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審査員奨励賞[高校生の部] ★

英語力と相関があるものは何か

⏱️ 推定読了時間: 約22分
2022年度(令和4年度)統計データ分析コンペティション | 野村 成那・川田 ののか・小林 菜央華・藤田 雄大・本家 茉桜(兵庫県立姫路西高等学校) | 英語教育実施状況調査(H30)・SSDSE-D-2021・ナレッジステーション/再現はSSDSE-B-2026 | 相関分析(散布図・相関係数)・指標の算出(1校あたりALT活用人数)
🔬 散布図🔬 相関分析🏷 教育・学力🏷 外国人・国際
🔬 手法タグ / 🏷 応用タグ(クリックで同タグの論文をネットワーク検索)
🔬 再現カルテ — 原論文のデータが手に入らないため、代替データで再現

この教材は、原論文が使ったデータそのものを使えていません。そこで代わりのデータで同じ問いを追いかけ、結論の向き(増える/減る、強い/弱い)が原論文と一致するかを確かめます。「同じ数値が出る」ことは目標にしていません。

原論文が使ったデータSSDSE-D・英語教育実施状況調査・都道府県別学校数(ナレッジステーション)・日本における ALT の現状と問題点の改善
分析単位:都道府県
中核手法:相関分析
この教材が使うデータ
原論文(PDF)英語力と相関があるものは何か
審査員奨励賞/野村 成那、川田 ののか、小林 菜央華、藤田 雄大、本家 茉桜(兵庫県立姫路西高等学校)
✅ この教材でできること
  • 分析に使うデータは同梱済みで、ブラウザ上でそのまま読み込める
⚠️ この教材ではできないこと(原論文との違い)
  • 原論文と同じデータでの再現はできない:論文=SSDSE-D(社会生活) → 教材=SSDSE-B
  • 原論文は SSDSE-D を使っているが、この教材は SSDSE-B を使っている(原論文本文で確認)
📄 原論文との違いを、もっと詳しく
📄 原論文:SSDSE-D(社会生活基本調査)の学習行動データ等で英語力と相関する要因を分析。
📘 本教材:step 1〜4 は SSDSE-B での代理分析。step 5 で原論文と同じ SSDSE-D の英語学習行動者率を使った分析を再現
⚠️ 注意:SSDSE-D の版が原論文と異なる(2023年版を使用)。
🚀 原論文と同じ粒度で挑戦したい人へ

原論文と同じ粒度のデータは、この教材にも同梱しています。これを読み込めば、原論文と同じ細かさで分析をやり直せます(下の「🐍 ブラウザで動かす」でコードを書き換えて試せます)。ただし原論文が使った項目がすべて収録されているとは限りません。足りない項目は、上の「できないこと」に書いた出典から取ってくる必要があります。

▶ ここに書いてある分析は、ページ下部の「🐍 ブラウザで動かす」でそのまま実行できます(インストール不要)。動かしているのは code/2022_H5_13_shorei.py(348 行)そのものです。

📝 3行で分かる要約

目次

  1. 研究のテーマと目的
  2. 使用データと再現可能性の整理
  3. 分析の流れ:仮説→RQ1相関→RQ2 ALT深掘り
  4. 図1:3要因と英語力の相関(報告値の可視化)
  5. 図2:ALT活用方法別と英語力の相関(報告値の可視化)
  6. 図3:ALTが抱える問題(報告値の可視化)
  7. 主要な発見(原論文の報告値)
  8. 再現コード:外国人人口割合をSSDSE-Bで構築(実再現)
  9. 図4:外国人人口割合の都道府県ランキング(実再現)
  10. 結果の解釈と考察
  11. SSDSE-D 英語学習データでの再現
  12. まとめと今後の課題
  13. データ・コードのDL
  14. ⚠️ よくある誤解
  15. 📖 用語集
  16. 📐 手法ガイド
  17. 🚀 発展の可能性
  18. 🎯 自分でやってみよう
  19. 🤔 Q&A
  20. 🐍 ブラウザで動かす

🎯 この記事を読むと何ができるようになるか

📥 データの準備(再現コードを動かす前に)

このページの外国人人口割合ランキング(図4)は、以下の手順で自分で再現できます。コードの編集は不要です。(英語力・授業での英語使用率・ALTの人数は文部科学省「英語教育実施状況調査」由来でSSDSE-Bに無いため、図1〜図3は原論文の報告値を可視化します。)

1
データをダウンロードする 独立行政法人統計センターの SSDSE(教育用標準データセット)配布ページから、以下をダウンロードします。
SSDSE-B-2026.csv ← SSDSE-B(都道府県別・基礎データ、社会・人口統計体系)📥 直接DL
⬇ SSDSEダウンロードページを開く
2
ファイルを所定のフォルダに配置する ダウンロードしたCSVを、プロジェクトの data/raw/ フォルダに入れます。
2026 統計・データ解析コンペ/ ├── code/ │ └── 2022_H5_13_shorei.py ← 実行するスクリプト └── data/ └── raw/ SSDSE-B-2026.csv ← ここに置く
3
スクリプトをそのまま実行する ターミナルでプロジェクトルートに移動し、以下を実行します。
python3 code/2022_H5_13_shorei.py
図は html/figures/ に自動保存されます。
研究のテーマと目的

国際社会で外国人と意思疎通するには何が必要かを考えた著者らは、世界で最も広く話される言語である英語に着目した。日本は学習言語の9割以上が英語であるにもかかわらず、EF EPI 英語能力指数(2021)で世界112か国・地域中78位と低い。そこで「日本の英語力を上げるために必要なことは何か」を最終目標に、まず「英語力と相関があるものは何か」を明らかにすることをテーマとした。

分析の進め方はシンプルで力強い。まず「英語に触れる時間が長いほど英語力が上がる」という仮説を立て、その仮説に沿って外国人人口・授業での英語使用率・ALTの人数という触れる機会の代理指標を選ぶ。次にそれらと中高生の英語力の相関を散布図で一つずつ確かめ、相関が弱かったALTについては活用方法やALTが抱える問題まで掘り下げる。高校生らしく「身近な仮説を数字で一つずつ検証する」探究の姿勢が全体を貫いている。

78位
日本のEF EPI英語能力指数の順位(2021・報告値)
+0.42
1校あたりALT活用人数×高校生英語力(報告値・最強)
+0.29
外国人人口割合×中学生英語力(報告値)
0.7未満
「かなり強い相関」は一つも見つからなかった
研究の問い 「中高生の英語力と相関があるものは何か」。将来社会で活躍する中高生に着目し、英語に触れる機会(外国人人口・授業での英語使用率・ALT)と英語力の関係を、散布図と相関係数で明らかにする。
分析のキモ:仮説を「触れる機会」の指標に翻訳する 著者らは図1(海外滞在が長いほどTOEICが高い)から「英語に触れる時間が長いほど英語力が上がる」と仮説を立て、それを外国人人口・授業での英語使用率・ALTの人数という測れる指標に落とし込んだ。抽象的な仮説を、手元のデータで検証できる形に翻訳した点が本研究の出発点である。

高校生の部 英語教育実施状況調査・SSDSE-D・ナレッジステーション 相関分析 散布図 指標の自作(1校あたりALT)

使用データと再現可能性の整理

目的変数は中高生の英語力で、文部科学省「英語教育実施状況調査(H30)」の基準に基づく。具体的には中学生=CEFR A1レベル(英検3級)相当以上、高校生=CEFR A2レベル(英検準2級)相当以上の生徒の割合である。説明側の変数は外国人人口割合(SSDSE-D-2021)、授業での英語使用率・ALTの人数と活用方法(同調査)、中学校数・高校数(ナレッジステーション R1)を組み合わせている。年度・出典の異なるデータを組み合わせている点は注意が必要である。

表1 主なデータと出典(原論文 表3 より)

役割変数出典
目的中高生の英語力(CEFR A1/A2 相当以上の生徒の割合)英語教育実施状況調査 H30(文部科学省)
説明外国人の人口割合SSDSE-D-2021 *SSDSE
説明授業での英語使用率/ALTの人数・活用方法英語教育実施状況調査 H30(文部科学省)
加工中学校数・高校数(1校あたりALT活用人数の分母)ナレッジステーション R1

*外国人人口割合は原論文が SSDSE-D-2021 から取得した変数。ALT については「1校あたりのALT活用人数=都道府県別ALT活用人数÷学校数」として著者が加工した指標を用いている。

再現可能性の整理(このページの図の作り方)
  • 報告値の可視化(再計算ではない):目的変数の中高生の英語力(英語教育実施状況調査 H30)SSDSEに無い。相関の相手方のうち授業での英語使用率・ALTの人数/活用方法もSSDSEに無い。よって図1(3要因との相関係数)、図2(ALT活用方法別の相関)、図3(ALTが抱える問題=表4)は原論文の報告値を転記して可視化する。
  • 実再現できる部分:原論文の説明変数のうち、SSDSE-B-2026 で同じ考え方で組み立てられるのは外国人人口割合だけである。原論文は SSDSE-D-2021 の外国人人口割合と中学生の英語力の相関を r=0.29(弱い相関)と報告した。この外国人人口割合を、SSDSE-B-2026 の(総人口 A1101 − 日本人人口 A1102) / 総人口 A1101 × 100 として自分で構築し(図4)、地域差を確かめる。ただし英語力がSSDSEに無いため、再現できるのは「相関の相手方(外国人人口割合)の作り方と地域差」だけである。
  • 新しい数値の捏造はしない:授業での英語使用率・ALTの人数・活用方法・英語力・学校数はSSDSE-B-2026に無いため実再現には使わない。報告値と再計算値はラベルで分離する。

分析の流れ:仮説 → RQ1の相関 → RQ2のALT深掘り

分析の流れ
仮説
英語に触れる
時間が鍵
RQ1 相関
外国人人口・授業
英語率・ALTと
RQ2 深掘り
ALTの活用方法
別に相関
問題調査
ALTが抱える
問題を調べる

① 仮説:英語に触れる時間が英語力を高める

著者らは「海外滞在が長い人ほどTOEICが高い」という図1から、英語に触れる時間が長いほど英語力が上がると仮説を立てた。そのうえで、触れる機会の代理指標として「外国人人口」「授業での英語使用率」「ALTの人数」を選んだ。

② リサーチクエスチョン1:3要因と英語力の相関

3要因と中高生の英語力の相関係数を散布図で一つずつ求めた(図2〜図9)。ALTについては既存データに無い「1校あたりのALT活用人数」をALT活用人数÷学校数で自作して比較している。

③ リサーチクエスチョン2:ALTの深掘り

ALTの活用人数と英語力に「かなり強い相関」が出なかったことを最も意外に感じた著者らは、ALTの活用方法別(生徒とのやり取り/発音指導/授業外交流)に相関を取り直し(図11〜図16)、さらにALTが日本人教師との間で抱える問題(表4)まで調べた。

相関は因果ではない 本研究の相関はすべて都道府県単位の相関であり、因果関係を示すものではない。相関係数の大きさは原論文 表1 の定義(0.2未満=ほとんど無し/0.2〜0.4=弱い/0.4〜0.7=やや/0.7以上=かなり強い)で判断している。
1
図1:3要因と英語力の相関(報告値の可視化)

外国人人口割合・授業での英語使用率・1校あたりALT活用人数と、中高生の英語力の相関係数が原論文 図2〜図9 に報告されている。この図はその報告値をそのまま可視化したものである(目的変数の英語力が英語教育実施状況調査由来でSSDSE-Bに無いため再計算できない)。

やってみよう原論文 図2〜図9 の相関係数(報告値)を転記する
  • ① このコードの目的:原論文が報告した8つの相関係数を符号・桁そのままに転記し、原論文 表1 の定義で「弱い/やや/ほとんど無し」を判定して、最も強い相関を書き出す。再計算ではなく報告値の転記。
  • ② 前後のつながり:ここで「どの要因も強い相関は無く、ALT×高校生が最大」という全体像を掴んでから、次にALTを深掘りする図2・図3へ進む。
▼ 実行結果(原論文の報告値)
=== [1] RQ1:3要因と中高生の英語力の相関(原論文 図2〜図9 の報告値)===
目的変数「中高生の英語力」は英語教育実施状況調査(H30)由来・SSDSE に無く再計算不可(報告値の転記)
要因                  対象               相関係数r   強さ(原論文 表1 の定義)
外国人人口割合             中学生              +0.29   弱い相関
外国人人口割合             高校生              +0.05   ほとんど相関がない
授業での英語使用率           中学生              +0.23   弱い相関
授業での英語使用率           高校・普通科           +0.25   弱い相関
授業での英語使用率           高校・専門学科          +0.31   弱い相関
授業での英語使用率           高校・総合学科          +0.17   ほとんど相関がない
1校あたりALT活用人数        中学生              +0.25   弱い相関
1校あたりALT活用人数        高校生              +0.42   やや相関
→ 最も強い相関: 1校あたりALT活用人数×高校生(r=+0.42/やや相関)
※ 「かなり強い相関(0.7以上)」は一つも無い。ALT活用人数×高校生の r=0.42 が最大(やや相関)。
※ 外国人人口割合は中学生で弱い相関(0.29)だが、高校生ではほとんど相関がない(0.05)。
  • ④ 実行結果の読み取り:8つの相関のうち「かなり強い相関(0.7以上)」は一つも無い。最大は1校あたりALT活用人数×高校生(r=+0.42・やや相関)。外国人人口割合は中学生で0.29(弱い相関)だが高校生で0.05(ほとんど相関なし)、授業での英語使用率は0.17〜0.31の弱い相関にとどまる。「相関があるものは何か」という問いに対し、著者はまず「強い相関があるものは無い」ことを突き止めた。すべて原論文の報告値である。
3要因と中高生の英語力の相関係数(報告値の可視化)
図1:外国人人口割合・授業での英語使用率・1校あたりALT活用人数と中高生の英語力の相関係数。報告値の可視化(再計算ではない)(原論文 図2〜図9)。赤=やや相関(0.4〜)/橙=弱い相関(0.2〜)/灰=ほとんど相関なし。点線は表1の目安(0.2/0.4/0.7)。英語力がSSDSE-Bに無いため再計算不可。
📊 この図の読み方
最も強い
1校あたりALT活用人数×高校生(0.42・やや相関)。ネイティブと接する機会が英語力と関係する可能性を示唆。
弱い〜無し
外国人人口割合×高校生(0.05)、授業英語使用率×高校総合学科(0.17)はほとんど相関なし。仮説ほどの関係は見られない。
位置づけ
報告値の可視化。英語力はSSDSE-Bに無いため、原論文の相関係数を転記した(本ページで計算し直したものではない)。
2
図2:ALT活用方法別と英語力の相関(報告値の可視化)

ALTの活用人数と英語力に強い相関が出なかった理由を探るため、著者はALTの活用方法別(生徒とのやり取り/発音モデル・発音指導/授業外での交流)に中高生の英語力との相関を取り直した(原論文 図11〜図16)。この図はその報告値をそのまま可視化したものである。

やってみよう原論文 図11〜図16 の相関係数(報告値)を転記する
  • ① このコードの目的:ALTの3つの活用方法について、中学生・高校生それぞれの英語力との相関係数を転記し、相対的に高い活用方法を書き出す。再計算ではなく報告値の転記。
  • ② 前後のつながり:図1で「ALT×高校生」が最大だったのを受け、その中身(どんな活用が効くのか)を分解する場面。ここでも強い相関が出ないことが、次のALTの問題調査(図3)につながる。
▼ 実行結果(原論文の報告値)
=== [2] RQ2:ALTの活用方法別と英語力の相関(原論文 図11〜図16 の報告値)===
全て原論文の報告値の転記。英語力は SSDSE に無いため再計算不可。
ALTの活用方法                     中学生r     高校生r   高校生の強さ
生徒とのやり取りに活用                 +0.11    +0.17   ほとんど相関がない
発音モデル・発音指導に活用               +0.11    +0.21   弱い相関
授業外での交流に活用                  +0.21    +0.27   弱い相関
→ 相対的に高いのは「授業外での交流に活用」(中0.21/高0.27=いずれも弱い相関)。
※ どの活用方法でも「やや相関(0.4以上)」に届かず、活用方法と英語力の相関は総じて弱い。
  • ④ 実行結果の読み取り:3つの活用方法のどれも「やや相関(0.4)」に届かない。相対的に高いのは授業外での交流に活用(中0.21/高0.27=いずれも弱い相関)で、生徒とのやり取り(中0.11/高0.17)はほとんど相関なし。ALTを「どう活用するか」でも英語力との相関は総じて弱いという結果である。すべて原論文の報告値である。
ALTの活用方法別と中高生の英語力の相関係数(報告値の可視化)
図2:ALTの活用方法別(生徒とのやり取り/発音指導/授業外交流)と中高生の英語力の相関係数。報告値の可視化(再計算ではない)(原論文 図11〜図16)。青=中学生/濃緑=高校生。点線は0.2=弱い相関の境界。英語力がSSDSE-Bに無いため再計算不可。
📊 この図の読み方
相対的に高い
授業外での交流(高0.27・弱い相関)。授業の中だけでなく交流に使うほうが英語力とやや関係する傾向。
低い
生徒とのやり取り(中0.11・高0.17)はほとんど相関なし。活用方法を変えても強い相関は現れない。
注意
すべて報告値の可視化で、都道府県単位の相関。因果ではない。
3
図3:ALTが日本人教師との間で抱える問題(報告値の可視化)

活用方法を変えてもALTと英語力に強い相関が出ないことから、著者は「ALTは学校教育に参加しづらい立場にあるのではないか」と仮説を立て、ALTが日本人教師との間で抱える問題(原論文 表4・回答者209人)を調べた。この図はその報告値をそのまま可視化したものである。

やってみよう原論文 表4(ALTアンケート)の報告値を転記する
  • ① このコードの目的:ALTが日本人教師との間で抱える問題のアンケート(回答者209人・複数回答)を転記し、回答数と割合を書き出す。再計算ではなく報告値の転記。
  • ② 前後のつながり:図1・図2で「ALTと英語力に強い相関が無い」ことを掴んだうえで、その背景にあるALTと日本人教師のコミュニケーション不足を裏づける場面。結論の提言(採用基準の見直し・コミュニケーション改善)につながる。
▼ 実行結果(原論文の報告値)
=== [3] 表4 ALTが日本人教師との間で抱えている問題(原論文の報告値・回答者209人)===
伏見美瑳「日本におけるALTの現状と問題点の改善」の調査。複数回答・SSDSE 外の報告値。
問題(自由記述の分類)                          回答数      割合
日本人教師がめったに英語を話さない                    101   48.3%
その他                                  104   49.8%
日本人教師が英語を理解していない                      99   47.4%
日本人教師がめったに話しかけてくれない                   91   43.5%
日本人教師がALTの強みを理解しようとしてくれない             65   31.1%
日本人教師が意見を尊重してくれない                     36   17.2%
日本人教師が授業計画で意見を求めない                    30   14.4%
→ 最多は「日本人教師がめったに英語を話さない」(101人/回答者209人中)。
※ 著者はここから「ALTが日本人教師とコミュニケーションを取れていない」ことが
  英語力に関係しているのではないか、と考察している(因果の証明ではない)。
  • ④ 実行結果の読み取り:最多は「日本人教師がめったに英語を話さない」101人(回答者209人中48.3%)。「英語を理解していない」99人、「めったに話しかけてくれない」91人と続き、日本人教師とのコミュニケーション不足が多く挙がる。著者はこれが日本人の英語力とも関係しているのではないかと考察した(因果の証明ではない)。すべて原論文の報告値である。
ALTが日本人教師との間で抱えている問題(報告値の可視化)
図3:ALTが日本人教師との間で抱えている問題(回答者209人・複数回答)。報告値の可視化(再計算ではない)(原論文 表4、伏見美瑳の調査より)。赤=90人以上。アンケート結果でSSDSE-Bには無い。
📊 この図の読み方
多い
「日本人教師がめったに英語を話さない/英語を理解していない/話しかけてくれない」が上位。教師側との言語・関係の壁。
少ない
「意見を尊重してくれない/授業計画で意見を求めない」は相対的に少数。
位置づけ
報告値の可視化。伏見美瑳の調査(回答者209人・複数回答)の転記で、本ページで計算したものではない。
4
主要な発見(原論文の報告値)

以下の相関・数値はすべて原論文の報告値である。相関分析とALTの深掘りから、著者は次のように整理した。

RQ1:3要因と英語力の相関(原論文の報告値)

要因英語力との相関解釈(著者)
1校あたりALT活用人数(中0.25/高0.42)中=弱い相関/高=やや相関3要因の中で最も強い。ネイティブと接する機会が英語力と関係する可能性
外国人人口割合(中0.29/高0.05)中=弱い相関/高=ほとんど無し中学生では弱い相関だが、高校生では関係が見られない
授業での英語使用率(0.17〜0.31)弱い相関〜ほとんど無し専門学科(0.31)がやや高いが、総合学科(0.17)は相関なし

RQ2:ALTの深掘りでわかったこと(報告値)

ALTの活用方法別でも「授業外での交流」(高0.27)が最も高い程度で、いずれも弱い相関にとどまった。一方、ALTが日本人教師との間で抱える問題では、回答者209人中101人が「日本人教師がめったに英語を話さない」と回答するなど、ALTと日本人教師のコミュニケーション不足が浮かび上がった。

「強い相関が無いこと」自体が発見(原論文 4・5章) 著者が突き止めたのは「英語力とかなり強い相関があるものは見つからなかった」という結果だった。しかし負の相関も無かったことから「教育制度は整っているが効果が出ていない」と解釈し、3要因の中で相対的に強かったALTの活用に改善の余地を見た。強い相関の不在をネガティブに切り捨てず、次の問い(ALTの問題)へつなげたのが本研究の見どころである。すべて報告値に基づく著者の考察。
5
再現コード:外国人人口割合をSSDSE-Bで構築(実再現)

原論文の目的変数(中高生の英語力)はSSDSE-Bに無く、授業での英語使用率・ALTの人数もSSDSE-Bに無い。唯一SSDSE-Bで組み立てられるのは「外国人人口割合」。原論文が中学生の英語力と弱い相関(r=0.29)を報告したこの変数を、SSDSE-Bの総人口と日本人人口から構築してみる。

やってみようSSDSE-B を読み込み、原論文が中学生英語力と相関(r=0.29)を報告した相手方「外国人人口割合」を構築する【実再現】
  • ① このコードの目的:SSDSE-B-2026 を cp932・ラベル行 skiprows=[1] で読み込み、先頭列 SSDSE-B-2026(年度)が2023の47都道府県を残す。原論文が中学生の英語力と弱い相関(r=0.29)を報告した相手方外国人人口割合を、(総人口 A1101 − 日本人人口 A1102) / 総人口 A1101 × 100 で構築し、上位・下位の都道府県を確認する。
  • ② 前後のつながり:原論文の目的変数(中高生の英語力)はSSDSE-Bに無い。しかし相関の相手方のうち外国人人口割合はSSDSE-Bから同じ考え方で組み立てられる。原論文はSSDSE-D-2021から外国人人口割合を取ったが、SSDSE-B-2026にも総人口(A1101)と日本人人口(A1102)があり、その差から外国人人口割合を復元できる。
📝 コード
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df = pd.read_csv(DATA_B, encoding='cp932', header=0, skiprows=[1])
df['SSDSE-B-2026'] = pd.to_numeric(df['SSDSE-B-2026'], errors='coerce')
d = df[df['SSDSE-B-2026'] == 2023].copy().reset_index(drop=True)
d['A1101'] = pd.to_numeric(d['A1101'], errors='coerce')   # 総人口
d['A1102'] = pd.to_numeric(d['A1102'], errors='coerce')   # 日本人人口
d['外国人人口割合'] = (d['A1101'] - d['A1102']) / d['A1101'] * 100

print('\n=== [4] SSDSE-B から外国人人口割合を構築(実再現・2023年・都道府県)===')
print('外国人人口割合 = (総人口 A1101 − 日本人人口 A1102) / 総人口 A1101 × 100')
print(f'対象: {len(d)}都道府県 / 原論文が中学生英語力と弱い相関(r=0.29)を報告した相手方を SSDSE-B で構築')
dr = d.sort_values('外国人人口割合', ascending=False)
print('外国人人口割合が高い上位5都府県:')
for _, r in dr.head(5).iterrows():
    print(f"  {r['Prefecture']:<5} {r['外国人人口割合']:>6.2f}%")
print('外国人人口割合が低い下位5県:')
for _, r in dr.tail(5).iterrows():
    print(f"  {r['Prefecture']:<5} {r['外国人人口割合']:>6.2f}%")
print(f'→ 全国平均 {d["外国人人口割合"].mean():.2f}%。東京・愛知・群馬・三重・岐阜など')
print('  都市部や製造業が盛んな県で高い。原論文はこの外国人人口割合と中学生の英語力の相関を r=0.29')
print('  (弱い相関)と報告したが、英語力が SSDSE に無いため相関そのものは再計算不可。')
print('  ここで実再現できるのは「相関の相手方(外国人人口割合)の作り方と地域差」だけである。')
▼ 実行結果
=== [4] SSDSE-B から外国人人口割合を構築(実再現・2023年・都道府県)===
外国人人口割合 = (総人口 A1101 − 日本人人口 A1102) / 総人口 A1101 × 100
対象: 47都道府県 / 原論文が中学生英語力と弱い相関(r=0.29)を報告した相手方を SSDSE-B で構築
外国人人口割合が高い上位5都府県:
  東京都     4.53%
  愛知県     3.77%
  群馬県     3.73%
  三重県     3.36%
  岐阜県     3.26%
外国人人口割合が低い下位5県:
  新潟県     0.89%
  山形県     0.78%
  岩手県     0.77%
  青森県     0.59%
  秋田県     0.55%
→ 全国平均 1.89%。東京・愛知・群馬・三重・岐阜など
  都市部や製造業が盛んな県で高い。原論文はこの外国人人口割合と中学生の英語力の相関を r=0.29
  (弱い相関)と報告したが、英語力が SSDSE に無いため相関そのものは再計算不可。
  ここで実再現できるのは「相関の相手方(外国人人口割合)の作り方と地域差」だけである。
  • ④ 実行結果の読み取り:外国人人口割合は東京(4.53%)・愛知・群馬・三重・岐阜が上位で、下位は秋田(0.55%)・青森・岩手など東北の県(全国平均1.89%)。製造業や都市部で高く、地方で低いという地域差がはっきり出る。原論文はこの外国人人口割合と中学生の英語力の相関を r=0.29(弱い相関)と報告したが、英語力がSSDSE-Bに無いため相関そのものは再計算できない。ここで実再現できるのは「相関の相手方(外国人人口割合)の作り方と地域差」だけである。
6
図4:外国人人口割合の都道府県ランキング(実再現)

原論文が中学生の英語力と弱い相関(r=0.29)を報告した相手方は外国人人口割合だった。その外国人人口割合を、SSDSE-Bの(総人口−日本人人口)/総人口×100で都道府県別にランキングにする。これは実データからの再計算(実再現)で、原論文の外国人人口割合(H30・SSDSE-D)に対し本再現は2023年・SSDSE-Bである点に注意(地図の代わりにランキングで地域差を表現)。

都道府県別 外国人人口割合ランキング(実再現)
図4:都道府県別 外国人人口割合ランキング(SSDSE-B 2023年、N=47)。実再現/都道府県粒度。外国人人口割合=(総人口 A1101−日本人人口 A1102)/総人口×100。破線=全国平均。色=地方ブロック。英語力がSSDSE-Bに無いため、再現したのは相関の相手方(外国人人口割合)の側だけ。
📊 この図の読み方
上(高い)
東京・愛知・群馬・三重・岐阜。都市部や製造業が盛んで外国人労働者が多い地域が並ぶ。
下(低い)
秋田・青森・岩手・山形・新潟。外国人人口割合が1%未満の東北・日本海側の県。
位置づけ
実再現。英語力はSSDSE-Bに無いため、再現できたのは「相関の相手方(外国人人口割合)の作り方と地域差」まで。原論文が報告した英語力との相関(r=0.29)そのものは再計算していない。

結果の解釈と考察(原論文「5」)

著者は相関分析とALTの深掘りを総合し、「日本の英語力とかなり強い相関があるものは見つからなかった」と結論づけた。ただし負の相関も無かったことから「教育制度は整っているが効果が出ていない」と解釈し、相対的に強かったALTに改善の余地を見た(すべて報告値に基づく著者の考察)。

ALTに着目した提言(原論文 5-1)

3要因の中で最も相関が強かったのは1校あたりALT活用人数×高校生(r=0.42・やや相関)。ALTの人数は年々増加しており、政府もALTを増やす取り組みを進めている。著者はALTの採用基準の見直し日本人教師とのコミュニケーション改善を行えば、英語力が向上する可能性があると提言した。

「日本人自身にも問題」という視点(原論文 5-1)

強い相関のある外的要因が見つからず、負の相関も無かったことから、著者は日本の英語力が低いのは日本人自身の学習姿勢にも問題があるのではないかと考察した。ALTが日本人教師との間で抱える問題(表4)も、この「使う機会・話す姿勢」の不足という視点に接続している。

この考察の限界 本研究の相関は都道府県単位の集計であり、因果関係ではない。相関が弱いこと=要因でないとも限らず(測定の粗さや交絡の可能性)、逆に相関が0.42でも因果とは言えない。著者も「〜と考えられる」「可能性がある」という慎重な言い方をしている。
5
SSDSE-D(社会生活基本調査)の英語学習データで再現する

原論文のデータ出典は SSDSE-D(社会生活基本調査)でした。同じ SSDSE-D-2023 の「英語」学習行動者率を使い、英語力の地域差の背景を確認します。

やってみよう英語学習行動者率と都市度・大学集積の相関
📝 コード
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d_raw = pd.read_csv('data/raw/SSDSE-D-2023.csv', encoding='cp932', header=1)
d_raw = d_raw[(d_raw['男女の別'] == '0_総数') & (d_raw['地域コード'] != 'R00000')]
d = d_raw.set_index('都道府県')
dv = lambda c: pd.to_numeric(d[c], errors='coerce')
b_raw = pd.read_csv('data/raw/SSDSE-B-2026.csv', encoding='cp932', header=1)
b = b_raw[(b_raw['年度'] == 2021) & b_raw['地域コード'].str.match(r'^R\d{5}$', na=False)].set_index('都道府県')
bv = lambda c: pd.to_numeric(b[c], errors='coerce')

eng = dv('英語')
print('英語学習(学業以外)行動者率 上位5県:')
for p2, v in eng.nlargest(5).items(): print(f'  {p2}: {v:.1f}%')
X = pd.DataFrame({'log住宅地価格': np.log(bv('標準価格(平均価格)(住宅地)')),
                  '大学学生数割合': bv('大学学生数') / bv('総人口') * 100})
r1, p1 = stats.pearsonr(X['log住宅地価格'], eng)
r2, p2 = stats.pearsonr(X['大学学生数割合'], eng)
print(f'英語学習率 × 都市度(log地価): r = {r1:+.3f} (p={p1:.4f})')
print(f'英語学習率 × 大学学生数割合 : r = {r2:+.3f} (p={p2:.4f})')
▼ 実行結果
英語学習(学業以外)行動者率 上位5県: 東京都: 21.2% 神奈川県: 16.4% 大阪府: 15.4% 京都府: 14.5% 千葉県: 14.3% 英語学習率 × 都市度(log地価): r = +0.898 (p=0.0000) 英語学習率 × 大学学生数割合 : r = +0.709 (p=0.0000)
💡 解説
  • 英語学習率は都市度と r=+0.90 という極めて強い相関。上位は東京・神奈川・大阪・京都・千葉と大都市圏が独占します。
  • 「英語力と相関があるもの」を探すと、実はほとんどが都市度の代理変数になってしまう——原論文の相関分析を解釈する際の最大の注意点がこの 1 本の相関に集約されています。
💡 Python TIPS 相関の強い変数を見つけたら、まず「それは都市度ではないか?」と疑うのが地域データの鉄則。

まとめと今後の課題

本研究は、中高生の英語力(CEFR A1/A2 相当以上の割合)を軸に、外国人人口・授業での英語使用率・1校あたりALT活用人数との相関分析、さらにALTの活用方法別の相関とALTが抱える問題の調査を組み合わせ、「かなり強い相関があるものは無い/最大はALT活用人数×高校生の r=0.42(やや相関)」という結果を得た(いずれも報告値)。強い相関の不在を発見として引き受け、ALTの採用基準見直しと日本人教師とのコミュニケーション改善を提言した探究の姿勢が見どころである。

この研究の限界 ①相関であり因果ではない。②都道府県単位の集計で、年度・出典の異なるデータ(英語力H30・学校数R1・外国人人口)を組み合わせている。③英語力の指標がCEFR相当以上の「割合」であり、平均的な到達度とは異なる。④ALTの問題調査は既存アンケート(209人)の引用である。より厳密には、生徒個人レベルのデータや他要因の制御が望まれる。
この研究から学べること 「英語に触れる時間」という抽象的な仮説を測れる指標に翻訳し、相関で一つずつ検証し、相関が弱ければさらに掘り下げるという一連の探究。そして、目的変数(英語力)が標準データセットに無いときに報告値の可視化と実再現を切り分ける誠実な姿勢。審査会も高校生による着眼と粘り強い掘り下げを評価し、審査員奨励賞に選んだ。

データ・コードのダウンロード

このページの外国人人口割合ランキング(図4)は、以下から再現できます。

🐍 再現コード(.py) 📊 SSDSE-B-2026.csv

※ 図1(3要因の相関係数)・図2(ALT活用方法別の相関)・図3(ALTが抱える問題)は、目的変数の中高生の英語力(英語教育実施状況調査H30)や授業での英語使用率・ALTの人数がSSDSE-B外のため、原論文の報告値を可視化したものです。図4はSSDSE-Bの総人口・日本人人口から外国人人口割合を構築した実再現ですが、英語力がSSDSE-Bに無いため「相関の相手方(外国人人口割合)の作り方と地域差」の再現です。

⚠️ よくある誤解と注意点

この研究を読むとき・まねするときに陥りやすい誤解を整理する。

誤解1:「ALTを増やせば英語力が上がる、という因果が示された」
最も強い相関でも r=0.42(やや相関)で、都道府県単位の相関にすぎない。ALTが多い地域は都市部で教育環境も豊かなど、複数の要因が絡む。著者も「可能性がある」と慎重に述べており、因果の証明ではない。
誤解2:「相関が弱い=その要因は英語力に関係ない」
相関が弱くても、測定の粗さ(都道府県平均・割合指標)や交絡で関係が隠れている可能性はある。逆に相関が強くても因果とは限らない。相関の弱さは「この集計・指標では強い直線関係が見えない」という意味であって、要因の完全な否定ではない。
誤解3:「このページの図4は原論文と同じ数値」
図4は実再現だが、原論文の外国人人口割合(H30・SSDSE-D)に対し本再現は2023年・SSDSE-Bで年次・出典が異なる。さらに英語力がSSDSE-Bに無いため、原論文が報告した相関(r=0.29)そのものは再計算していない。図注に二重に明記している。
誤解4:「図1〜図3もこのページで計算した数値」
図1(3要因の相関)・図2(ALT活用方法別)・図3(ALTが抱える問題)は原論文の報告値の可視化(再計算ではない)。英語力やALTの人数がSSDSE-Bに無いためで、数値はすべて原論文からの転記である。

📖 用語集(この記事に出てくる統計用語)

クリックすると各用語の詳しい解説ページに移動できます。

相関係数
2つの数量が一緒に増減する強さと向きを−1〜+1で表す。本研究は各要因と英語力の相関で「相関があるものは何か」を探った。原論文は0.2/0.4/0.7を目安に強さを分類。
SSDSE
教育用標準データセット。本ページの再現はSSDSE-B(都道府県別)の総人口・日本人人口から外国人人口割合を組み立てる。中高生の英語力やALTの人数はSSDSEには無い。
相関と因果
相関があっても因果があるとは限らない。地域単位の相関には都市度などの交絡が入りやすい。
交絡
着目する2変数の両方に影響する第3の要因。外国人人口割合と英語力の関係にも都市化の度合いなどが交絡しうる。

📐 使っている手法をわかりやすく解説

この研究で使われている手法を、手を動かす順に説明する。

全体像
仮説を測れる指標に翻訳する → 各要因と英語力の相関係数を出す → 相関の強さ(0.2/0.4/0.7の目安)で読む → 相関が弱ければ活用方法や問題を掘り下げる。散布図と相関係数という素朴な道具を、指標の自作と粘り強い掘り下げで生かすのが見どころ。
📈 相関分析(散布図+相関係数)
何をする
2つの量(要因と英語力)を散布図にプロットし、相関係数rで直線的な関係の強さと向きを測る。
読み方
原論文 表1 の定義:|r|が0.2未満=ほとんど無し、0.2〜0.4=弱い、0.4〜0.7=やや、0.7以上=かなり強い。本研究の最大はALT×高校生の0.42。
注意
相関は因果ではない。都道府県単位の相関は都市度などの交絡を含む。相関が弱いこと=無関係とも限らない(指標の粗さ)。
🧮 指標の自作(比で標準化する)
何をする
既存データに無い「1校あたりALT活用人数」を、ALT活用人数÷学校数で作る。規模の違う都道府県を公平に比べるための工夫。
なぜ有効
ALTの総数をそのまま比べると学校数の多い都道府県が有利になる。1校あたりにすることで規模の効果を割り引いて比較できる。
注意
分母(学校数)の年次や定義が分子とずれると指標が歪む。本研究も学校数はR1、ALTはH30と年次が異なる点に注意。
🔍 層別して掘り下げる
何をする
全体で相関が弱いとき、対象(中学生/高校普通科・専門・総合)や活用方法(やり取り/発音/交流)に分けて相関を取り直す。
なぜ有効
まとめて見ると隠れる違いが、層別すると見える。授業英語使用率が専門学科(0.31)と総合学科(0.17)で差が出るなど。
注意
層を細かくすると各層のデータ数が減り、相関係数が不安定になる。偶然の変動を過大解釈しないこと。

🚀 発展の可能性(結果 X → 新仮説 Y → 課題 Z)

この研究の「強い相関は無く、最大でもALT×高校生0.42(だが因果は不明)」という結論は、次の研究の出発点になる。

発展1:生徒個人レベルのデータで見る
結果X
都道府県単位の相関はどれも弱い(最大0.42)。集計の粗さで関係が薄まっている可能性。
新仮説Y
個々の生徒の「英語に触れる時間」と英語力なら、もっと強い関係が見えるのでは。
課題Z
生徒アンケートで学習時間・留学経験・ALTとの接触を測り、個人レベルで英語力との関係を分析する。
発展2:ALTの「質」と英語力を結びつける
結果X
ALTの人数・活用方法と英語力の相関は弱く、ALTと日本人教師のコミュニケーション不足が浮かんだ。
新仮説Y
効くのはALTの「数」ではなく、日本人教師との協働の「質」なのでは。
課題Z
ティームティーチングの実施状況やALTの活用満足度を指標化し、英語力との関係を交絡を制御して推定する。

🎯 自分でやってみよう(5つのチャレンジ)

再現コードを少し変えるだけで試せる課題を、易しい順に用意した。

★☆☆☆☆ 難易度1
別の年で外国人人口割合ランキングを出す
読み込みの d = df[df['SSDSE-B-2026'] == 2023] を 2015 や 2020 に変えて、外国人人口割合の都道府県ランキングが年で変わるか確かめよう。
★★☆☆☆ 難易度2
上位10都道府県だけの棒グラフにする
図4で dsd.sort_values('外国人人口割合').tail(10) に絞り、上位10都道府県だけのランキングにしてみよう。製造業が盛んな県が並ぶことが見やすくなる。
★★★☆☆ 難易度3
外国人人口割合と別のSSDSE-B指標の相関を見る
SSDSE-Bにある「外国人延べ宿泊者数(G7102)」を数値化し、外国人人口割合との相関を d[['外国人人口割合','G7102']].corr() で計算しよう。人の国際的な動きどうしの関係を、SSDSE-B内だけで実データ確認できる。
★★★★☆ 難易度4
相関の強さを原論文 表1 の定義でラベル付けする
スクリプトの strength() 関数を使い、自分で計算した相関係数に「弱い相関/やや相関」などのラベルを自動で付けてみよう。原論文が0.2/0.4/0.7で強さを分類した意味が体感できる。
★★★★★ 難易度5
英語力データを入手して相関を再現する
文部科学省「英語教育実施状況調査」から都道府県別の英語力(CEFR相当以上の割合)を入手し、外国人人口割合との相関を計算しよう。原論文の目的変数までそろえた完全な再現(r=0.29の検証)に一歩近づける。

💼 この手法は実社会でこう使われている

「地域単位のデータで社会・教育現象の要因を散布図と相関で探る」発想は、教育政策や行政で広く使われている。

🏫
教育政策の効果検証
ALT配置・少人数学級などの施策と学力指標の相関を見て、どの施策が効きそうかの当たりをつける。
🌐
語学産業・留学
学習時間・接触時間とスコア(TOEIC等)の関係を分析し、教材やプログラムの設計に生かす。
📊
指標の標準化(1人・1校あたり)
総数を規模で割って比較する発想は、行政のベンチマークやKPI設計で定番の考え方。

🤔 よくある質問(読者からの想定Q&A)

この研究を読んで浮かびやすい疑問に答える。

Q. 「英語力」って具体的に何を測っているの?
A. 文部科学省「英語教育実施状況調査」の基準で、中学生はCEFR A1レベル(英検3級)相当以上、高校生はCEFR A2レベル(英検準2級)相当以上の生徒の割合です。都道府県ごとの「一定水準に達した生徒の割合」であって、平均スコアそのものではありません。
Q. 「1校あたりのALT活用人数」はなぜ割り算したの?
A. ALTの総数をそのまま比べると、学校数の多い都道府県が有利になってしまいます。そこでALT活用人数÷学校数で「1校あたり」に直し、規模の違う都道府県を公平に比較できるようにしました。既存データに無い指標を自作した工夫です。
Q. このページの図は原論文と同じ数値ですか?
A. 一部だけ実再現です。図1(3要因の相関)・図2(ALT活用方法別)・図3(ALTが抱える問題)は、英語力やALTの人数がSSDSE-Bに無いため原論文の報告値を可視化したもの。図4はSSDSE-Bの総人口・日本人人口から外国人人口割合を実際に計算しましたが、英語力が無いため原論文の相関(r=0.29)そのものは再計算していません。図注に明記しています。
Q. 「強い相関が無かった」なら失敗した研究では?
A. いいえ。「強い相関があるものは何か」という問いに対し、強い相関の不在自体が一つの答えです。著者はそこで止めず、相対的に強かったALTを深掘りし、ALTと日本人教師のコミュニケーション不足という新しい問いへつなげました。粘り強い探究の姿勢が評価されています。

✅ 理解度チェック(4問)

この論文を理解できたか、クリックで確認しましょう。間違えても解説が出ます。

🐍 ブラウザで動かす — インストール不要でこの論文の分析を再現する

このページの分析は、この画面の中でそのまま実行できます。 Python をインストールする必要も、CSV をダウンロードする必要もありません。 下のセルの 「▶ ブラウザで実行」 を上から順に押すか、 「▶ 最初から全部実行」 で一気に流してください。 表示されるのは、本文の図表とまったく同じ計算の結果です (動かしているのは再現スクリプト code/2022_H5_13_shorei.py そのもの)。

コードは書き換えられます。「✏️ 書き換える」で数字や変数を変えて ▶ を押すと、 結果がどう変わるかをその場で確かめられます(元に戻すボタンつき)。 ページを開いた時点で裏で実行環境の準備が始まっているので、待ち時間はほとんどありません。 初回だけ実行環境の取得にインターネット接続が必要です。