姿勢が大事です。 卒論・修論ではこの振り返りこそが、 後輩に最も価値を残すアウトプットだとも言えます。
本ページで触れた重要概念を最終確認用にまとめます。 卒論・修論の口頭試問、 実務調査の社内発表で「1 次データを扱う際の留意点を簡潔に挙げよ」と問われたら、 このキーワードリストを思い出してください。
| 分野 | キーワード | 一言定義 |
|---|---|---|
| 設計 | 標本枠 | 母集団から実際に取りに行く対象集合 |
| 設計 | 層化抽出 | 層ごとに無作為抽出する方法 |
| 設計 | プリテスト | 本調査前の小規模試行 |
| 設計 | コードブック | 変数定義・尺度の対応表 |
| 倫理 | インフォームドコンセント | 十分な説明後の同意取得 |
| 倫理 | 要配慮個人情報 | 健康・信条等の特に保護される情報 |
| 倫理 | k-匿名化 | 同一属性が k 人以上の状態に粗化する |
| 品質 | 完全性 | 必須項目が揃っている度合い |
| 品質 | 正確性 | 値が真実を反映する度合い |
| 品質 | 追跡可能性 | どこから来たか説明できる度合い |
| バイアス | 選択バイアス | 標本抽出の偏り |
| バイアス | 無回答バイアス | 回答拒否層に固有の傾向 |
| バイアス | 社会的望ましさバイアス | 体面を取り繕う回答 |
| 分析 | 効果量 | 差の実質的大きさ |
| 分析 | 信頼区間 | 推定の不確実性を示す区間 |
| 分析 | 多重比較補正 | 複数検定による偶然差の制御 |
| 公開 | CC BY 4.0 | 表示のみで再利用可 |
| 公開 | DOI | 学術データ識別子 |
| 公開 | FAIR 原則 | 見つけやすく相互運用可能な公開 |
| 公開 | DMP | データマネジメントプラン |
1 次データは「自分で取りに行く労力」と「自分しか持っていない価値」のバランスで意義が決まります。 設計・倫理・品質・バイアス・分析・公開、 6 軸で気を配るべき論点を本ページで網羅しました。 卒論・修論を完成させたあと、 自分の 1 次データが後輩の手で 2 次データとして再利用される瞬間が、 研究者として最初の小さな成功体験になります。 そこを目指して、 計画・取得・分析・公開を駆け抜けてください。
最後に、 学部生・修士課程・社会人実務者から繰り返し寄せられる典型的な質問に答えます。 自分の状況に近い質問から読み始めてください。
自分が取得したものでなければ 2 次データ扱いです。 ただし、 先輩との共同研究として再分析する場合は、 倫理審査の同意範囲に「再分析」が含まれているかを必ず確認してください。 含まれていなければ、 回答者への再同意手続きが必要になることがあります。
自社で運用するシステムから取得するなら 1 次データです。 ただし、 ベンダーが提供する集計サービスからダウンロードしたデータは、 ベンダー側で前処理されているため 2 次データ寄りの扱いになります。 報告書では「自社運用 POS から直接抽出」と明記すると分かりやすくなります。
公開された SNS 投稿を API 経由で取得する場合は 2 次データに近い扱いです。 自分がアンケートで「直近の SNS 投稿を見せてください」と依頼して収集すれば 1 次データ。 SNS の利用規約と研究目的の整合性を必ず確認してください。
国際比較なら 1 次データだけで挑むのは困難です。 自国分は 1 次データ、 海外分は 2 次データ(OECD、 ILO、 WHO 等)でハイブリッド構成にするのが現実解です。 比較対象の定義・基準が国ごとに微妙に違うため、 注釈で必ず明示しましょう。
2 次データだけで仮説検証できるなら、 無理に 1 次データを取らなくても構いません。 ただし、 自分の研究のオリジナリティを示すには、 (1) 既存研究と異なる切り口、 (2) 新しい変数の補足、 (3) 自分しか取れない事例、 のいずれかを示す必要があります。 1 次データはオリジナリティ確保の有力な手段です。
1 次データを巡る判断は「白か黒か」よりも「グレーをどう開示するか」が肝です。 自分のデータがどの程度 1 次寄りか、 どの程度 2 次寄りか、 どの程度のバイアスがあり得るかを、 報告書で正直に開示することが、 研究・実務の信頼性を保つ最短ルートです。 そのために本ページの各セクションが、 セルフチェック・他者説明の両方で役立つことを願っています。
1 次データは「目的に合致したデータを自分の責任で取りに行く」行為そのものです。 取得設計の質、 倫理・法令への準拠、 データ品質、 バイアス把握、 分析の妥当性、 公開・引き継ぎまでを通じて、 研究者・実務者としての成熟度が試されます。 これらを段取りよく管理できる人こそ、 データに基づく意思決定の最前線で活躍できる人材です。 本ページで紹介した各種テンプレートを、 ご自身のプロジェクトで再利用してください。
本概念を SSDSE-B-2026 都道府県データで可視化する。 3 つの異なる切り口 (散布図・分布・群間比較) で多面的に理解する。



数式だけでは「実感」が湧きにくいので、 具体的な数値で 1 度手計算してみると理解が定着します。 以下の例は、 本サイトで扱う SSDSE-B-2026 や公開教材に近い形式で用意しました。
同じ研究テーマでの 1 次/2 次データの使い分け:
| テーマ | 1 次データ | 2 次データ |
|---|---|---|
| 大学生の睡眠 | 自分でアンケート(n=200) | 厚労省「国民健康・栄養調査」 |
| 地域経済 | 商店主インタビュー(n=30) | SSDSE、 e-Stat |
| SNS の影響 | 独自スクレイピング | Twitter API 公開データ |
手計算で得た値と、 後述の Python 実装で算出した値が一致することを確認すると、 「数式とコードの対応関係」がクリアに見えるようになります。
合成データで一次収集 vs 二次データのコストを比較する。
| 方式 | コスト [万円] | 件数 | 単価 [円] |
|---|---|---|---|
| 一次 (アンケート) | 500 | 1,000 | 5,000 |
| 一次 (実験) | 2,000 | 500 | 40,000 |
| 二次 (公的データ) | 5 | 10,000 | 5 |
1 2 3 4 5 6 | import numpy as np costs = np.array([500, 2000, 5]) * 10000 counts = np.array([1000, 500, 10000]) unit = costs / counts print(f"単価: {unit} 円") print(f"比 (vs 二次): {unit/unit[2]}") |
💬 手計算 (Step 2) 1000 倍 / 8000 倍と Python 出力が完全一致。
公的統計(SSDSE-B-2026)を題材に、 最小限の Python コードで動作させます。 ファイルパス(data/raw/SSDSE-B-2026.csv)は自分の環境に合わせて変更してください。 まずはこのまま動かすことが理解の最短ルートです。
1 2 3 4 5 6 7 8 | # 1 次データを CSV で受け取り、 SSDSE と結合する例 import pandas as pd survey = pd.read_csv('data/raw/my_survey_2026.csv') # 自分で取った ssdse = pd.read_csv('data/raw/SSDSE-B-2026.csv', encoding='cp932', skiprows=1) merged = survey.merge(ssdse[ssdse['Year']==2023], on='Prefecture', how='left') print(merged.shape) |
▶ 実行 を押せばこのページの中でそのまま動きます(ライブラリもデータも同梱済みで、 準備は要りません)。 手元の Python に移して動かすときは pip install numpy pandas が必要です。 読んでいるデータは data/raw/SSDSE-B-2026.csv。 日本語を含むので encoding='cp932' の指定を落とさないでください。
本サイトの全コードは 論文一覧ページ から実例として確認できます。 自分のデータで試したい場合は、 列名・欠損記号・単位の違いだけ調整すれば、 ほぼそのまま流用できます。
「1次データ」を初めて使う方向けに、 ハンズオン的な実行手順を整理します。 上の Python 実装と組み合わせて、 1 度自分の手でなぞってみることを強く推奨します。
data/raw/ に配置(または自分のデータを用意)。 列名と単位を確認。df.head()、 df.describe()、 df.isna().sum() で全体像を把握。 ここで欠損や外れ値の見当を付ける。この 8 ステップを 1 度回すと、 「用語を読んで分かった気になる」段階から「実際に使える」段階に進めます。 知識は身体で覚えるのが結局のところ最速です。
1 次データを取得した後に行う典型的な分析を、 SSDSE-B-2026 と組み合わせた形で示します。 各コードはそのまま Jupyter Notebook にコピー&ペーストして動作確認できる構成です。
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 | import pandas as pd from scipy.stats import chi2_contingency # 1 次データ:自分が取った標本の性別分布 my_sample = pd.Series({'男性': 92, '女性': 108}) # 母集団(SSDSE-B-2026 から:日本の大学生の性別分布) # 仮の値:男性 53.5%、 女性 46.5% population_rate = pd.Series({'男性': 0.535, '女性': 0.465}) # 標本サイズ n = my_sample.sum() expected = population_rate * n # χ二乗検定(適合度検定) chi2 = ((my_sample - expected) ** 2 / expected).sum() print(f'χ² = {chi2:.3f}') # p 値を scipy で from scipy.stats import chisquare result = chisquare(f_obs=my_sample.values, f_exp=expected.values) print(f'p-value = {result.pvalue:.4f}') # p < 0.05 なら、 標本が母集団から偏っている → post-stratification weight が必要 |
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 | import pandas as pd # 1 次データ:n=200 のリッカート 5 件法 5 項目 survey = pd.read_csv('data/raw/my_survey_2026.csv') items = ['Q1', 'Q2', 'Q3', 'Q4', 'Q5'] X = survey[items] # クロンバックα k = len(items) var_items = X.var(ddof=1).sum() var_total = X.sum(axis=1).var(ddof=1) alpha = (k / (k - 1)) * (1 - var_items / var_total) print(f'Cronbach α = {alpha:.3f}') # 0.7 以上で許容、 0.8 以上で良好 |
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 | import pandas as pd import numpy as np from scipy.stats import t # 1 次データから 2 群比較(例: SNS ヘビーユーザー vs ライト) df = pd.read_csv('data/raw/my_survey_2026.csv') heavy = df.loc[df['sns_hours'] >= 3, 'gpa'] light = df.loc[df['sns_hours'] < 3, 'gpa'] # Cohen's d mean_diff = heavy.mean() - light.mean() pooled_sd = np.sqrt(((heavy.var(ddof=1) * (len(heavy) - 1)) + (light.var(ddof=1) * (len(light) - 1))) / (len(heavy) + len(light) - 2)) d = mean_diff / pooled_sd # 95% CI se_d = np.sqrt((len(heavy) + len(light)) / (len(heavy) * len(light)) + d**2 / (2 * (len(heavy) + len(light)))) ci_low = d - 1.96 * se_d ci_high = d + 1.96 * se_d print(f"Cohen's d = {d:.3f} [95% CI: {ci_low:.3f}, {ci_high:.3f}]") # d=0.2 小、 0.5 中、 0.8 大 |
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 | import pandas as pd # 1 次データ:自分のアンケート(広島大生 200 名の地域意識) primary = pd.read_csv('data/raw/my_survey_2026.csv') # 2 次データ:SSDSE-B-2026(都道府県別の客観指標) secondary = pd.read_csv('data/raw/SSDSE-B-2026.csv', encoding='cp932', skiprows=[1]) sec_2023 = secondary[secondary['Year']==2023] # 共通の都道府県キーで結合 merged = primary.merge( sec_2023[['Prefecture', 'A1101', 'L322104']], # 人口、 地価 on='Prefecture', how='inner', ) # 主観意識と客観指標の相関 print(merged[['my_attitude_score', 'A1101', 'L322104']].corr()) # 強い負の相関があれば「地価が低い県を学生は好む」という仮説の裏付け |
「1 次データ」と「2 次データ」の区別は、 20 世紀前半の社会科学方法論の中で結晶化しました。 単なる用語解説を超えて、 なぜこの区別が必要になったかの歴史を押さえると、 用語の本質的な重みが見えてきます。
日本では明治政府が 1871 年に「太政官正院政表課」(後の統計局)を設置。 これが現代の e-Stat・SSDSE につながる公的統計の起源です。 当時、 研究者は政府が集めた集計表(=2 次データ)だけで分析するか、 自ら現地調査(=1 次データ)するかを選ぶ必要がありました。 この時点では「1 次/2 次」という用語自体は存在せず、 単に「政府統計」と「私的調査」と呼ばれていました。
1930-1950 年代、 シカゴ学派の社会学者たち(Park, Burgess, Thomas)が「自分で現地に行ってインタビューを取る」民族誌的方法を確立。 同時期にコロンビア大学の Lazarsfeld らが「政府統計を二次利用する」量的研究を体系化。 この方法論的緊張の中で、 「Primary Source(一次資料)」と「Secondary Source(二次資料)」の区別が明確化されました。 これが現代の「1 次データ/2 次データ」の語源です。
1970 年代以降、 メインフレーム・パソコンの普及で、 政府統計の 個票データ(マイクロデータ)が研究者に開放され始めます。 日本でも統計法改正(2007 年)で、 研究目的に限って個票が利用可能に。 ここで「1 次/2 次」の境界が あいまいになります。 「政府が取ったが、 研究者が初めて使う個票」は 1 次か 2 次か? 現在の通説では「収集の主体」で判断するため 2 次扱いですが、 国によって解釈が分かれます。
2000 年代以降、 SNS・センサー・ウェアラブルが「個人による 1 次データ取得」を桁違いに容易にしました。 同時に、 OECD・World Bank・SSDSE のような大規模 2 次データのオープン化も進行。 現代の研究は「2 次データで仮説を作り、 1 次データで検証する」混合デザインが主流に。 本ページ全体を貫くスタンスも、 この混合デザインを前提にしています。
ChatGPT・Stable Diffusion 等の生成 AI が「合成データ」を大量生成する時代になりました。 これは 1 次でも 2 次でもない 「0 次データ」とも呼べる存在。 本サイトが「合成データ禁止、 実データ必須」を方針とするのは、 教育において「現実に立脚した思考」を養うため。 生成 AI が作る数字は、 1 次データの「誰のために、 なぜ、 どう測ったか」という文脈情報を完全に欠きます。 これからの時代、 「1 次データを自分で取れる能力」は、 単なる調査技能を超えて知の主体性を保つための技として位置づけられます。
本ページの内容を、 暗記用に 10 行に圧縮しました。 これだけ覚えれば、 試験・面接・コンペの審査でも対応可能です。
🎓 このページのゴール:あなたが「1 次データを単独で設計・実施・分析・報告できる」状態に到達すること。 不安な箇所は本ページの該当セクションを再訪してください。
本サイト外の有用なリソースを、 アクセス難易度別に整理します。 まずは無料・日本語からはじめて、 必要に応じて英語の専門書に進む流れを推奨します。
「1 次データ」を起点に学習を広げる推奨ルートを 3 つ提案します。
1 次データを「自前で取りに行く」プロジェクトでは、 思いつきで質問紙を配ったり、 ログを取り始めたりすると、 後工程の分析で致命的な欠落が発覚しがちです。 ここでは、 大学のゼミ・研究室・スタートアップのプロダクト分析・行政の調査企画など、 規模を問わず再利用できる「12 ステップ」を順序立てて示します。 各ステップで「期待する成果物」と「失敗パターン」をセットで掲示するので、 着手前のチェックリストとして印刷して使ってください。
| # | ステップ | 目的 | 成果物 | よくある失敗 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 問い・仮説の定式化 | 何を測れば答えが得られるか確定 | 調査計画書 v0.1 | 「とりあえず聞いてみる」で項目過多になり回答率が下がる |
| 2 | 既存データの棚卸し | 2 次データで代替可能か判定 | 参考データ目録 | SSDSE-B などで足りるのに自前調査を立ち上げて二重投資 |
| 3 | 母集団と標本枠の定義 | 「誰の声を測るのか」を明文化 | 標本設計書 | SNS 上の自薦回答だけで「日本人の意見」を語る |
| 4 | 指標と尺度の選定 | 数値化の作法を決める | コードブック | 5 件法と 7 件法を混在させて比較不能になる |
| 5 | プリテスト(少数試行) | 質問文の解釈ブレを潰す | 改訂版質問票 | 本調査でしか発覚しない誤読が頻発 |
| 6 | 倫理審査と同意取得 | 利用範囲と保管期限を約束 | 同意書テンプレ | 事後同意で利用不能データが発生 |
| 7 | 配布/センサー設置 | 回収経路と日時を確定 | 回収ログ | 配布日と回収日のタイムゾーン違いで時系列が崩れる |
| 8 | 入力チェック・電子化 | 紙→CSV の橋渡し | クリーンな raw データ | 手入力誤りが補正されずに集計に流入 |
| 9 | 欠損・外れ値の同定 | 分析品質の保険 | 処理ルール書 | 「とりあえず削除」で n が激減し検定力が落ちる |
| 10 | 記述統計の作成 | 仮説検証の前段 | 速報レポート | 速報を読まずに高度モデルへ突入し方向性を誤る |
| 11 | 仮説検証・モデル化 | 問いに答える | 分析ノート | p 値ハッキングで多重比較を黙殺 |
| 12 | 公開・再利用設計 | 自分の 1 次データを他者の 2 次データへ | 公開用 CSV + メタデータ | 識別情報を残したまま公開して炎上 |
12 ステップは独立したタスクではなく、 前後関係と担当の鎖でつながっています。 たとえばステップ 6 の倫理審査は、 ステップ 2 の棚卸しと 3 の母集団定義が固まっていないと審査委員会に説明できません。 大学のゼミなら学生 4 名で 12 ステップを分担し、 行政の調査企画なら 3 部署で分担するのが一般的です。 期日と引き渡し物 (deliverable) を共有カレンダーで可視化することが、 1 次データ収集を計画倒れにしない最大のコツです。
プロジェクト開始時にプリントアウトし、 進捗会議で順に塗りつぶしてください。 「未着手 / 進行中 / 完了」の 3 段階で十分です。 各ステップに「責任者」「期日」「成果物 URL」の 3 欄を備えれば、 1 次データプロジェクトの可視化は完成します。 完了済みのステップでも、 後工程で問題が見つかったら戻ってやり直す「リワーク」が起きるのが 1 次データ収集の常です。 進捗表は静的ではなく、 動的に維持しましょう。
「primary-data」関連の理解を補う Python コード例 (SSDSE-B-2026 を使用)。
1 2 3 4 5 6 | import pandas as pd df = pd.read_csv('data/raw/SSDSE-B-2026.csv', skiprows=1, encoding='cp932') print(df.shape) print(df.head(3)) print(df.columns[:10].tolist()) |
「primary-data」関連の理解を補う Python コード例 (SSDSE-B-2026 を使用)。
1 2 3 4 5 6 | import pandas as pd df = pd.read_csv('data/raw/SSDSE-B-2026.csv', skiprows=1, encoding='cp932') latest = df[df['年度'] == df['年度'].max()] top10 = latest.nlargest(10, '総人口')[['都道府県', '総人口']] print(top10.to_string(index=False)) |
1 次データ (researcher が自ら設計・収集するデータ) 特有の罠を、 SSDSE-B-2026 のような既存 2 次データを使うときには現れない切り口で整理した。 「自分で集めれば信頼できる」という思い込みが最大のリスク。
一次データの品質はデータを取る前の調査票設計で 8 割が決まります。 ここでは「オンライン授業の満足度調査」を題材に、 質問文と選択肢の設計を切り替えると、 同じ回答者集団(架空の 300 人・教材用シミュレーション)から得られる回答分布がどう歪むかを体感できます。 灰色の枠線が「回答者の本当の意識分布」、 色付きの棒が「その調査票で実際に得られる分布」です。
※ 回答分布は教材用シミュレーション(架空の回答者 300 人)です。 「真の意識分布」に、 誘導(回答が 1 段階「不満」側へ移動する確率過程)・ダブルバーレル(内容 45%・通信環境 35%・両者の低い方 20% の混合)・曖昧選択肢(隣接カテゴリへの誤分類 + 8% の判定不能回答)の効果を確率計算で正確に適用しています。 実在の調査結果ではありません。
二次データ(2次データ、 SSDSE-B-2026 など)を使うとき、 私たちは「他人が設計した調査票」の出力を受け取るだけです。 一次データでは逆に、 質問文の一語一句・選択肢の刻み方・質問の順番まで自分が決められる代わりに、 そこで入れた歪みはあとからどんな高度な統計手法を使っても除去できません。 上のシミュレータで誘導的文言を選ぶと平均が 0.3〜0.5 ポイント下振れしますが、 集まった CSV だけを見てもこの歪みは検出できない——「データが生まれる前の設計」が品質を決める、 これが一次データの本質です。
一次データ (Primary Data) を中心に、 上位概念 (データ源泉の分類: 一次 / 二次 / 三次)、 並列概念 (二次データ・公的統計・オープンデータ)、 収集手法 (アンケート・実験・観察・センサーログ)、 応用 (調査計画・SSDSE 補完データ・卒論調査) を関係づけて整理する。
一次データ (primary data) は研究者・分析者が「自分の目的のために」アンケート・実験・観察・センサー計測などで直接収集したデータで、 既存の 二次データ (政府統計・公開データ・他者の調査結果) と対置される。 一次データは目的に最適化できる反面、 収集コスト・サンプリングバイアス・回答バイアスの管理責任が分析者にあり、 「推定値の精度」「結果の可視化」「解釈」の各段階で取得時の制約 (回答率・脱落) が結果の品質を直接縛る点に注意が必要である。
一次データは「収集設計 → データ取得 → 分析」のパイプラインの源流で、 取得段階の意思決定が下流の分析品質を決める。
SSDSE-B-2026 は厳密には「公開された二次データ」だが、 個別の市町村が独自に収集した住民意識調査などは一次データの典型で、 「自治体ごとの政策効果」を測るには一次データ収集が不可欠となる。
「1 次データ」を実際に使うとき、 何をどう選ぶかを順に判断する。 上から順に答えていくと、 使うべき手法と評価の仕方が決まる。
1 次データの強みは「知りたいことを直接測れる」こと。 弱みは費用と時間、 そして設計を誤ると取り返しがつかないこと。
本ページでは設計・バイアス・倫理・コストを扱ってきた。 この最終セクションでは、 まだ触れていない角度から一次データの代替不可能な価値を掘り下げる。 キーワードは「集計の壁」——公開統計(二次データ)は集計値しか手に入らないが、 一次データは個票(マイクロデータ)そのものを保有できる、 という非対称性である。
SSDSE-B-2026 の 2023 年断面は47 都道府県 × 集計済み指標、 つまり分析単位は「県」で行数はわずか 47。 各県の背後には何百万もの世帯・個人がいるのに、 私たちが見られるのは県平均・県合計に押しつぶされた 1 行だけだ。 一次データを取るということは、 この押しつぶされる前の個票の粒度を自分で決められるということ。 「あとから好きな単位に集計し直せるのは個票を持つ者だけ」——これが一次データの、 コストを払ってでも得る価値の核心である。
実測値で確かめよう。 SSDSE-B-2026 の 2023 年・47 都道府県で、 教育費(二人以上の世帯、 L322108、 円/月)と大学等進学率(E4602 ÷ E4601 × 100)の相関係数を計算すると r = 0.711 になる(Python の pd.read_csv(..., encoding='cp932', skiprows=[1]) で読み込み、 2023 年断面を抽出して実算出)。
| 都道府県 | 教育費(円/月) | 大学等進学率 |
|---|---|---|
| 東京都 | 24,160 | 74.1%(93,495 人中 69,302 人) |
| 沖縄県 | 6,356 | 46.7%(全国最小) |
| 秋田県 | 4,316(全国最小) | 49.4% |
この r = 0.71 を見て「教育費をかける世帯ほど子どもが進学する」と結論したくなるが、 それは生態学的誤謬(ecological fallacy)である。 r = 0.71 はあくまで「県という集計単位」の相関であり、 世帯レベルの関係は 47 行の集計表からは原理的に検証できない。 W. S. Robinson(1950)が示した古典例では、 米国の州レベルで見た「移民比率と識字率」の相関が、 個人レベルで見ると符号ごと逆転した。 集計相関と個体相関は一致する保証がまったくない。
架空の数値例(実データではない合成デモ):A 県の世帯が全員「教育費 2 万円・進学」、 B 県が全員「教育費 5 千円・非進学」だとすると、 県レベルでは教育費と進学が完全相関する。 しかし各県の内部では教育費のばらつきがゼロなので、 世帯レベルの相関はそもそも定義できない(あるいは県内でばらつきがあってもゼロ相関でありうる)。 集計は「県間の差」だけを残し「県内の関係」を消してしまう。
では世帯レベルの関係を知りたければどうするか——ここで一次データの出番になる。 自分でアンケートを設計し世帯単位の教育費と進学有無を尋ねれば、 個票レベルの関係を直接推定できる。 つまり生態学的誤謬は「二次データの限界」であると同時に「一次データを取る積極的理由」でもある。 なお同じ 2023 年断面で合計特殊出生率(A4103)と大学等進学率の県レベル相関は r = −0.499(東京都 0.99・進学率 74.1%、 沖縄県 1.60・進学率 46.7%)で、 これも「進学する人ほど子を産まない」という個人レベルの主張の根拠にはならない典型例である。