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特別賞(統計活用)[高校生の部]

空き家を減らすために

⏱️ 推定読了時間: 約25分
2020年度(令和2年度)統計データ分析コンペティション
田中月霧・福永奈々花・冨谷伊吹・美安健志(兵庫県立姫路西高等学校)
🔬 散布図🔬 相関分析🏷 住宅・地価
🔬 手法タグ / 🏷 応用タグ(クリックで同タグの論文をネットワーク検索)
🔬 再現カルテ — 原論文と同じデータ・同じ手法で再現

この教材は原論文と同じデータを読み込み、同じ手順で計算し直しています。画面に出る数値と図は、あなたのブラウザがその場で計算した結果です。

原論文が使ったデータ平成 30 年住宅・土地統計調査
この教材が使うデータ
原論文(PDF)空き家を減らすために
特別賞/田中月霧・福永奈々花・冨谷伊吹・美安健志(兵庫県立姫路西高等学校)
✅ この教材でできること
  • 分析に使うデータは同梱済みで、ブラウザ上でそのまま読み込める
  • 数値・図を最後まで再計算できる(相関分析)
突合監査の結果、主要データと中核手法はいずれも原論文と一致しています。

▶ ここに書いてある分析は、ページ下部の「🐍 ブラウザで動かす」でそのまま実行できます(インストール不要)。動かしているのは code/2020_H5_3_shorei.py(308 行)そのものです。

🏅 論文審査会コメント(審査員はここを評価した)
「全体のストーリーが明確でデータの使い方もよい。」
出典:統計センター「統計データ分析コンペティション」受賞論文PDF掲載の審査講評。プロの審査員が何を評価し、何を注文したかは論文の読み方の最良の手本になる。
📝 3行で分かる要約

目次

  1. 論文の基本情報
  2. 研究の背景:空き家問題
  3. データと変数(再現の範囲)
  4. 再現分析:データを準備して相関を見る
  5. 仮説①:空き家は過疎・高齢地域ほど多い(図1・図2)
  6. 仮説②:高齢者世帯と空き家化の理由(図3・図4)
  7. 空き家をどう処理するか:費用の試算
  8. まとめ
  9. 📥 データの準備
  10. ⚠️ よくある誤解
  11. 📖 用語集
  12. 📐 手法ガイド
  13. 🚀 発展の可能性
  14. 🎯 自分でやってみよう
  15. 🤔 Q&A
  16. 🐍 ブラウザで動かす

🎯 この記事を読むと何ができるようになるか

📥 データの準備(再現コードを動かす前に)

このページの再現分析を自分で動かすには、以下のファイルを配置してください。コードの編集は不要です。

1
データをダウンロードする 統計センターの SSDSE(教育用標準データセット)配布ページから以下を取得します。
SSDSE-E-2026.csv ← 都道府県データ(総人口・65歳以上人口・総住宅数・空き家数)📥 直接DL
SSDSE-B-2026.csv ← 都道府県データ(住宅地の標準価格=地価)📥 直接DL
SSDSE-A-2025.csv ← 市区町村データ(高齢単独・高齢夫婦のみ世帯)📥 直接DL
⬇ SSDSEダウンロードページを開く
2
ファイルを配置する ダウンロードしたCSVdata/raw/ に入れます。
2026 統計・データ解析コンペ/ ├── code/ │ └── 2020_H5_3_shorei.py ← 実行するスクリプト └── data/raw/ ├── SSDSE-E-2026.csv ├── SSDSE-B-2026.csv └── SSDSE-A-2025.csv
3
スクリプトを実行する
python3 code/2020_H5_3_shorei.py
図は html/figures/ に保存されます。
論文の基本情報
受賞
特別賞(統計活用)
[高校生の部]
年度
2020年度
令和2年度
所属
兵庫県立姫路西高等学校
著者
田中月霧 ほか3名
論文の概要(原論文より) 社会問題として増加傾向にある空き家問題について、高齢者率・地価・都心からの距離・高齢者世帯などと空き家の数に相関があることを示した。また、空き家化の最も大きな原因として高齢居住者の死亡が挙げられること、空き家の解体には日本の世帯収入以上の費用が必要であることなどから、国レベルでの継続した方策が重要であることを指摘している。
論文審査会コメント(原論文より) 全体のストーリーが明確でデータの使い方もよい。

著者・所属・受賞区分は原論文PDF1頁目の表記による。

研究の背景:空き家問題

総務省統計局によると、2013年の全国の平均空き家率は13.5%に達し、2008年の調査結果(13.1%)と比べて増加している(原論文の記述)。空き家が適切に管理されないと、住宅は急速に老朽化し、防災・防犯上の問題や、地域コミュニティの弱体化を招く可能性がある。

日本の空き家は①賃貸用の住宅・②売却用の住宅・③二次的住宅・④その他の住宅に分類される。本研究は「その他の住宅」に属する空き家に焦点を当てる。相続などで引き継がれず放置され、最も周辺に損害を与えると考えられるからである。

原論文の分析の流れ(仮説→データ検証)
仮説①
過疎・高齢地域
ほど空き家が多い
仮説②
次世代のいない
高齢者の死亡
第4章
処理費用の試算
第5章
結論・提言

SSDSE-E(都道府県) SSDSE-B(地価) SSDSE-A(世帯) 相関分析 外れ値の扱い

データと変数(再現の範囲)

原論文は「平成30年住宅・土地統計調査」「国土交通省アンケート」「グーグルマップの距離」「NPOの費用単価」など多様な資料を使っている。ここでは、そのうち教育用標準データセット SSDSE で再計算できる部分だけを実データで再現し、それ以外は原論文の報告値を可視化・再掲する。

原論文の分析本ページでの扱い使用データ
高齢者率 × 空き家(図1)実データで再現(図1)SSDSE-E
地価 × 空き家(図2・3)実データで再現(図2)SSDSE-E+B
高齢者世帯 × 空き家(図7)実データで再現(図3)SSDSE-E+A
都心からの距離 × 空き家(図4・5)報告値のみ(グラフは原論文参照)グーグルマップ(SSDSE未収録)
空き家化の理由(図8)報告値の可視化(図4/再計算ではない)国交省アンケート(SSDSE未収録)
処理費用の試算報告値の再掲(再計算ではない)NPO単価等(SSDSE未収録)
⚠️ 再現の重要な注意 SSDSE の「空き家数」は全空き家(賃貸用・売却用・二次的・その他の合計)であり、原論文が主役にした「その他の住宅」だけの空き家ではない。そのため回帰直線の傾きや個別数値は原論文の報告値と一致しない。比較できるのは「関係の向き(符号)」である。以下の図はすべて図中・図注にこの断りを二重に明記している。

SSDSE(教育用標準データセット)は独立行政法人統計センターが公表。空き家数・総住宅数・世帯数は住宅・土地統計調査/国勢調査ベース、地価は地価公示ベース。

再現分析:データを準備して相関を見る

ここからは、SSDSEを読み込んで4つの変数(高齢者率・空き家率・地価・高齢者のみ世帯割合)を用意し、原論文の仮説を相関で確かめる。各ステップは「①目的 → ②橋渡し → ③コード → ④実行結果の読み取り」で進む。

やってみようSTEP1 — SSDSE-E を読み込み、高齢者率と空き家率を計算

まず「原論文の主役である空き家率と高齢者率を、都道府県単位で用意する」ことが目的。そのために、教育用標準データセット SSDSE-E から総人口・65歳以上人口・総住宅数・空き家数を取り出し、割合に直す。

📝 コード
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# ============================================================
# STEP1: SSDSE-E(都道府県データ)を読み込み、47都道府県を抽出
#   高齢者率 = 65歳以上人口 / 総人口   × 100
#   空き家率 = 空き家数     / 総住宅数 × 100  (=全空き家の率)
# ============================================================
print("STEP1: SSDSE-E を読み込み中 ...")
raw_e = pd.read_csv(DATA_E, encoding='cp932', header=0)
codes = list(raw_e.columns)
names = raw_e.iloc[1].tolist()            # 2行目 = 日本語の変数名
code_of = dict(zip(names, codes))         # 変数名 -> 変数コード

e = raw_e.iloc[2:].copy()                 # 3行目以降が実データ
e = e[e['SSDSE-E-2026'].astype(str).str.match(r'^R\d{5}$')]
e = e[e['SSDSE-E-2026'] != 'R00000']      # 全国計を除外

def col_e(jp):
    return pd.to_numeric(e[code_of[jp]], errors='coerce')

df_e = pd.DataFrame({
    '都道府県':  e['Prefecture'].values,
    '高齢者率':  (col_e('65歳以上人口') / col_e('総人口')   * 100).values,
    '空き家率':  (col_e('空き家数')     / col_e('総住宅数') * 100).values,
})
print(f"  抽出: {len(df_e)} 都道府県")
print(df_e.head(5).round(2).to_string(index=False))
▼ 実行結果
STEP1: SSDSE-E を読み込み中 ...
  抽出: 47 都道府県
都道府県  高齢者率  空き家率
 北海道 33.25 15.64
 青森県 35.71 16.74
 岩手県 35.37 17.33
 宮城県 29.58 12.42
 秋田県 39.46 15.77
💡 解説
  • header=0 で読み込むと1列目にコード(A1101 等)、2行目に日本語の変数名が入る。dict(zip(names, codes)) で「変数名→コード」の辞書を作り、後で名前で列を引けるようにしている。
  • str.match(r'^R\d{5}$') で「R+数字5桁」の行=47都道府県だけを残し、全国計(R00000)は除外している。
  • 高齢者率=65歳以上人口/総人口空き家率=空き家数/総住宅数。空き家率はここでは"全空き家"である点に注意。
💡 Python TIPS pandasの列同士の割り算 a/b は要素ごと(element-wise)。47行を一気に計算できる。
やってみようSTEP2 — SSDSE-B から住宅地の地価(標準価格)を取得

次に「地価と空き家率の関係を見る」ための地価データを揃えるのが目的。そのため SSDSE-B の「標準価格(平均価格)(住宅地)」から、最新年度の値を都道府県ごとに取り出す。

📝 コード
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# ============================================================
# STEP2: SSDSE-B から住宅地の地価(標準価格)を取得
# ============================================================
print("STEP2: SSDSE-B(地価)を読み込み中 ...")
b = pd.read_csv(DATA_B, encoding='cp932', header=1)
b = b[b['地域コード'].astype(str).str.match(r'^R\d{5}')].copy()
b['年度'] = pd.to_numeric(b['年度'], errors='coerce')
latest = int(b['年度'].max())
b = b[b['年度'] == latest]
b['地価'] = pd.to_numeric(b['標準価格(平均価格)(住宅地)'], errors='coerce')
df_b = b[['都道府県', '地価']].reset_index(drop=True)
print(f"  対象年度: {latest} 年度 / {len(df_b)} 都道府県")
print(f"  地価レンジ: {df_b['地価'].min():,.0f}{df_b['地価'].max():,.0f} 円/m^2")
▼ 実行結果
STEP2: SSDSE-B(地価)を読み込み中 ...
  対象年度: 2023 年度 / 47 都道府県
  地価レンジ: 13,200 〜 404,400 円/m^2
💡 解説
  • SSDSE-B は年度×都道府県の縦持ちデータ。年度==最新で1年ぶんに絞る。
  • 地価は「1平方メートルあたりの円」。都市部と地方で桁が大きく違うのがポイント(後で外れ値の扱いに効いてくる)。
💡 Python TIPS {x:,.0f}, は3桁区切り。大きな金額を読みやすく表示できる。
やってみようSTEP3 — SSDSE-A を集計して「高齢者のみ世帯」割合を作る

原論文の仮説②「次の世帯がない高齢者が住宅を維持できず放棄する」を確かめたい。そのため「高齢者のみ世帯の割合」を都道府県ごとに用意する。SSDSE-A(市区町村)を都道府県で合計し、高齢単独+高齢夫婦のみ世帯を一般世帯数で割る。

📝 コード
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# ============================================================
# STEP3: SSDSE-A(市区町村)を都道府県ごとに集計し、
#        「高齢者のみ世帯」割合を算出
#   高齢者のみ世帯 = 65歳以上の単独世帯 + 夫65歳以上・妻60歳以上の夫婦のみ世帯
# ============================================================
print("STEP3: SSDSE-A から高齢者のみ世帯割合を集計中 ...")
raw_a  = pd.read_csv(DATA_A, encoding='cp932', header=0)
a_name = raw_a.iloc[1].tolist()
a_code = dict(zip(a_name, list(raw_a.columns)))
a = raw_a.iloc[2:].copy()

def col_a(jp):
    return pd.to_numeric(a[a_code[jp]], errors='coerce')

a['一般世帯数'] = col_a('一般世帯数')
a['高齢単独']   = col_a('65歳以上世帯員の単独世帯数')
a['高齢夫婦']   = col_a('夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの世帯数')
g = a.groupby('Prefecture').agg(
        一般世帯数=('一般世帯数', 'sum'),
        高齢単独=('高齢単独', 'sum'),
        高齢夫婦=('高齢夫婦', 'sum')).reset_index()
g['高齢者のみ世帯割合'] = (g['高齢単独'] + g['高齢夫婦']) / g['一般世帯数'] * 100
df_a = g[['Prefecture', '高齢者のみ世帯割合']].rename(columns={'Prefecture': '都道府県'})
print(f"  {len(df_a)} 都道府県 / 高齢者のみ世帯割合 レンジ: "
      f"{df_a['高齢者のみ世帯割合'].min():.1f}% 〜 {df_a['高齢者のみ世帯割合'].max():.1f}%")
▼ 実行結果
STEP3: SSDSE-A から高齢者のみ世帯割合を集計中 ...
  47 都道府県 / 高齢者のみ世帯割合 レンジ: 19.1% 〜 31.4%
💡 解説
  • SSDSE-A は市区町村単位なので、groupby('Prefecture').sum() で都道府県に集計する。
  • 高齢者のみ世帯=「65歳以上の単独世帯」+「夫65歳以上・妻60歳以上の夫婦のみ世帯」と定義。原論文の「高齢者世帯(%)」とは定義が異なるため、数値そのものは一致しない(傾向の比較に使う)。
💡 Python TIPS groupby(...).agg(新名=('列','sum')) は、集計と同時に列名を付けられる名前付き集約。
やってみようSTEP4 — 3つのデータを都道府県名で結合

分析に使う4変数(高齢者率・空き家率・地価・高齢者のみ世帯割合)を1枚の表にまとめるのが目的。そのため都道府県名をキーに3つのデータを結合する。

📝 コード
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# ============================================================
# STEP4: 3つのデータを都道府県名で結合(47都道府県のパネル)
# ============================================================
df = df_e.merge(df_b, on='都道府県').merge(df_a, on='都道府県')
print(f"STEP4: 結合完了 -> {len(df)} 都道府県 × {df.shape[1]} 変数")
print(df.head().round(2).to_string(index=False))
▼ 実行結果
STEP4: 結合完了 -> 47 都道府県 × 5 変数
都道府県  高齢者率  空き家率    地価  高齢者のみ世帯割合
 北海道 33.25 15.64 23600      28.65
 青森県 35.71 16.74 16100      26.05
 岩手県 35.37 17.33 26100      24.46
 宮城県 29.58 12.42 48400      20.38
 秋田県 39.46 15.77 13200      28.20
💡 解説
  • merge(..., on='都道府県') は共通の都道府県名で行を突き合わせる(SQLの内部結合)。
  • 結合後は47行×5列。ここから先はこの1枚の表 df だけで相関と散布図を作れる。
💡 Python TIPS 複数の merge はメソッドチェーンでつなげられる:A.merge(B).merge(C)
やってみようSTEP5 — 相関分析:原論文の仮説をSSDSEで確かめる

いよいよ原論文の仮説(高齢者率↑で空き家↑、地価↑で空き家↓、高齢者世帯↑で空き家↑)がSSDSEでも成り立つかを数値で確かめる。そのため4組のピアソン相関係数を計算し、地価については原論文と同じく大都市圏を外れ値として除いた版も出す。

📝 コード
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# ============================================================
# STEP5: 相関分析(全空き家率ベース)
# ============================================================
def report(x, y, label):
    r, p = stats.pearsonr(df[x], df[y])
    print(f"  {label:26s}: r = {r:+.3f}  (p = {p:.4f})")

print("STEP5: 相関分析")
report('高齢者率',           '空き家率', '高齢者率 × 空き家率')
report('地価',               '空き家率', '地価 × 空き家率')
report('高齢者のみ世帯割合', '空き家率', '高齢者のみ世帯 × 空き家率')
report('高齢者率',           '地価',     '高齢者率 × 地価')

# 原論文が外れ値扱いした7大都市圏を除外した地価×空き家率
outliers = ['東京都', '神奈川県', '大阪府', '京都府', '愛知県', '埼玉県', '兵庫県']
sub = df[~df['都道府県'].isin(outliers)]
r_o, p_o = stats.pearsonr(sub['地価'], sub['空き家率'])
print(f"  地価 × 空き家率(7大都市圏を除外, n={len(sub)}): r = {r_o:+.3f} (p = {p_o:.4f})")
▼ 実行結果
STEP5: 相関分析
  高齢者率 × 空き家率               : r = +0.735  (p = 0.0000)
  地価 × 空き家率                 : r = -0.532  (p = 0.0001)
  高齢者のみ世帯 × 空き家率            : r = +0.760  (p = 0.0000)
  高齢者率 × 地価                 : r = -0.712  (p = 0.0000)
  地価 × 空き家率(7大都市圏を除外, n=40): r = -0.483 (p = 0.0016)
💡 解説
  • stats.pearsonr(x, y) は相関係数 r と p値を返す。r の符号(+/−)が「関係の向き」。
  • 原論文が外れ値扱いした7大都市圏(東京・神奈川・大阪・京都・愛知・埼玉・兵庫)を除いた地価×空き家率も計算し、外れ値を除いても負の関係が残るかを確認している。
💡 Python TIPS 相関はあくまで"一緒に動く強さ"。因果(どちらが原因か)は相関だけでは決められない。
相関分析の結果(SSDSE再現・全空き家率)
  • 高齢者率 × 空き家率:r = +0.735(正の相関)— 原論文 仮説①-1 と同じ向き
  • 地価 × 空き家率:r = -0.532(全47件)→ 大都市圏を除くと r = -0.483(n=40)— 原論文 仮説①-2 と同じ「弱い負」
  • 高齢者のみ世帯 × 空き家率:r = +0.760(正の相関)— 原論文 仮説② と同じ向き
  • 高齢者率 × 地価:r = -0.712 — 「高齢化の進む地域ほど地価が安い」(原論文 図6 の報告値 r≈−0.56 と同じ向き)
いずれも符号(向き)は原論文と一致した。数値は全空き家ベースのため原論文の「その他の住宅」の報告値とは一致しない。
仮説①:空き家は過疎・高齢地域ほど多い

原論文の仮説①は「空き家は過疎地域ほど多い」。過疎地域は高齢化が進み、人口が流出しやすく、住宅が放棄されやすい、という考え方である。これを①-1 高齢者率①-2 地価の2つの角度から確かめる。

仮説①-1 高齢者率と空き家率(図1)

やってみよう図1 — 高齢者率 × 空き家率(散布図+回帰直線)

相関の数字を目で見て確かめるのが目的。そのため高齢者率を横軸、空き家率を縦軸にとった散布図を描き、回帰直線を重ねる(原論文 図1 に対応)。

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# 図1: 高齢者率 × 空き家率(散布図+回帰直線)
# ============================================================
print("図1 を生成中 ...")
fig, ax = plt.subplots(figsize=(9, 6.5))
x = df['高齢者率'].values
y = df['空き家率'].values
ax.scatter(x, y, s=60, c='#6aa84f', alpha=0.85,
           edgecolors='white', linewidth=0.6, zorder=3)
sl, ic, r, p, se = stats.linregress(x, y)
xs = np.linspace(x.min(), x.max(), 100)
ax.plot(xs, sl * xs + ic, color='#e69138', lw=2.2, zorder=2,
        label=f'回帰直線 y={sl:.3f}x{ic:+.3f}  (r={r:.3f})')
for _, row in df.iterrows():
    ax.annotate(short(row['都道府県']), (row['高齢者率'], row['空き家率']),
                xytext=(3, 3), textcoords='offset points',
                fontsize=7, color='#555')
ax.set_xlabel('高齢者率(65歳以上人口の割合, %)', fontsize=12)
ax.set_ylabel('空き家率(空き家数/総住宅数, %)', fontsize=12)
ax.set_title('図1  高齢者率 × 空き家率(47都道府県, SSDSE-E)',
             fontsize=13, fontweight='bold')
ax.legend(fontsize=10, loc='upper left')
ax.grid(alpha=0.3, linestyle='--')
ax.set_axisbelow(True)
fig.text(0.5, -0.03,
    '※SSDSE-E(全空き家率)による再現。原論文 図1 は住宅・土地統計調査の「その他の住宅」割合を用いており、\n'
    '  傾き(原論文 y=0.025x-0.3504)や個別数値は原論文の報告値とは一致しない(符号=向きの比較用)。',
    ha='center', fontsize=8, color='#777')
plt.tight_layout()
fig.savefig(os.path.join(FIG_DIR, '2020_H5_3_fig1.png'), bbox_inches='tight')
plt.close(fig)
print(f"  -> fig1 保存 (r={r:.3f}, p={p:.4f})")
▼ 実行結果
図1 を生成中 ...
  -> fig1 保存 (r=0.735, p=0.0000)
💡 解説
  • stats.linregress で回帰直線の傾き・切片・r を求め、凡例に式を表示している。
  • 右上がりなら「高齢者率が高い県ほど空き家率も高い」。原論文 図1(その他の空き家)と同じ向き(正)が再現できるかを見る。
図1
図1:高齢者率 × 空き家率(47都道府県, SSDSE-E再現)。オレンジ線は回帰直線。※原論文 図1 は「その他の住宅」割合を用いており、報告式 y=0.025x−0.3504 や数値は本図と一致しない(向きの再現)。
📊 図の読み取り
右上がり
回帰直線は右上がり。高齢者率が高い県ほど空き家率も高い(r = +0.735)。
原論文との対応
原論文 図1(その他の空き家 × 高齢者率, 正の相関)と同じ向きが、全空き家ベースでも再現された。
読み方の注意
傾きの数値は原論文の報告値(y=0.025x−0.3504)とは一致しない。比べてよいのは符号(正)だけ。

仮説①-2 地価と空き家率(図2)

原論文は「地価が100万円/m²を超えると、地価が高い地域ほど空き家が少ない(負の相関)」とし、地価が極端に高い愛知・京都・埼玉・神奈川・大阪・東京・兵庫を外れ値として除いても弱い負の相関が残る、と述べている。SSDSEでも同じ手続きを再現する。

やってみよう図2 — 地価 × 空き家率(大都市圏を外れ値として区別)

原論文 図2・3 に対応。「地価が高いほど空き家が少ない」か、外れ値を除くとどうなるかを1枚で示すのが目的。そのため大都市圏を別マーカーで描き、全47件と外れ値除外の回帰直線を2本引く。

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# ============================================================
# 図2: 地価 × 空き家率(大都市圏を外れ値として区別/回帰直線2本)
# ============================================================
print("図2 を生成中 ...")
fig, ax = plt.subplots(figsize=(9, 6.5))
is_out = df['都道府県'].isin(outliers)
ax.scatter(df.loc[~is_out, '地価'], df.loc[~is_out, '空き家率'],
           s=60, c='#3d85c6', alpha=0.85, edgecolors='white',
           linewidth=0.6, label='通常の県', zorder=3)
ax.scatter(df.loc[is_out, '地価'], df.loc[is_out, '空き家率'],
           s=95, c='#cc0000', alpha=0.9, marker='D', edgecolors='white',
           linewidth=0.6, label='大都市圏(外れ値)', zorder=4)
for _, row in df[is_out].iterrows():
    ax.annotate(short(row['都道府県']), (row['地価'], row['空き家率']),
                xytext=(4, 2), textcoords='offset points',
                fontsize=8, color='#990000')
sl1, ic1, r1, p1, _ = stats.linregress(df['地価'], df['空き家率'])
sl2, ic2, r2, p2, _ = stats.linregress(sub['地価'], sub['空き家率'])
xs1 = np.linspace(df['地価'].min(), df['地価'].max(), 100)
xs2 = np.linspace(sub['地価'].min(), sub['地価'].max(), 100)
ax.plot(xs1, sl1 * xs1 + ic1, color='#999', lw=1.8, ls='--',
        label=f'全47件 (r={r1:.3f})', zorder=2)
ax.plot(xs2, sl2 * xs2 + ic2, color='#e69138', lw=2.2,
        label=f'外れ値除外 (r={r2:.3f})', zorder=2)
ax.set_xlabel('住宅地の地価(標準価格, 円/m^2)', fontsize=12)
ax.set_ylabel('空き家率(%)', fontsize=12)
ax.set_title('図2  地価 × 空き家率(47都道府県, SSDSE-E+B)',
             fontsize=13, fontweight='bold')
ax.legend(fontsize=9, loc='upper right')
ax.grid(alpha=0.3, linestyle='--')
ax.set_axisbelow(True)
fig.text(0.5, -0.03,
    '※SSDSE(全空き家率)による再現。原論文 図2・3 は「その他の住宅」割合を用いており数値は一致しない。',
    ha='center', fontsize=8, color='#777')
plt.tight_layout()
fig.savefig(os.path.join(FIG_DIR, '2020_H5_3_fig2.png'), bbox_inches='tight')
plt.close(fig)
print(f"  -> fig2 保存 (全47 r={r1:.3f}, 除外後 r={r2:.3f})")
▼ 実行結果
図2 を生成中 ...
  -> fig2 保存 (全47 r=-0.532, 除外後 r=-0.483)
💡 解説
  • 地価は都市部で極端に大きい(右に数県だけ飛び出す)。ひし形=原論文が外れ値扱いした7大都市圏
  • 灰色破線=全47件、オレンジ=外れ値除外の回帰直線。原論文と同じく、除外しても弱い負の相関が残るかを確認する。
図2
図2:地価 × 空き家率(47都道府県, SSDSE-E+B再現)。ひし形=原論文が外れ値扱いした7大都市圏。灰破線=全47件、オレンジ=外れ値除外の回帰直線。※全空き家率ベースで原論文 図2・3 とは数値が一致しない。
📊 図の読み取り
全体の傾き
全47件で r = -0.532 の負の相関。地価が高い(都市部)ほど空き家率は低い。
外れ値除外後
7大都市圏を除いても r = -0.483 と負のまま。原論文の「弱いながらも負の相関」が再現された。
外れ値の意味
大都市圏は地価が桁違いに高く空き家率も低い。除外すると関係は弱まるが向きは変わらない。
仮説①-3 都心からの距離(原論文の報告値・グラフは原論文参照) 原論文はグーグルマップで測った「都心からの距離」を使い、都心から遠いほど空き家割合が大きく、さらに高齢者率と都心からの距離の相関係数は r=0.88(強い正)だったと報告している。都心からの距離は SSDSE に収録されていないため本ページでは再計算せず、報告値のみを示す(該当グラフ=原論文 図4・図5 は原論文を参照)。なお、本ページで再現した「高齢者率 × 地価」r = -0.712 は、これと整合的(都心から遠い=地価が安い=高齢化が進む)である。
仮説②:高齢者世帯と空き家化の理由

原論文の仮説②は「次の世帯がない高齢者が、住宅を維持できず放棄することが空き家増加の原因」。これを②-1 高齢者のみ世帯の割合(図3)と、②-2 空き家化の理由(図4)で確かめる。

仮説②-1 高齢者のみ世帯と空き家率(図3)

やってみよう図3 — 高齢者のみ世帯割合 × 空き家率

原論文 図7 に対応。仮説②「高齢者のみ世帯が多い地域ほど空き家が多い」を散布図で確かめるのが目的。

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# 図3: 高齢者のみ世帯割合 × 空き家率(散布図+回帰直線)
# ============================================================
print("図3 を生成中 ...")
fig, ax = plt.subplots(figsize=(9, 6.5))
x = df['高齢者のみ世帯割合'].values
y = df['空き家率'].values
ax.scatter(x, y, s=60, c='#8e7cc3', alpha=0.85,
           edgecolors='white', linewidth=0.6, zorder=3)
sl, ic, r, p, se = stats.linregress(x, y)
xs = np.linspace(x.min(), x.max(), 100)
ax.plot(xs, sl * xs + ic, color='#e69138', lw=2.2, zorder=2,
        label=f'回帰直線 y={sl:.3f}x{ic:+.3f}  (r={r:.3f})')
for _, row in df.iterrows():
    ax.annotate(short(row['都道府県']),
                (row['高齢者のみ世帯割合'], row['空き家率']),
                xytext=(3, 3), textcoords='offset points',
                fontsize=7, color='#555')
ax.set_xlabel('高齢者のみ世帯の割合(%, SSDSE-A集計)', fontsize=12)
ax.set_ylabel('空き家率(%)', fontsize=12)
ax.set_title('図3  高齢者のみ世帯割合 × 空き家率(47都道府県)',
             fontsize=13, fontweight='bold')
ax.legend(fontsize=10, loc='upper left')
ax.grid(alpha=0.3, linestyle='--')
ax.set_axisbelow(True)
fig.text(0.5, -0.03,
    '※SSDSE(全空き家率/高齢者のみ世帯はSSDSE-A集計)による再現。原論文 図7 とは変数定義が異なり数値は一致しない。',
    ha='center', fontsize=8, color='#777')
plt.tight_layout()
fig.savefig(os.path.join(FIG_DIR, '2020_H5_3_fig3.png'), bbox_inches='tight')
plt.close(fig)
print(f"  -> fig3 保存 (r={r:.3f}, p={p:.4f})")
▼ 実行結果
図3 を生成中 ...
  -> fig3 保存 (r=0.760, p=0.0000)
💡 解説
  • 右上がりの直線なら「高齢者のみ世帯の割合が高い県ほど空き家率も高い」。
  • 原論文 図7(その他の空き家, y=0.3785x+5.6395)と同じ正の向きが SSDSE でも再現されるかを見る。
図3
図3:高齢者のみ世帯割合 × 空き家率(47都道府県, SSDSE-A集計+SSDSE-E)。※原論文 図7(高齢者世帯 × その他の空き家, y=0.3785x+5.6395)とは変数定義が異なり数値は一致しない。
📊 図の読み取り
正の相関
右上がりの直線(r = +0.760)。高齢者のみ世帯の割合が高い県ほど空き家率も高い。
原論文との対応
原論文 図7(正の相関)と同じ向きが再現された。
定義の違い
本図の「高齢者のみ世帯」は高齢単独+高齢夫婦のみ世帯(SSDSE-A集計)。原論文の「高齢者世帯」とは定義が異なる。

仮説②-2 空き家化の理由(図4)

「なぜ空き家になったのか」は、統計データではなく国土交通省のアンケート(原論文 図8)による。SSDSEには無い数値なので、原論文の報告値をそのまま円グラフに再掲する(再計算ではない)。

やってみよう図4 — 空き家化の理由(原論文の報告値の可視化)

原論文 図8 に対応。「そもそも家が空き家になる一番の理由は何か」を示すのが目的。この数値は国土交通省アンケートの結果で SSDSE には無いため、原論文の報告値をそのまま円グラフに再掲する(再計算ではない)。

📝 コード
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# ============================================================
# 図4: 空き家化の理由(国土交通省アンケートの報告値を可視化)
#   ※SSDSE未収録。原論文 図8 の報告値を再掲(再計算ではない)
# ============================================================
print("図4(報告値の可視化)を生成中 ...")
reasons = ['居住者の死亡のため', '居住者の転出のため',
           '家屋の建て替え等のため', 'その他', '入院・施設入居のため']
vals   = [68.1, 23.4, 4.3, 4.3, 0.0]
colors = ['#cc0000', '#e69138', '#6aa84f', '#999999', '#3d85c6']
fig, ax = plt.subplots(figsize=(8.5, 6))
wedges, _, _ = ax.pie(
    vals, colors=colors, startangle=90, counterclock=False,
    autopct=lambda v: f'{v:.1f}%' if v > 0.5 else '',
    pctdistance=0.75, wedgeprops=dict(edgecolor='white', linewidth=1.2))
ax.legend(wedges, [f'{n}{v:.1f}%)' for n, v in zip(reasons, vals)],
          loc='center left', bbox_to_anchor=(0.98, 0.5), fontsize=10)
ax.set_title('図4  空き家化の理由(国土交通省アンケート)\n'
             '※原論文の報告値の可視化(再計算ではない)',
             fontsize=12, fontweight='bold')
plt.tight_layout()
fig.savefig(os.path.join(FIG_DIR, '2020_H5_3_fig4.png'), bbox_inches='tight')
plt.close(fig)
print("  -> fig4 保存(報告値の可視化)")
▼ 実行結果
図4(報告値の可視化)を生成中 ...
  -> fig4 保存(報告値の可視化)
💡 解説
  • 最大は「居住者の死亡のため」68.1%、次いで「居住者の転出のため」23.4%。「高齢者が亡くなった後に住宅が空き家になる」という原論文の主張の根拠になっている。
  • この図は再計算ではなく報告値の可視化。値は原論文(国土交通省『空き家等の現状について』)による。
図4
図4:空き家化の理由(国土交通省アンケート)。※原論文の報告値の可視化であって再計算ではない(SSDSE未収録)。
📊 図の読み取り
最大の理由
「居住者の死亡のため」が68.1%で最大。次いで「居住者の転出のため」23.4%。
原論文の主張
高齢者が亡くなった後、相続されず管理が行き届かなくなることが空き家増加の大きな原因、という仮説②の根拠。
データの性質
これは報告値の可視化。値は原論文(国交省『空き家等の現状について』)による。
仮説②の結論(原論文) 高齢者が住宅を放棄すること、特に高齢者の死亡後に管理が行き届かなくなることが、空き家増加の大きな原因である。
空き家をどう処理するか:費用の試算

原論文 第4章は、空き家の特徴に応じた3つの処理方法(解体・売却・賃貸)のメリット・デメリットを整理し、それぞれの総費用を試算している。

表1 空き家の処理方法の一覧(原論文より)

方法メリットデメリット使える場面
解体費用が安い/土地を利用できるビジネスに活かしにくい/密集地は解体困難築年数が長く改修点が多い空き家
売却経済が回る/解体しなくてよい買い手が多くない/仏壇・墓の管理に支障、改修が必要築年数が短く住みやすさに支障がない空き家
賃貸財産を手放さない/賃貸所得を得られる引き続き管理が必要/借り手がいないと固定資産税を払う管理者がいて賃貸の知識をもって行える場合

原論文は「損傷なし→賃貸、平成3年以降の損傷あり→売却(改修)、それ以外・不明→解体」と区分し、平成26年空家実態調査(建築時期)と NPO の単価を使って総費用を積算している。

やってみよう参考 — 空き家処理費用の試算(原論文の報告値)

原論文 第4章のしめくくり。「空き家を片づけるのにいくらかかるか」の規模感を示す。この試算はSSDSE未収録の単価・区分を使った原論文独自のものなので、報告値をそのまま再掲する。

📝 コード
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# ============================================================
# 参考: 空き家処理費用の試算(原論文の報告値, 再掲)
#   ※SSDSE未収録の単価・区分を用いた原論文独自の試算
# ============================================================
print("空き家処理費用(原論文の報告値, 再掲):")
for name, oku in [('解体', 3270), ('売却(改修)', 134), ('賃貸(管理)', 123)]:
    print(f"  {name:9s}: 約 {oku:>4d} 億円")
▼ 実行結果
空き家処理費用(原論文の報告値, 再掲):
  解体       : 約 3270 億円
  売却(改修)   : 約  134 億円
  賃貸(管理)   : 約  123 億円
💡 解説
  • 解体費の合計が約3270億円と、売却(改修)や賃貸(管理)の10倍以上。個人だけで負担するのは難しく、国レベルの対策が必要という結論につながる。
  • これらは再計算ではなく原論文の報告値。算定式と単価は原論文(NPO法人 空き家・空地管理センター等)による。
費用試算の結果(原論文の報告値・再計算ではない)
解体費
約3270億円
売却(改修)費
約134億円
賃貸(管理)費
約123億円
解体費だけで他の10倍以上。個人での解決は難しく、国レベルの継続的な方策や外部組織の協力が必要、というのが原論文の結論につながる。この試算はSSDSE未収録の単価・区分を用いた原論文独自のもので、本ページは報告値を再掲している。

まとめ

原論文は、空き家の分布や他の事象との相関を調べ、空き家を効率よく減らす方法を探った。本ページは、そのうち SSDSE で再計算できる関係を実データで再現した。

主要な発見(原論文の報告値/本ページの再現値を区別)
  1. 過疎・高齢地域ほど空き家が多い:高齢者率 × 空き家率は正(本ページ再現 r = +0.735/原論文 図1 と同じ向き)。
  2. 地価が高い地域ほど空き家が少ない:地価 × 空き家率は負、大都市圏を除いても負(本ページ再現 r = -0.532 → -0.483/原論文 仮説①-2 と同じ)。
  3. 高齢者世帯と空き家:高齢者のみ世帯 × 空き家率は正(本ページ再現 r = +0.760/原論文 図7 と同じ向き)。
  4. 空き家化の主因:居住者の死亡68.1%が最大(原論文の報告値・図4は可視化)。
  5. 都心からの距離:遠いほど空き家が多く、高齢者率との相関 r=0.88(原論文の報告値・グラフは原論文参照)。
  6. 処理費用:解体約3270億円・売却約134億円・賃貸約123億円(原論文の報告値・再掲)。

結論(原論文):空き家増加の主因は高齢者の死亡後の管理不足であり、特に過疎地域で顕著である。解体費が世帯収入以上の規模に達するため、個人レベルでの解決は難しく、国レベルの継続的な方策や、ボランティア・企業などの協力が重要である。

この再現から学べること
  • 相関の向き(符号)は、変数の定義が多少違っても再現しやすい。今回、4つの関係すべてで原論文と符号が一致した。
  • 一方、回帰直線の傾きや個別数値は変数の定義(全空き家 vs その他の住宅)に強く依存する。「再現できた/できていない」を区別することが大切。
  • 外れ値(大都市圏)を除くと相関は弱まるが向きは変わらない。除外の前後を両方示すのが誠実な作法。

データ出典:SSDSE-E-2026/SSDSE-B-2026/SSDSE-A-2025(独立行政法人統計センター公表の教育用標準データセット)。原論文の報告値は「平成30年住宅・土地統計調査」「国土交通省 空き家等の現状について」等による。 再現コード:code/2020_H5_3_shorei.py

⚠️ よくある誤解と注意点

この論文(相関分析・外れ値の扱い・報告値の可視化)で、初心者がやりがちな勘違いをまとめます。

❌ 「相関がある=因果関係がある」ではない
「高齢者率が高い県ほど空き家が多い」は相関であって、「高齢化が空き家を生む」と断定はできません。過疎・人口流出・地価など複数の要因が同時に効いている可能性があります(交絡)。原論文も仮説を積み重ねて説明しており、単一の相関で因果を結論づけてはいません。読むときは「本当に原因はこれか、共通の第三の要因はないか」を必ず疑いましょう。
❌ 「外れ値は消せば結果がきれいになる」ではない
原論文は東京・大阪など大都市圏を外れ値として除外しました。これは「都合が悪いから消す」のではなく、地価が桁違いに高く性質が異なるためです。正しい作法は、除外前と除外後の両方を示すこと(本ページの図2も2本の回帰直線を併記)。外れ値そのものが重要な情報(都市部は空き家が少ない)を持っていることも多いので、安易に消すのは改ざんに近くなります。
❌ 「報告値の可視化=自分で再計算した結果」ではない
本ページの図4(空き家化の理由)と費用試算は、SSDSEに無い数値なので原論文の報告値をそのまま図にしただけで、再計算ではありません。論文やレポートでは「自分で計算した数字」と「他の資料から引用した数字」を必ず区別しましょう。混ぜてしまうと、どこまでが自分の分析か分からなくなります。
❌ 「同じ言葉なら同じ数字が出るはず」ではない
原論文の「空き家」は「その他の住宅」だけ、本ページの再現は全空き家です。名前は同じ「空き家率」でも中身(定義)が違うので、回帰式の傾きや個別の数値は一致しません。比較してよいのは「関係の向き(符号)」まで。変数の定義を確認せずに数値だけ比べるのは典型的な誤りです。
❌ 「相関係数が大きい=強い関係」だけで十分ではない
相関係数 r は「直線的な関係の強さ」しか測れません。曲がった関係(例:地価が100万円を超えてから効き始める、という原論文の記述)は、全体を1本の直線で見ると弱く見えることがあります。必ず散布図を描いて、直線で捉えてよい形かを目で確認しましょう。サンプル数が少ない図(原論文 図4は数点)では、r を過信しないことも大切です。

📖 用語集(この記事に出てくる統計用語)

本文で見慣れない言葉が出てきたら、ここで確認してください。

相関係数
2つの変数が「一緒に増減する強さと向き」を −1〜+1 で表す指標 r。+1に近いほど強い正の相関、−1に近いほど強い負の相関、0付近はほぼ無関係。
散布図
2変数を縦軸・横軸にとって点を打つグラフ。関係の形(直線か曲線か)や外れ値を目で確認できる。相関分析の第一歩。
回帰直線
散布図の点に最もよく当てはまる直線。傾きが正なら右上がり(正の関係)、負なら右下がり(負の関係)。
外れ値
他の点から極端に離れた値。分析結果を大きく動かすことがあるため、原因を調べ、除外の前後を両方示すのが望ましい。
p値
「本当は関係がない」と仮定したときに、観察された関係(かそれ以上)が偶然出る確率。慣例で0.05未満を「統計的に有意」とみなす。
交絡
2つの変数の見かけの関係が、実は第三の共通要因によって作られている状態。相関を因果と誤解する主因。
SSDSE
教育用標準データセット(Standardized Statistical Data Set for Education)。独立行政法人統計センターが公表する、都道府県・市区町村単位の整理済み統計。無料で誰でも使える。
空き家率 / その他の住宅
空き家率=空き家数/総住宅数。空き家は賃貸用・売却用・二次的・その他の住宅に分類され、原論文は放置されやすい「その他の住宅」を主役にした。SSDSEの空き家数は全種類の合計。

📐 使っている手法をわかりやすく解説

この論文で実際に使われている手法について、「何のためか」「結果をどう読むか」「注意点」を手法別にまとめます。

🔗 相関分析(散布図回帰直線
何?
2つの変数が一緒に動く強さと向きを、相関係数 r(−1〜+1)と散布図で調べる手法。この論文の中心的な道具。
どう使う?
高齢者率・地価・高齢者世帯を横軸、空き家率を縦軸にとって散布図を描き、回帰直線と r を求める。
結果の読み方
|r|>0.7 で強い相関、|r|<0.3 でほぼ無相関。符号(+/−)が関係の向き。相関は因果ではない
⚠️ 注意点
(1) 必ず散布図を描き、直線で捉えてよい形か確認(曲線・閾値効果を見逃さない)。(2) 外れ値1つで r が大きく動く。(3) サンプル数が少ないと r は不安定(原論文 図4は数点で「データ数は非常に少ない」と自ら断っている)。(4) 変数の定義が違えば数値は一致しない。比べてよいのは向きまで。
🎯 外れ値の扱い
何?
他から極端に離れた点を、分析でどう扱うかの判断。原論文は地価が突出した7大都市圏を外れ値として除外した。
どう使う?
外れ値を含む結果と、除外した結果の両方を計算・提示する(本ページ図2は回帰直線を2本併記)。
結果の読み方
除外で相関が弱まるか・向きが変わるかを見る。向きが変わらなければ結論は頑健。
⚠️ 注意点
(1) 「きれいにする」ための除外は改ざんに近い。除外理由(性質が違う)を明示する。(2) 外れ値自体が重要情報のこともある。(3) 除外の前後を必ず両方示す。
🥧 割合の可視化(円グラフ)と報告値の再掲
何?
アンケート結果などの構成比を円グラフで示す手法(原論文 図8=本ページ図4)。
どう使う?
「空き家化の理由」の割合を円グラフにする。今回はSSDSEに無い数値なので原論文の報告値を再掲。
結果の読み方
最大のカテゴリ(居住者の死亡68.1%)に注目。合計100%になっているかを確認する。
⚠️ 注意点
(1) カテゴリが多すぎる円グラフは読みにくい。(2) 自分で計算した値か、引用(報告値)かを必ず明記する。本ページは図中・図注に「再計算ではない」と二重明記している。
🧮 費用の積算(試算)
何?
「1軒あたりの単価 × 該当する割合 × 総数」で総費用を見積もる手法(原論文 第4章)。
どう使う?
空き家を築年数などで解体/売却/賃貸に区分し、それぞれ単価×軒数で総額を出す。
結果の読み方
桁(億円・兆円)で規模感を掴む。解体約3270億円が突出=個人負担では難しい規模。
⚠️ 注意点
(1) 単価や区分の前提で結果が大きく変わる(感度が高い)。前提を明示する。(2) あくまで概算。契約費用など含まない範囲を断る(原論文も明記)。

🚀 発展の可能性(結果 X → 新仮説 Y → 課題 Z)

この研究をさらに発展させる3つの方向性です。

① 「その他の住宅」に絞った再分析
結果 X
本ページの再現は全空き家を使ったため、原論文の「その他の住宅」の数値とは一致しなかった。
新仮説 Y
e-Statの住宅・土地統計調査から「その他の住宅」だけの空き家数を取れば、原論文の傾き(y=0.025x−0.3504等)まで再現できるはず。
課題 Z
(1)e-Statで種類別空き家数を取得。(2)高齢者率×「その他の空き家」の回帰式を求め、原論文の報告値と照合。(3)全空き家と何が違うかを考察する。
② 市区町村・時系列への拡張
結果 X
本分析は47都道府県の断面データ。
新仮説 Y
市区町村単位(SSDSE-A)や複数年度で見れば、都道府県内の格差や、空き家率の増加スピードと高齢化の関係が見える。
課題 Z
(1)市区町村単位で同じ相関を計算。(2)年度をまたいで空き家率の変化と高齢化の進行を比較。(3)過疎指定地域とそれ以外で層別する。
③ 交絡を統制した多変量分析
結果 X
高齢者率・地価・距離はどれも空き家と相関するが、互いにも相関している(例:高齢者率×地価 r=-0.71)。
新仮説 Y
重回帰分析で複数要因を同時に入れれば、「どれが独立に効いているか」を切り分けられる。
課題 Z
(1)空き家率を目的変数に、高齢者率・地価・世帯構成を説明変数にした重回帰を実行。(2)多重共線性をVIFで確認。(3)単相関と結果がどう変わるか考察する。

🎯 自分でやってみよう(5つのチャレンジ)

手を動かすのが最強の学習法です。本ページのスクリプトをベースに挑戦してみましょう。

★☆☆☆☆ 入門
CH1. 同じ図を再現する
付属スクリプトをそのまま実行し、図1〜図4を再現。
ポイント: どのコード行がどの図を作っているか辿る。
★★☆☆☆ 初級
CH2. 外れ値の県を変えてみる
図2の outliers のリストを変えて(例:東京だけ、または大都市圏を除かない)再実行。
ポイント: r と回帰直線がどう変わるか。除外の恣意性を体感する。
★★★☆☆ 中級
CH3. 別の変数と空き家率の相関を調べる
SSDSE-Eの別の変数(例:一戸建住宅数の割合、人口密度)と空き家率の相関・散布図を追加。
ポイント: 新しい仮説を1つ立ててから確かめる。
★★★★☆ 上級
CH4. 重回帰で交絡を統制する
空き家率を目的変数、高齢者率・地価・高齢者のみ世帯割合を説明変数にした重回帰を statsmodels で実行。
ポイント: 単相関と係数の符号・有意性がどう変わるか。
★★★★★ 発展
CH5. 「その他の住宅」で原論文の数値を再現する
e-Statから種類別空き家数を取得し、原論文の回帰式(y=0.025x−0.3504等)まで再現に挑戦。
ポイント: 全空き家との違いを数値で説明できるように。
💡 ヒント: 詰まったら本サイトの他の空き家・地域分析論文のスクリプトも参考に。手法ガイド・用語集も活用しましょう。

💼 この手法は実社会でこう使われている

相関分析・地域データ分析は、行政や企業の現場で広く使われています。

🏛️
自治体の空き家対策
市区町村は空き家バンク・除却補助の対象地区を決める際、高齢化率や地価と空き家分布の関係を本論文と同じ手法で分析します。
🏘️
不動産・住宅業界
中古住宅の再生・賃貸転用の可能性を、地域の人口構成・地価データから評価します。空き家の活用ビジネスの立地判断に直結します。
🏦
金融・保険
地価・人口動態と資産価値の関係分析は、住宅ローン審査や地域別リスク評価の基礎になります。
📊
まちづくり・NPO
地域の課題(過疎・高齢化・空き家)をデータで可視化し、行政への提言や合意形成に使います。

🤔 よくある質問(読者からの想定Q&A)

この論文を読んで抱きやすい疑問に答えます。

Q1. なぜ再現の数値が原論文と違うのですか?
原論文は「その他の住宅」だけの空き家を使い、本ページの再現はSSDSEの全空き家を使っているためです。定義が違うので傾きや数値は一致しませんが、関係の向き(符号)は4つとも一致しました。
Q2. この分析は自分でもできますか?
できます。SSDSEは無料で公開されており、Pythonのpandas・scipyで本ページのスクリプトをそのまま実行すれば再現できます。
Q3. 「都心からの距離」や費用のグラフはなぜ載っていないのですか?
それらはSSDSEに無いデータ(グーグルマップの距離、国交省アンケート、NPOの単価)で作られています。本ページでは新たな数値を作らず、報告値の再掲にとどめ、該当グラフは原論文を参照する形にしています。
Q4. 相関だけで「空き家を減らせる」と言えますか?
言えません。相関は因果ではないため、原論文も仮説を積み重ね、アンケート(理由)や費用試算まで含めて総合的に論じています。真の因果には、より厳密な手法(自然実験など)が必要です。
Q5. もっと深く学ぶには?
「相関と回帰」「統計的因果推論」の入門書がおすすめです。本サイトの他の空き家・地域分析論文と読み比べると、同じ手法の使い方が身につきます。

✅ 理解度チェック(4問)

この論文を理解できたか、クリックで確認しましょう。間違えても解説が出ます。

🐍 ブラウザで動かす — インストール不要でこの論文の分析を再現する

このページの分析は、この画面の中でそのまま実行できます。 Python をインストールする必要も、CSV をダウンロードする必要もありません。 下のセルの 「▶ ブラウザで実行」 を上から順に押すか、 「▶ 最初から全部実行」 で一気に流してください。 表示されるのは、本文の図表とまったく同じ計算の結果です (動かしているのは再現スクリプト code/2020_H5_3_shorei.py そのもの)。

コードは書き換えられます。「✏️ 書き換える」で数字や変数を変えて ▶ を押すと、 結果がどう変わるかをその場で確かめられます(元に戻すボタンつき)。 ページを開いた時点で裏で実行環境の準備が始まっているので、待ち時間はほとんどありません。 初回だけ実行環境の取得にインターネット接続が必要です。