この教材は原論文と同じデータを読み込み、同じ手順で計算し直しています。画面に出る数値と図は、あなたのブラウザがその場で計算した結果です。
| 原論文が使ったデータ | SSDSE-D・SSDSE-E・都道府県幸福度ランキング 分析単位:都道府県 中核手法:相関分析 |
|---|---|
| この教材が使うデータ |
|
| 原論文(PDF) | 「文化」を通し生活を豊かにするには 審査員奨励賞/浅野 心春(神戸大学附属中等教育学校) |
▶ ここに書いてある分析は、ページ下部の「🐍 ブラウザで動かす」でそのまま実行できます(インストール不要)。動かしているのは code/2022_H5_1_shorei.py(311 行)そのものです。
このページの実再現の図(図1・図2)は、以下の手順で自分で再現できます。コードの編集は不要です。(幸福度はブランド総合研究所の調査が出典でSSDSEに無いため、図4と4.4の数値は原論文の報告値を可視化します。)
data/raw/ フォルダに入れます。html/figures/ に自動保存されます。原論文が使ったのは2016/2018年のデータですが、手元のSSDSEは2021年値のため、実再現の相関の値は原論文と一致せず、パターンの一致を確かめます。
著者は、文化的な活動(芸術・文化を学ぶ、趣味・娯楽を楽しむ、文化に関わるボランティアをする、など)は人々の生活を豊かにする重要な要素だと考えた。しかし文化庁の世論調査では、この1年で文化芸術イベントを「まったく・ほとんど鑑賞していない」と答えた人が46.1%にのぼるなど、文化は多くの人にとって身近ではない。そこで、どんな環境(文化施設)が人々の文化的活動を後押しするのか、そして文化的活動は本当に生活の豊かさ(幸福度)に結びつくのかを、都道府県データで統計的に確かめようとした。
分析はシンプルで一貫している。まず、3つの文化的活動の行動者率(過去1年間にその活動をした人の割合)と、5種類の文化施設数(公民館・図書館・博物館・映画館・劇場音楽堂)の相関を都道府県ごとに調べる。次に、同じ3つの活動の行動者率と幸福度(都道府県幸福度ランキングの点数)の相関を調べる。施設と活動の関係、活動と幸福の関係――この2段構えで「環境を整えれば豊かになるのか」に迫る。
高校生の部 SSDSE-D 行動者率+SSDSE-E 施設数 相関分析 散布図 幸福度(報告値)
本研究は3種類の出典を組み合わせている。文化的活動の行動者率はSSDSE-D(社会生活統計指標)から、文化施設数はSSDSE-Eから、幸福度はブランド総合研究所「第4回 地域の持続性調査2022」から取っている。このうちSSDSE-D・SSDSE-Eは教育用標準データセットに収録があり再現可能だが、幸福度はSSDSEに無い。
| 役割 | データ | 出典(年次) | 本ページでの扱い |
|---|---|---|---|
| 活動① | 芸術・文化の学習・自己啓発・訓練の行動者率 | SSDSE-D(原論文2016年) | 実再現(現行2021年で再計算) |
| 活動② | 趣味・娯楽(総数)の行動者率 | SSDSE-D(原論文2016年) | 実再現(現行2021年で再計算) |
| 活動③ | スポーツ・文化・芸術・学術のボランティア行動者率 | SSDSE-D(原論文2016年) | 実再現(現行2021年で再計算) |
| 施設 | 公民館・図書館・博物館・映画館・劇場音楽堂の数 | SSDSE-E-2022v2(原論文2016/2018年) | 実再現(現行2021年で再計算) |
| 幸福度 | 都道府県幸福度ランキング(点) | ブランド総合研究所(2022年) | 報告値の可視化 |
過去1年間に各活動をした人の割合(行動者率)を都道府県ごとに求め、5種類の文化施設数との相関を取る。「どの施設が人々の文化的活動を支えているか」を確かめる。
相関係数の数字だけでなく、散布図で点の並びを目で見る。正の相関・無相関の代表例を並べて、数字の意味を体感する。
3つの活動の行動者率と幸福度(点)の相関を見る。文化的活動が生活の豊かさに結びつくかを確かめる。幸福度はSSDSE外のため、この部分は報告値を用いる。
原論文の出発点は「どんな施設が人々の文化的活動を支えているか」だった。ここはSSDSEで実再現できる中心部分である。行動者率(SSDSE-D)と施設数(SSDSE-E)を結合し、相関を計算する。
skiprows=[1] で読み込み、男女計(0_総数)の47都道府県だけを残して3つの活動の行動者率を取り出す。SSDSE-E は年度行・ラベル行の2行がメタ情報なので skiprows=[1,2] で読み、5種類の施設数を取り出す。両者を都道府県名で結合する。105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 | d = pd.read_csv(DATA_D, encoding='cp932', header=0, skiprows=[1]) d = d[d['SSDSE-D-2023'] == '0_総数'] # 男女計のみ d = d[d['Prefecture'] != '全国'].copy() # 全国行を除外 → 47都道府県 act = d[['Prefecture'] + [ACT_CODE[a] for a in ACT_ORDER]].copy() act.columns = ['Prefecture'] + ACT_ORDER for a in ACT_ORDER: act[a] = pd.to_numeric(act[a], errors='coerce') e = pd.read_csv(DATA_E, encoding='cp932', header=0, skiprows=[1, 2]) e = e[e['Prefecture'] != '全国'].copy() fac = e[['Prefecture'] + [FAC_CODE[f] for f in FAC_ORDER]].copy() fac.columns = ['Prefecture'] + FAC_ORDER for f in FAC_ORDER: fac[f] = pd.to_numeric(fac[f], errors='coerce') m = act.merge(fac, on='Prefecture') |
=== [1] データ読み込みと結合【実再現の準備】===
結合できた都道府県数: 47(全国を除く47都道府県)
行動者率(%)は SSDSE-D-2023(2021年調査)、施設数は SSDSE-E-2026(2021年値)
[先頭5県の結合結果(行動者率と施設数)]
Prefecture 芸術・文化の学習 趣味・娯楽 ボランティア活動 公民館 図書館 博物館 映画館 劇場・音楽堂
北海道 10.0 85.4 2.1 364 165 66 19 74
青森県 6.8 78.6 2.5 242 35 5 7 21
岩手県 7.6 82.9 3.1 174 47 21 8 27
宮城県 9.6 87.0 2.7 434 35 17 11 42
秋田県 8.0 82.1 2.5 315 49 11 4 22139 140 141 142 | repro = pd.DataFrame(index=ACT_ORDER, columns=FAC_ORDER, dtype=float) for a in ACT_ORDER: for f in FAC_ORDER: repro.loc[a, f] = m[a].corr(m[f]) |
=== [2] 施設数と各活動の相関(現行データSSDSE-D 2021×SSDSE-E 2021)【実再現】===
(行=文化的活動の行動者率、列=施設数、値=相関係数)
公民館 図書館 博物館 映画館 劇場・音楽堂
芸術・文化の学習 -0.0518 0.7100 0.7044 0.7372 0.6582
趣味・娯楽 0.0880 0.6456 0.6585 0.7113 0.7613
ボランティア活動 0.0762 0.0468 0.1305 0.0422 -0.0088
[パターンの確認]
・芸術・文化の学習: 公民館 -0.0518(ほぼ0)/他施設は +0.71〜+0.74 の正の相関
・趣味・娯楽 : 公民館 +0.0880(ほぼ0)/他施設は +0.65〜+0.76 の正の相関
・ボランティア活動: どの施設とも弱く(|r|<0.2)、原論文同様に他2活動と傾向が異なる
→ 原論文(2016/2018年)の「公民館は弱相関・他の文化施設は正の相関」という
パターンが、年次の異なる現行データ(2021年)でも再現された。相関の表を棒グラフにした。5施設×3活動の相関係数を並べ、0の線との位置関係を見る。これはSSDSEからの実再現である。
相関係数の数字を散布図で確かめる。正の相関の例(博物館×芸術文化学習、劇場×趣味娯楽)と、ほぼ無相関の例(公民館×芸術文化学習)を並べた。これはSSDSEからの実再現である。
実再現ではパターンの一致を確かめた。ここでは原論文が本文で報告した相関係数そのものを、符号・桁そのままに転記する(原論文は行動者率2016年・施設数2016/2018年で計算)。実再現値ではなく報告値である。
=== [3] 原論文の報告した相関係数の転記【報告値】===
(原論文 4.1〜4.3 が本文で報告した相関係数。SSDSE-D 2016 / SSDSE-E-2022v2)
公民館 図書館 博物館 映画館 劇場・音楽堂
芸術・文化の学習 0.019827 0.585277 0.648990 0.627512 0.552941
趣味・娯楽 0.028130 0.531394 0.594373 0.604691 0.647449
ボランティア活動 0.295286 -0.164863 0.036565 -0.264562 -0.252889
[原論文の読み取り(報告値)]
・芸術・文化の学習: 公民館0.0198(ほぼ無相関)/博物館0.6490・映画館0.6275・
図書館0.5853・劇場音楽堂0.5529 と正の相関。
・趣味・娯楽: 公民館0.0281(無相関)/劇場音楽堂0.6474・映画館0.6047・
博物館0.5944・図書館0.5314 と正の相関。
・ボランティア活動: 公民館0.2953 が最も高い正の相関。博物館0.0366はごく弱く、
図書館-0.1649・映画館-0.2646・劇場音楽堂-0.2529 は負の相関。原論文が報告した相関係数を棒グラフにした。この図は原論文の報告値をそのまま可視化したものである(再計算ではない)。図1の実再現と見比べると、値は違うがパターンが同じことがわかる。
ここからは幸福度との関係。幸福度はブランド総合研究所の調査が出典でSSDSEに無いため、原論文の報告値をそのまま転記する。文化的活動が生活の豊かさに結びつくかを見る。
=== [4] 幸福度と各活動の相関【報告値・幸福度はSSDSE外】=== (原論文 4.4 の報告値。幸福度はブランド総合研究所調査でSSDSE非収録) 幸福度 × 芸術・文化の学習: -0.21537 幸福度 × 趣味・娯楽: -0.17137 幸福度 × ボランティア活動: +0.15684 [原論文の読み取り(報告値)] ・芸術・文化の学習(-0.2154)と趣味・娯楽(-0.1714)は幸福度と負の相関。 ・ボランティア活動(+0.1568)のみ幸福度と正の相関。 → 文化的活動が盛んなほど幸福度が高いとは一概に言えず、活動の種類で正負が 分かれる。因果の向き(活動→幸福か、幸福→活動か)は相関からは決められない。
| 分析 | データ | 結果(報告値) | 本ページ |
|---|---|---|---|
| 博物館数×芸術文化学習 | SSDSE-E×SSDSE-D | 相関0.6490 | 実再現(約0.70・同符号) |
| 公民館数×芸術文化学習 | SSDSE-E×SSDSE-D | 相関0.0198(無相関) | 実再現(約−0.05・同傾向) |
| 劇場音楽堂数×趣味娯楽 | SSDSE-E×SSDSE-D | 相関0.6474 | 実再現(約0.76・同符号) |
| 公民館数×ボランティア | SSDSE-E×SSDSE-D | 相関0.2953(施設中最高) | 実再現(約0.08・弱いが最高付近) |
| 幸福度×芸術文化学習 | ブランド総研 | 相関−0.2154 | 報告値の可視化 |
| 幸福度×ボランティア | ブランド総研 | 相関+0.1568 | 報告値の可視化 |
幸福度との相関を可視化する。この図は原論文の報告値をそのまま可視化したものである(幸福度はブランド総合研究所の調査が出典で、SSDSEに無いため再計算できない)。
実再現と報告値を合わせると、著者の主張は次のように整理できる。図書館・博物館・映画館・劇場といった文化施設が多い地域ほど、芸術・文化の学習や趣味・娯楽が盛んである(4.1・4.2、実再現でも確認)。つまり環境(施設)を整えることは、人々が文化的活動を行いやすくすることに一定貢献している。ただし公民館だけは活動とほぼ無相関で、施設なら何でも良いわけではない。
公民館は芸術・文化の学習・趣味・娯楽とはほぼ無相関だが、ボランティア活動とは施設の中で最も高い正の相関を示した。原論文は、公民館は「なじみが薄く需要と合っていない」一方で、公民館の利用者が多い地域ではボランティアに熱心な人が多いのではないか、と考察する。施設の性格によって結びつく活動が違う、というのが要点である。
ところが、文化的活動の盛んさと幸福度の関係は単純ではなかった。芸術・文化の学習・趣味・娯楽は幸福度と負の相関で、ボランティアだけ正。だから著者は、施設を整備して活動を促すことはできても、それがそのまま生活の豊かさ(幸福度)につながるとは言い切れないと結論する。
本研究は、文化を通して生活を豊かにできるかという問いに、相関分析で挑んだ。文化施設(図書館・博物館・映画館・劇場)が多い地域ほど芸術・文化の学習や趣味・娯楽が盛んで(実再現で確認)、施設整備は文化的活動を促す点で有効。ただし公民館は例外的に無相関。一方で活動の盛んさと幸福度の関係は活動により正負が分かれ(報告値)、環境を整えるだけでは生活の豊かさに直結しないと結論づけた。高校生が身近な「文化」という主題を、施設・活動・幸福の3者の相関に分解して丁寧に読み解いた点が見どころである。
このページの実再現の図(図1・図2)は、以下から再現できます。
🐍 再現コード(.py) 📊 SSDSE-D-2023.csv 📊 SSDSE-E-2026.csv
※ 図1(施設×活動の相関)・図2(散布図)はSSDSE-Dの行動者率(MB06芸術・文化/MD00趣味・娯楽/ME05ボランティア)とSSDSE-Eの施設数(G1201公民館/G1401図書館/G1501博物館/G5101v2映画館/G1604劇場音楽堂)からの実再現です。ただし原論文は2016/2018年、本ページは2021年のデータのため相関の値は一致せず、符号・大小のパターンが一致します。図3(報告値の相関係数)・図4(幸福度×活動)は、原論文の報告値を可視化したものです(幸福度はブランド総合研究所の調査でSSDSE外)。
この研究を読むとき・まねするときに陥りやすい誤解を整理する。
クリックすると各用語の詳しい解説ページに移動できます。
この研究で使われている手法を、手を動かす順に説明する。
この研究の「文化施設は活動と結びつくが、活動は幸福度と単純には結びつかない」という結論は、次の研究の出発点になる。
再現コードを少し変えるだけで試せる課題を、易しい順に用意した。
ACT_CODE の MB06(芸術・文化)を MC00(スポーツの総数)などに替えて、施設数との相関がどう変わるか調べよう。活動の種類で相関が変わることを体感できる。G3102)などもある。FAC_CODE に加えて、体育施設とスポーツ活動の相関を確かめてみよう。0_総数 を 1_男・2_女 に替えて、施設×活動の相関が男女で違うか調べよう。行動者率の男女差が相関に効くか確かめられる。m = m[~m['Prefecture'].isin(['東京都','大阪府'])] で除き、相関がどれだけ変わるか比べよう。外れ値が相関を動かすことを体感できる。A1101)で割って「10万人当たり施設数」にし、行動者率との相関が変わるか確かめよう。規模の影響を除く練習になる。「複数の指標を地域で結合し、種類ごとに相関を見て符号を読む」発想は、行政や企業で広く使われている。
この研究を読んで浮かびやすい疑問に答える。
この論文を理解できたか、クリックで確認しましょう。間違えても解説が出ます。
このページの分析は、この画面の中でそのまま実行できます。
Python をインストールする必要も、CSV をダウンロードする必要もありません。
下のセルの 「▶ ブラウザで実行」 を上から順に押すか、
「▶ 最初から全部実行」 で一気に流してください。
表示されるのは、本文の図表とまったく同じ計算の結果です
(動かしているのは再現スクリプト code/2022_H5_1_shorei.py そのもの)。
コードは書き換えられます。「✏️ 書き換える」で数字や変数を変えて ▶ を押すと、 結果がどう変わるかをその場で確かめられます(元に戻すボタンつき)。 ページを開いた時点で裏で実行環境の準備が始まっているので、待ち時間はほとんどありません。 初回だけ実行環境の取得にインターネット接続が必要です。