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階層クラスタリング
Hierarchical Clustering
サンプルを1点ずつ結合(または分割)してデンドログラム(樹形図)を作り、任意の階層で切ってクラスタを得る。
教師なし学習階層クラスタhierarchical clustering

🔖 キーワード索引 — 完全強化版

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「階層クラスタリング」を理解するうえで必要なキーワードを 10 件以上提示します。 各チップから対応セクションへ移動できます。

30 秒結論 文脈 直感 数式 記号読み解き 実値計算 Python 実装 落とし穴 関連手法 関連用語 グループ教材 概念マップ

💡 30秒で分かる結論

🍰 まずはやさしく

似たもの同士をまとめる家系図のような手法です。

データのグループ分けをするために使います。

部活のメンバーを性格で分けるときに便利です。

この章では仕組みと特徴について読みます。

📖 もっと詳しく

階層クラスタリング(hierarchical clustering)は、 サンプルを階層的(=入れ子状)にグループ化する手法。 結果はデンドログラム(樹形図)として可視化され、 「どのサンプル同士が、 どの段階で結合するか」が一目で分かります。

k-means との根本的違い

これにより、 「2クラスタにしたらどう分かれる?3クラスタなら?4クラスタなら?」を一度の計算で全部見られるのが強み。

🔄 2つの方式

階層クラスタリングには、 結合方向の異なる2方式があります:

  1. 凝集型(agglomerative, ボトムアップ):最初は各点が独立のクラスタ → 順次結合していく。 圧倒的に多く使われる
  2. 分裂型(divisive, トップダウン):最初は全部1クラスタ → 順次分割していく。 計算重く稀

通常「階層クラスタリング」と言えば凝集型を指します。 以下も凝集型を中心に説明します。

🌳 凝集型アルゴリズムの仕組み

  1. 初期化:n 個の点を、 各々が1つのクラスタとして開始(n クラスタの状態)
  2. 結合:最も近い2つのクラスタを1つに結合(n-1 クラスタへ)
  3. 距離の更新:新クラスタと残りクラスタの距離を再計算
  4. 反復:ステップ2-3 を、 クラスタ数が1になるまで繰り返す
  5. 結果:結合過程を樹形図(デンドログラム)として表現

🔗 結合基準(linkage method)

「2つのクラスタの距離」をどう測るかで結果が変わります。 主要な選択肢:

結合法距離の定義特徴
単連結(single)最も近い2点の距離細長いチェーン状クラスタ
完全連結(complete)最も遠い2点の距離コンパクトな塊
群平均(average)全ペアの平均距離単連結と完全連結の中間
Ward 法結合による分散増加量を最小化均等サイズの球形クラスタ。 最も使われる
中央連結中心同士の距離逆転が起きる場合あり

選び方の指針

📊 凝集型の動作例(手で追体験)

4都道府県の (高齢化率, 死亡率) で、 単連結階層クラスタリングを追います:

高齢化率死亡率
A: 秋田3919
B: 高知3617
C: 東京239
D: 沖縄2311

初期距離行列(ユークリッド距離):

ステップ1:C と D(距離2.00)を結合 → クラスタ {C,D} 誕生。 結合高さ=2.00

ステップ2:残り {A}, {B}, {C,D} で再計算。 単連結なら d({A},{C,D}) = min(d(A,C), d(A,D)) = 17.89、 d({B},{C,D}) = min(14.32, 15.26) = 14.32、 d(A,B) = 3.61 ← 最短。 → A と B を結合 → クラスタ {A,B} 誕生。 結合高さ=3.61

ステップ3:残り {A,B}, {C,D}。 単連結なら距離 = min(全ペア) = min(18.87, 17.89, 15.26, 14.32) = 14.32。 → 2クラスタを最終結合。 結合高さ=14.32

結果のデンドログラム

高さ 14.32 ─┐            │ ┌────────────────┐高さ 3.61 ──┤ │      ┌───┐    │            │ │      │   │    │高さ 2.00 ──┤ │      │ ┌─┴─┐  │            A B      A B  C D

2クラスタに切る場合:{A,B} と {C,D}(=「高齢化進行群」と「若年群」)。 4クラスタなら個別の4県。

🎯 クラスタ数の決定法(階層特有)

階層クラスタリングの強みは「k を後で決められる」。 デンドログラムを見て:

⚖️ 階層クラスタリングの長所と短所

長所短所
k を後で決められる計算量 O(n³)(大規模困難)
階層構造が見える(デンドログラム)一度結合したら変更不可能
結合基準の選択肢が豊富結合基準で結果が大きく変わる
球形でないクラスタも捕捉可(単連結)外れ値に弱い(単連結)
解釈しやすい樹形図逆転(inversion)が起きる場合あり

💻 Python での実装

🎯 このコードでやること:階層的クラスタリング — 樹形図で群構造を表現に関連するステップ #1。最初のスニペットです。SSDSE-B-2026 を読み込みます。

📥 入力例(df.head())
df = pd.read_csv('data/raw/SSDSE-B-2026.csv', encoding='cp932', skiprows=[1])
# 47都道府県の距離行列(ユークリッド)から樹形図を構築
# 標準化済み X (shape=(47, 4)):
#   pref       z_age   z_inc   z_pop   z_unemp
# 0 北海道     0.31   -0.42    0.85    0.62
# 1 青森県     1.45   -1.21   -0.62    0.93
# 2 岩手県     1.39   -0.72   -0.68    0.21
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import pandas as pd

# ── この抜粋だけで動くように、47 都道府県の特徴量を用意する ──
# 英字の項目コードを使うので、2 行目の日本語名は読み飛ばす
_d = pd.read_csv('data/raw/SSDSE-B-2026.csv', encoding='cp932', skiprows=[1])
_d = _d[_d['SSDSE-B-2026'] == 2023]          # 最新年度の 47 行
_cols = ['A1101', 'A1301', 'A1303', 'A4101', 'L3221']  # 総人口・15歳未満・65歳以上・出生数・消費支出
X = _d[_cols].astype(float).values
prefecture_names = _d['Prefecture'].tolist()  # 樹形図の葉に出す都道府県名

from scipy.cluster.hierarchy import linkage, dendrogram, fcluster
from sklearn.preprocessing import StandardScaler
import matplotlib.pyplot as plt

# 必ず標準化
X_std = StandardScaler().fit_transform(X)

# Ward法で階層クラスタリング
Z = linkage(X_std, method="ward")

# デンドログラム描画
fig, ax = plt.subplots(figsize=(14, 6))
dendrogram(Z, labels=prefecture_names, leaf_font_size=10, ax=ax,
           color_threshold=0.7*max(Z[:,2]))

# k=4 でクラスタ分割
labels = fcluster(Z, t=4, criterion="maxclust")
print('クラスタ別の県数:', pd.Series(labels).value_counts().sort_index().to_dict())
📤 実行例(実測)
クラスタ別の県数: {1: 6, 2: 32, 3: 8, 4: 1}
💬 読み方:このステップは前処理/補助関数。本処理は次のスニペットに続く。

💡 30 秒で分かる結論 — 完全強化版

📍 あなたが今見ているもの

🍰 まずはやさしく

データを階層的に分ける分析の方法です。

似ているグループを視覚的に見つけるために使います。

都道府県をいくつかのタイプに分ける例があります。

この章では分析での使われ方を読みます。

論文で「階層クラスタリング」「デンドログラム」「Ward 法でクラスタリング」と書かれているとき。 「47都道府県を樹形図で類型化」のような用途で、 k-means と並ぶクラスタリングの2大手法の1つ。

階層クラスタリング とは:サンプルを1点ずつ結合(または分割)してデンドログラム(樹形図)を作り、任意の階層で切ってクラスタを得る。

📍 文脈ボックス — あなたが今見ているもの(完全強化版)

このセクションは「階層クラスタリング」を扱う 用語ページ です。 統計データ分析コンペティション(2026)の再現教材における中核用語のひとつで、47都道府県のデンドログラムによる階層構造可視化 という観点で SSDSE-B-2026(47 都道府県 × 複数年 × 100 超列)に紐づけられます。

位置づけ:相関線形回帰仮説検定 といった基礎用語群と並列であり、応用としては 内生性IVDIDクラスタリング 等へ繋がります。

🎨 直感で掴む

🍰 まずはやさしく

似ている順に結んでいくパズルのようなものです。

グループの分かれ方を直感的に知るために使います。

スマホのアプリをジャンル別に分けるイメージです。

この章ではグループの作り方を読みます。

階層クラスタリング
Ward 法による47都道府県のデンドログラム。 縦軸=結合距離、 横軸=都道府県。 任意の高さで切ればクラスタ数が決まる。

🎓 結合基準ごとの数学と特性

単連結の数学

2クラスタ $A, B$ の距離 $d(A, B) = \min_{a \in A, b \in B} d(a, b)$。 最近隣の距離が0に近いペアを次々結合するので、 細長い「鎖状」クラスタができやすい。 「友達の友達は友達」的なつながりを捕捉。 ただし外れ値1つが「橋」になって、 別のクラスタを巻き込むことも(chaining問題)。

完全連結の数学

$d(A, B) = \max_{a \in A, b \in B} d(a, b)$。 最遠の距離を見るので、 結合された後のクラスタがコンパクトになる。 ただし外れ値があると最遠が大きくなり、 結合を遅らせる。

Ward 法の数学

「2クラスタを結合したときの分散増加量」が最小のペアを選ぶ:

$\Delta(A, B) = \sum_{x \in A \cup B} \|x - \mu_{AB}\|^2 - \sum_{x \in A} \|x - \mu_A\|^2 - \sum_{x \in B} \|x - \mu_B\|^2$

これをLance-Williams 更新式で効率的に計算できる:

$d_{Ward}(A \cup B, C) = \frac{n_A + n_C}{n_A + n_B + n_C} d(A,C) + \frac{n_B + n_C}{n_A + n_B + n_C} d(B,C) - \frac{n_C}{n_A + n_B + n_C} d(A,B)$

結果として、 均等サイズの球形クラスタが形成されやすい性質を持ちます。 k-means と似た性質(ユークリッド距離前提、 球形向き)ですが、 階層構造が見えるのが利点。

計算量の問題

基本実装は $O(n^3)$。 例えば n=1000 で 10億回の計算。 大規模データには厳しい。

効率化:(i) 近接行列を最初に計算し再利用、 (ii) SLINK アルゴリズム(単連結用 O(n²))、 (iii) BIRCH との組み合わせで近似。 n < 5000 程度なら普通に scipy で実行可能。

逆転(inversion / reversal)現象

中央連結や重心連結では、 「結合距離が前の結合より小さくなる」逆転が起きることがある。 デンドログラムを描いたときに枝が交差し、 解釈不能に。 Ward 法や単連結・完全連結・群平均ではこれは発生しません。 だから実用では Ward 法が選ばれることが多い。

🎨 直感で掴む — 完全強化版

階層クラスタリング を一言でいえば「47都道府県のデンドログラムによる階層構造可視化」。 47 都道府県という小さな母集団でも、 SSDSE-B-2026 の A1101 列に注目すると、 大都市圏と地方の差・人口規模に伴う相対比較など、 様々なパターンが見えてきます。

比喩でいうと、 階層クラスタリング はデータ分析の「眼鏡」のようなもの。 同じデータでも眼鏡を変えれば、 平均(中心)・分散(ばらつき)・相関(連動)・因果(影響)と、 異なる情報が浮かび上がります。 SSDSE-B-2026 を題材に、 この眼鏡をかけてみるのが本ページの狙いです。

🎨 概念図で押さえる

階層クラスタリングは 「点をボトムアップに併合し、 結果を樹形図 (dendrogram) で表現する」。 以下 3 つの図で「凝集の過程」「連結法の違い」「樹形図切断と k 決定」を視覚化する。

図 1: 凝集型クラスタリングのステップ

Step 0 5 個の独立点 Step 1 最近接ペア併合 Step 2 2 クラスタ Step N-1 全点 1 クラスタ

各ステップで最近接ペアを併合。 N-1 回の併合で 1 クラスタに集約され、 過程全体が樹形図に記録される。

図 2: 連結法 (linkage) の違い

クラスタ A クラスタ B 最小距離 = single 最大距離 = complete 平均距離 = average Ward: 併合で分散最小増加を優先 → 球状で均等サイズのクラスタを生成

single は鎖状、 complete は球状、 average は中庸、 Ward は分散最小化。 実務では Ward 法が最も安定で多用される。

図 3: 樹形図の切断高さで k を決める

高さ 切断 → k=3 A B C D E F G

樹形図を水平線で切断するとクラスタ数 k が決まる。 高さは併合時の距離 (非類似度)。 ジャンプの大きい高さで切ると自然なクラスタが得られる。

📊 補足図 — 47 都道府県のデンドログラム

SSDSE-B-2026 47 都道府県の Ward 法によるデンドログラム

→ SSDSE-B-2026 から作成した 47 都道府県の階層クラスタリング結果。 縦軸はクラスタ統合時の Ward 距離。 高さ閾値を 4 群相当に切ると、 「東京・大阪 / 首都圏隣県 / 中規模都市県 / 地方県」のような構造が浮かび上がる。

🧪 理解度チェック — 階層クラスタリング

  1. Q1. 凝集型 (bottom-up) と分割型 (top-down) のどちらが計算的に主流か、 理由とともに答えよ。
  2. Q2. 階層クラスタリングと k-means の最大の違いを 1 行で述べよ(k の事前指定の有無)。
  3. Q3. 連結法(linkage)を変えるとデンドログラムの形状はどう変わるか? single と Ward を例に比較せよ。
  4. Q4. SSDSE-B-2026 の 47 都道府県を scipy.cluster.hierarchy.linkage で Ward 階層化するときの引数を答えよ。
  5. Q5. デンドログラムの「水平線で切る高さ」をどう決めるか? ジャンプ・シルエット係数・既知の構造との照合などから 1 つ挙げよ。

📊 階層クラスタリング vs k-means(補足表)

観点階層クラスタリングk-means
k の事前指定不要(デンドログラムから後決め)必要
計算量$O(n^2 \log n)$ — 大規模に不利$O(nkI)$ — スケール容易
出力形式デンドログラム + 階層構造k 個のフラットなクラスタ
再現性完全に決定論的初期値依存(要 random_state)
適例分類体系の発見、 系統樹大規模データのセグメント化

→ 小〜中規模 (n < 1000) で構造を見たいときは階層、 大規模で k が事前に決まるなら k-means。 両者を組み合わせる「2 段階クラスタリング」も有効。

関連: Ward 法 / k-means / デンドログラム / クラスタリング / 距離(距離関数)

📐 数式または定義 — 完全強化版

🍰 まずはやさしく

グループ同士の距離を計算するルールです。

正しくグループを分ける基準を決めるために使います。

買い物の傾向が似ている人をまとめる計算に似ています。

この章では具体的な数式について読みます。

階層クラスタリング の代表的な定義式は次のとおりです。

$$ d(C_i \cup C_j, C_k) = \alpha_i d(C_i, C_k) + \alpha_j d(C_j, C_k) + \beta d(C_i, C_j) + \gamma \lvert d(C_i,C_k) - d(C_j,C_k)\rvert $$

ここで使われる記号や演算の意味は次節で言葉に翻訳します。

🔬 数式を言葉で読み解く — 完全強化版

数式の各記号を、日本語の意味に変換します。

🔬 階層クラスタリングの深掘り — 結合基準・距離・カット高さ

階層クラスタリングを使いこなすカギは、 「結合基準 (linkage)」 と「距離尺度」、 そして デンドログラムをどこで切るかの 3 点にあります。 ここでは SSDSE-B-2026 を題材に、 これらの選択が結果に与える影響を実証的に示します。

① 結合基準の比較 — Ward / Average / Complete / Single

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import pandas as pd
import numpy as np
from scipy.cluster.hierarchy import linkage, fcluster

df = pd.read_csv('data/raw/SSDSE-B-2026.csv', encoding='cp932', skiprows=[1])
X = df[df['SSDSE-B-2026'] == 2023].select_dtypes('number').fillna(0).values

for method in ['ward', 'average', 'complete', 'single']:
    Z = linkage(X, method=method)
    labels = fcluster(Z, t=4, criterion='maxclust')
    counts = pd.Series(labels).value_counts().sort_index().tolist()
    print(f'{method:10s} → 4 クラスタの規模: {counts}')

Ward 法は球状で同程度の大きさのクラスタを作りやすい一方、 Single 法は「鎖状」につながる傾向(chaining 問題)があり、 SSDSE-B-2026 のような少数都道府県データでは 1 つの大クラスタ + 数個の単独都道府県になりがちです。

② 距離尺度の選択 — Euclidean vs Manhattan vs Correlation

距離特徴向く場面
EuclideanL2 ノルム標準化済み量的データ
ManhattanL1 ノルム外れ値耐性
Correlationパターン類似時系列の形状比較
Cosine方向の類似高次元疎データ

③ デンドログラムの切断 — Inconsistency / Maxclust / 距離閾値

SSDSE-B-2026 で都道府県を意味のあるクラスタにまとめるには、 「距離閾値 t」を 視覚的統計的の両方で決める必要があります。 視覚的には、 デンドログラムで「大きな谷」が見えるところを切断します。 統計的には、 シルエット係数や inconsistency 係数をプロットして、 ピークを探すのが定石です。

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from scipy.cluster.hierarchy import dendrogram, linkage, fcluster
from sklearn.metrics import silhouette_score
import pandas as pd

df = pd.read_csv('data/raw/SSDSE-B-2026.csv', encoding='cp932', skiprows=[1])
X = df[df['SSDSE-B-2026'] == 2023].select_dtypes('number').fillna(0)
X = (X - X.mean()) / X.std()
Z = linkage(X.values, method='ward')

for k in range(2, 9):
    labels = fcluster(Z, t=k, criterion='maxclust')
    score = silhouette_score(X, labels)
    print(f'k={k} → silhouette={score:.3f}')

上のコードを SSDSE-B-2026 で実行すると、 多くの場合 k=3 or k=4 で silhouette が最大になります。 そこを切断点として採用し、 デンドログラム上に水平線を引いて報告書に貼り付けるのが定番です。 ただし、 silhouette だけに頼らず、 各クラスタの構成都道府県を地理的・経済的に解釈できるか必ず確認してください。

④ 階層クラスタリングの限界と対処

階層クラスタリングは「クラスタ間の距離関係を 木構造として可視化できる」点が最大の魅力です。 k-means が結果として k 個のラベルしか返さないのに対し、 階層クラスタリングは 切断高さを変えれば任意の kに対応できる柔軟性があります。 SSDSE-B-2026 のような都道府県データでは、 「ブロック構造を発見し、 地域特性として解釈する」という分析シナリオに極めて向いている手法です。

🎯 まとめ — 完全強化版

本ページでは「階層クラスタリング」を 12 セクション(🔖 キーワード索引/💡 30 秒結論/📍 文脈/🎨 直感/📐 数式/🔬 数式を言葉で読み解く/🧮 実値計算/🐍 Python 実装/⚠️ 落とし穴/🌐 関連手法/🔗 関連用語/📚 グループ教材)で完結に整理しました。 SSDSE-B-2026 を素材に、 概念の輪郭・式の意味・実装手順・典型的な失敗パターンの 4 点を最低限押さえれば、 統計データ分析コンペの現場で迷わず使えるはずです。

🧮 SSDSE-B-2026 実値計算例 — 47都道府県の Ward 法クラスタ

SSDSE-B-2026 の数値列を標準化し、 Ward 法でクラスタリングします。 結合距離の典型的構造を把握しましょう。

k 構造的特徴 シルエット 解釈例
2大首都圏 vs 地方最も粗い構造
3首都圏/地方都市/過疎地最高解釈バランス◎
4+ 観光地特化沖縄・北海道が独立
8細分化低下過細

🎯 このコードでやること:階層的クラスタリング — 樹形図で群構造を表現に関連するステップ #5。仮説検定・モデル評価を行います。

📥 入力例(df.head())
df = pd.read_csv('data/raw/SSDSE-B-2026.csv', encoding='cp932', skiprows=[1])
# 47都道府県の距離行列(ユークリッド)から樹形図を構築
# 標準化済み X (shape=(47, 4)):
#   pref       z_age   z_inc   z_pop   z_unemp
# 0 北海道     0.31   -0.42    0.85    0.62
# 1 青森県     1.45   -1.21   -0.62    0.93
# 2 岩手県     1.39   -0.72   -0.68    0.21
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import pandas as pd
from scipy.cluster.hierarchy import linkage, fcluster, dendrogram
from sklearn.preprocessing import StandardScaler
from sklearn.metrics import silhouette_score

df = pd.read_csv('data/raw/SSDSE-B-2026.csv', encoding='cp932', skiprows=[1])
num = df[df['SSDSE-B-2026'] == 2023].select_dtypes(include='number').dropna()
X = StandardScaler().fit_transform(num)

Z = linkage(X, method='ward')
for k in [2, 3, 4, 5, 8]:
    labels = fcluster(Z, t=k, criterion='maxclust')
    print(f'k={k}: silhouette = {silhouette_score(X, labels):.3f}')
📤 実行例(実測)
k=2: silhouette = 0.595
k=3: silhouette = 0.569
k=4: silhouette = 0.193
k=5: silhouette = 0.172
k=8: silhouette = 0.154
💬 読み方:p 値や信頼区間と合わせて読み、効果の有無+大きさを両輪で判断する。

🧮 実値で計算してみる — SSDSE-B-2026 で 階層クラスタリング(完全強化版)

SSDSE-B-2026(公的統計の社会・教育系データセット、 47 都道府県 × 10 年分超 × 100 以上の列)を用いて、 「階層クラスタリング」を体感します。 ファイル名は SSDSE-B-2026.csv、 読み込みは下記の Python コードで行います。

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import pandas as pd

# SSDSE-B-2026 を読み込む(cp932 / Shift_JIS)
df = pd.read_csv('data/raw/SSDSE-B-2026.csv', skiprows=[1], encoding='cp932')
print(df.shape)          # (564, 112)
print(df['SSDSE-B-2026'].unique())  # 含まれる年度
latest = df[df['SSDSE-B-2026'] == df['SSDSE-B-2026'].max()].copy()
print(latest[['Prefecture', 'A1101', 'A4101']].head())

ここで使った中心列 A1101 は SSDSE-B-2026 における 47都道府県のデンドログラムによる階層構造可視化 に関連する指標です。 算出例:

🧮 数式に値を入れて手で計算する: ウォード法の併合距離

合成 1D 点 [1, 3, 6, 10] でウォード法の併合手順を手計算する。

Step 1: 距離行列 (絶対値)

d(1,3) = 2 d(3,6) = 3 d(6,10) = 4 最小: 1-3 → 群 A = {1,3}, 中心 = 2

Step 2: 更新後

Ward 距離(分散増加ベース)を更新: d({1,3},6) = √(4/3)·|2-6| ≈ 4.62 d(6,10) = 4 最小: 6-10 → 群 B = {6,10}, 中心 = 8

Step 3: 最終

d({1,3},{6,10}) = √2·|2-8| ≈ 8.49 全体併合 → 1 クラスタ 高さ: 2, 4, 8.49

🐍 Python で再現

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import numpy as np
from scipy.cluster.hierarchy import linkage
x = np.array([[1],[3],[6],[10]])
Z = linkage(x, method='ward')
print(Z)

📤 実行結果

[[0. 1. 2. 2. ] [2. 3. 4. 2. ] [4. 5. 8.48528137 4. ]]

💬 手計算 (Step 3) と Python 出力が一致 (ward は分散ベースで距離計算)。

🐍 Python での実装

① scikit-learn での基本

🎯 このコードでやること:階層的クラスタリング — 樹形図で群構造を表現に関連するステップ #2。基本統計量を計算します。

📥 入力例(df.head())
df = pd.read_csv('data/raw/SSDSE-B-2026.csv', encoding='cp932', skiprows=[1])
# 47都道府県の距離行列(ユークリッド)から樹形図を構築
# 標準化済み X (shape=(47, 4)):
#   pref       z_age   z_inc   z_pop   z_unemp
# 0 北海道     0.31   -0.42    0.85    0.62
# 1 青森県     1.45   -1.21   -0.62    0.93
# 2 岩手県     1.39   -0.72   -0.68    0.21
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from sklearn.cluster import KMeans, AgglomerativeClustering, DBSCAN
from sklearn.preprocessing import StandardScaler
from sklearn.metrics import silhouette_score
import pandas as pd
import numpy as np

# データの標準化(重要!)
scaler = StandardScaler()
X_std = scaler.fit_transform(X)

# k-means
km = KMeans(n_clusters=3, random_state=0, n_init=10)
labels_km = km.fit_predict(X_std)
print(f'クラスタ中心: {km.cluster_centers_}')
print(f'inertia: {km.inertia_}')

# 階層クラスタリング(Ward法)
agg = AgglomerativeClustering(n_clusters=3, linkage='ward')
labels_agg = agg.fit_predict(X_std)

# シルエットスコアで評価
score = silhouette_score(X_std, labels_km)
print(f'シルエットスコア: {score:.3f}')
📤 実行例(実測)
クラスタ中心: [[ 0.00000000e+00 -4.26887378e-01 -4.24827214e-01 -4.28664223e-01
  -4.28816473e-01 -4.26767938e-01 -4.30565549e-01 -4.31579131e-01
  -4.31568592e-01 -4.31476064e-01 -4.18132818e-01 -4.16503746e-01
  -4.19602865e-01 -4.41442183e-01 -4.40015436e-01 -4.42172372e-01
  -4.24107040e-01 -4.24561197e-01 -4.23614684e-01  2.28609785e-01
  -4.38974102e-01 -4.38992799e-01 -4.38175840e-01 -3.72161037e
💬 読み方:数値が出力されたら、まず大きさ(オーダー)と符号を確認しよう。

② 最適クラスタ数の探索

🎯 このコードでやること:階層的クラスタリング — 樹形図で群構造を表現に関連するステップ #3。可視化(散布図/樹形図/時系列プロット)を描きます。

📥 入力例(df.head())
df = pd.read_csv('data/raw/SSDSE-B-2026.csv', encoding='cp932', skiprows=[1])
# 47都道府県の距離行列(ユークリッド)から樹形図を構築
# 標準化済み X (shape=(47, 4)):
#   pref       z_age   z_inc   z_pop   z_unemp
# 0 北海道     0.31   -0.42    0.85    0.62
# 1 青森県     1.45   -1.21   -0.62    0.93
# 2 岩手県     1.39   -0.72   -0.68    0.21
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import matplotlib.pyplot as plt

inertias = []
silhouettes = []
for k in range(2, 11):
    km = KMeans(n_clusters=k, random_state=0, n_init=10).fit(X_std)
    inertias.append(km.inertia_)
    silhouettes.append(silhouette_score(X_std, km.labels_))

# エルボー法
plt.subplot(1, 2, 1)
plt.plot(range(2, 11), inertias, 'o-')
plt.xlabel('k'); plt.ylabel('inertia')

# シルエット法
plt.subplot(1, 2, 2)
plt.plot(range(2, 11), silhouettes, 'o-')
plt.xlabel('k'); plt.ylabel('Silhouette')
📤 このブロックは標準出力には何も出さない
💬 読み方:プロットの形状から定性的な傾向(単調性・周期性)を読み取る。

③ デンドログラムの描画

🎯 このコードでやること:階層的クラスタリング — 樹形図で群構造を表現に関連するステップ #4。主要な指標(係数・統計量・スコア)を算出します。

📥 入力例(df.head())
df = pd.read_csv('data/raw/SSDSE-B-2026.csv', encoding='cp932', skiprows=[1])
# 47都道府県の距離行列(ユークリッド)から樹形図を構築
# 標準化済み X (shape=(47, 4)):
#   pref       z_age   z_inc   z_pop   z_unemp
# 0 北海道     0.31   -0.42    0.85    0.62
# 1 青森県     1.45   -1.21   -0.62    0.93
# 2 岩手県     1.39   -0.72   -0.68    0.21
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from scipy.cluster.hierarchy import linkage, dendrogram

Z = linkage(X_std, method='ward')
plt.figure(figsize=(14, 6))
dendrogram(Z, labels=labels, leaf_rotation=90)
plt.show()
📤 このブロックは標準出力には何も出さない
💬 読み方:算出された統計量を判定基準と比較し、有意性/効果量を評価する。

🐍 Python 実装バリエーション(scipy / scikit-learn / fastcluster / seaborn)

🅰️ scipy.cluster.hierarchy(標準)

🎯 このコードでやること:階層的クラスタリング — 樹形図で群構造を表現に関連するステップ #6。結果を整形して表示します。

📥 入力例(df.head())
df = pd.read_csv('data/raw/SSDSE-B-2026.csv', encoding='cp932', skiprows=[1])
# 47都道府県の距離行列(ユークリッド)から樹形図を構築
# 標準化済み X (shape=(47, 4)):
#   pref       z_age   z_inc   z_pop   z_unemp
# 0 北海道     0.31   -0.42    0.85    0.62
# 1 青森県     1.45   -1.21   -0.62    0.93
# 2 岩手県     1.39   -0.72   -0.68    0.21
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from scipy.cluster.hierarchy import linkage, fcluster, dendrogram
import pandas as pd
from sklearn.preprocessing import StandardScaler

# 英字の項目コードと Prefecture を使うので、2 行目の日本語名を読み飛ばす
df = pd.read_csv('data/raw/SSDSE-B-2026.csv', encoding='cp932', skiprows=[1])
d23 = df[df['SSDSE-B-2026'] == 2023]
# 全 47 県が残るよう、欠損のある列ごと落とす(行を落とすと県がいなくなる)
num = d23.select_dtypes(include='number').dropna(axis=1)
X = StandardScaler().fit_transform(num)
Z = linkage(X, method='ward')
labels = fcluster(Z, t=3, criterion='maxclust')
dendrogram(Z, labels=d23['Prefecture'].values)
print('クラスタ別県数:', pd.Series(labels).value_counts().to_dict())
📤 実行例(実測)
クラスタ別県数: {1: 38, 2: 8, 3: 1}
💬 読み方:表示された数値テーブルから個別の都道府県の位置づけを読み取る。

🅱️ scikit-learn AgglomerativeClustering

🎯 このコードでやること:階層的クラスタリング — 樹形図で群構造を表現に関連するステップ #7。47都道府県データに当てはめて確認します。

📥 入力例(df.head())
df = pd.read_csv('data/raw/SSDSE-B-2026.csv', encoding='cp932', skiprows=[1])
# 47都道府県の距離行列(ユークリッド)から樹形図を構築
# 標準化済み X (shape=(47, 4)):
#   pref       z_age   z_inc   z_pop   z_unemp
# 0 北海道     0.31   -0.42    0.85    0.62
# 1 青森県     1.45   -1.21   -0.62    0.93
# 2 岩手県     1.39   -0.72   -0.68    0.21
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from sklearn.cluster import AgglomerativeClustering
ac = AgglomerativeClustering(n_clusters=3, linkage='ward').fit(X)
labels = ac.labels_
# distance_threshold で k を後決めも可
ac2 = AgglomerativeClustering(n_clusters=None, distance_threshold=10,
                              linkage='ward').fit(X)
📤 このブロックは標準出力には何も出さない
💬 読み方:SSDSE-B-2026 の実値に当てはめると教科書例より分散が大きいことに注意。

🅲 seaborn の clustermap(ヒートマップ + 階層)

🎯 このコードでやること:階層的クラスタリング — 樹形図で群構造を表現に関連するステップ #8。比較・別パターンを検討します。

📥 入力例(df.head())
df = pd.read_csv('data/raw/SSDSE-B-2026.csv', encoding='cp932', skiprows=[1])
# 47都道府県の距離行列(ユークリッド)から樹形図を構築
# 標準化済み X (shape=(47, 4)):
#   pref       z_age   z_inc   z_pop   z_unemp
# 0 北海道     0.31   -0.42    0.85    0.62
# 1 青森県     1.45   -1.21   -0.62    0.93
# 2 岩手県     1.39   -0.72   -0.68    0.21
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import seaborn as sns
# num は数値列だけの表。定数列があると標準化で 0 除算になり NaN が出るので落とす
num_c = num.loc[:, num.std() > 0]
sns.clustermap(num_c, standard_scale=1, method='ward', cmap='vlag')
📤 このブロックは標準出力には何も出さない
💬 読み方:別パターンと比べることで、手法選択の感度を体感できる。

🅳 fastcluster(大規模用)

🎯 このコードでやること:階層的クラスタリング — 樹形図で群構造を表現に関連するステップ #9。ハイパーパラメータを変えて再計算します。

📥 入力例(df.head())
df = pd.read_csv('data/raw/SSDSE-B-2026.csv', encoding='cp932', skiprows=[1])
# 47都道府県の距離行列(ユークリッド)から樹形図を構築
# 標準化済み X (shape=(47, 4)):
#   pref       z_age   z_inc   z_pop   z_unemp
# 0 北海道     0.31   -0.42    0.85    0.62
# 1 青森県     1.45   -1.21   -0.62    0.93
# 2 岩手県     1.39   -0.72   -0.68    0.21
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# pip install fastcluster
import fastcluster
Z = fastcluster.linkage(X, method='ward')   # scipy の数倍高速
📤 このブロックは標準出力には何も出さない
💬 読み方:ハイパーパラメータで結果が大きく変わる場合は安定性を疑う。

📦 ライブラリ早見表

用途 推奨 補足
小〜中規模 (n < 5000)scipy.cluster.hierarchy業界標準
パイプライン統合sklearn.AgglomerativeClusteringdistance_threshold で k 不要
ヒートマップ + デンドロseaborn.clustermap遺伝子発現解析の定番
高速版fastclusterscipy 互換 API
大規模(n > 10⁵)BIRCH → 階層2 段階アプローチ

🐍 Python 実装 — 完全強化版

scipy / pandas / scikit-learn / statsmodels を中心とした標準的な実装例です。 まず CSV を読み込み、 次に 階層クラスタリング の解析を行います。

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import pandas as pd
import numpy as np
from scipy import stats

df = pd.read_csv('data/raw/SSDSE-B-2026.csv', skiprows=[1], encoding='cp932')
df = df[df['SSDSE-B-2026'] == df['SSDSE-B-2026'].max()].copy()

x = df['A1101'].astype(float).values
y = df['A4101'].astype(float).values

# 基本統計量
print('n            =', len(x))
print('mean(x)      =', np.mean(x))
print('std(x)       =', np.std(x, ddof=1))

# 階層クラスタリング の代表的計算(用途に応じて scipy/statsmodels を切替える)
r, p = stats.pearsonr(x, y)
print(f'Pearson r = {r:.4f}, p = {p:.4g}')
rs, ps = stats.spearmanr(x, y)
print(f'Spearman rho = {rs:.4f}, p = {ps:.4g}')

用途別の追加実装:

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# 標準化と簡易クラスタリングの例
from sklearn.preprocessing import StandardScaler
from sklearn.cluster import KMeans

X = df[['A1101', 'A4101']].astype(float).values
Xs = StandardScaler().fit_transform(X)
km = KMeans(n_clusters=4, n_init=10, random_state=0).fit(Xs)
df['cluster'] = km.labels_
print(df[['Prefecture', 'A1101', 'A4101', 'cluster']].head(10))
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# 時系列(北海道の A1101)— 例として ARIMA 系の前処理
import statsmodels.api as sm

ts = df.sort_values('SSDSE-B-2026').groupby('SSDSE-B-2026')['A1101'].mean()
print(ts.tail())
res = sm.tsa.stattools.adfuller(ts)
print('ADF stat:', res[0], 'p:', res[1])

⚠️ よくある落とし穴

❌ 結合基準を考えずに使う
単連結 vs 完全連結 vs Ward で結果が劇的に変わる。 デフォルトの「ward」が必ずしも最良ではない。 (i) 期待するクラスタの形状、 (ii) 外れ値の有無、 (iii) ユークリッド以外の距離が必要か、 を考慮して選ぶ。 都道府県分析なら Ward 法が無難。
❌ 大規模データに直接適用
O(n³) なので n > 5000 だと計算がきつい(数十分〜)。 大規模なら:(i) サンプリングしてから階層クラスタリング、 (ii) 最初に k-means や BIRCH で粗くまとめてから、 (iii) HDBSCAN などの近似アルゴリズム、 などの工夫が必要。
❌ デンドログラムの切り方を恣意的に
「だいたいこの辺で切ろう」は主観的。 内部評価指標(シルエット、 Calinski-Harabasz)で複数の切断高さを比較。 または事前理論で k を決定。 切断高さの選択が結論を変えるので慎重に。
❌ 標準化を忘れる
クラスタリングの基本だが特に階層は距離ベース。 単位の違う変数を標準化なしで入れると、 距離が桁の大きい変数だけで決まる。 必ず StandardScaler を適用。
❌ 結合基準とデータの不一致
Ward 法はユークリッド距離専用。 マンハッタン距離やコサイン距離を使うなら、 群平均や完全連結を選ぶ。 数学的に整合性が取れない組み合わせはNG。
❌ 横軸の絶対位置を意味あると思う
デンドログラムの横軸は枝の入れ替えで変えられます。 「左から ○ 番目」に意味はない。 結合の高さと構造だけが重要。 表示の左右順は分析者やソフトの実装次第。
❌ 「決定的真理」と思う
結合基準・距離尺度・標準化方法で結果は変わる。 「これが唯一正しい階層構造」ではなく、 「この設定でこう階層化できた」という1つの解釈。 複数の設定で頑健性を確認すべき。

⚠️ 落とし穴(補強版 — 階層クラスタリングで踏みやすい7つの罠)

① 標準化を忘れる
階層クラスタリングは距離ベースなので、 単位の違う変数(人口は数百万、 比率は 0-1)を標準化なしで入れると、 距離が桁の大きい変数だけで決まります。 必ず StandardScaler または min-max スケーリングを通すこと。 「人口でクラスタリングしたら東京だけが孤立した」のは典型的な未標準化エラー。 SSDSE-B では特に注意が必要です。
② Ward 法を非ユークリッド距離で使う
Ward 法は数学的にユークリッド距離専用で、 マンハッタン距離やコサイン距離で使うと挙動が保証されません。 scipy の linkage(metric='cityblock', method='ward') は警告も出さず動くので注意。 マンハッタン距離なら group_average や complete、 コサイン距離なら average を選ぶのが定石。 文書クラスタリングで「コサイン距離 + Ward」を見たら誤りです。
③ デンドログラムの「左右順」に意味を見出す
デンドログラムの横軸は表示順序に過ぎず、 枝の左右を入れ替えても階層構造は変わりません。 「左から ○ 番目にある県は似ている」は誤った直感で、 結合の高さどのクラスタに属するかだけが意味を持ちます。 美しく見せるための並び替え(leaves_list)はあくまで可視化の補助で、 解釈の根拠にしないこと。
④ k を「肘」だけで決める
デンドログラムを見て「ここで切れば良さそう」は主観的判断です。 シルエット係数、 Calinski-Harabasz 指標、 Davies-Bouldin 指標などの定量的な内部評価と、 解釈可能性(ドメイン知識)の両方を併用するのが正しい流れ。 「k=3 にした理由」を 1 行で書けないなら、 まだ決定根拠が弱いサインです。
⑤ 結合基準を 1 種類だけで結論
single, complete, average, ward の 4 種類で結果は驚くほど変わります。 1 つの結合基準だけで「これがクラスタ構造」と断言するのは危険。 複数の基準で共通して現れる構造を「ロバストなクラスタ」と認識するのが堅実なアプローチ。 異なる結合基準で結果が大きく違うなら、 データに固有の「自然な」クラスタ構造はないかもしれない、 という重要な情報になります。
⑥ 大規模データに直接適用
標準実装は計算量 O(n³)、 メモリ O(n²) なので、 n > 5000 で実用困難。 n=10,000 なら距離行列だけで 800MB(float64)を超えます。 大規模なら:(i) サブサンプリング、 (ii) BIRCH で粗くまとめてから階層、 (iii) HDBSCAN や mini-batch クラスタリング、 (iv) fastcluster ライブラリで O(n²) に高速化、 などの工夫が必要。 SSDSE-B(n=47)では無問題ですが、 顧客分析(n=10万)では別アプローチを取りましょう。
⑦ 中央連結や重心連結で「逆転」を見逃す
中央連結(median)や重心連結(centroid)では、 結合距離が前の結合より小さくなる「逆転(inversion)」が起きることがあります。 デンドログラム上で枝が交差し、 解釈不能に。 Ward 法・単連結・完全連結・群平均ではこれは発生しません。 だから実用では Ward 法が無難な第一選択。 中央連結は「やや危険」と理解しておきましょう。

⚠️ 落とし穴 — 完全強化版

階層クラスタリング を実務で扱う際に踏みやすい落とし穴を 5 件挙げます。

🗺️ 概念マップ — 3つの視点で体系を理解する

階層クラスタリング がデータサイエンスの体系の中でどこに位置するかを、 3つの異なる視点で可視化します。 同じ情報でも見方を変えると気付きが変わります。

📍 体系階層のパス

🌐 統計・データサイエンス教師なし学習クラスタリング階層クラスタリング

① 🔗 関係マップ — 「他の手法とどう繋がっているか」

中心に 階層クラスタリング を置き、 そこから クラスタリング・k-means・標準化・Ward法・デンドログラム・PCA など 計 8 個の用語へ、 前提・兄弟・発展形といった関係を矢印で結んでいます。 線がどちら向きかを見れば、 先に読むべき用語あとから読む用語が分かります。 ノードはドラッグで動かせ、 ホイールでズーム、 クリックでその用語のページへ遷移します。

凡例:現在の用語上位カテゴリ兄弟(並列)前提発展形応用先2階層先

② ⭕ 包含マップ — 「どのカテゴリに含まれているか」

大きな円が小さな円を包含する Circle Packing 図。 「階層クラスタリング」は緑色でハイライト

📍現在地:統計・データサイエンス

③ 🌳 ツリーマップ — 「面積で見るボリューム比較」

長方形を入れ子に分割した Treemap 図。 各分野の規模感を面積で比較。 「階層クラスタリング」は緑色でハイライト

🎯 3つのマップの使い分け

マップ 分かること こんな時に見る
🔗 関係マップ手法間の横の関係(前提→発展→応用)「次に何を学べばよい?」 学習順序の判断
⭕ 包含マップ分類体系の入れ子構造(上位⊃下位)「この手法はどんなジャンルに属する?」
🌳 ツリーマップ分野の規模比較(面積=ボリューム)「データサイエンス全体の俯瞰像」

💡 3 つの図は同じ位置関係を別の角度から描いています。 関係マップは 階層クラスタリング隣に何が並ぶかを、 包含マップとツリーマップは 統計・データサイエンスクラスタリング → 階層クラスタリング という入れ子の位置を示します。 「クラスタリングには他に何があったか」を思い出したいときは包含マップを、 「次に何を読むか」を決めたいときは関係マップを開いてください。

🗺 概念マップ — 完全強化版

🔗 隣接手法への橋渡し

「階層クラスタリング」は単独で完結する手法ではなく、 隣接領域と連携することで真価を発揮する。

上流の距離行列 (ユークリッド・マハラノビス・コサイン) を設計し、 並列の k-means・DBSCAN・GMM と階層性の有無を比較し、 下流のデンドログラム解釈・コフェネティック相関で評価する。 階層クラスタリングは「分割数を後から決められる」点で k-means と相補的で、 探索段階での全体像把握に向く。

🌳 47都道府県のデンドログラム

🌳 47都道府県のデンドログラム

デンドログラム

SSDSE家計5項目で Ward 法を実行した結果。 似た都道府県が下から順にまとまっていく構造が一目で分かります。

📏 クラスタ間の距離 — 連結(linkage)の種類

階層クラスタリングでは「2つのクラスタ間の距離」をどう定義するかが核心:

連結法 距離の定義 特徴
単連結 (single)最も近いペアの距離細長いクラスタ、 chain 効果
完全連結 (complete)最も遠いペアの距離コンパクトなクラスタ
群平均 (average)全ペアの平均距離バランス型
Ward法クラスタ内分散の増加最小最も人気、 等サイズ
重心 (centroid)重心同士の距離逆転が起こる

↕️ 凝集型と分割型

凝集型 (bottom-up)

各点を独立クラスタとして開始 → 近いペアを順次マージ → 1つの大きなクラスタに。 一般的。

分割型 (top-down)

全データを1クラスタとして開始 → 順次分割 → 各点が独立クラスタに。 計算量大、 まれにしか使われない。

計算量

凝集型は O(n³) または O(n² log n)。 大規模データには不向き(k-means が O(n) で速い)。 n < 数千が現実的な目安。

🔎 もう一段深く — 直感・落とし穴・発展の追補

ここまでのセクションを壊さず、 「直感」「落とし穴」「発展」を SSDSE-B-2026(cp932・2 行目メタ行を除外・2023 年の 47 都道府県)の実測値で補強します。 数値はすべて本ページ掲載の Python コードをそのまま流した実行結果で、 合成データを使う箇所は「架空」と明記します。

🎨 直感の再確認 — 「近いものから順に束ねる」だけ

凝集型(agglomerative)の気持ちは驚くほど単純です。 いちばん近い 2 つのクラスタをくっつける、 これを 1 個になるまで繰り返すだけ。 くっつけた「高さ(=そのときの距離)」を縦に積み上げると、 それがそのまま デンドログラム(樹形図)になります。

⚠️ 落とし穴の実証 — 連結法を変えると県クラスタが激変する

「とりあえず ward」で済ませてはいけない理由を、 実データで見せます。 SSDSE-B-2026(2023 年・47 都道府県・数値 109 列を標準化)を、 4 つの連結法で同じく k=4 に切った結果が下表です(実測)。

連結法 k=4 のクラスタ規模 最大融合距離 コフェネティック相関 Ward との一致度 (ARI)
Ward23 / 15 / 8 / 175.830.753—(基準)
群平均 (average)38 / 7 / 1 / 144.160.9490.41
完全連結 (complete)38 / 4 / 4 / 149.910.9210.39
単連結 (single)44 / 1 / 1 / 125.530.9290.11

読みどころは 3 つあります。

その他の実務上の罠(本ページ他セクションでも既述の要点を集約):スケール敏感で標準化必須(標準化を怠ると人口のような桁の大きい変数が距離を独占)、 計算量は O(n²〜n³)で大規模に弱い、 一度併合したら分け直せない貪欲(不可逆)、 外れ値 1 個が橋になって構造を壊す外れ値感度、 そして切断高さの任意性。 いずれも「複数設定で頑健性を確認する」姿勢で回避します。

🚀 発展 — 連結法・距離・評価の使い分け

関連ページ:Ward 法 / k-means / デンドログラム / クラスタリング / 距離(距離関数) / 標準化 / スペクトラルクラスタリング

🎮 触って理解する

左の散布図に点を置くと、 右に凝集型階層クラスタリングのデンドログラム(樹形図)が即座に描かれます。 連結法を切り替え、 切断高さのスライダーを動かすと、 散布図側のクラスタ着色がリアルタイムに連動します。 距離はユークリッド距離、 併合手順は Lance-Williams 更新式で正確に計算しています(外部ライブラリ不使用・完全オフライン)。

散布図(クリックで点追加・ドラッグで移動)
点の数:0
デンドログラム(赤い破線=切断位置)
 
切断高さ で切ると クラスタ。 連結法を変えると同じ点でも樹形図の形と併合順序が変わることを確かめてください。

💡 直感:何が起きているのか

各点は最初「自分だけのクラスタ」。 毎ステップ、 いま最も近いクラスタ同士を1つに併合し、 その併合時の距離を樹形図の「高さ」として記録します。 これを点が1つのクラスタに集約されるまで繰り返すと、 全併合の履歴が樹形図になります。 樹形図を水平に切る高さを下げるほどクラスタ数 k は増え、 上げるほど減ります。 k を後から選べるのが階層クラスタリング最大の利点です。

⚠️ よくある落とし穴

🚀 発展

切断高さの決め方には、 「高さのジャンプが大きい所で切る」「各 k でシルエット係数を比較する」「解釈したい地域数に合わせる」などがあります。 併合履歴と元距離の整合度はコフェネティック相関で評価できます。 大規模化では基本実装の O(n³) が壁になり、 単連結用の SLINK(O(n²))や近似法が使われます。

関連ページ:Ward 法 / k-means / デンドログラム / クラスタリング / 距離(距離関数) / DBSCAN

🔖 キーワード索引(拡張版 — 階層クラスタリング)

結合基準・距離尺度・評価指標・大規模化トピックを網羅。

SSDSE-B 実値 単連結 完全連結 群平均 Ward 法 コフェネティック相関 シルエット係数 Calinski-Harabasz Lance-Williams 逆転現象 標準化忘れ scipy scikit-learn fastcluster