🔖 キーワード索引
「stationarity」は統計データ分析の文脈で扱う重要概念のひとつ。 本ページでは「stationarity」を取り巻く中核キーワードを以下にチップで一覧化する。 各キーワードは関連する概念・手法・道具立てを含み、 文献検索や学習計画の起点になる。
定常性時系列弱定常強定常単位根検定ADF 検定差分ARIMAトレンド除去
これらのキーワードは「stationarity の理解 → 適用 → 検証」のプロセスを構成する。 各章で詳しく解説する。
💡 30 秒で分かる結論
🍰 まずはやさしく
データの顔つきが変わらないことです。
正しい分析をするために使います。
毎日振るサイコロの結果のような状態です。
定常性の結論を短くまとめます。
- 定常性=「時系列の統計的な顔つきが時間によらず変わらない」状態
- 強定常:全ての結合分布が時間に対して不変。 厳しい条件。
- 弱定常(共分散定常):「平均・分散・自己共分散」だけが時間によらず一定。 実用ではこちら。
- 株価・GDP のようなトレンドのある系列は非定常。 差分(前期との差)を取ると定常化することが多い
- ADF 検定(拡張 Dickey-Fuller 検定)で「単位根の存在」をチェック。 $p < 0.05$ なら定常と判断
- ARIMA、 VAR、 多くの時系列モデルは定常性が前提。 前処理として必ず確認・変換する
💡 30秒で分かる結論
- 定常性 (Stationarity) は「時系列分析」カテゴリの基本概念
- 役割:時系列の平均・分散・自己共分散が時刻によらず一定であるという仮定。多くの時系列モデル(AR、 ARMA、 ARIMA)は弱定常...
- 核となる式・指標:上記「📐 数式または定義」を参照
- SSDSE-B-2026 47都道府県データで実値計算が可能(下記)
- 関連用語・派生は本ページ末尾のリンク群から辿れる
📍 あなたが今見ているもの
🍰 まずはやさしく
分析のスタート地点となる考え方です。
データの罠にハマらないために使います。
株価のように右肩上がりのデータが例です。
分析でどう使われるかを確認します。
時系列分析の論文や教科書で、 こんな表現を見たはずです:
「原系列は非定常(ADF 検定: p = 0.421)であったため、
1 階差分を取ったところ定常性が確認された(ADF 検定: p < 0.001)。
定常化した差分系列に対して ARMA(2,1) モデルをあてはめた」
この「定常性」が時系列分析の出発点。 株価・GDP・物価指数のようなトレンド・季節性・変化点を持つ系列は非定常で、 そのまま分析すると「見せかけの回帰(spurious regression)」などの罠に陥ります。 ARIMA や VAR、 状態空間モデルの理論的基盤として、 まず定常性を理解することが必須です。
📍 あなたが今見ているもの(文脈ボックス)
このページは 定常性 (Stationarity) を解説する用語ページです。
カテゴリ:時系列分析
ジャストインタイム型データサイエンス教育の一環として、必要な時に参照し、関連概念とともに学べる構成になっています。
基準ページ:correlation.html(149KB、12セクション、SSDSE-B 実値計算)と同等以上の品質を目指しています。
🎨 直感で掴む — 「時間が経っても同じ顔つき」
🍰 まずはやさしく
時間をずらしても同じに見えることです。
データの性質を直感的に掴むために使います。
気温の季節的な変化は定常ではありません。
見た目でどう見分けるかを学びます。
定常な系列 vs 非定常な系列
「定常」とは、 系列を時間軸でずらしても 「統計的に同じデータ」に見える こと。 具体例で:
| 系列の例 | 定常 / 非定常 | 理由 |
| サイコロを毎日振った結果 | 定常 | 平均 3.5、 分散一定、 時間によらず同じ |
| 白色雑音(ノイズ) | 定常 | 平均 0、 分散 $\sigma^2$、 自己相関 0 |
| 日本の GDP(過去 70 年) | 非定常 | 右肩上がりのトレンド/戦後成長/バブル等 |
| 日経平均株価(過去 30 年) | 非定常 | トレンド・ボラティリティ変動 |
| 気温の日次データ | 非定常(季節性) | 夏は高く、 冬は低い周期パターン |
| 気温データから季節成分を除いた残差 | 準定常 | 平均は一定、 分散はほぼ一定 |
| 株価の日次収益率(log return) | 準定常 | 差分を取ったので、 トレンドが除去される |
視覚的判定法
- 系列プロット:横軸時間、 縦軸値。 「上昇/下降トレンド」「水準シフト」があれば非定常を疑う
- 分割平均・分割分散:系列を前半・後半に分けて平均・分散を計算。 大きく違えば非定常
- 自己相関関数(ACF):定常系列なら ACF はゆっくり 0 に減衰。 非定常では長く高い値が続く
時間軸ずらしの直感
定常系列を「時刻 100 を中心とした 50 個」と「時刻 200 を中心とした 50 個」に分けたとき、 ヒストグラムを描くとほぼ同じ形。 非定常系列ではこれが全く違う形になります。
🎨 直感で掴む
時系列の平均・分散・自己共分散が時刻によらず一定であるという仮定。多くの時系列モデル(AR、 ARMA、 ARIMA)は弱定常性を前提に成立する。トレンドや周期成分を持つ生時系列は通常非定常。
| 場面 | 使い方 |
| 探索的データ分析 | 分布や関係性の最初の確認 |
| モデル比較 | 仮定の妥当性を裏付ける指標として |
| レポート作成 | 標準的な要約統計量・指標として明記 |
🎨 もう一歩踏み込む直感
「定常性」を本当に使いこなすには、 教科書的な定義だけでは足りません。 ここでは現場で役立つ追加の比喩・実例を整理します。 上の「🎨 直感で掴む」を補強する内容です。
- 「常に同じ気候」のイメージ:定常な時系列は、 どの 10 年を切り取っても平均・分散・自己相関が似た形。 非定常は「夏と冬で性格が違う」状態。
- 強定常 vs 弱定常:強定常は全分布が時間不変、 弱定常は平均・分散・自己共分散のみ時間不変。 実務はほぼ弱定常で十分。
- SSDSE-B の例:47 都道府県の人口推移(A1101、 2012-2023)は明らかに非定常(東京は 1,323.4 万→1,408.6 万人と増、 北海道は 546.5 万→509.2 万人と減)。 差分を取ればトレンドは弱まるが、 実測では 12 時点の短さと減少の加速により 5% で定常化する県は 2 県にとどまる。
💡 学習のコツ:3 つの直感がそれぞれ独立した「引き出し」になります。 場面に応じて、 一番フィットする比喩を取り出せるように、 例を 1-2 個自分の言葉で言い換えてみると定着します。
🎨 概念図で押さえる
弱定常性は「平均・分散・自己共分散が時刻に依存しない」状態。 ここでは概念図で「定常・非定常・差分定常」の違いを視覚化する。
図 A. 左:弱定常過程は赤の点線(平均レベル)周りで振動する。 右:非定常過程はトレンドを伴って平均が時間と共に上昇する。
図 B. ACF(自己相関関数)の減衰速度から定常・非定常を見抜く。 急速減衰は定常の証拠。 ゆっくり減衰なら単位根を疑う。
図 C. 1 階差分で非定常 I(1) を定常 I(0) に変換する流れ。 SSDSE-B-2026 の実測では全国死亡数(A4200 合計)がこの典型例(レベル p = 0.991 → 差分後 p = 0.0017)。 県別人口は減少の加速により差分でも定常化しにくい。
🎮 触って理解する
スライダーで時系列にトレンド成分・分散変化・季節成分を加え、 平均や分散が時間とともにどう崩れるかを体感しましょう。 白色雑音は固定シードで生成しているので、 スライダーを 0 に戻せば必ず同じ定常系列に戻ります。 「差分をとる」ボタンでトレンドが除去され、 非定常が定常化する様子も確認できます(1 階差分 $\Delta X_t = X_t - X_{t-1}$)。
図の上をドラッグ/マウスオーバーすると各時点の値を表示
| 区間 | 平均 (mean) | 分散 (var) |
| 前半(時刻 前 50%) | – | – |
| 後半(時刻 後 50%) | – | – |
| 差(後半 − 前半) | – | – |
判定の目安:定常(平均・分散が時間で不変)
※ 前半・後半の平均差と分散比による簡易目安です。 正式には ADF 検定などを使います(下記 Python 実装を参照)。
💡 直感 — 「統計的性質が時間で変わらない」
定常とは、 系列を時間軸のどこで切り取っても平均・分散・自己共分散が同じに見えること。 上の図でトレンドを 0、 分散変化を 0、 季節成分を 0 にすると、 前半と後半の平均・分散がほぼ一致し、 帯(移動平均・移動分散)も水平に伸びます。 逆にトレンドを上げると後半の平均だけが持ち上がり、 分散変化を上げると後半の帯だけが広がります —— これが非定常の正体です。
⚠️ よくある落とし穴 — 「見せかけの回帰」
トレンドを持つ 2 本の非定常系列は、 中身が無関係でも強い相関・高い $R^2$ を示してしまいます(spurious regression、 Granger & Newbold 1974)。 上の図で「差分をとる」を押すとトレンドが消え、 前半・後半の平均差が一気に縮むことを確認してください。 回帰の前に定常化(差分化)する——これが鉄則です。 なお分散変化(不均一分散)は差分だけでは消えないため、 対数変換や GARCH 系のモデルが必要になる点も図で体感できます。
🚀 発展 — 単位根検定・和分・ARIMA
「差分をとれば定常になる」系列は和分過程と呼ばれ、 $d$ 回の差分で定常化するなら $I(d)$ と書きます(レベルが非定常・1 階差分で定常なら $I(1)$)。 非定常かどうかは単位根検定(ADF・KPSS・Phillips-Perron)で判定し、 定常系列に対して自己回帰・移動平均を当てはめるのが arima.html(ARIMA$(p,d,q)$)です。 差分次数 $d$ は「何回差分すれば定常になるか」に対応します。 関連して time-series.html・autocorrelation.html も参照してください。 見せかけの回帰の一般論は regression-analysis.html にまとめてあります。
📐 数式 — 定常性の定義
🍰 まずはやさしく
定常性を数式で決めたルールです。
厳密に判定するために使います。
平均や分散(データの散らばり)で考えます。
2 種類の定義について詳しく読みます。
強定常(厳密定常、 Strictly Stationary)
弱定常(共分散定常、 Weakly / Covariance Stationary)
強定常 ⊃ 弱定常 …とは限らない
普通は強定常 ⇒ 弱定常 だが、 厳密には:
- 強定常 + 2 次モーメント有限 ⇒ 弱定常
- 分散が無限の強定常系列(重い裾の分布等)は弱定常ではない
- 逆は成立しない(弱定常でも結合分布が違うことはある)
単位根と非定常
AR(1) モデル $y_t = \phi y_{t-1} + \varepsilon_t$ について:
- $|\phi| < 1$:定常(過去の影響が減衰する)
- $\phi = 1$:単位根(unit root)を持つ → ランダムウォーク、 非定常
- $|\phi| > 1$:発散(非現実的)
トレンドと差分
非定常系列 $y_t$ から定常系列を抽出する典型手法:
拡張 Dickey-Fuller 検定(ADF)
「単位根が存在する(非定常)」を帰無仮説とする検定:
$p < 0.05$ なら「単位根なし」=「定常」と結論。
📐 数式または定義
定常性 (Stationarity) の中心となる数式・定義は次の通りです。
$$ E[X_t]=\mu, \quad \mathrm{Var}(X_t)=\sigma^2, \quad \mathrm{Cov}(X_t, X_{t+h})=\gamma(h) $$
📐 もう一段の数式表現
「定常性」を厳密に書き下すと、 以下の形になります。 既出の数式と合わせて読むと、 概念の骨格が見えてきます。
📌 ポイント:数式を見たら各記号の単位・値域を声に出して確認してみると、 抽象度がぐっと下がります。 「変数 X は連続値、 0 以上、 単位は人」のように。
🔬 数式を「言葉」で読み解く
🔬 数式を言葉で読み解く
- μ:時間に依存しない平均
- σ²:時間に依存しない分散
- γ(h):ラグ h のみに依存する自己共分散(t に依存しない)
🔬 数式を言葉で読み解く(拡張版)
追加の数式についても、 各記号を 1 つずつ「日本語」で言い換えます。 「数式を音読する」とは、 こういう作業のことです。
- 左辺
- 本用語が「何を定義しようとしているのか」を端的に表す。 ここを最初に押さえる。
- 右辺の主要項
- 左辺を成立させるための構成要素。 各項の符号・順序・係数に意味がある。
- 下付き・上付き添字
- 時刻・サンプル番号・次元など、 「どの集合の上で操作するか」を示す重要情報。 見落とすと意味が反転することも。
- 演算子(Σ, ∫, ∏ など)
- 「すべての要素を集約する」操作。 範囲(i=1..n など)を必ず一緒に読む。
🔬 数式を言葉で読み解く(深掘り 800 字版)
弱定常性の定義 $E[X_t] = \mu,\ V[X_t] = \sigma^2,\ \mathrm{Cov}(X_t, X_{t+h}) = \gamma(h)$ を、 一語ずつほどいて読みます。 $E[X_t] = \mu$:時点 $t$ がどこであっても、 期待値(平均)は同じ定数 $\mu$ という条件。 これは「時間が経っても確率変数の真の中心は動かない」という強い宣言です。 SSDSE-B-2026 の全国出生数(A4101 の 47 都道府県合計)は 2012 年度の約 103.7 万人から 2023 年度の約 72.7 万人へ減少していますので、 この式に当てはめると左辺の平均は時点 $t$ で異なります。 したがってレベルでは非定常です。 $V[X_t] = \sigma^2$:分散も時点に依存しないという条件。 もし株価のように「平穏な時期」と「ボラティリティの高い時期」が交互に来るなら、 この式は破れます(ARCH/GARCH モデルが扱う対象)。 $\mathrm{Cov}(X_t, X_{t+h}) = \gamma(h)$:時間差 $h$ だけに依存し、 絶対時刻 $t$ には依存しない自己共分散構造。 言い換えると「明日と今日の関係性は、 100 年前の明日と今日の関係性と同じ」と仮定します。 この自己共分散関数 $\gamma(h)$ を $\gamma(0)$ で割れば自己相関関数 $\rho(h)$ になります。 弱定常性が成立すると、 Wold の分解定理によって「任意の弱定常過程は決定論的成分と MA(∞) 成分の和に書ける」と保証されます。 これが ARMA モデルの土台。 さらに強定常性(同時分布が時間シフトで不変)は弱定常より強い条件で、 正規時系列なら一致しますが、 非正規の場合は一致しません。 実務では「弱定常で十分」と割り切るのが一般的です。 なお SSDSE-B-2026 に GDP や県内総生産の列は存在しません。 SSDSE-B-2026 の実在列、 例えば全国死亡数(A4200 合計)の 1 階差分を扱う場合、 ADF 検定で p < 0.05(実測 p = 0.0017)となれば弱定常と判定し、 ARMA や VAR を当てはめる流れになります。
🎯 用語固有 narration ブロック — 定常性 × SSDSE-B-2026
🎯 ねらい:定常性は ARIMA のような時系列モデルの大前提。 SSDSE-B-2026 の県別人口時系列でレベル非定常 → 1 階差分定常へ移ることで、 予測モデルが安全に動く土台を作ります。
📥 入力:47 都道府県 × 12 年度(2012-2023)の年次総人口データ、 形状 (47, 12) の DataFrame。 SSDSE-B-2026 の A1101 列を pivot した形を想定します。
📤 出力:各県の ADF 統計量・p 値・1 階差分後の p 値・定常判定(True/False)が並ぶ DataFrame。 さらに地図上で「定常 vs 非定常」県を色分け表示。
💬 解釈:実測(各県 12 時点、 maxlag=1)では、 レベルの ADF で単位根を棄却できない県が 47 県中 44 県(p > 0.10)と大半が非定常。 2012-2023 は人口減少が加速した期間のため、 1 階差分後も 5% で定常と判定されるのは 2 県(山梨・熊本)にとどまります。 短い系列では「差分すれば必ず定常化する」とは限らない、 という実例です。
🧮 実データで計算してみる — SSDSE-B-2026 年次データ
SSDSE-B-2026 は 2012〜2023 年度の 12 年 × 47 都道府県のパネルデータで、 実在列(A1101 総人口、 A4101 出生数、 A4200 死亡数など)から年次時系列が取れます。 ここでは「日本全国の総人口(A1101 の 47 都道府県合計、 2012〜2023 年度)」を題材にします。 以下の数値はすべて実 CSV から計算した実測値です。
ステップ 1:原系列のプロット観察
全国総人口(A1101 合計)は 2012 年度の 12,758.9 万人から 2023 年度の 12,435.3 万人へと一貫して減少。 これは明らかに非定常(時間とともに平均が変わる)。
ステップ 2:基本統計の分割比較
| 期間 | 平均人口(万人) | 標準偏差(万人) |
| 2012〜2017 | 12,721.7 | 24.9 |
| 2018〜2023 | 12,570.8 | 94.3 |
前半と後半で平均が約 151 万人違い、 標準偏差も約 4 倍に拡大。 平均・分散とも時間とともに変わっており、 非定常と判断できる。
ステップ 3:差分系列で定常化を試みる
STEP 1
1 階差分を取る
$\Delta y_t = y_t - y_{t-1}$(前年度差、 実測値)
・2013:$\Delta = -17.5$ 万人
・2016:$\Delta = -5.1$ 万人
・2020:$\Delta = -40.9$ 万人
・2021:$\Delta = -64.6$ 万人
・2023:$\Delta = -59.3$ 万人
差分系列は水準トレンドを除去するが、 減少幅そのものが年々拡大している(減少の加速)→ 完全に定常ではない
ステップ 4:ADF 検定の実測結果
STEP 2
原系列と差分系列の ADF 検定(maxlag=1, autolag='AIC')
・原系列 $y_t$(全国総人口):ADF 統計量 = 4.99、 $p = 1.000$ → 非定常(H₀ 棄却できず)
・1 階差分 $\Delta y_t$:ADF 統計量 = −0.21、 $p = 0.937$ → まだ非定常(減少が加速しているため)
2012-2023 の総人口は単純な I(1) ではない。 一方、 同じ CSV の全国死亡数(A4200 合計)はレベルで $p = 0.991$、 1 階差分で ADF 統計量 = −3.95、 $p = 0.0017$ となり、 I(1)(1 階差分で定常化)の実例になる。
都道府県横断データでの「定常性類似概念」
SSDSE-B-2026 を単年度(例:2023 年度の 47 都道府県)で切り出すとクロスセクションになり、 時間軸はありません。 その場合の「定常性類似」の概念として:
- 空間定常性:地理的位置によらず統計的性質が一定(地域差なし)
- 群間均質性:群を変えても分布が同じ(例:都道府県別の消費支出 L3221 の分布は地方ブロックによらず同じか)
これらは時系列の定常性と数学的に同型の概念です。
🧮 実値で計算してみる(SSDSE-B-2026)
独立行政法人統計センターが公開する SSDSE-B-2026.csv(2012〜2023 年度 × 47 都道府県)を用いた具体的計算例を示します。
SSDSE-B-2026 の各年度の「総人口」(A1101 の全国合計)を時系列とみなすと、明らかな下降トレンドがあり ADF 検定の p 値 = 1.000 > 0.05 で非定常(実測)。1 階差分でも p 値 = 0.937 と定常化しない(減少の加速)。一方、全国死亡数(A4200 合計)は 1 階差分で p 値 = 0.0017 となり定常化する(差分定常 I(1) 過程の実例)。
| 項目 | 値・指標 |
| データ件数 | 12 年度 × 47 都道府県 = 564 行 |
| 対象指標 | 総人口 A1101・出生数 A4101・死亡数 A4200 など |
| 計算結果 | 上記説明参照(すべて実 CSV から算出) |
🧮 SSDSE-B-2026 で追加実値計算
『教育用標準データセット SSDSE-B-2026』(47 都道府県、 約 100 変数)を題材に、 「定常性」を実際の数値で確認します。 数式が「動く感覚」を得ることが目的です。
| 対象 |
計算結果 |
| SSDSE-B-2026 / 全国出生数(A4101 合計、 2012-2023)のラグ 1 自己相関 | ρ₁ = 0.754(実測、 高い慣性) |
| 出生数の差分系列 ΔY_t = Y_t − Y_{t−1} の平均 | −2.8 万人/年(実測。 0 でない=下降ドリフトあり) |
| 全国死亡数(A4200 合計)の 1 階差分の ADF 検定 p 値 | p = 0.0017 < 0.05 で帰無仮説『単位根あり=非定常』を棄却(実測) |
📚 補足:上の値は SSDSE-B-2026 をローカルに読み込んで再現できます。 引数のパスやファイル名は環境に合わせて変更してください。 同じ概念を異なるデータ(例:金融時系列、 売上データ)に当てはめると、 用語の普遍性が体感できます。
🧮 数式に値を入れて手で計算する: 定常性の判定
合成時系列の前半/後半平均と分散を比較する。
Step 1: 2 期間統計
| 期間 | 平均 | 分散 |
| 前半 | 10.2 | 1.5 |
| 後半 | 10.5 | 1.6 |
Step 2: 判定
平均差 = 0.3, 分散差 = 0.1 → 小 → 定常と判断
非定常時系列は差分化必要
🐍 Python で再現
| import numpy as np
m_diff = abs(10.5 - 10.2)
v_diff = abs(1.6 - 1.5)
print(f"平均差: {m_diff:.1f}, 分散差: {v_diff:.1f}")
print(f"定常: {m_diff < 1 and v_diff < 1}")
|
📤 実行結果
平均差: 0.3, 分散差: 0.1
定常: True
💬 手計算 (Step 2) 定常と Python 出力が完全一致。
🐍 Python 実装 — statsmodels の ADF 検定
1. 基本:ADF 検定の実行
🎯 このコードでやること: SSDSE-B-2026 で時系列 (全国総人口の年次推移) を作り、 ADF 単位根検定で定常性を判定
📥 入力例 (SSDSE-B-2026):
全国総人口 = A1101 の 47 都道府県合計 (2012-2023 年度, 年次)
y = 時系列 (長さ 12)
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24 | import pandas as pd
import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt
from statsmodels.tsa.stattools import adfuller
# SSDSE-B-2026 を読込(先頭列 'SSDSE-B-2026' が年度)
df = pd.read_csv('data/raw/SSDSE-B-2026.csv', encoding='cp932', skiprows=[1])
# 全国合計の年次時系列を作成(例:総人口 A1101)
y = df.groupby('SSDSE-B-2026')['A1101'].sum().sort_index().values
# ADF 検定(n=12 と短いので maxlag は小さく)
result = adfuller(y, maxlag=1, autolag='AIC')
print(f"ADF Statistic: {result[0]:.4f}")
print(f"p-value : {result[1]:.4f}")
print(f"Lags used : {result[2]}")
print(f"Critical values:")
for key, val in result[4].items():
print(f" {key}: {val:.4f}")
# 判定
if result[1] < 0.05:
print("→ 定常(H₀ を棄却)")
else:
print("→ 非定常(H₀ を棄却できず)")
|
📤 実行結果 (実測):
ADF 統計量 = 4.9882, p-value = 1.0000
臨界値: 1% = -4.223, 5% = -3.189, 10% = -2.730
→ p > 0.05 で帰無仮説『単位根あり = 非定常』棄却できず
→ 原系列 y (全国総人口) は非定常
💬 読み方: ADF 検定は帰無『単位根あり (非定常)』。 p > 0.05 で棄却できない → 非定常と判定 → 差分が必要。 ARIMA や VAR の前に必ず実施する『前提チェック』。
2. 差分を取って再検定
🎯 このコードでやること: 1 階差分 (Δy = y_t - y_{t-1}) を取って再び ADF 検定し、 定常になったか確認
📥 入力例 (SSDSE-B-2026):
y_diff = np.diff(y) (長さ 11)
| # 1 階差分
y_diff = np.diff(y)
result_diff = adfuller(y_diff, maxlag=1, autolag='AIC')
print(f"After 1st difference:")
print(f"ADF Statistic: {result_diff[0]:.4f}")
print(f"p-value : {result_diff[1]:.4f}")
|
📤 実行結果 (実測):
総人口 A1101 の 1 階差分: ADF 統計量 = -0.2147, p-value = 0.9367
→ p > 0.05 で棄却できず → 差分後も非定常 (減少が加速しているため)
参考: 全国死亡数 A4200 の 1 階差分: ADF 統計量 = -3.9529, p-value = 0.0017
→ p < 0.01 で帰無棄却 → こちらは差分で定常化 (I(1))
💬 読み方: 1 階差分で定常化すれば I(1) (1 階和分過程)、 2 階差分なら I(2)。 多くの経済時系列は I(1) で、 ARIMA(p,1,q) の d=1 として扱う。 ただし実測の総人口のように減少が加速する系列では 1 階差分でも定常化しないことがある。 差分しすぎは情報損失なので最小限に。
3. KPSS 検定(補完的検定)
ADF と逆の帰無仮説:「定常である」が H₀。 ADF と組み合わせて判定するのが標準。
🎯 このコードでやること: KPSS 検定で『帰無仮説=定常』として ADF と二重チェック
📥 入力例 (SSDSE-B-2026):
y = 全国総人口 (A1101 合計, 長さ 12)
| from statsmodels.tsa.stattools import kpss
kpss_stat, kpss_p, lags, crit = kpss(y, regression='c', nlags='auto')
print(f"KPSS Statistic: {kpss_stat:.4f}")
print(f"p-value : {kpss_p:.4f}")
# 判定:p < 0.05 なら H₀ 棄却=非定常
|
📤 実行結果 (実測):
総人口 A1101: KPSS 統計量 = 0.6321, p-value = 0.0197
→ p < 0.05 で帰無『定常』棄却 → 非定常 (ADF と一致)
総人口の 1 階差分: KPSS 統計量 = 0.5004, p = 0.0416 → 差分後もなお非定常
参考: 死亡数 A4200 の 1 階差分: KPSS 統計量 = 0.2696, p > 0.10 → 定常
💬 読み方: ADF と KPSS は帰無仮説が逆。 両方の検定で『非定常』が一致すると確信が高い。 一方が定常で他方が非定常なら、 トレンド項や定数項の指定を見直す。 ロバスト性のため両検定併用が定石。
4. ACF と PACF の可視化
🎯 このコードでやること: ACF・PACF プロットを描いて自己相関の構造を可視化し AR/MA 次数を推定
📥 入力例 (SSDSE-B-2026):
y = 全国総人口 (長さ 12), y_diff = 1 階差分後の系列 (長さ 11)
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14 | from statsmodels.graphics.tsaplots import plot_acf, plot_pacf
fig, axes = plt.subplots(2, 2, figsize=(14, 8))
# 原系列(n=12 なので lags は小さく)
plot_acf(y, lags=4, ax=axes[0, 0], title='ACF (original)')
plot_pacf(y, lags=4, ax=axes[0, 1], title='PACF (original)')
# 差分系列
plot_acf(y_diff, lags=4, ax=axes[1, 0], title='ACF (diff)')
plot_pacf(y_diff, lags=4, ax=axes[1, 1], title='PACF (diff)')
plt.tight_layout(); plt.show()
# 非定常系列の ACF はゆっくり減衰、 定常化したら速やかに 0 に
|
📤 実行結果 (実測):
原系列 ACF: lag1 = 0.692, lag2 = 0.410, lag3 = 0.169 (ゆっくり減衰 → 非定常の兆候)
差分系列 ACF: lag1 = 0.744 (差分後も高い自己相関が残る)
→ 差分系列にも構造が残る = 総人口は単純な I(1) でない、 という ADF の結果と整合
💬 読み方: ACF (自己相関) で MA 次数、 PACF (偏自己相関) で AR 次数を判断するのが Box-Jenkins 法の基本。 ACF が急減し PACF が lag k でストンと落ちれば AR(k)。 逆なら MA。
5. ローリング平均・分散の可視化
🎯 このコードでやること: ADF・KPSS・Ljung-Box (残差ホワイトノイズ) の 3 検定をまとめて実行する自前関数
📥 入力例 (SSDSE-B-2026):
y_series = pd.Series(y) # 全国総人口 (長さ 12)
y_series = pd.Series(y)
roll_mean = y_series.rolling(window=5).mean()
roll_std = y_series.rolling(window=5).std()
plt.figure(figsize=(10, 5))
plt.plot(y_series, label='Original')
plt.plot(roll_mean, label='Rolling mean', color='red')
plt.plot(roll_std, label='Rolling std', color='black')
plt.legend(); plt.title('Visual stationarity check')
plt.show()
# 定常なら rolling mean と rolling std は時間によらずほぼ水平
📤 実行結果 (実測、 全国死亡数 A4200 の 1 階差分に適用):
ADF: stat=-3.9529, p=0.0017 → 定常
KPSS: stat= 0.2696, p>0.10 → 定常
Ljung-Box: Q(2)=1.457, p=0.483 → 自己相関なし (ホワイトノイズ的)
→ 3 検定すべて合格、 モデル適合 OK
💬 読み方: Ljung-Box は『残差に自己相関が残っていないか』のチェック。 残差がホワイトノイズになっていれば、 モデルが時系列の構造を完全に取り尽くしている (定常モデルとして適切)。
6. AIC で ARIMA 次数を選ぶ
🎯 このコードでやること: statsmodels の ARIMA で複数の次数 (p, d, q) をあてはめ、 AIC 最小のモデルを選ぶ(pmdarima.auto_arima の手動版)
📥 入力例 (SSDSE-B-2026):
y = 全国死亡数 (A4200 の 47 都道府県合計, 2012-2023, 長さ 12)
探索範囲: (p, q) ∈ {0, 1}, d = 1 (ADF/KPSS の結果から)
| from statsmodels.tsa.arima.model import ARIMA
y = df.groupby('SSDSE-B-2026')['A4200'].sum().sort_index().values.astype(float)
for order in [(0,1,0), (1,1,0), (0,1,1), (1,1,1)]:
model = ARIMA(y, order=order).fit()
print(f"ARIMA{order} AIC={model.aic:.1f}")
# 差分次数 d は ADF/KPSS で決め、 p, q を AIC で比較する
|
📤 実行結果 (実測):
ARIMA(0, 1, 0) AIC=269.8 ← best
ARIMA(1, 1, 0) AIC=271.6
ARIMA(0, 1, 1) AIC=271.7
ARIMA(1, 1, 1) AIC=273.7
→ d=1 (1 階差分で定常)、 n=12 と短いためドリフト付きランダムウォークが最良
💬 読み方: 差分次数 d は ADF/KPSS の結果から、 p, q は AIC で選ぶ。 サンプルが短いと複雑なモデルは AIC で不利になり、 単純なモデルが選ばれやすい。 最終的に残差診断と PACF/ACF で確認する。 大規模データでは pmdarima.auto_arima による自動探索も便利。
🐍 Python 実装
📥 入力例(SSDSE-B-2026 の 2023 年・47 都道府県から 3 行)
都道府県 A1101(総人口)
北海道 5,092,000
東京都 14,086,000
沖縄県 1,468,000
…(全 47 行)
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15 | import pandas as pd
import numpy as np
from statsmodels.tsa.stattools import adfuller, kpss
df = pd.read_csv('data/raw/SSDSE-B-2026.csv', encoding='cp932', skiprows=[1])
# 年度 (先頭列 'SSDSE-B-2026') ごとに全国合計して時系列化 (2012-2023, 長さ 12)
ts = df.groupby('SSDSE-B-2026')['A1101'].sum().sort_index().values
print('ADF統計量:', adfuller(ts, maxlag=1)[0], 'p:', adfuller(ts, maxlag=1)[1])
print('KPSS統計量:', kpss(ts, regression='c', nlags='auto')[0])
ts_diff = np.diff(ts)
print('差分後 ADF p:', adfuller(ts_diff, maxlag=1)[1])
# 実行結果 (実測): ADF統計量 4.9882, p 1.0000 / KPSS統計量 0.6321
# 差分後 ADF p: 0.9367 (総人口は差分でも定常化しない)
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📤 実行例(実測)
ADF統計量: 4.988160428700185 p: 1.0
KPSS統計量: 0.632060697132273
差分後 ADF p: 0.9367434998790608
上記コードは pandas / numpy / statsmodels の標準的なライブラリを用い、SSDSE-B-2026.csv を直接読み込んで計算します(合成データ不使用)。47 都道府県のクロスセクションをそのまま時系列とみなすのは誤りで、必ず年度で集計(または 1 県を抽出)して時系列を作ります。
🐍 Python 実装(拡張版)
統計検定 ADF (Augmented Dickey-Fuller) で定常性を検定し、 差分系列で非定常の解消を試みる一連の流れを実装します。 SSDSE-B-2026 の出生数(A4101 の全国合計、 2012-2023 年度)を題材にします。
📥 入力例(SSDSE-B-2026 の 2023 年・47 都道府県から 3 行)
都道府県 A4101(出生数)
北海道 24,430
東京都 86,348
沖縄県 12,549
…(全 47 行)
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16 | import pandas as pd
from statsmodels.tsa.stattools import adfuller
df = pd.read_csv('data/raw/SSDSE-B-2026.csv', encoding='cp932', skiprows=[1])
y = df.groupby('SSDSE-B-2026')['A4101'].sum().sort_index() # 全国出生数の年次系列 (2012-2023)
# ADF 検定(帰無仮説:単位根あり = 非定常)
result = adfuller(y, maxlag=1, autolag='AIC')
print(f'ADF統計量: {result[0]:.4f}')
print(f'p値: {result[1]:.4f}')
print(f'臨界値: {result[4]}')
# 非定常なら差分を取る
y_diff = y.diff().dropna()
result_diff = adfuller(y_diff, maxlag=1)
print(f'差分後 p値: {result_diff[1]:.4f}')
|
📤 実行結果 (実測):
ADF統計量: 2.2201
p値: 0.9989 → 非定常(帰無棄却できず)
臨界値: 1%=-4.223, 5%=-3.189, 10%=-2.730
差分後 p値: 0.0753 → 5% では棄却できず、 10% 水準でようやく定常寄り
差分(diff)で定常化できる系列は I(1)(一次和分)と呼ばれ、 ARIMA(p,1,q) の対象。 2 階差分で定常化するなら I(2)。 実測の出生数は減少ペース自体が変化しているため 1 階差分でも 5% では定常と言い切れない(2 階差分では p = 0.0015 で定常化)。 n=12 の短い系列では検出力も低い点に注意。
🐍 定常性 実データ追補 (SSDSE-B-2026)
本セクションは SSDSE-B-2026 の年次系列を用い、 定常性チェックの 4 ステップ (平均・分散の時系列推移 → ADF 検定 → 差分系列 → KPSS 検定) を確認する。 各ブロックは「やること → 入力 → 実行例 → 結果の読み方」 を必ず併記。
① 平均と分散の年次推移を見る (時系列プロットの数値版)
このコードでやること: SSDSE-B-2026 の総人口 (A1101) を全国 47 都道府県分集計し、 年次ごとの平均・分散を比較して定常性の最初の手掛かりを取る。
📥 入力データ: data/raw/SSDSE-B-2026.csv (12 年 × 47 都道府県)
| import pandas as pd
import numpy as np
df = pd.read_csv('data/raw/SSDSE-B-2026.csv', encoding='cp932', skiprows=[1])
agg = df.groupby('SSDSE-B-2026')['A1101'].agg(['mean', 'std'])
print(agg.head(6))
print('---')
print(agg.tail(3))
|
📤 実行例:
mean std
SSDSE-B-2026
2012 2714659.6 2693848.2
2013 2710936.2 2703207.5
2014 2707191.5 2714414.3
2015 2704143.5 2728692.7
2016 2703063.8 2745332.8
2017 2700425.5 2760661.7
---
mean std
SSDSE-B-2026
2021 2670212.8 2791885.6
2022 2658425.5 2793536.0
2023 2645808.5 2797551.4
💬 結果の読み方: 47 都道府県平均の人口は 12 年で約 6.9 万人減と年々減少し、 県間のばらつき(std)は約 269 万人から約 280 万人へ微増(東京一極集中)。 一目で「平均が時間に依存する = 非定常」 という性質が確認できる。 これが ADF 検定や差分の必要性につながる。
② ADF 検定 (拡張ディッキー-フラー検定)
このコードでやること: 全国平均人口の年次系列に対し statsmodels.adfuller を適用し、 単位根の有無を p 値で判定する。
📥 入力データ: agg['mean'] (長さ 12 の年次系列)
| from statsmodels.tsa.stattools import adfuller
series = agg['mean'].values
result = adfuller(series, maxlag=1, autolag='AIC')
print('ADF 統計量:', round(result[0], 4))
print('p 値 :', round(result[1], 4))
print('1% 臨界値 :', round(result[4]['1%'], 4))
print('5% 臨界値 :', round(result[4]['5%'], 4))
print('判定 :', '定常' if result[1] < 0.05 else '非定常 (単位根あり)')
|
📤 実行例:
ADF 統計量: 4.9882
p 値 : 1.0
1% 臨界値 : -4.223
5% 臨界値 : -3.189
判定 : 非定常 (単位根あり)
💬 結果の読み方: p 値 1.00 は 5% 水準を大きく上回り、 「単位根あり = 非定常」 を棄却できない。 すなわち系列は非定常。 12 年の平均推移を見ても明確な下方トレンドなので、 ADF 検定の結果と直感が一致している。
③ 1 階差分で定常化を試みる
このコードでやること: 系列を 1 階差分 (Δyt = yt - yt-1) で変換し、 ADF 検定を再実行する。
📥 入力データ: series (12 点)、 差分後は 11 点
| d1 = np.diff(series)
print('差分系列の長さ:', len(d1))
print('差分の平均 :', round(d1.mean(), 2))
print('差分の標準偏差:', round(d1.std(ddof=1), 2))
result_d = adfuller(d1, maxlag=1, autolag='AIC')
print('ADF 統計量:', round(result_d[0], 4))
print('p 値 :', round(result_d[1], 4))
print('判定 :', '定常' if result_d[1] < 0.05 else '非定常')
|
📤 実行例:
差分系列の長さ: 11
差分の平均 : -6259.2
差分の標準偏差: 4554.1
ADF 統計量: -0.2147
p 値 : 0.9367
判定 : 非定常
💬 結果の読み方: 1 階差分後も p 値は 0.94 と高く、 5% 水準で定常とはいえない。 2012-2023 は人口減少が加速した期間で、 差分系列(=年間減少数)自体が拡大トレンドを持つためである。 「差分すれば必ず定常化する」わけではない実例。 同じ手順を全国死亡数(A4200 合計)に適用すると 1 階差分で p = 0.0017 となり定常化し、 こちらが ARIMA (AR-I-MA) における I (Integrated = 差分) の役割の素直な実例になる。
④ KPSS 検定で「定常性そのもの」 を直接検定する
このコードでやること: ADF は「単位根を帰無仮説」 とするのに対し、 KPSS は「定常を帰無仮説」 とする。 両方を併用するのが標準実務。
📥 入力データ: series (元系列) と d1 (差分系列)
| from statsmodels.tsa.stattools import kpss
import warnings
warnings.filterwarnings('ignore')
for name, s in [('元系列', series), ('差分系列', d1)]:
stat, p, lag, crit = kpss(s, regression='c', nlags='auto')
judge = '定常' if p > 0.05 else '非定常 (帰無棄却)'
print(f'{name}: KPSS={stat:.4f} p={p:.4f} -> {judge}')
|
📤 実行例:
元系列: KPSS=0.6321 p=0.0197 -> 非定常 (帰無棄却)
差分系列: KPSS=0.5004 p=0.0416 -> 非定常 (帰無棄却)
💬 結果の読み方: KPSS でも元系列・差分系列とも「定常」という帰無仮説が 5% で棄却され、 ADF の結論(どちらも非定常)と一致した。 両検定が一致すると判定の確信度は高い。 参考に全国死亡数(A4200 合計)の 1 階差分では KPSS p > 0.10 かつ ADF p = 0.0017 で、 両検定とも「定常」を支持する。 実務では ADF と KPSS を併記し、 ARIMA の階差階数 (d) は両方が「定常」 と認める最小階数を選ぶのが慣習。
⚠️ 落とし穴
① 非定常系列での「見せかけの回帰」
非定常な 2 つの時系列(例:日本の GDP とアメリカの GDP)を単純に回帰すると、 無関係でも高い $R^2$ が出る。 これが見せかけの回帰(spurious regression)。 必ず定常化(差分化)してから回帰する。 Granger と Newbold(1974)の有名な警告。
② ADF 検定の検出力不足
ADF 検定はサンプル数が少ないときの検出力(H₁ を正しく検出する確率)が弱い。 たった 30〜50 期のデータでは、 本当は定常でも「非定常」と判定されることが多い。 KPSS 検定や Phillips-Perron 検定と組み合わせるのが安全。
③ 過差分(over-differencing)
「とりあえず 1 階、 2 階と差分を取れば定常になる」と考えがちだが、 やり過ぎると系列の有用な情報を失う。 差分を取った後の自己相関構造を ACF で確認し、 過差分(MA 過程の負の根に近づく)を避ける。 必要最小限の差分次数を選ぶ。
④ 季節性を見落とす
月次・四半期データでは 季節性 が定常性を破る。 1 階差分だけでは不十分で、 季節差分 $\Delta_{12} y_t = y_t - y_{t-12}$ も必要。 SARIMA モデルや、 X-13 ARIMA-SEATS のような季節調整ソフトを使う。
⑤ 構造変化(structural break)
「2008 リーマンショック」「2020 コロナ」のような構造的変化があると、 全期間で定常性を仮定するのは無理。 構造変化点を Chow テスト・Bai-Perron テストで検出し、 サブ期間別にモデル化する。 または状態空間モデル・隠れマルコフモデルで動的に扱う。
⚠️ 落とし穴(追加版・各 100 字以上)
既出の落とし穴に加えて、 中級者でも踏みやすい応用フェーズの罠を集めました。 1 度経験するか、 ここで読んでおけば回避できます。
❌ 適用範囲の越境
「定常性」は特定の仮定の下で意味を持ちます。 仮定(独立性・線形性・定常性・尺度など)を確認せずに別ドメインに転用すると、 結果が解釈不能になります。 適用前にチェックリストで仮定を点検しましょう。
❌ サンプルサイズ不足での過信
SSDSE-B のように n=47 と小さいデータでは、 「定常性」の推定値も大きな不確実性を持ちます。 点推定だけでなく、 必ず信頼区間や標準誤差を併記してください。 報告で「±」を忘れない習慣をつけることが重要です。
❌ ハイパーパラメータ依存
「定常性」を実装する際、 ライブラリのデフォルト値が常に最適とは限りません。 主要な引数の意味を 1 度公式ドキュメントで確認し、 自分のデータでグリッドサーチや感度分析を行うと、 結果の頑健性が分かります。
❌ 結果の単独評価
単一の指標・単一のモデルだけで結論を出さず、 必ず複数の角度から確認しましょう。 「定常性」だけでなく、 並列・派生の手法でクロスチェックすると、 結果の頑健性が大きく上がります。 報告書には複数結果を併記。
❌ 再現性の軽視
乱数シード未固定、 パッケージバージョン未記録、 データ前処理の手順が口頭伝承——これらが揃うと半年後の自分でも結果を再現できません。 解析コードを Notebook 化し、 Git で管理する習慣を最初から付けるのが結果的に最速です。
🔗 関連用語(前提・並列・発展)
📘 前提として理解しておくべき用語
📗 並列に並ぶ・対比する用語
📕 発展として進む用語
🧬 定常性のバリエーション — 厳密な分類
1. 強定常(Strictly / Strongly Stationary)
結合分布が時間平行移動で不変。 最も強い条件。 例:i.i.d. 系列、 ガウス AR(1)($|\phi| < 1$)。
2. 弱定常(Weakly / Covariance Stationary, Second-Order Stationary)
平均・分散・自己共分散が時間によらない。 実用ではこちらが標準。 ガウス過程では強定常 ⇔ 弱定常。
3. トレンド定常(Trend-Stationary)
$y_t = \alpha + \beta t + u_t$ で、 $u_t$ が定常。 「決定的トレンドを差し引けば定常」になる。 差分定常(DS、 差分で定常化)と区別が重要。
4. 周期定常(Cyclostationary)
統計的性質が「周期 $T$ で繰り返す」。 季節性データの厳密版。 例:時刻 $t$ と $t + T$ で分布が同じ。
5. 局所定常(Locally Stationary)
短い時間窓内では定常だが、 全体としては緩やかに変化する。 Dahlhaus(1997)の理論。 非定常系列の柔軟な扱い。
6. 漸近定常(Asymptotically Stationary)
初期条件の影響が時間とともに消え、 長期的には定常に収束。 AR(1) で $|\phi| < 1$ なら任意の初期値からスタートしても定常分布に収束。
定常性の包含関係
強定常 (i.i.d. を含む)
⊃ 強定常 (2 次モーメント有限)
≡ 弱定常 + 同分布性
⊃ 弱定常 (実用標準)
⊃ トレンド定常
⊃ 周期定常
⊃ 漸近定常
🔁 定常過程の具体例ギャラリー
1. ホワイトノイズ $\varepsilon_t \sim N(0, \sigma^2)$
- $E[\varepsilon_t] = 0$、 $\mathrm{Var}[\varepsilon_t] = \sigma^2$、 $\mathrm{Cov}[\varepsilon_t, \varepsilon_s] = 0$($t \ne s$)
- 最も基本の定常系列。 ARMA モデルの誤差項として登場
2. AR(1):$y_t = \phi y_{t-1} + \varepsilon_t$($|\phi| < 1$)
- $E[y_t] = 0$(中心化版)、 $\mathrm{Var}[y_t] = \sigma^2 / (1 - \phi^2)$、 $\mathrm{Cov}[y_t, y_{t+h}] = \phi^h \mathrm{Var}[y_t]$
- $|\phi| < 1$ で定常。 $\phi = 1$ なら単位根(非定常)
- 自己相関がラグとともに幾何級数的に減衰
3. MA(1):$y_t = \varepsilon_t + \theta \varepsilon_{t-1}$
- 常に定常($\theta$ の値によらず)
- $\mathrm{Cov}[y_t, y_{t+1}] = \theta \sigma^2$、 $\mathrm{Cov}[y_t, y_{t+h}] = 0$($h \ge 2$)
- 1 期しか過去を覚えていない
4. ARMA(p, q):AR + MA の組合せ
- AR 部分の根がすべて単位円外なら定常
- 柔軟な定常系列のモデル化に多用
非定常な系列の例
- ランダムウォーク:$y_t = y_{t-1} + \varepsilon_t$ — 単位根あり、 分散が時間とともに増加
- 線形トレンド付き:$y_t = \alpha + \beta t + \varepsilon_t$ — 平均が時間に依存
- ARIMA(p, 1, q):1 階差分で定常になる系列。 「I(1)」と表記
- 季節周期付き:$y_t = \cos(2\pi t/12) + \varepsilon_t$ — 月次の周期
📊 単位根検定・定常性検定の使い分け
| 検定 | H₀ (帰無仮説) | H₁ (対立仮説) | 特徴 |
| ADF (Augmented Dickey-Fuller) |
単位根あり(非定常) |
定常 |
最も広く使われる、 古典 |
| PP (Phillips-Perron) |
単位根あり(非定常) |
定常 |
系列相関に頑健、 ノンパラメトリック補正 |
| KPSS |
定常(トレンド定常) |
単位根あり |
ADF と逆の帰無仮説、 補完的に使う |
| DF-GLS |
単位根あり |
定常 |
ADF より高検出力 |
| Zivot-Andrews |
単位根あり(変化点を考慮) |
変化点ありの定常 |
構造変化に頑健 |
判定の組み合わせ
| ADF | KPSS | 結論 |
| 定常と判定 | 定常と判定 | ✅ 定常(信頼できる) |
| 非定常と判定 | 非定常と判定 | ❌ 非定常(差分化必要) |
| 定常と判定 | 非定常と判定 | ⚠️ サンプル数不足や構造変化を疑う |
| 非定常と判定 | 定常と判定 | ⚠️ トレンド定常の可能性(決定的トレンドを除去) |
📊 共和分(Cointegration)入門 — 非定常でも関係を捉える
「定常化のために差分化したら、 系列間の長期関係が消えてしまう」場合の解決策が共和分です。
定義
$x_t$ と $y_t$ が両方とも I(1)(1 階差分で定常化する非定常系列)のとき、 ある定数 $\beta$ が存在して
意味
「個々の系列は非定常でも、 ある線形結合は定常」という状態。 経済学では「長期均衡関係」として重要:
- 所得と消費(短期的に乖離しても、 長期的に一定比率に戻る)
- 株価と配当(DDM の理論的基盤)
- 為替レートと購買力平価(PPP)
- 長期金利と短期金利(イールドカーブの傾き)
検定手法
| 手法 | 特徴 |
| Engle-Granger 2 段階法 | 残差に ADF。 単純だが多変量に弱い |
| Johansen 検定 | VAR ベース。 多変量で共和分ベクトル数も判定可 |
| Phillips-Ouliaris | EG の改良版 |
Python での実演
🎯 このコードでやること: 共和分検定 (Engle-Granger) で 2 系列が長期均衡関係にあるか確認
📥 入力例 (SSDSE-B-2026):
y1, y2 = 別々に非定常な 2 系列(全国出生数と全国婚姻件数、 各 12 点)
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15 | from statsmodels.tsa.stattools import coint
import pandas as pd
df = pd.read_csv('data/raw/SSDSE-B-2026.csv', encoding='cp932', skiprows=[1])
# 例:全国の年次出生数 (A4101) と婚姻件数 (A9101)。 どちらもレベルで非定常
births = df.groupby('SSDSE-B-2026')['A4101'].sum().sort_index().values
marriages = df.groupby('SSDSE-B-2026')['A9101'].sum().sort_index().values
score, p_value, crit_values = coint(births, marriages, maxlag=1)
print(f"Cointegration test: t = {score:.3f}, p = {p_value:.4f}")
if p_value < 0.05:
print("→ 出生数と婚姻件数は共和分関係(長期均衡あり)")
else:
print("→ 共和分なし")
|
📤 実行結果 (実測):
t-stat = -3.372, p-value = 0.0455
→ p < 0.05 で『共和分なし』を(ぎりぎり)棄却 → 共和分あり
→ 誤差修正モデル (ECM) が適用可能。 ただし n=12 の小標本なので解釈は慎重に
💬 読み方: 両系列とも非定常でも、 線形結合が定常 (共和分) なら長期均衡関係。 これを無視して回帰すると見せかけの回帰 (spurious regression)。 共和分が確認できれば ECM や VECM でモデル化できる。
共和分時の正しいモデル:誤差修正モデル(VECM)
共和分が成立する場合、 単純な差分回帰ではなくVECM(Vector Error Correction Model)を使う:
🎯 「見せかけの回帰」のシミュレーション
非定常系列での「見せかけの回帰」を、 実コードで体感します。
🎯 このコードでやること: 機構的に無関係な 2 つのトレンド系列を回帰し、 「見せかけの回帰」を実データで体感する
📥 入力例 (SSDSE-B-2026):
全国死亡数 (A4200 合計, 増加トレンド) と 標準地価の47県平均 (C5401, 上昇トレンド)
どちらも 2012-2023 の 12 点、 レベルでは非定常
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26 | # 「機構的に無関係な」2 つの非定常系列の OLS(SSDSE-B-2026 の実データ)
import numpy as np
import pandas as pd
import statsmodels.api as sm
df = pd.read_csv('data/raw/SSDSE-B-2026.csv', encoding='cp932', skiprows=[1])
# 全国死亡数と標準地価(47 県平均)の年次時系列を抽出
deaths = df.groupby('SSDSE-B-2026')['A4200'].sum().sort_index().values
land = df.groupby('SSDSE-B-2026')['C5401'].mean().sort_index().values
# そのまま単回帰(非定常 vs 非定常)
X = sm.add_constant(deaths)
model_spurious = sm.OLS(land, X).fit()
print("Spurious regression (raw series):")
print(f"R² = {model_spurious.rsquared:.4f}, p = {model_spurious.pvalues[1]:.4f}")
# 差分系列で回帰(トレンド除去後)
d_dea = np.diff(deaths)
d_land = np.diff(land)
X_d = sm.add_constant(d_dea)
model_correct = sm.OLS(d_land, X_d).fit()
print("Correct regression (differenced):")
print(f"R² = {model_correct.rsquared:.4f}, p = {model_correct.pvalues[1]:.4f}")
# 結果:原系列は R² が高くても見せかけ、 差分を取ると関係が消える
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📤 実行結果 (実測):
Spurious regression (raw series):
R² = 0.8279, p = 0.00004 ← 『死亡数が増えると地価が上がる』?!
Correct regression (differenced):
R² = 0.0345, p = 0.5843 ← 差分を取ると関係はほぼ消滅
💬 読み方: 死亡数(高齢化で増加)と地価(都市部主導で上昇)はどちらも上昇トレンドを持つだけで、 因果的な関係はない。 レベル同士の回帰では R² = 0.83 と『強い関係』に見えるが、 差分を取ると R² = 0.03 まで落ちる。 これが見せかけの回帰 (spurious regression)。 単位根の有無は時系列分析で最重要のチェック。
結果の解釈
原系列では「死亡数が増えるほど地価が上がる($R^2 = 0.83$、 実測)」という奇妙な関係が出る。 これは両方が独立に長期トレンドを持つ非定常系列だから。 差分を取ると見せかけの関係は消え($R^2 = 0.03$)、 本当の「年次変動の関係」の有無が見えてきます。
📜 定常性概念の歴史
- 1930 年代:Wold & Kolmogorov — 確率過程と定常性の数学的基礎を確立
- 1970 年:Box & Jenkins — ARIMA モデルを体系化し、 差分による定常化を標準的手順に
- 1974 年:Granger & Newbold — 「見せかけの回帰」を実証、 定常化の重要性を警告
- 1979 年:Dickey & Fuller — 単位根検定(DF 検定)を提案
- 1981 年:Said & Dickey — Augmented Dickey-Fuller(ADF)検定を提案
- 1987 年:Engle & Granger — 共和分(cointegration)の概念。 個々は非定常でも線形結合が定常になる重要発見。 1991 年ノーベル経済学賞
- 1992 年:Kwiatkowski, Phillips, Schmidt, Shin — KPSS 検定(定常性が H₀)を提案
- 1990 年代以降 — 構造変化検定、 分数階差分、 状態空間モデル、 GARCH ファミリーが発展
🎯 SSDSE-B-2026 年次データでの完全ワークフロー
SSDSE-B-2026 は 2012〜2023 年度の年次パネルなので、 日本全体の集計時系列を作って定常性検定を実演します。
🎯 このコードでやること: 原系列・1 階差分・対数・対数差分の 4 変換系列に ADF と KPSS を一括適用し、 最も定常に近い変換を探す
📥 入力例 (SSDSE-B-2026):
y = 全国総人口 (A1101 合計) の年次時系列 (2012-2023, n=12)
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42 | import pandas as pd
import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt
from statsmodels.tsa.stattools import adfuller, kpss
df = pd.read_csv('data/raw/SSDSE-B-2026.csv', encoding='cp932', skiprows=[1])
# 全国年次合計を作成(総人口 A1101、 先頭列 'SSDSE-B-2026' が年度)
ts = df.groupby('SSDSE-B-2026')['A1101'].sum().sort_index()
print(f"Years: {ts.index.min()} - {ts.index.max()}, n = {len(ts)}")
# --- ステップ 1:可視化 ---
fig, axes = plt.subplots(2, 2, figsize=(14, 8))
axes[0, 0].plot(ts); axes[0, 0].set_title('Original')
axes[0, 1].plot(ts.diff().dropna()); axes[0, 1].set_title('1st Difference')
axes[1, 0].plot(np.log(ts)); axes[1, 0].set_title('Log transform')
axes[1, 1].plot(np.log(ts).diff().dropna()); axes[1, 1].set_title('Log + 1st diff (log return)')
plt.tight_layout(); plt.show()
# --- ステップ 2:4 つの系列で ADF と KPSS を全部実行 ---
series_list = {
'original': ts.values,
'diff': ts.diff().dropna().values,
'log': np.log(ts).values,
'log_diff': np.log(ts).diff().dropna().values,
}
for name, s in series_list.items():
adf_p = adfuller(s, maxlag=1)[1]
kpss_p = kpss(s, regression='c', nlags='auto')[1]
print(f"{name:<10}: ADF p={adf_p:.4f}, KPSS p={kpss_p:.4f}")
# --- ステップ 3:系列で ARIMA をあてはめ ---
from statsmodels.tsa.arima.model import ARIMA
model = ARIMA(ts.values.astype(float), order=(0, 1, 0), trend='t').fit()
print(model.summary())
# --- ステップ 4:予測 ---
forecast = model.forecast(steps=3)
print("3-step ahead forecast:")
print(forecast)
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📤 実行結果 (実測、 ステップ 2 の 4 系列一括検定):
original : ADF p=1.0000, KPSS p=0.0197 → 非定常
diff : ADF p=0.9367, KPSS p=0.0416 → 非定常 (減少が加速)
log : ADF p=1.0000, KPSS p=0.0198 → 非定常
log_diff : ADF p=0.9402, KPSS p=0.0412 → 非定常
→ 総人口はどの変換でも定常化せず。 減少ペース自体が変化しているため、
ドリフト項やトレンド項を持つモデル (trend='t') で扱うのが現実的
💬 読み方: 経済時系列は『トレンド + サイクル + ノイズ』に分解できる。 HP フィルタやバンドパスでトレンド除去後、 循環成分のみを定常時系列として扱うのも一般的なアプローチ。
🔗 関連用語(前提・並列・発展・追加)
「定常性」をより深く理解するために、 同じカテゴリ「時系列」の周辺概念を整理しました。 学習計画の参考にしてください。
- 🔗 自己相関 — 前提
- 🔗 ARIMA モデル — 発展
- 🔗 トレンド — 並列
- 🔗 季節性 — 並列
- 🔗 ホワイトノイズ — 前提
🧭 ナビ:上のリンク群は本サイト内のページに張られています。 興味のあるキーワードから、 用語ネットワークを横断的に探索すると体系的に理解できます。 「前提」を先に押さえると、 「定常性」自体の理解が一段深まります。
🎓 学習者向けケーススタディ
「定常性」を題材にした 3 つの典型的な学習シナリオを示します。 自分のレベルに近いものから手を動かしてみてください。
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初級:直感の確認:本ページの「🎨 直感で掴む」で挙げた具体例を、 紙に書き写してから自分の言葉で言い換える。 ここで「定義は使わなくても説明できる」レベルに達することが目標。
-
中級:手計算と Python 実装の照合:「🧮 実値で計算」を電卓で実行し、 続いて「🐍 Python 実装」のコードで同じ値が出ることを確認。 ここで「数式とコードの対応」が腑に落ちます。
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上級:別データへの転用:SSDSE-B 以外(時系列・画像・テキストなど)の自分のデータに「定常性」を適用。 上手くいかない場合、 適用条件を満たしているかを「⚠️ 落とし穴」と照合する。
この 3 ステップを 1 回でも回すと、 「知っている」から「使える」へと一段進めます。 学習効率の最も高い順序は、 「直感 → 数式 → コード → 別データ転用」の循環です。
🧩 クイック演習(自己診断)
「定常性」の理解度を 3 問で自己診断しましょう。 即答できなければ該当セクションに戻って復習。
Q1. 「定常性」の適用条件を 3 つ挙げてください。
→ 答えられない場合は「📐 定義・数式」と「⚠️ 落とし穴」を再読。
Q2. 「定常性」の結果を、 専門外の人に 1 文で説明してください。
→ 答えられない場合は「💡 30 秒結論」と「🎨 直感」を再読。
Q3. 「定常性」の限界を 2 つ挙げて、 代替手法を示してください。
→ 答えられない場合は「🌐 関連手法・派生」と「⚠️ 落とし穴」を再読。
3 問すべて即答できれば、 「定常性」は実用レベルに達しています。 関連用語ページに進みましょう。
🛠 実装時の注意点
「定常性」を実装に落とす際に、 教科書ではあまり強調されない実務的注意点を整理します。
- 数値安定性:浮動小数の累積誤差で、 理論値と実測値がずれることがあります。 重要な計算は
numpy.float64 または decimal で明示。
- メモリ管理:大規模データでは中間結果を都度
del、 もしくは numpy のビュー(view)で参照のみ。
- 並列化:scikit-learn は
n_jobs=-1、 pandas は swifter、 NumPy は numexpr で高速化できる場面が多い。
- テスト:単体テスト(
pytest)で境界条件(n=0, 1, 巨大値、 NaN)を必ず確認。
- ロギング:途中経過を
logging で出力し、 後から再現できるようにする。 デバッグの時短に直結。
- バージョン:
pip freeze > requirements.txt で固定。 半年後の自分が泣かない最低限の保険。
これらは「動けばよい」では済まされない場面、 たとえばコンペ提出・本番デプロイ・論文投稿で必須になります。 普段から意識すると、 いざという時に慌てません。
📖 リテラシー チェックリスト
「定常性」を学んだ後、 次のチェックリストを 1 つずつ満たしているか確認してください。 これは『データサイエンス・リテラシー』として身につけるべき汎用スキルにも相当します。
- □ 「定常性」を 1 文で説明できる
- □ 適用条件を 3 つ以上挙げられる
- □ 同じカテゴリ「時系列」の並列手法を 2 つ以上挙げられる
- □ Python で動くコードを書ける
- □ 結果に対する不確実性を併記できる
- □ 落とし穴を 3 つ以上挙げられる
- □ ドメイン知識と結びつけて解釈できる
- □ レポートに「5 点セット」(データ・前処理・前提・推定・解釈)で書ける
8 項目すべてチェックがつけば、 「定常性」は実務でも論文でも自信を持って使えるレベルです。
🏢 ドメイン別応用例
定常性 を含むデータ分析は、 分野によって使われ方が違います。 下の表は分野ごとの代表的な用途で、 定常性 だけの用途一覧ではありません。 自分の分野の行を見て、 どんな問いにデータを使うのかを掴んでください。
| ドメイン |
その分野でデータ分析が使われる場面 |
| 公的統計 | SSDSE のような都道府県データで、 地域特性の把握や政策効果の評価に使う |
| 金融 | 株価・為替・金利の予測、 リスク管理、 ポートフォリオ最適化 |
| 医療 | 疫学調査、 薬効評価、 画像診断、 遺伝子解析 |
| マーケティング | 顧客セグメンテーション、 LTV 予測、 A/B テスト、 推薦システム |
| 製造業 | 品質管理、 異常検知、 予知保全、 サプライチェーン最適化 |
| 教育 | 学習者モデル、 アダプティブ教材、 教育効果測定 |
自分のドメインがリストにあれば、 そこからすぐに着想を得られます。 リストにない場合も、 似たドメインの応用例から類推することで使い方が見えてきます。
📚 関連グループ教材
📚 定常性の種類
| 種類 | 条件 | 用途 |
| 強定常 (Strict) | 全 t に対し全結合分布が時間不変 | 理論的議論 |
| 弱定常 (Weak) | 平均・分散・自己共分散のみ時間不変 | 実務の標準(共分散定常) |
| トレンド定常 | 決定論的トレンドを除けば定常 | GDP・人口など |
| 差分定常 | 差分系列が定常(I(1)) | 株価・為替 |
| 局所定常 | 短期間では定常、 長期では非定常 | ウェーブレット解析 |
実務では弱定常を「定常」と呼ぶことが多いです。 強定常は理論的に強い条件ですが、 検証が困難なので、 弱定常で代用するのが標準。
🎓 理論的背景の補強
「定常性」を学術的に位置付けるには、 関連する基盤理論を押さえると体系が見えてきます。 ここでは、 数学的・統計的な理論ベースを 4 つの観点で整理します。
① 数学的基礎
「定常性」は線形代数・解析学・確率論の上に立っています。 ベクトル空間・関数解析・測度論などの基礎理論があると、 定常性の定義がなぜこの形なのかが腑に落ちやすくなります。 大学初年級の教科書(線形代数入門、 解析学基礎、 確率論入門)から該当章を確認すると効率的です。
② 統計学からの視点
「定常性」は推定・検定・モデリングの観点から見ると、 別の側面が見えてきます。 古典統計(頻度論)とベイズ統計では同じ概念でも扱い方が異なるので、 両方の立場で考えてみると理解が深まります。 例えば、 信頼区間は頻度論、 信用区間はベイズ的解釈です。
③ 機械学習からの視点
機械学習では、 「定常性」は損失関数・正則化・汎化性能などの文脈で再解釈されます。 教師あり/教師なし/強化学習という 3 つの大枠の中で、 本用語がどこに位置付くかを確認すると、 応用範囲が見えてきます。 特に深層学習時代では、 古典的概念が新しい意味で復活する例が多くあります。
④ 情報理論からの視点
エントロピー・KL ダイバージェンス・相互情報量などの情報理論概念は、 「定常性」を測定・評価する際の共通言語を提供します。 Shannon (1948) 以降の情報理論は、 統計学・機械学習・自然言語処理を橋渡しする基盤として、 ますます重要性を増しています。
🧭 学習のコツ:4 つの視点を全て同時に追う必要はありません。 自分のバックグラウンドに近い視点から入り、 慣れたら他の視点で同じ概念を捉え直すと、 「定常性」の多面性が体感できます。
🏢 産業応用ケーススタディ
「定常性」は単なる理論ではなく、 実産業の現場で日常的に使われている技術です。 5 つの典型的な応用シナリオを示します。
ケース 1:金融・保険業界
リスク評価・ポートフォリオ最適化・不正検知の各場面で「定常性」が使われます。 例えば、 取引データ数千万件から異常パターンを抽出する際、 定常性の概念が中核を担います。 規制対応(バーゼル II/III)でも統計的概念の正確な理解が要求されます。
ケース 2:医療・ヘルスケア
臨床試験の設計・薬効評価・画像診断 AI・電子カルテ解析で「定常性」が活躍します。 p 値ハッキングなどの統計的不適切利用を避けるために、 概念の正確な理解が患者の生命に直結する責任を伴います。 米 FDA・欧 EMA・日本 PMDA の各規制下でも統計手法は厳格に審査されます。
ケース 3:マーケティング・広告
A/B テスト・LTV 予測・推薦システム・広告クリック率予測など、 デジタルマーケティングの中核技術として「定常性」が使われています。 1% の改善が年商で億単位の差を生む業界なので、 統計的有意性と実用的有意性の区別が重要です。
ケース 4:製造業・サプライチェーン
品質管理(SPC)、 異常検知、 需要予測、 在庫最適化、 予知保全で「定常性」が使われます。 IoT センサーから流入する時系列データの解析には、 統計的・機械学習的概念が不可欠で、 工場の歩留まり改善や故障率低下に直結します。
ケース 5:公共政策・社会科学
政策効果評価(RCT、 自然実験、 差分の差分法)、 教育研究、 社会調査の解析、 公的統計(SSDSE のような)など、 政策決定のための分析基盤として「定常性」が活躍します。 政策の効果検証は、 統計的概念の理解が市民生活に直接影響する重要分野です。
⚖️ 倫理・社会的責任
データサイエンスは強力な道具であり、 「定常性」のような手法も誤用すれば社会に害を与える可能性があります。 以下の倫理的論点は、 実務で常に意識すべきです。
- バイアス・公平性:訓練データの偏りが結果に反映され、 特定集団に不利益を与える可能性。 公平性指標(demographic parity、 equalized odds など)で監視。
- プライバシー:個人特定可能情報の保護。 GDPR・改正個人情報保護法に沿った設計が必須。 差分プライバシー (DP) や連合学習で対応。
- 説明可能性:「ブラックボックス」では責任を取れない。 SHAP・LIME・grad-CAM などで根拠を可視化。
- 透明性:データ出典・前処理・モデル・評価方法を公開。 再現可能性が学術と実務の信頼性を担保。
- 誤用防止:プロパガンダ・偽情報・監視への転用を阻止するガバナンス。 AI 倫理指針(OECD、 UNESCO 等)を参照。
- 環境負荷:大規模学習の電力消費・CO2 排出。 効率化・カーボンフットプリント開示が要求される時代に。
🌍 持続可能なデータサイエンスへ:「定常性」を含む全ての分析が、 社会の利益と持続可能性に貢献するように設計・運用すべきです。 技術的可能性 ≠ 社会的妥当性。 倫理的判断は技術選択の最初に来るべきテーマです。
🔭 研究の最前線(2024–2026)
「定常性」を含む「時系列」カテゴリは、 急速に進化しています。 直近の研究動向を 5 つピックアップしました。 興味があるテーマは arXiv で「Stationarity」「時系列」をキーワード検索すると最新論文に辿れます。
-
基盤モデルとの融合:大規模事前学習モデル(LLM、 Foundation Model)が古典手法を置き換えるか、 補強するかが論点。 ハイブリッド設計が増加。
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因果推論との統合:相関だけでなく「介入」の効果を推定する因果機械学習。 「定常性」を因果グラフ上で解釈する研究が活発。
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解釈可能性 (XAI):ブラックボックス AI の判断根拠を説明する技術。 SHAP・LIME・概念ベース説明(CAV、 TCAV)。
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不確実性定量化:予測値だけでなく、 信頼区間・予測区間・Conformal Prediction による不確実性。
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小データ学習:Few-shot、 Zero-shot、 Meta-learning、 Transfer learning。 「定常性」を限られたサンプルで適用する技術。
これらのテーマは互いに関連しているので、 1 つに興味を持ったら隣接領域に展開していくと知識ネットワークが広がります。
📚 学習リソースガイド
「定常性」を体系的に学ぶための、 信頼できる無料・有料リソースを整理しました。
| タイプ | 推奨リソース |
| 公的データ | SSDSE(教育用標準データセット)、 e-Stat、 政府統計の総合窓口 |
| 無料コース | Coursera(Stanford ML、 deeplearning.ai)、 edX(MIT 統計)、 fast.ai |
| 教科書(無料 PDF) | 「Introduction to Statistical Learning」(ISLR)、 「Pattern Recognition」(Bishop) |
| 日本語 | 「統計学入門」(東大出版会)、 「機械学習の理論と実践」(朝倉書店) |
| 論文プラットフォーム | arXiv、 Papers with Code、 Google Scholar、 Semantic Scholar |
| コンペ | Kaggle、 SIGNATE、 Nishika、 統計・データ解析コンペ(SSDSE) |
| 公式 Doc | scikit-learn、 statsmodels、 PyTorch、 TensorFlow、 SciPy |
| コミュニティ | PyData、 Kaggle Discussion、 Reddit r/MachineLearning、 Twitter/X |
学習リソースは「消費するだけ」では身につきません。 必ず手を動かすこと(コードを書く、 自分のデータで試す、 コンペに参加する)が定着の鍵です。
🛠 トラブルシューティング集
「定常性」を実装中に遭遇しがちなエラー・症状とその対処を一覧化しました。
| 症状 | 原因 | 対処 |
| NaN が出る | 欠損・ゼロ除算・log(0) | 前処理で dropna / fillna / クリッピング |
| 学習が進まない | 学習率不適切・スケール未整備 | StandardScaler、 学習率調整、 勾配クリッピング |
| 過学習 | モデル容量過大・サンプル不足 | 正則化、 ドロップアウト、 早期終了、 データ追加 |
| 未学習 | モデル容量不足・特徴量不足 | 非線形性追加、 特徴量エンジニアリング |
| メモリエラー | バッチサイズ大・データ巨大 | バッチ縮小、 chunk 処理、 dask/vaex 使用 |
| 結果が不安定 | 乱数シード未固定 | random_state、 np.random.seed 設定 |
| CV と test で乖離 | データリーク・分布シフト | 前処理を Pipeline 化、 時系列分割使用 |
| バージョン不一致 | パッケージ更新で挙動変化 | pip freeze > requirements.txt で固定 |
トラブル発生時は、 まず最小再現例を作って切り分けるのが鉄則です。 Stack Overflow や GitHub Issues で類似事例を検索すると解決が早いケースが多いです。
📔 補足ミニ用語集(拡張)
「定常性」周辺で頻出する用語の手早い参照表です。
- 汎化性能
- 訓練データ外でのモデル性能。 機械学習の最終目標。
- バイアス
- モデルの仮定の強さによる誤差。 単純モデルほど高い。
- 分散
- 訓練データの揺らぎによる誤差。 複雑モデルほど高い。
- 正則化
- 過学習防止のためにモデルに加える罰則項(L1/L2/Dropout など)。
- 交差検証
- データを分割して汎化性能を推定する手法。 k-fold が標準。
- グリッドサーチ
- ハイパーパラメータ候補を網羅的に試す探索。 Optuna はベイズ最適化版。
- スケーリング
- 特徴量を同じ範囲に揃える前処理。 StandardScaler、 MinMaxScaler、 RobustScaler。
- One-hot エンコード
- カテゴリ変数を 0/1 のダミー変数に展開する方法。 多重共線性に注意。
- 特徴量エンジニアリング
- 生データからモデルが解釈しやすい特徴を作る作業。 機械学習の最重要工程。
- EDA
- Exploratory Data Analysis(探索的データ分析)。 モデリング前に必ず行う。
🎯 学習の到達目標(このページを読み終えたら)
本ページの全セクションを読み終えたとき、 以下の5 つの能力が身についているはずです。 自己評価のチェックポイントとしてご活用ください。
- 言語化能力:「定常性」を専門外の人に 1 分で説明できる
- 計算能力:SSDSE-B-2026 のような実データで具体的な数値を計算できる
- 実装能力:Python で動くコードを書ける
- 判断能力:「定常性」を使うべき場面・使うべきでない場面を見分けられる
- 批判能力:他者の分析結果を「定常性」の観点でレビューできる
🚀 次のステップ:「🔗 関連用語」のリンクから興味のある用語に進み、 知識のネットワークを広げてください。 また、 同カテゴリ「時系列」の関連グループ教材で全体像を再確認すると、 個別概念がパズルのピースのように繋がっていきます。
📎 付録:よく使う数式記号
「定常性」を含むデータサイエンス全般で頻出する数式記号を整理しました。 KaTeX レンダリングで表示しています。
- $\sum_{i=1}^{n} x_i$
- 総和。 添字 i を 1 から n まで動かして加算。
- $\prod_{i=1}^{n} x_i$
- 総積。 確率の同時分布などで頻出。
- $\int_a^b f(x) dx$
- 定積分。 連続分布の確率計算で頻出。
- $\hat{\theta}$
- パラメータ θ の推定量(hat 記号)。
- $\bar{x}$
- 標本平均(bar 記号)。
- $E[X]$, $\mathrm{Var}(X)$
- 期待値、 分散。 確率変数 X に対する基本演算。
- $\mathbb{R}, \mathbb{N}, \mathbb{Z}$
- 実数集合、 自然数、 整数。 値域の表記。
- $\mathcal{N}(\mu, \sigma^2)$
- 正規分布(平均 μ、 分散 σ²)。
- $P(A|B)$
- 条件付き確率。 B が起きた下での A の確率。
- $\nabla f$
- 勾配(gradient)。 最適化で必須。
🎯 上級者向け演習問題
「定常性」の理解を確固たるものにするために、 上級者向けの実践問題を 5 問用意しました。 すべて SSDSE-B-2026 を素材に答えられる構成です。
問題 1:適用条件の検証
SSDSE-B-2026 の任意の 1 変数を選び、 「定常性」の適用条件が満たされるかを3 つ以上の角度で検証してください。 不適合の場合は代替手法を提示しましょう。
問題 2:感度分析
「定常性」を実装するライブラリの主要ハイパーパラメータを 3 つ選び、 値を変化させたときに結果がどう変わるかを可視化してください。 「頑健な範囲」を見つけることが目標です。
問題 3:他手法とのクロスチェック
「定常性」の結果と、 「🌐 関連手法・派生」で挙げた手法 1 つの結果を比較し、 一致/不一致を考察してください。 不一致の場合、 どちらが「真実」に近いかを論理的に議論しましょう。
問題 4:不確実性の定量化
「定常性」の結果に対して、 ブートストラップ法 (n=1000) で 95% 信頼区間を算出してください。 区間の幅とサンプルサイズの関係も論じましょう。
問題 5:レポート作成
「定常性」を使った分析結果を、 2 ページ以内の Markdown レポートにまとめてください。 「📝 レポートでの報告」の 5 点セットを必ず含めましょう。
📊 詳細比較表:「定常性」周辺手法
「時系列」カテゴリ内の主要手法を、 4 つの観点で詳細比較します。 自分のデータと用途に合った手法を選ぶための判断材料です。
| 手法 |
適用条件 |
サンプル数依存 |
解釈性 |
計算コスト |
| 定常性(本記事) |
標準的なケース |
中 |
中〜高 |
低〜中 |
| 前提手法 A |
基礎的・広範囲 |
小〜大 |
高 |
最小 |
| 並列手法 B |
類似条件 |
中 |
中 |
中 |
| 並列手法 C |
特殊条件 |
大 |
中 |
中〜高 |
| 発展手法 D |
高度な前提 |
大 |
低 |
高 |
| 発展手法 E(深層学習系) |
大データ前提 |
非常に大 |
低 |
最高 |
「サンプル数依存」とは、 サンプル数が少ない時に性能がどれだけ劣化するかの目安。 「解釈性」が高いほど結果を人間が理解しやすい。 「計算コスト」は典型的なデータサイズでの実行時間目安です。
💥 実例から学ぶ失敗パターン
「定常性」が実務でうまくいかなかった、 過去の有名な失敗例から学べることは多いです。 ここでは典型的な失敗パターンを 4 つ紹介します(特定企業の言及は避け、 教訓に焦点)。
失敗例 A:適用条件無視で破綻
あるリスク管理モデルが、 「定常性」の前提条件(独立性/定常性/線形性など)を確認せずに本番運用された結果、 想定外のショック時に大きな誤りを出しました。 教訓:必ず適用条件をチェックリスト化し、 運用中も定期的に再検証する仕組みを作るべき。
失敗例 B:データリークによる過大評価
「定常性」を含むパイプライン全体で、 訓練時に未来データが混入する設計ミスがあり、 本番では性能が大幅に低下しました。 教訓:前処理(スケーリング・特徴量選択など)を必ず Pipeline オブジェクトで包み、 train/test 境界を物理的に守る。
失敗例 C:説明できないブラックボックス
高精度を達成したが、 関係者に「なぜその予測になるか」を説明できず、 採用見送りとなったケース。 教訓:精度と解釈性のトレードオフを最初に合意し、 SHAP・LIME などの説明技法を併用する。
失敗例 D:分布シフトに対応できず
過去データで訓練したモデルが、 環境変化(コロナ禍など)で性能が劣化したのに気付かず使い続けたケース。 教訓:分布シフト監視(drift detection)を本番運用の標準工程に組み込む。
💡 共通教訓:失敗の多くは「技術的に正しくても、 設計・運用・組織が追いついていない」ことに起因します。 技術選択と並んで、 ガバナンス・モニタリング・コミュニケーションの設計も同じくらい重要です。
📖 推奨書籍リスト
「定常性」を含む「時系列」を深く学ぶための、 信頼性の高い書籍を初級・中級・上級に分けて紹介します。
| レベル | 和書/英書の方向性 |
| 初級 | 「統計学入門」(東大出版会)、 「データサイエンス入門」(オーム社)、 「Pythonによるデータ分析入門」(O'Reilly) |
| 中級 | 「自然科学の統計学」(東大出版会)、 「Hands-On Machine Learning」(O'Reilly)、 「The Elements of Statistical Learning」(Springer) |
| 上級 | 「Pattern Recognition and Machine Learning」(Bishop)、 「Deep Learning」(Goodfellow 他)、 「Causal Inference」(Hernán & Robins, 無料 PDF) |
| 専門書(時系列) | 該当分野の専門書を、 Google Scholar の引用数や学会推薦から選ぶと品質が担保されやすい |
| 日本語論文集 | CiNii、 J-STAGE で「定常性」を検索すると、 学位論文・学会論文に辿れる |
書籍は通読する必要はなく、 関連章だけ読む「つまみ食い読書」も有効です。 興味のある章から始めるのが結局のところ最速の学習法。
📚 参考文献・教材
- Box, G.E.P., Jenkins, G.M. (1970) Time Series Analysis: Forecasting and Control — ARIMA の古典。
- Hamilton, J.D. (1994) Time Series Analysis Princeton — 時系列の決定版。
- 沖本 竜義 (2010)『経済・ファイナンスデータの計量時系列分析』朝倉書店 — 日本語標準教科書。
- SSDSE-B-2026 教育用統計データ(独立行政法人統計センター) — 47 都道府県年次データ。
- statsmodels.tsa 公式ドキュメント — Python の ADF / KPSS / ARIMA 実装。
🏛️ 産業事例 — 定常性が決め手になった 6 つの現場
「定常性」は理論で完結する概念ではなく、 産業の現場で「モデルが本番でも動くか」を分ける実用的な基準です。 ここでは 47 都道府県時系列 (SSDSE-B-2026) を題材に、 各産業で定常性がどう活きるかを 6 件まとめます。
| 業界 | 定常性が問題になる場面 | 対処例(SSDSE-B 風) |
| 電力需要予測 | 月別需要は気温に強く依存し平均が季節で動く非定常 | 気温で前処理 → 残差を弱定常化 → SARIMAX で 47 都道府県別予測 |
| 小売需要予測 | クリスマス・盆休みの周期性、 経済成長の長期トレンド | 季節差分 (12 ヶ月) + ADF 検定で定常化を確認、 都道府県別店舗売上を別モデル化 |
| 金融・ポートフォリオ | 株価レベルは非定常、 リターンは弱定常 | 対数差分で定常リターン化、 共和分検定でペアトレード戦略 |
| 公衆衛生・感染症 | 感染者数の長期トレンドと季節性、 ワクチン介入で構造変化 | Chow 検定で構造変化点検出、 区間ごとに定常モデル |
| 人口動態(公的統計) | SSDSE-B-2026 の全国出生数 (A4101) は 2012→2023 でほぼ単調減少、 平均が時間依存(ADF p = 0.999、 実測) | 差分・トレンド項付きモデルで将来推計(実測では 1 階差分でも 5% では定常化せず p = 0.075) |
| 製造業・IoT | センサ信号のドリフトで平均がゆっくり動く | ローリング窓で定常化、 異常検知に応用 |
📊 比較表 — 定常化手法を「使い分ける」
非定常データを定常化する手法は複数あります。 SSDSE-B-2026 の実在列(総人口 A1101・死亡数 A4200・消費支出 L3221 など)を例に「どの手法が向くか」を整理します。
| 手法 | 向くケース | SSDSE-B-2026 適用例 | 短所 |
| 1 階差分 | 確率的トレンド(単位根あり) | 全国死亡数 A4200(差分で定常化、 実測 p = 0.0017) | 標本数が 1 減る |
| 対数 + 1 階差分 | レベル比例の変動・指数成長 | 総人口 A1101(対数差分 ≒ 人口成長率) | 負値・ゼロを扱えない |
| 季節差分 | 年周期がある月次データ | SSDSE-B-2026 は年次のみ。 月次の観光・宿泊統計(e-Stat)で有効 (Y_t − Y_{t-12}) | 12 標本を犠牲にする |
| 線形回帰残差 | 決定論的トレンド | 標準地価 C5401(上昇トレンドの除去) | トレンド型仮定が必要 |
| Box-Cox 変換 | 分散が時間で変わる | 消費支出 L3221(水準に比例した変動の安定化) | 逆変換時の解釈が難しい |
| HP フィルタ | マクロ経済データのトレンド除去 | 延べ宿泊者数 G7101(COVID ショックを含む変動の分解) | 端点バイアスが大きい |
📝 演習問題 — SSDSE-B-2026 で手を動かす
- 演習 1:SSDSE-B-2026 から「東京都」の年次総人口 (A1101、 2012-2023) を抽出し、
statsmodels.tsa.stattools.adfuller(n=12 なので maxlag=1)で ADF 検定を実行。 p 値と単位根の有無を報告せよ。 さらに 1 階差分後に再実行し、 定常化したか確認せよ。
- 演習 2:47 都道府県の合計特殊出生率時系列 (A4103、 2012-2023) について、 各県ごとに ADF 検定を回し、 「単位根を棄却する県」「棄却しない県」をリスト化せよ。 地方部と都市部で差があるか議論せよ。
- 演習 3:日経平均月次データ(参考:FRED で代替可)をダウンロードし、 (1) レベル、 (2) 対数差分(月次リターン)の両方で ADF 検定を実施。 結果の解釈を 200 字でまとめよ。
- 演習 4:月次観光・宿泊データ(e-Stat の宿泊旅行統計調査など。 SSDSE-B-2026 は年次のみ)で季節差分 (Y_t − Y_{t-12}) を取り、 ADF + KPSS の両側確認で定常化を判定せよ。
- 演習 5:定常 AR(1) 過程 $X_t = 0.7 X_{t-1} + \varepsilon_t$ を 100 期シミュレートし、 自己相関関数 (ACF) を描画。 理論値 $\rho_k = 0.7^k$ と比較せよ。
📔 用語ミニ辞典(定常性まわりで頻出する 10 語)
- 単位根 (Unit Root)
- AR(p) の特性方程式が単位円上に根を持つ状態。 これがあると非定常で、 差分が必要。
- 差分定常 (Difference Stationary)
- レベルは非定常だが差分を取ると定常になる過程。 ARIMA の「I」がこれ。
- トレンド定常 (Trend Stationary)
- 線形トレンドを除去すると定常になる過程。 回帰残差が定常。
- エルゴード性 (Ergodicity)
- 時間平均 = 集団平均となる性質。 定常性とセットで議論される。
- ホワイトノイズ
- 平均 0、 分散一定、 自己相関 0 の弱定常過程の最小単位。
- 共和分 (Cointegration)
- 個別に I(1) の系列の線形結合が I(0) になる関係。 長期均衡を表す。
- 見かけの回帰 (Spurious Regression)
- 非定常データ同士を回帰すると見かけ上有意な関係が出る現象。 単位根検定で防ぐ。
- 構造変化 (Structural Break)
- パラメータが特定の時点で不連続に変わる現象。 定常性の前提を破る。
- Wold 分解
- 任意の弱定常過程を決定論的部分と MA(∞) に分解可能と保証する定理。
- ARCH 過程
- 条件付き分散が時間変動する過程。 弱定常だが分散非定常という変則ケース。
📚 補足: 定常性のさらなる深掘りと実務応用
定常性 (stationarity) には用途に応じて少なくとも三段階の定義があり、 弱い順に並べると 「弱定常 (共分散定常)」 ⊂ 「強定常 (狭義定常)」 ⊂ 「iid」 となる。 多くの実務で要求されるのは 弱定常 である。 これは平均と自己共分散だけが時間不変であればよく、 高次モーメントや同時分布の形までは問わない。 強定常になると任意の有限次元同時分布が時間シフトで不変であることまで要求するので、 ガウス過程など特殊な過程を除いて検証は困難である。 iid はさらに自己相関ゼロまで要求するので、 通常の経済時系列にはまず当てはまらない。 ARIMA、 VAR、 状態空間モデルといった主要な時系列モデルが前提とするのは弱定常であり、 SSDSE-B-2026 を分析する際もまず弱定常を目標に差分・除トレンドを行えば実用上十分である。
| 段階 | 条件 | 検証方法 | 主な用途 |
| 弱定常 (共分散定常) | $E[X_t]=\mu$, $\mathrm{Var}(X_t)=\sigma^2$, $\mathrm{Cov}(X_t,X_{t+h})=\gamma(h)$ | ADF, KPSS, ローリング平均/分散プロット | ARMA, ARIMA, VAR の前提 |
| 強定常 (狭義定常) | 任意の $(X_{t_1},\dots,X_{t_k})$ の同時分布が時間シフト不変 | 直接検証は困難、 部分的にチェック | ベイズ推論、 非線形モデル |
| iid 過程 | 独立かつ同分布 | Ljung-Box, BDS 検定 | 残差診断、 ホワイトノイズ前提 |
| 局所定常 (Local stationarity) | 短い時間窓では近似的に弱定常 | ウェーブレット、 時変スペクトル | 音声、 脳波、 構造変化のある経済 |
| 差分定常 I(d) | $d$ 階差分で弱定常になる | ADF を差分回数ごとに繰り返す | ARIMA(p,d,q), 共和分検定 |
実務では ADF 検定だけでは不十分 であり、 KPSS 検定との併用が標準的な手順として推奨される。 これは両検定の帰無仮説が 正反対 に設計されているためである。 ADF は「単位根が存在する (非定常)」を帰無仮説とし、 棄却できれば定常と判断する。 一方 KPSS は「定常」を帰無仮説とし、 棄却されれば非定常と判断する。 ADF と KPSS の結果を組み合わせると次の四象限ができる。 (1) ADF 棄却 + KPSS 非棄却 → 定常 (両検定が一致)、 (2) ADF 非棄却 + KPSS 棄却 → 非定常 (両検定が一致)、 (3) ADF 棄却 + KPSS 棄却 → 矛盾 (構造変化や分数階差分を疑う)、 (4) どちらも非棄却 → 結論不明 (サンプル不足)。 SSDSE-B-2026 の都道府県別時系列で総人口 (A1101) や出生数 (A4101) を扱うときには、 まず両検定を走らせて (1) と (2) の明確なケース以外は差分回数を変えて再検査する習慣が信頼性を高める。
ADF 検定 (北海道の総人口 A1101、 2012-2023 年度、 SSDSE-B-2026、 実測)
ADF 統計量 = 2.1216
p 値 = 0.9988 → 単位根を棄却できない (非定常)
KPSS 検定 (同データ)
KPSS 統計量 = 0.6874
p 値 = 0.0147 → 定常を棄却 (非定常)
→ 両検定とも「非定常」で一致 → 1階差分を試す
1階差分後 ADF
ADF 統計量 = 1.9828
p 値 = 0.9987 → 単位根を棄却できない (まだ非定常)
1階差分後 KPSS
p 値 = 0.0231 → 定常を棄却 (まだ非定常)
結論: 2012-2023 の北海道人口は減少が加速しており、 12 時点では
1 階差分でも定常化しない。 単純な I(1) と決めつけず、 トレンド項
付きモデルや長期データでの再検証が必要
定常性を理解した上で次に押さえるべきは 共和分 (cointegration) の概念である。 経済時系列の多くは個別に見れば非定常 (I(1)) だが、 二系列の線形結合が定常 (I(0)) になることがある。 たとえば SSDSE-B-2026 の「全国出生数 (A4101 合計)」と「全国婚姻件数 (A9101 合計)」はそれぞれレベルで単位根を棄却できないが (実測 ADF p = 0.999 / 0.967)、 Engle-Granger 共和分検定では p = 0.045 と 5% で共和分が検出される (実測)。 婚姻と出生が長期的に連動して動く関係を 長期均衡関係 と呼び、 共和分が検出されると Engle-Granger の 2 段階法や Johansen の最尤法で 誤差修正モデル (Vector Error Correction Model, VECM) を構築できる。 共和分の検出には、 (1) 両系列の単位根を ADF で確認、 (2) 線形回帰で残差を取得、 (3) 残差に再び ADF を適用、 という流れが基本である。 共和分があるのに単純な差分で扱うと 長期情報を捨ててしまう ため予測力が大きく落ちる、 という点を覚えておきたい。
定常性に関しては実務でも誤解が多く、 次の四つを押さえておくと安全である。 第一に 「ADF で棄却されたら絶対定常」 は誤り。 ADF はサンプル数や説明変数 (定数項・トレンド項) の選び方で結果が変わるので、 必ず KPSS と併用する。 第二に 「定常化したら因果関係も保証される」 は誤り。 差分は短期変動だけを残すので、 長期均衡を見逃しやすい。 共和分があるなら VECM を選ぶ。 第三に 「季節性も同じトレンド差分で消える」 は誤り。 季節性は季節差分 $\nabla_{12} X_t = X_t - X_{t-12}$ が必要で、 通常差分と季節差分を組み合わせる SARIMA で対処する。 第四に 「定常化さえすれば過適合は起きない」 は誤り。 差分回数を増やすほどデータの情報量は減り、 ノイズに過剰反応する。 過差分 (over-differencing) を避けるため、 KPSS が定常を支持した時点で差分は停止する。 これら四点を意識すれば、 SSDSE-B-2026 のような都道府県パネルでも安全に定常性前提のモデルへ持ち込める。
最後に SSDSE-B-2026 の県別時系列を分析する際の 定常性チェックリスト を整理する。 (1) 原系列をプロット: 平均レベルが時間で変化するか、 分散が拡大していないかを目視で確認。 (2) ローリング統計: 5 年窓で平均と標準偏差を計算してプロット。 ともに横ばいなら弱定常の候補。 (3) ACF/PACF: ACF が長く有意に残るなら単位根を疑う。 (4) ADF + KPSS の両方を走らせる: 一致しない場合は構造変化を考慮し、 Phillips-Perron 検定や Zivot-Andrews 検定を追加。 (5) 差分または除トレンド: 1階差分が定石。 トレンド成分が決定的 (deterministic) なら回帰残差を使う。 (6) 差分後に再検査: KPSS で定常を支持するまで繰り返す。 ただし 2 階を超えるとほぼ過差分。 (7) 季節性を確認: 月次・四半期データでは季節差分も別途。 (8) 共和分検査: 複数系列を一緒にモデル化するなら Johansen 検定。 この八段階を踏めば SSDSE-B-2026 の人口 (A1101 など)・家計 (L3221 消費支出)・観光 (G7101 延べ宿泊者数) といった実在指標を安全に時系列モデルへ供給できる。
SSDSE-B-2026 47 都道府県の総人口 A1101 (2012-2023、 各県 12 時点、
maxlag=1) の単位根検定結果まとめ (実測)
レベル系列 ADF p 値
- 44 都道府県で p > 0.10 (単位根を棄却できず、 非定常)
- p < 0.05 は 2 県のみ
1 階差分 ADF p 値
- p < 0.05 で定常化したのは 2 県 (山梨・熊本) のみ
- 残る 45 県は差分後も棄却できず (人口減少の加速・COVID 期の変動)
結論: 2012-2023 の 12 時点では県別人口を機械的に I(1) と扱えない。
短い系列では検出力が低く、 トレンドの変化も拾うため、 構造変化を
考慮した検定や長期データでの再検証が必要
💡 補足: 定常性は ARIMA や VAR の数学的前提というだけでなく、 「過去のデータが未来にどれだけ役立つか」 という現実的な問いに直結する。 非定常な系列を強引にモデル化すると、 過去のパターンが将来通用しない 見せかけの関係 (spurious regression) に陥り、 ビジネス上の意思決定を誤らせる。 SSDSE-B-2026 のような公的データを扱うときは、 単に統計検定で OK が出るかではなく、 「この系列は本当に過去から未来へ情報を運んでくれるか」 を問い直す視点が定常性検査の真の意義である。
ADF 検定が単位根を棄却できない理由のひとつに 構造変化 (structural break) がある。 標準的な ADF 検定は構造変化を無視するため、 実際には定常だがある時点で平均水準やトレンドが大きく変わった系列を「単位根あり」と誤判定してしまう。 たとえば沖縄県人口の長期系列(総務省の国勢調査・人口推計)は本土復帰 (1972) 前後などで構造変化が複数ある(SSDSE-B-2026 が収録するのは 2012-2023 年度のみ)。 こうした系列に対しては Zivot-Andrews 検定 (1992) や Bai-Perron 検定 (1998, 2003) を用いる。 Zivot-Andrews は単一の構造変化点を内生的に探索しつつ単位根を検定する手順で、 帰無仮説は「構造変化なしの単位根過程」、 対立仮説は「ある時点で構造変化を伴う定常過程」となる。 Bai-Perron は複数の構造変化点を同時に推定するので、 戦後復興期・高度成長期・バブル期・失われた 20 年といった経済時系列の局面分けに向いている。 SSDSE-B-2026 を用いて長期トレンドを論じるレポートでは、 単純な ADF だけでなく構造変化検定を併用することで結論の頑健性が大きく増す。
弱定常の定義は分散が時間不変であることを要求する。 しかし株価リターンなどの金融時系列では、 平均は定常でも 分散だけ時間とともに変動するクラスタリング が頻繁に現れる。 こうした性質を 条件付き異分散 (conditional heteroscedasticity) と呼び、 これを取り扱うために Engle が 1982 年に提案した ARCH モデル、 さらに Bollerslev が 1986 年に拡張した GARCH モデル がある。 ARCH 効果の存在は、 残差平方の自己相関に Ljung-Box を当てるか、 Engle の LM 検定を使えば検出できる。 注意すべきは、 ARCH があっても平均過程が弱定常であれば ARMA は適用可能だが、 標準誤差の解釈が変わる 点である。 信頼区間や p 値を正しく出すには GARCH やニュートン・ウェスト型の標準誤差を使う必要がある。 月次・四半期の高頻度データで「平均は定常だがボラティリティが変動する」 系列を扱う場面では、 平均過程の定常性検定とは別に ARCH 検定を組み合わせるのが安全である(SSDSE-B-2026 は年次 12 時点なので ARCH 推定には短すぎる点に注意)。
| 系列タイプ | 平均 | 分散 | 推奨モデル |
| 完全に定常 | 一定 | 一定 | ARMA(p,q) |
| 平均は定常、 分散変動 | 一定 | 時間で変動 | ARMA + GARCH |
| トレンド非定常 | 上昇/下降 | 概ね一定 | ARIMA(p,1,q) または トレンド回帰 |
| 構造変化あり | 段階的に変化 | 変化点でジャンプ | 局所定常 + Bai-Perron |
| 季節性あり | 周期的 | 周期的 | SARIMA, STL 分解 |
ARIMA における差分回数 $d$ は通常 $0,1,2$ といった整数値だが、 1980 年代に Granger と Joyeux、 Hosking らが提案した ARFIMA (Autoregressive Fractionally Integrated Moving Average) モデルでは $d$ を $0 \leq d < 0.5$ の実数とする 分数階差分 を許容する。 これは「定常だが ACF がゆっくり減衰する長期記憶過程 (long memory process)」を表現するために生まれた。 金融指標や物価指数の長期時系列では、 「ADF では弱く非定常が示唆されるが KPSS では弱く定常が示唆される」 という中間ゾーンが頻繁に観測される。 こうした系列に対して通常の 1 階差分を当てるのは過差分であり、 0.3 や 0.4 といった分数階差分が最適となる。 ARFIMA を実装するには、 statsmodels や arch パッケージで $d$ をパラメータ推定すればよい。 なお SSDSE-B-2026 に CPI(消費者物価指数)の列は無く、 年次 12 時点では長期記憶の推定は困難なので、 ARFIMA の題材には総務省の月次 CPI など長い系列を使うとよい。 長期記憶を持つ系列を整数階差分で扱うと将来予測の分散が過大評価される一方、 ARFIMA は適切な不確実性を返してくれる。
SSDSE-B-2026 のような 都道府県 × 年 のパネルデータでは、 単独時系列の ADF/KPSS だけでなく パネル単位根検定 が必要になる。 47 都道府県を別々に ADF にかけると有意水準のコントロールが甘くなり (multiple testing problem)、 また各都道府県のサンプル数が比較的少ないため検出力も弱い。 そこで Levin-Lin-Chu (LLC、 2002) や Im-Pesaran-Shin (IPS、 2003)、 Maddala-Wu (1999)、 Pesaran (2007) といった パネル全体での単位根検定 を用いる。 LLC は「すべてのパネル単位で単位根あり」を帰無、 「すべてのパネル単位で定常 (共通の自己回帰係数)」を対立とする。 IPS は対立仮説を緩めて「少なくとも一部のパネル単位で定常」とする点が異なる。 SSDSE-B-2026 の県別データで「日本全体としての人口は I(1) か」 を問う場合は LLC が適し、 「47 都道府県のうちすでに定常化している県はあるか」 を問う場合は IPS が適する。 この選択を曖昧にすると政策含意が変わるので注意したい。
SSDSE-B-2026 47 都道府県の総人口 A1101 (2012-2023) の
Fisher 型 (Maddala-Wu) パネル単位根検定 (実測)
※各県の ADF p 値 (maxlag=1) を χ² = −2Σln(p)、 自由度 94 で合成
レベル系列
χ² 統計量 = 52.1 (df = 94)
p 値 = 0.9999 → 単位根を棄却できない
→ 「パネル全体として人口時系列は非定常」
1 階差分系列
χ² 統計量 = 47.5 (df = 94)
p 値 = 1.0000 → 差分後も単位根を棄却できない
→ 減少の加速と COVID 期の変動により、 12 時点では差分でも定常化しない
結論: 2012-2023 の短いパネルでは「差分すれば定常」という定石が
通用しない。 トレンド項付きの仕様や長期データでの再検証、 LLC / IPS /
CIPS など仮定の異なるパネル検定の併用が必要 (これらは statsmodels
未実装のため、 ここでは Fisher 型合成のみを実測した)
定常性は時系列分析における「データ衛生」のような前処理工程であり、 ここを丁寧に通すかどうかで後段のモデリング品質が決まる。 SSDSE-B-2026 を題材にレポートを書く受講生は、 (a) 原系列のプロット、 (b) ADF + KPSS の併用、 (c) 必要に応じた差分、 (d) 構造変化と ARCH 効果の検査、 (e) パネルなら LLC/IPS の選択、 (f) 中間ゾーンなら ARFIMA の検討、 という六段階の儀式を毎回踏むよう推奨する。 これだけで論文・コンペ・実務報告のいずれにおいても再現性と説得力が大きく向上する。 「定常化したら最後、 あとは自由」ではなく、 「定常化のプロセスをすべて文書化しておく」 ことがプロフェッショナルな時系列分析者の最低条件である。 SSDSE-B-2026 を扱う教育コンテンツとしては、 「定常か非定常か」 という二択ではなく、 「どんな種類の非定常がどの程度残っているか」 を測る連続的な視点を強調することで、 受講生はリアルワールドの曖昧さに対応できる思考力を身につけられる。
定常性の概念は 1927 年に Yule が AR(2) モデルを用いて太陽黒点数を分析した論文に遡る。 Yule は「過去の振動が現在の値を決める」という発想を提示し、 これが現代の AR モデルの原型となった。 1931 年には Slutsky が「ランダムショックの線形結合が周期的な系列を生成しうる」 ことを示し、 ホワイトノイズと定常過程の関係が明らかになった。 1938 年に Wold が Wold 分解定理 を発表し、 任意の弱定常過程は決定論的成分と無限次 MA 過程の和に一意分解できることを証明した。 これにより MA 過程の重要性が確立し、 ARMA という枠組みへ繋がる。 1970 年代に Box と Jenkins が ARIMA 法 を体系化し、 差分による定常化と ACF/PACF を用いたモデル同定が実務に普及した。 1981 年に Dickey と Fuller が 単位根検定 を発表し、 定常性検査が定量的になった。 1980 年代後半には Engle と Granger が共和分を提唱し、 1990 年代に Johansen が多変量共和分のフレームワークを完成させた。 こうした歴史的蓄積を踏まえ、 Hamilton の名著 Time Series Analysis (1994) が現代時系列分析の標準的バイブルとなり、 今日に至るまで定常性は時系列分析の核心概念であり続けている。 SSDSE-B-2026 を分析する学生も、 この百年に及ぶ歴史的成果を継承していることを意識すると、 単なる手順としてではなく学問的伝統の一部として定常性検査を捉えられる。
機械学習が時系列予測の主流になった現代でも、 定常性の概念は重要性を失っていない。 むしろ 分布シフト (distribution shift)、 共変量シフト (covariate shift)、 概念ドリフト (concept drift) といった ML 文脈での「定常性の崩れ」 が新たな研究テーマとして注目されている。 たとえば LSTM や Transformer をそのまま非定常な時系列に当てはめても、 訓練期間で学んだ表現が予測期間で通用しない問題が頻発する。 これは伝統的時系列分析でいう「見せかけの関係」 の機械学習版である。 SSDSE-B-2026 の都道府県データを深層学習で予測しようとするなら、 (1) ARIMA 流の差分で前処理してから入力する、 (2) Reversible Instance Normalization (RevIN) のようなオンライン正規化を組み込む、 (3) ドリフト検出 (DDM, ADWIN) で再学習タイミングを管理する、 といった工夫が必要になる。 古典的な定常性概念は機械学習の現場で形を変えながら今も生きており、 これを理解することが「次世代の時系列分析者」 への必須スキルである。
最後に、 統計データ分析コンペティションを目指す受講生に向けて教育的視点からまとめる。 定常性は単独で覚える単語ではなく、 「時系列を統計モデル化する権利を得るためのパスポート」 である。 ヒストグラムや相関係数といった横断的統計の道具は、 観測値が iid であることを暗黙の前提としている。 時間順序のあるデータをそのままヒストグラムに突っ込めば、 トレンドや季節性で歪んだ姿しか得られない。 ここで定常性検査というステップを挟むことで、 「時間の構造を取り除いてから横断的統計道具を使う」 という二段階の分析が可能になる。 ARIMA はその二段階を一つにまとめてくれる枠組みであり、 機械学習でも同じ哲学が形を変えて現れる。 SSDSE-B-2026 を用いたコンペティションでは、 単に高い予測精度を出すだけでなく、 「なぜ自分の前処理が妥当だったか」 を定常性の語彙で説明できるかが評価のポイントになる。 「ADF と KPSS の併用結果からこの系列は I(1) と判定し、 1 階差分して ARIMA(2,1,1) を選んだ」 と一文で説明できるようになれば、 君は時系列分析の正統的伝統の継承者である。
実務的な勘所として、 定常性の確認は 「分析パイプラインの最上流にあるべきチェックポイント」 と位置付けるとよい。 データを読み込んだ直後、 EDA に入る前の段階で原系列をプロットし、 ADF と KPSS を走らせ、 必要なら差分を適用して定常化する。 これは料理における「材料の鮮度確認」 に似ており、 ここをサボると後工程のすべてが台無しになる。 SSDSE-B-2026 を題材にしたチュートリアルでは、 次の四つの問いを必ず学生に解かせると教育効果が高い。 (1) 都道府県別人口を時系列プロットして、 トレンド・周期・水準シフトのどれが優勢かを判定する。 (2) ADF と KPSS の結果が一致するか、 一致しない場合はどう解釈するか。 (3) 1 階差分後の残差で過差分の兆候 (自己相関が負に振れる) を検出できるか。 (4) 差分した系列に ARMA を当てて、 残差が Ljung-Box でホワイトノイズと言えるかを確認する。 この四段階を踏むだけで、 学生は「データを見る目」 を体系的に獲得できる。 SSDSE-B-2026 は身近な日本の地域データなので、 直感と統計検定の結果が結びつきやすく、 教材として極めて優れている。 定常性という抽象概念を、 自分の出身地の人口推移という具体に落とし込めることが、 この教材の最大の魅力である。
さらに進んだ視点として、 機械学習や深層学習のフレームワークでも定常性を意識した 特徴量エンジニアリング が予測性能を大きく左右する。 LightGBM や XGBoost で時系列を扱う場合、 単に「年月」 を特徴量に入れるだけではトレンドを学習できない。 そこで、 1 期前との差分・移動平均・移動標準偏差・季節差分といった 定常化された派生特徴量 を作って入力するのが定石である。 これらの特徴量は本質的に「定常な変動」 だけを残しており、 ツリー系モデルが安定して学べる。 SSDSE-B-2026 のような小サンプル時系列では、 特徴量設計が深層学習以上に効くので、 定常性の知識をそのまま特徴量エンジニアリングに翻訳できる学生は強い。 結局のところ、 「定常性を理解する」 とは「時系列という対象から余計な構造を引き剥がして、 統計や ML が扱える形に整える」 ことなのだ。 この基本姿勢を身につけたら、 ARIMA でも Prophet でも LSTM でも Transformer でも、 道具を選ぶ自由を獲得できる。 SSDSE-B-2026 を題材にして、 同じ系列を ARIMA、 Prophet、 LightGBM、 LSTM で同条件で予測してみると、 どのモデルがどんな種類の非定常に強いかを実感できる。 これは「アルゴリズムを選ぶ感覚」 を養う最高のトレーニングとなるだろう。 定常性のレンズで時系列を見れば、 道具に振り回されずに目的に合う最適なモデルを設計できる分析者へと成長できる。 これこそが、 統計と機械学習の橋渡しにおける定常性の真の価値であり、 時代を超えて生き残る理論的支柱である。 この支柱を心の中に建てれば、 君はどんな時系列課題に対峙しても、 まず最初に問うべき問い、 すなわち「この系列はそもそも統計モデルに乗る権利を持っているか」 を自然に発するようになる。 その問いから始める時系列分析者だけが、 表面的な数字遊びを超えて、 データの背後にある時間の構造を読み解ける真のアナリストとなる。 SSDSE-B-2026 は、 そんな分析者を育てるための恵まれた教材であり、 真摯に向き合う学生にとっては時系列分析の世界へ続く扉である。 定常性という鍵を手にした君が、 この扉を開けて広大な時系列分析の世界を歩み始めることを心から期待している。 自分が住んでいる都道府県の人口推移を題材にして、 ADF と KPSS を走らせてみるだけでも、 統計理論が身近な実感と結びつく瞬間が訪れる。 その瞬間こそが、 学問が君のものになる瞬間である。 統計と地域の物語が交わる場所で、 君の分析者としての旅が本格的に始まる。 定常性はそのスタート地点に置かれた標識である。
🗺 概念マップ — 定常性の位置
時系列分析
├── データの性質
│ ├── 定常性 ◀ このページ
│ │ ├── 強定常(厳密定常)
│ │ ├── 弱定常(共分散定常)
│ │ ├── トレンド定常
│ │ └── 周期定常
│ ├── 非定常性
│ │ ├── トレンド付き
│ │ ├── 単位根
│ │ ├── 季節性
│ │ ├── 構造変化
│ │ └── ボラティリティ変動
│ └── 自己相関構造
├── 検定
│ ├── ADF 検定(H₀: 単位根)
│ ├── KPSS 検定(H₀: 定常)
│ ├── PP 検定
│ └── DF-GLS 検定
├── 定常化手法
│ ├── 1 階差分($\Delta y$)
│ ├── 2 階差分
│ ├── 季節差分($\Delta_s y$)
│ ├── 対数変換 + 差分(log return)
│ └── トレンド除去
└── モデル
├── ARMA(定常前提)
├── ARIMA(差分込み)
├── SARIMA(季節 + 差分)
├── VAR
├── VECM(共和分)
└── GARCH(分散非定常)
❓ よくある質問
Q1. 強定常と弱定常、 どちらを気にすればいい?
実用ではほぼ常に弱定常(共分散定常)で十分。 ARIMA・VAR などの統計理論は弱定常を前提に組まれている。 強定常は理論的議論や非ガウス系列で重要。
Q2. ADF と KPSS、 どちらの結果を信じる?
両方を実行して合意を確認する。 食い違うときは、 サンプル数・構造変化・トレンド項の指定を見直す。 単独の判定より組み合わせが信頼できる。
Q3. 1 階差分で定常化しない場合は?
2 階差分を試す。 それでも非定常なら、 構造変化や明確なトレンドが疑われる。 対数変換、 季節差分、 トレンド除去を組み合わせる。 ARFIMA(分数階差分)も選択肢。
Q4. クロスセクションデータ(都道府県別、 国別)に定常性は適用される?
時系列の概念なので直接は適用されません。 ただし「群間均質性」「空間定常性」など類似概念はある。 SSDSE-B のような都道府県データでは、 「47 県の分布が単一の母集団から来ているか」という観点で議論できます。
Q5. パネルデータ(時系列 × クロスセクション)では?
パネル単位根検定(Im-Pesaran-Shin、 Levin-Lin-Chu、 Fisher-type など)がある。 個別系列ごとに定常性が異なる場合の処理も研究されている。
Q6. ARIMA で d を選ぶ実践的方法は?
(1) 系列プロットで明らかなトレンドがあれば $d \ge 1$、 (2) ADF で非定常なら差分を 1 回取って再検定、 (3) 定常になるまで繰り返す(通常 1 か 2 で十分)。 pmdarima.auto_arima で自動選択も。
Q7. 「定常」と「ホワイトノイズ」の違いは?
ホワイトノイズは最も基本的な定常系列(平均 0、 分散一定、 自己相関 0)。 定常系列の中には、 自己相関を持つもの(AR、 MA、 ARMA など)も含まれる。 ホワイトノイズ ⊂ 定常系列。
Q8. 季節性は「非定常」か「定常」か?
「決定的季節性」(毎年確実に夏は高い)は非定常。 「確率的季節性」(季節パターンが時間とともに変わる)も非定常。 季節差分や SARIMA でモデル化する。
Q9. 状態空間モデルでは定常性は不要?
状態空間モデルは非定常を直接扱えるので、 差分化は必須ではない。 ただしカルマンフィルタの収束や予測誤差の分散の解釈で、 状態方程式の定常性を意識する場面はある。
Q10. なぜ「単位根」と呼ぶ?
AR(p) モデル $\Phi(L) y_t = \varepsilon_t$ の特性方程式 $\Phi(z) = 0$ の根が単位円 $|z| = 1$ 上にあるとき。 つまり $\phi = 1$ のとき AR(1) なら $1 - L = 0$ の根は $z = 1$。 これが「単位根」の語源。
Q11. データが正規分布でなくても ADF 検定は使える?
ADF の漸近分布は誤差項の正規性に頼らない(Said-Dickey の証明)。 ただしサンプル数が少ないとき非正規性の影響を受ける。 ブートストラップ ADF や PP 検定で頑健化できる。
Q12. 「単位根がある」と「I(1)」は同じ?
ほぼ同義。 単位根を 1 つだけ持つ系列が I(1)(1 階の和分過程)。 単位根を 2 つ持てば I(2)、 一般に I(d) で $d$ 階差分で定常化する。
Q13. 株価収益率は定常か?
「価格」は非定常(ランダムウォークに近い)。 「対数収益率 $r_t = \log(p_t / p_{t-1})$」はおおむね定常(平均 0 付近、 分散ほぼ一定)。 ただし分散自体が時間変動するボラティリティクラスタリング → GARCH モデルへ。
Q14. 自然科学(気象・地震)でも定常性は重要?
はい。 気温の年次平均は地球温暖化で非定常(トレンド)、 地震の発生頻度は領域に依存して非定常。 「気候の定常性」が議論されることも。 ノイズ除去・予測モデルの基盤として、 自然科学でも標準概念。
Q15. 機械学習(LSTM、 Transformer)では定常性は不要?
深層学習モデルは非定常データも扱えるが、 「定常化+学習」のほうが安定し、 サンプル効率も良い。 また定常化することで「真にモデルが捉えた関係」と「自明なトレンド」を区別できる。 ML でも前処理として推奨。
Q16. 「定常性検定をして p > 0.05 だったから非定常」と結論する危険性は?
p > 0.05 は「H₀ を棄却できない」だけで「H₀ が正しい」とは言わない。 サンプル数不足の可能性、 検出力の問題を考慮する。 単一の検定で断定せず、 ACF プロット、 ローリング統計量、 複数検定の結果を総合する。
🗺 学習ロードマップ
「定常性」を起点に、 同カテゴリ「時系列」を体系的に学ぶ推奨順序を示します。
- Week 1:本ページの定義・数式・直感を完全に押さえる。 1 日 30 分 × 5 日。
- Week 2:Python コードを写経し、 SSDSE-B-2026 で動作確認。 自分のデータでも試す。
- Week 3:「🔗 関連用語」の前提側を読み、 基礎を補強する。
- Week 4:「🔗 関連用語」の並列側を読み、 比較できる引き出しを増やす。
- Week 5:「🔗 関連用語」の発展側を読み、 上位概念や応用に進む。
- Week 6:関連グループ教材で全体像を再確認し、 知識を再構築する。
📚 備考:6 週間は目安です。 自分のペースで進めて構いません。 重要なのは「定義 → 実装 → 関連用語 → 再構成」のサイクルを 1 度回し切ること。
❓ さらなる FAQ
Q. 「定常性」は古い手法ですか? 最新の AI で代替できますか?
A. 古いから無価値ではありません。 むしろ「定常性」のような基礎概念は新手法の解釈に必要。 LLM が出した結果を評価するのにも、 結局この種の概念が使われます。
Q. SSDSE-B-2026 はどこで取得できますか?
A. 独立行政法人統計センターの公式サイト(
www.nstac.go.jp)からダウンロード可能。 教育用標準データセット(SSDSE)として整備された CSV ファイル。
Q. Python 以外の言語で同じことをするには?
A. R では tidyverse、 Julia では DataFrames.jl、 SQL では集約関数とウィンドウ関数で同様の処理が可能。 概念は言語によらず共通です。
Q. 数式が苦手です。 どこから手を付ければ?
A. 「🎨 直感で掴む」を 3 回読み、 「🧮 実値で計算」で手を動かす。 数式は最後で OK です。 概念の形が分かれば、 数式は記号の翻訳作業に過ぎなくなります。
📊 ADF 検定の詳細
Augmented Dickey-Fuller (ADF) 検定は、 時系列に「単位根」(unit root)があるかを判定する標準手法です。 単位根があれば非定常、 なければ定常と判定します。
| ケース | 解釈 | 対処 |
| p < 0.05 | 定常と判定(H₀ 棄却) | そのままモデリング可 |
| p ≥ 0.05 | 非定常を否定できない | 差分・対数変換・トレンド除去 |
| 差分後 p < 0.05 | I(1) 系列(1 階和分) | ARIMA(p,1,q) を適用 |
| 差分後も p ≥ 0.05 | I(2) 以上 | 2 階差分または別モデル |
ADF と並んで KPSS 検定もよく使われます。 ADF は「単位根あり」を帰無、 KPSS は「定常」を帰無にするので、 両方併用すると判定がより確実になります。
🔗 隣接手法への橋渡し
定常性は時系列分析の前提概念。 SSDSE-B-2026 は 2012〜2023 年度の 12 年 × 47 都道府県パネルなので、 実在列 (総人口 A1101 / 高齢人口 A1303 / 出生数 A4101 など) から各県 12 時点の時系列が取れる。 「平均と分散が時間とともに変化しないか」を ADF / KPSS 検定で確認し、 非定常なら差分 Δy_t = y_t − y_{t-1} や対数差分で定常化してから ARIMA / VAR に投入する。
- 上流: 時系列データ、 トレンド、 季節性、 自己相関。 都道府県人口は単位根 (人口減少ドリフト) を持つ典型。
- 並列: ADF 検定 (帰無=単位根)、 KPSS 検定 (帰無=定常)、 PP 検定 (Phillips-Perron) を補完的に併用。
- 下流: ARIMA の I (Integrated) 次数決定、 共和分、 GARCH (分散の非定常性)、 状態空間モデル。
非定常データに通常の相関・回帰を適用すると「見せかけの相関」(spurious correlation) が発生。 SSDSE-D など複数年データでは ADF + KPSS の二重チェックを必須化する。
🌳 手法選択フロー
SSDSE 時系列データに対する定常性検査と差分化のフロー。
- ① 時系列をプロット: matplotlib で生データを描画。 明確な上昇/下降トレンドや分散変化が目視できれば非定常の予兆。
- ② 検定で確認:
statsmodels.tsa.stattools.adfuller (ADF, 帰無=単位根) と kpss (帰無=定常) を両方実行。 ADF p<0.05 かつ KPSS p>0.05 なら定常。 不一致なら弱定常 (差分定常 vs トレンド定常) の判別へ。
- ③ 定常化: 単位根があれば 1 階差分 d=1、 残れば 2 階差分 d=2。 対数を取ってから差分すると対数収益率になり、 経済データで有効。 季節性があれば季節差分 (12 ヶ月差分など)。
ARIMA(p, d, q) の d はこのフローで決定。 SSDSE-B-2026 を単年度で切り出した 47 都道府県データは横断面なので定常性議論は不要、 年度方向 (2012-2023 の 12 時点) の時系列として扱うときのみ適用。 12 時点と短いので maxlag を小さく取り、 検出力の低さに注意する。
🧭 さらに深掘り — 直感・落とし穴・発展の総整理
本節は既存の解説を壊さずに追記したまとめ強化編です。 「定常性とは何を仮定しているのか」を一段深く掴み直し、 実務で必ず出会う落とし穴と発展先を、 SSDSE-B-2026 の新しい実測例(東京都の総人口)を軸に整理します。
🎨 直感の再確認 — 「顔つきが時間で変わらない」
定常性は「時系列を時間軸のどこで切り出しても統計的な顔つき(平均・分散・自己共分散)が同じ」という仮定です。 弱定常(共分散定常)は平均・分散・自己共分散の 3 つだけを問い、 強定常はすべての結合分布を問います。 多くの時系列手法(AR・ARMA・ARIMA・VAR)は弱定常を土台に成立するため、 分析の最初の関門になります。 非定常なら定常化——線形トレンドは 1 階差分 $\Delta y_t = y_t - y_{t-1}$、 増加率が本質なら対数変換してから差分(対数差分=近似的な成長率)、 季節性は季節差分 $\Delta_s$ で除去します。
🧮 新しい実測例 — 東京都の総人口(A1101, 2012-2023)
既出の「全国合計」「死亡数」「出生数」とは別に、 特定県の時系列として東京都の総人口を取り上げます。 以下はすべて SSDSE-B-2026.csv(cp932, 2 行目のスキップ)から算出した実測値です。 12 時点(12 年)と短いため、 単位根検定の検出力は低く、 結果は目安として読む必要があります。
| 項目 | 実測値 | 判定 |
| 原系列 ADF(maxlag=1, autolag=AIC) | 統計量 = −2.00、 $p = 0.287$ | 単位根を棄却できず → 非定常 |
| 原系列 KPSS(regression='c') | 統計量 = 0.656、 $p = 0.018$ | 定常の帰無を棄却 → 非定常 |
| 原系列のラグ 1 自己相関 | $\rho_1 = 0.988$ | ほぼ 1(単位根に近い強い慣性) |
| 1 階差分後 ADF | 統計量 = −1.20、 $p = 0.674$ | 差分してもなお非定常 |
東京都の人口は 2012 年度 1,323.4 万人から 2023 年度 1,408.6 万人へ増加しましたが、 年差分(前年度差)を見ると +7.3 → +13.1 → …(増加)→ 2020 年度 +4.1 → 2021 年度 −3.8(コロナ禍で初の減少)→ +2.8 → +4.8 と、 差分系列そのものに構造変化が入っています。 このため 1 階差分でも定常化せず($p = 0.674$)、 「差分すれば必ず定常になる」という思い込みが崩れる好例になります。 ADF と KPSS が同時に非定常を示した点も、 両検定を併用する意義(下記)を裏づけます。
⚠️ 12 年短系列の注意:$n = 12$ では ADF・KPSS とも検出力・サイズ歪みが大きく、 $p$ 値はあくまで参考です。 本来は月次・四半期など長い系列で判定すべきで、 年次 12 点の結果は「傾向の確認」に留めるのが適切です。
⚠️ 落とし穴の総まとめ(重要)
- 見せかけの回帰:非定常同士を回帰すると無関係でも高 $R^2$・高 $t$ 値が出る(Granger & Newbold 1974)。 回帰前に定常化し、 疑わしければspurious-correlation.html と共和分検定で確認する。
- ADF と KPSS の帰無仮説が逆:ADF は「単位根あり(非定常)」が帰無、 KPSS は「定常」が帰無。 ADF で $p < 0.05$ かつ KPSS で $p > 0.05$ なら定常と自信を持てる。 両者不一致なら判断保留(差分定常かトレンド定常かの見極めへ)。
- トレンド定常 vs 差分定常:時間の関数を引けば定常になる(トレンド定常)のか、 差分で定常になる(差分定常=単位根)のかは別物。 ADF の回帰にトレンド項 $\beta t$ を入れる/入れないで結論が変わる。 誤ると過剰/過小な差分につながる。
- 過剰差分(over-differencing):必要以上に差分すると MA 単位根(負の強い自己相関)を作り込み、 分散を膨らませる。 差分後の ACF を確認し、 最小の $d$ を選ぶ。
- 季節性の見落とし:月次・四半期では通常差分だけでは季節成分が残る。 季節差分 $\Delta_{12}$ や SARIMA、 X-13ARIMA-SEATS 等の季節調整が要る。
- 構造変化(structural break):リーマン・コロナのような水準/トレンドの断絶があると全期間定常の仮定は無理。 上の東京都差分がまさにこれ。 通常の ADF は構造変化を単位根と誤認しやすく、 Zivot-Andrews 検定など変化点を許す検定が必要。
- 検定の検出力:短い系列では真に定常でも「非定常」と誤判定しやすい。 $p$ 値だけでなく系列プロット・ACF・複数検定を併用する。
🚀 発展 — 検定・和分・共和分・構造変化
- 単位根検定の三兄弟:ADF(ラグ項で自己相関を吸収)、 PP=Phillips-Perron(分散を頑健に補正)、 KPSS(帰無が定常)。 帰無仮説の向きが違うので組み合わせて読む(詳細は本ページ内 ADF と KPSS の併用)。
- 和分次数 $I(d)$:$d$ 回差分で定常化する過程。 ランダムウォーク $y_t = y_{t-1} + \varepsilon_t$ は代表的な $I(1)$(単位根)で、 ドリフト付きなら確率トレンドを持つ非定常。
- 共和分(cointegration):個々は $I(1)$ で非定常でも、 ある線形結合が $I(0)$(定常)になる長期均衡関係。 Engle-Granger 2 段階法・Johansen 検定で検出(本ページ内 共和分)。 見せかけの回帰の「例外」を正しく扱う枠組み。
- 分散の非定常性:平均は定常でも分散が時変(ボラティリティ・クラスタリング)なら ARCH/GARCH の対象。 差分では消えないため対数変換や条件付き分散モデルを使う。
- 構造変化検定:Chow 検定(変化点既知)、 Bai-Perron(複数の未知変化点)、 Zivot-Andrews(単位根と変化点の同時検定)。
- あてはめ先:定常化後は ARIMA($I$ 次数=差分回数)、 多変量なら VAR、 平滑化予測なら 指数平滑法、 因果方向の議論は グレンジャー因果 へ。
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