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2020年度(令和2年度)
統計データ分析コンペティション | 統計数理賞[高校生の部]

観光業による観音寺市の少子高齢化による問題解決

⏱️ 推定読了時間: 約22分
統計数理賞[高校生の部]
香川県立観音寺第一高等学校 | 藤村小桜・石川花鈴・石川桜大・川崎泰治・佐藤龍之介・宮武颯樹
🔬 アンケート集計🔬 時系列分析🔬 相関分析🔬 記述統計🏷 観光🏷 移住・人口移動
🔬 手法タグ / 🏷 応用タグ(クリックで同タグの論文をネットワーク検索)
🔬 再現カルテ — データが公開されておらず、原論文の報告値をたどる形で再現

この教材は、元データが公開されていないため再計算ができません。原論文が論文中に報告した数値をたどって図表にし、「その数値からどこまで言えるか」を読み解く形で学びます。数値そのものは原論文からの引用であり、この教材が計算したものではありません。

原論文が使ったデータSSDSE-A・SSDSE-B・情報通信白書・労働力調査・宿泊旅行統計調査・観音寺市観光基本計画・気象庁-過去の気象データ検索・農林水産省 観音寺市基本データ・国勢調査
分析単位:都道府県
中核手法:相関分析
この教材が使うデータCSV は読み込まない(原論文が報告した数値をそのまま図表化して読み解く)
原論文(PDF)観光業による観音寺市の少子高齢化による問題解決
統計数理賞/藤村小桜・石川花鈴・石川桜大・川崎泰治・佐藤龍之介・宮武颯樹(香川県立観音寺第一高等学校)
⚠️ この教材ではできないこと(原論文との違い)
  • 元データが公開されていないため、数値の再計算はできない(原論文が報告した値をたどる形で学ぶ)
📄 原論文との違いを、もっと詳しく
📄 原論文:観音寺市の観光・人口データ(SSDSE+市資料)で記述統計・時系列比較を実施。
📘 本教材:原論文の報告値を転記して図表化。生データからの再計算は行っていない。
⚠️ 注意:ページ中の数値は原論文の報告値。
🚀 原論文と同じ粒度で挑戦したい人へ

原論文と同じ粒度のデータは、この教材にも同梱しています。これを読み込めば、原論文と同じ細かさで分析をやり直せます(下の「🐍 ブラウザで動かす」でコードを書き換えて試せます)。ただし原論文が使った項目がすべて収録されているとは限りません。足りない項目は、上の「できないこと」に書いた出典から取ってくる必要があります。

▶ ここに書いてある分析は、ページ下部の「🐍 ブラウザで動かす」でそのまま実行できます(インストール不要)。動かしているのは code/2020_H3_suri.py(186 行)そのものです。

🏅 論文審査会コメント(審査員はここを評価した)
「論文に要求される構成に準拠しており、自分たちが住む観音寺市の少子高齢化問題について、データに基づき、複数の方法で丁寧に分析している。」
出典:統計センター「統計データ分析コンペティション」受賞論文PDF掲載の審査講評。プロの審査員が何を評価し、何を注文したかは論文の読み方の最良の手本になる。
📝 3行で分かる要約

目次

  1. 研究の背景と問い
  2. 使用データと分析手法・再現性トリアージ
  3. 少子高齢化の現状
  4. 移住者と観光業の関係(相関 r=0.8194)
  5. 観音寺市の観光の現状
  6. 観音寺市の魅力とまとめ・提言
  7. 結論
  8. 📥 データ・図の再現について
  9. 💼 実社会での応用
  10. ⚠️ よくある誤解
  11. 📖 用語集
  12. 📐 手法ガイド
  13. 🚀 発展の可能性
  14. 🎯 自分でやってみよう
  15. 🤔 Q&A
  16. 🐍 ブラウザで動かす

🎯 この記事を読むと何ができるようになるか

📥 データ・図の再現について(重要)

本ページの図1〜図4は、いずれも原論文(PDF)に印字された報告値をそのまま可視化したもの(再計算ではない)です。原論文は Excel で作成されており、用いた元データの多くは 観音寺市の市レベル統計・観光庁データ で、教育用標準データセット SSDSE独立行政法人統計センターが配布)には収録されていません。

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CSVのダウンロードは不要です 図の数値はスクリプト code/2020_H3_suri.py に直接記載されています(原論文の報告値)。乱数生成・合成データは一切使いません。
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スクリプトをそのまま実行する ターミナルでプロジェクトルートに移動し、以下を実行します。
python3 code/2020_H3_suri.py
図は html/figures/ に自動保存されます。
3
元データを自分でたどるには 原論文の出典(観音寺市観光基本計画・統計かんおんじ・観光庁 宿泊旅行統計調査・e-Stat 労働力調査・情報通信白書・気象庁)を参照してください。詳しくは本文「使用データ」欄と原論文 参考文献を参照。
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研究の背景と問い

日本では少子高齢化が進み、2006年から2017年までの12年間を通して、15歳未満人口の割合と15〜64歳人口の割合は年々減少し、65歳以上人口の割合は増加し続けている。 著者たちが暮らす香川県観音寺市でも同様に少子高齢化が進行しており、日本全体と比べても老年人口の割合が大きく、高齢化がより進んでいる。 少子高齢化は人口減少・労働力低下・経済の衰退・医療費増大など、さまざまな問題を引き起こすと考えられている。

そこで著者たちは、観音寺市の少子高齢化を止めたいと考え、「市の観光を発展させ、移住したいと思う人を増やすことで、少子高齢化によって生じる問題の解決につながるのではないか」という仮説を立て、公開データを用いて検証を進めた。

問題意識 観音寺市は老年人口の割合が全国平均より大きい。高齢化が進むと労働力が不足する。移住者を増やせれば、人口減少の緩和・労働力の補充につながり、少子高齢化の問題解決に資するのではないか。
分析の流れ
少子高齢化
の現状把握
移住者を
増やす仮説
宿泊者数×転入者数
相関 r=0.8194
観光の現状
(客数・宿泊・費用)
市の魅力
(自然・気候)

相関分析(CORREL) 記述統計(平均) 時系列グラフ アンケート集計 観音寺市(市レベル)

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使用データと分析手法・再現性トリアージ

使用データ(原論文)

用途データ・出典SSDSE収録?
日本の人口推移総務省 平成28年版 情報通信白書未収録
日本・香川県の年齢3区分人口SSDSE-2020B(15歳未満A1301・15〜64歳A130101・65歳以上A1303・総人口A1101)収録(別ヴィンテージ)
年齢階級別労働力人口比率e-Stat 労働力調査未収録
都道府県別 転入者数SSDSE-2020A(転入者数(日本人移動者)A5101)収録(別ヴィンテージ)
都道府県別 延べ宿泊者数観光庁 宿泊旅行統計調査未収録
観音寺市の観光客数・旅行費観音寺市観光基本計画未収録(市レベル)
観音寺市の気候統計かんおんじ・気象庁 過去の気象データ未収録(市レベル)

分析手法(原論文はすべて Excel)

⚠️ 再現性トリアージ(この教材の重要な前提)
  • 本論文の主要データ(観音寺市の市レベル統計・観光庁の宿泊者数)は SSDSE未収録。よって本教材の図1〜図4はすべて「原論文の報告値の可視化(再計算ではない)」
  • 中心的発見の相関 r=0.8194 は、転入者数(A5101)は SSDSE-A に収録されるが、対となる観光庁の宿泊者数が SSDSE 未収録のため再計算できない。散布図は原論文 図6 を参照。
  • 日本・香川県の人口推移は SSDSE-B に相当データがあるが、配布中の版(SSDSE-B-2026 等)は原論文の SSDSE-2020B とヴィンテージが異なり値がずれるため、本教材では原論文の報告値をそのまま提示し、新たな数値を作らない方針とした。
やってみよう報告値をコードに転記(再計算ではない)
📝 コード
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# 原論文の報告値をコードに転記(再計算ではない)
# 図5:年齢階級別労働力人口比率(出典 e-Stat 労働力調査)
labor_ages = ['15-19','20-24','25-29','30-34','35-39','40-44','45-49',
              '50-54','55-59','60-64','65-69','70-74','75-79','80-84']
labor_rate = [20.9,75.5,90.2,86.8,88.6,88.2,88.7,
              87.9,84.0,72.4,50.1,31.8,17.9,8.4]

# 図8:観音寺市の観光客数の推移(出典 観音寺市観光基本計画, H23-H28)
kanko_years = ['H23','H24','H25','H26','H27','H28']
kanko_num   = [1422592,1455969,1429115,1400654,1420584,1475724]

# 相関分析の中心的発見(CORREL, 原論文図6の報告値)
CORR_REPORT = 0.8194
▼ 実行結果
このステップは print はしません。図が保存されただけ。次のステップへ進みましょう。
💡 解説
  • この論文の図は Excel で作られています。ここでは原論文(PDF)に印字された数値を Python のリストに写しています。
  • CORR_REPORT = 0.8194 は原論文図6の報告値。私たちが計算し直した値ではありません。
💡 データの誠実さ 「報告値の可視化」と「自分で再計算」は別物です。教材ではこの区別を必ず明記します。
3
少子高齢化の現状

原論文は、日本の人口推移(生産年齢人口は1995年をピークに減少、総人口も減少局面)と、香川県の人口動態(老年人口率の上昇と並行して総人口が減少)を示した。 総務省国勢調査によれば2015年の総人口は1億2,520万人・生産年齢人口は7,592万人。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、総人口は2048年に1億人を割り、2060年には8,674万人まで減少するとされる(いずれも原論文の記載値)。

25.4%
65歳以上の労働力人口比率
(原論文 図5・本文)
90.2%
最も高い年齢階級
(25〜29歳, 原論文図5)
8.4%
最も低い年齢階級
(80〜84歳, 原論文図5)
年齢階級別労働力人口比率
図1(原論文 図5)年齢階級別労働力人口比率。原論文の報告値の可視化(再計算ではない)。出典:e-Stat 労働力調査。
📌 このグラフの読み方
このグラフは
横軸に年齢階級、縦軸に労働力人口比率(%)をとった折れ線グラフ。
読み方
25〜59歳で高く(約85〜90%)、60代後半から急落する山型。高齢になるほど働いている人の割合が下がる。
なぜ重要か
65歳以上の労働力人口比率は25.4%と低い。高齢化が進むほど地域の労働力が不足しやすいことを示す。
読み取れること
  • 労働力人口比率は 25〜29歳で最大(90.2%)、80〜84歳で最小(8.4%)。
  • 65歳以上をまとめると25.4%と低く、高齢化の進行は労働力不足に直結する。
  • だからこそ、著者たちは「移住者を増やして労働力を補う」方向を検討した。
やってみよう図1:年齢階級別労働力人口比率(折れ線)
📝 コード
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fig1, ax1 = plt.subplots(figsize=(11, 5.5))
ax1.plot(labor_ages, labor_rate, marker='o', color='#e05c5c',
         linewidth=2.2, markersize=7, zorder=3)
for x, y in zip(labor_ages, labor_rate):
    ax1.annotate(f'{y}', xy=(x, y), xytext=(0, 8),
                 textcoords='offset points', ha='center', fontsize=9)
ax1.set_ylim(0, 100)
ax1.set_xlabel('年齢階級(歳)'); ax1.set_ylabel('労働力人口比率(%)')
fig1.savefig('html/figures/2020_H3_fig1.png', bbox_inches='tight')
print("fig1 saved.")
▼ 実行結果
fig1 saved.
💡 解説
  • plt.subplots(...) で図と軸を作り、ax.plot(x, y, marker='o') で折れ線を描きます。
  • ax.annotate(...) で各点に数値ラベルを付けています。
💡 Python TIPS zip(a, b) は2つのリストを同時に回すときの定番。for x, y in zip(...) と書けます。
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移住者と観光業の関係(相関 r=0.8194)

著者たちは「観光業が発展すれば、それをきっかけに移住者が増える」と仮定し、都道府県別の延べ宿泊者数と転入者数の相関を調べた。日帰りを含む観光客の動向を正確にとらえるのは難しいため、宿泊施設に泊まった人数(延べ宿泊者数)を観光客の代理指標として用いている。

0.8194
延べ宿泊者数×転入者数
相関係数(原論文図6・CORREL)
強い
正の相関の強さ
(0.8を超える)
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都道府県
(分析単位)
この散布図(図6)は本教材では再現できません 相関の一方の変数「都道府県別 延べ宿泊者数(観光庁 宿泊旅行統計調査)」は SSDSE に未収録で、手元データから再計算できません。 したがって散布図は原論文 図6 を参照してください。ここでは報告値 r=0.8194 を数値で提示します(再計算ではありません)。
原論文の解釈 宿泊者数と転入者数には強い相関(r=0.8194)がみられた。ここから著者たちは「転入者を増やすには、宿泊者すなわち観光客が多く来る場所にすることが重要」と考えた。
⚠️ 相関は因果ではない r=0.8194 は「観光客が多い県ほど転入者も多い」という関連を示すだけで、「観光を増やせば移住が増える」という因果を証明したわけではありません。人口規模の大きい都市部で両者がともに大きくなる(共通要因)可能性など、別の説明も残ります。原論文もあくまで「関連」を提示するにとどまっています。
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観音寺市の観光の現状

観光客数の推移(図8)

観音寺市の観光客数は近年140万人程度で推移し、年ごとに5万人程度の増減を繰り返している。主な増減要因は四国遍路のうるう年の「逆打ち」や瀬戸内国際芸術祭などのイベントで、裏を返せばイベントがなければ観光客数は伸びていない、という指摘である。

観音寺市の観光客数の推移
図2(原論文 図8)観音寺市の観光客数の推移(平成23〜28年)。原論文の報告値の可視化(再計算ではない)。出典:観音寺市観光基本計画。
📌 このグラフの読み方
このグラフは
横軸に年度(平成23〜28年)、縦軸に観光客数(人)をとった折れ線グラフ。
読み方
H24とH28で山(イベント年)、H26で谷。約140万人前後を上下している。
なぜ重要か
「イベント依存」の観光構造が読み取れる。イベントがなくても訪れ、さらに宿泊してもらう工夫が必要。
やってみよう図2:観音寺市の観光客数の推移(折れ線)
📝 コード
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fig2, ax2 = plt.subplots(figsize=(10, 5.5))
ax2.plot(kanko_years, kanko_num, marker='o', color='#1A237E',
         linewidth=2.4, markersize=9, zorder=3)
for x, y in zip(kanko_years, kanko_num):
    ax2.annotate(f'{y:,}', xy=(x, y), xytext=(0, 10),
                 textcoords='offset points', ha='center', fontsize=9.5)
ax2.set_ylim(1_360_000, 1_500_000)
fig2.savefig('html/figures/2020_H3_fig2.png', bbox_inches='tight')
print("fig2 saved.")
▼ 実行結果
fig2 saved.
💡 解説
  • ax.set_ylim(1_360_000, 1_500_000) のように、数値の桁が大きいときは縦軸範囲を絞ると変化が見やすくなります。
  • f'{y:,}' は3桁区切り(1,455,969)で表示する書式。
💡 Python TIPS 数字リテラルは 1_360_000 のようにアンダースコアで区切れて読みやすくなります(値は変わりません)。

都道府県別 宿泊者数ランキング(表1)

2018年の都道府県別 延べ宿泊者数では、香川県は全国39位と少ない。東京都・大阪府・北海道が突出し、香川県(=399)は上位県と大きな差がある。ここから「香川県で宿泊する人は全国と比べて少ない」と結論づけている。

都道府県別延べ宿泊者数 上位10と香川県
図4(原論文 表1)都道府県別 延べ宿泊者数(上位10+香川県 39位, 2018年)。原論文の報告値の可視化(再計算ではない)。出典:観光庁 宿泊旅行統計調査。数値は原論文表1の値(単位表記は原論文になし)。
順位都道府県宿泊者数順位都道府県宿泊者数
1位東京都6,1206位静岡県2,141
2位大阪府3,5767位神奈川県2,035
3位北海道3,5278位京都府1,828
4位千葉県2,5189位長野県1,821
5位沖縄県2,28310位愛知県1,729
…(中略)…39位香川県399

※ 上表は原論文表1のうち、確実に読み取れた上位10県と香川県(39位)を抜粋したもの。全47県は原論文 表1 を参照。

やってみよう図4:宿泊者数ランキング(上位10+香川県)
📝 コード
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rank_labels = ['東京都','大阪府','北海道','千葉県','沖縄県','静岡県',
               '神奈川県','京都府','長野県','愛知県','香川県\n(39位)']
rank_vals   = [6120,3576,3527,2518,2283,2141,2035,1828,1821,1729,399]

colors = ['#9b59b6' if '香川' in lab else '#3949AB' for lab in rank_labels]
fig4, ax4 = plt.subplots(figsize=(10, 6))
ax4.bar(range(len(rank_labels)), rank_vals, color=colors, width=0.7)
ax4.set_xticks(range(len(rank_labels)))
ax4.set_xticklabels(rank_labels)
fig4.savefig('html/figures/2020_H3_fig4.png', bbox_inches='tight')
print("fig4 saved.")
▼ 実行結果
fig4 saved.
💡 解説
  • リスト内包表記 ['#9b59b6' if '香川' in lab else '#3949AB' for lab in rank_labels] で、香川県だけ色を変えています。
  • ax.bar(...) で棒グラフ、set_xticklabels で県名ラベルを設定。
💡 Python TIPS '香川' in lab は文字列の部分一致判定。条件で色分けするときに便利です。

観光客の旅行費・交通費(図9・図10)

観音寺市内での1人当たりの旅行費用合計は1,000円未満が大半(61.7%)で、平均は1,841円。交通費も1,000円未満が大半(62.7%)で、平均は3,178円(いずれも母集団 n=12,942)。旅行費が少ないことから飲食・特産品への出費が乏しく、交通費が少ないことから公共交通ではなく自家用車移動(=比較的近隣からの来訪)が多いと考察している。

旅行費・交通費の費用区分割合
図3(原論文 図9・図10)観音寺市内 1人当たり旅行費・交通費の費用区分割合(n=12,942)。原論文の報告値の可視化(再計算ではない)。主要4区分のみを表示。円グラフの全区分は原論文 図9・図10 を参照。出典:観音寺市観光基本計画。
6
観音寺市の魅力とまとめ・提言

気候(図11・図12)

平成21〜30年の観音寺市の年間降水量は比較的少なく(平成23年・30年の増加は台風の影響)、年平均気温は大きな変化がなく温暖。瀬戸内沿岸で讃岐山脈・四国山地・中国山地に囲まれるためと考察している。水不足の可能性はデメリットだが、水害が少なく温暖で住みやすい、台風被害も少ないとまとめている(グラフは原論文 図11・図12 参照)。

自然

観音寺市観光協会の情報から、市内には海・山・川があり、水辺や山の動植物が豊か。「ハマゴウ」をはじめ数の少なくなった植物も生育しており、自然が豊かな市であると位置づけている。

移住希望者が重視する条件(図7)

東京圏の20〜30代で地方移住に興味がある既婚男女500人へのアンケートでは、「山・川・海などの自然にあふれた魅力的な観光」「子育てに適した自然環境」「子供の教育・知力・学力向上」といった環境に関する選択肢を選んだ人が全体の7割超に及んだ。移住者は移住先の環境を特に重視していると考えられる(棒グラフは原論文 図7 参照)。

提言(原論文の主張) 観音寺市は、移住希望者が重視する自然環境・温暖な気候・災害の少なさを備えている。現状は観光客の滞在時間が短く消費も少ないが、観光業を活性化させて市の魅力を伝えることで移住のきっかけを作り、移住者増→人口減少の緩和・労働力の補充へつなげ、少子高齢化の問題解決を図るべきである。
7
結論

少子高齢化の問題を解決する一手として「移住者を増やす」ことが挙げられる。移住者を増やすには観光業を発展させて市の魅力を伝え、さらに宿泊したくなる観光地にすることが効果的である。都道府県別の延べ宿泊者数と転入者数には強い相関(r=0.8194)がみられ、観音寺市は自然・温暖な気候・災害の少なさという移住希望者が重視する条件を備えている。

一方で、現在の観音寺市の観光はイベント依存で、来訪者の滞在時間が短く宿泊・消費が少ないという課題がある。観光を活性化させて魅力を伝え、宿泊・消費を促すことで、移住のきっかけを生み出し、少子高齢化によって生じる問題の解決につなげられる、と結論づけている。

この教材からの学び 高校生が身近な自治体のデータを複数の方法(相関・記述統計・時系列・アンケート)で丁寧に分析した好例。ただし「相関=因果ではない」点、宿泊者数の代理指標化の限界、市レベルデータの再現の難しさ(SSDSE未収録)にも留意して読むことが大切。

💼 実社会での応用

この論文の手法(相関・記述統計・時系列・アンケート)は、地域づくりの現場で広く使えます。

🏙️
自治体の移住・定住政策
観光指標と転入者数の関係を自県で確認し、プロモーション対象を絞り込む。ただし相関から施策効果を過大評価しない。
🧳
観光マーケティング
来訪者の費用区分(旅行費・交通費)の分布から、消費が少ない層を特定し、飲食・特産品の購買を促す施策を設計する。
📈
時系列でのイベント効果測定
観光客数の推移とイベント開催年を突き合わせ、「イベント依存」からの脱却度合いをモニタリングする。

⚠️ よくある誤解

この研究を読むときに陥りやすい誤解を整理します。

誤解1:「相関 r=0.8194 だから、観光を増やせば移住が増える」
相関は関連の強さを示すだけで因果ではありません。人口の多い都市部で宿泊者・転入者がともに大きくなる共通要因の影響もあり得ます。「観光→移住」を示すには自然実験やパネルデータなど別の設計が必要です。
誤解2:「このページの図=自分で計算し直した結果」
図1〜図4は原論文の報告値の可視化(再計算ではない)です。元データの多くが SSDSE 未収録(観音寺市の市レベル統計・観光庁データ)のため、この教材では数値を作り直さず、原論文の値をそのまま描いています。
誤解3:「延べ宿泊者数=観光客数」
原論文は日帰り客を捉えにくいため、宿泊者数を観光客の代理指標として用いています。日帰り中心の地域では観光の実態を過小評価する可能性があり、代理指標の限界を意識する必要があります。

📖 用語集

この論文で登場する統計・データ用語をまとめます。

相関係数
2つの量の直線的な関係の強さと向きを −1〜+1 で表す指標。Excelでは CORREL 関数で計算できる。本論文では r=0.8194(強い正の相関)。
CORREL関数
Excelで2系列の相関係数(ピアソン)を返す関数。=CORREL(範囲1, 範囲2)
記述統計
データの特徴を要約する統計。本論文では旅行費・交通費の平均(1,841円・3,178円)を算出。
時系列グラフ
時間の経過に沿って値の変化を示す折れ線・棒グラフ。人口・観光客数・気候の推移に使用。
相関と因果
相関があっても因果があるとは限らない。共通要因・逆向きの因果・偶然の可能性を常に考える。
代理指標(プロキシ)
直接測れない概念を、観測できる別の変数で近似すること。本論文では観光客数を「延べ宿泊者数」で代理。
SSDSE
教育用標準データセット(Standardized Statistical Data Set for Education)。独立行政法人統計センターが配布する、都道府県・市区町村単位の公開統計。

📐 手法ガイド

本論文が用いた4つの手法を、注意点とともに整理します。

この論文の分析の骨格
少子高齢化の現状を時系列グラフで把握 → 移住者と観光の関係を相関分析(CORREL)で確認 → 観光の現状を記述統計・ランキング・円グラフで診断 → 移住希望者の条件をアンケート集計で把握、という流れ。
📊 相関分析(CORREL / ピアソン相関)
何?
2つの量の直線的な関係の強さを −1〜+1 で測る。
どう使う?
Excelで =CORREL(宿泊者数の範囲, 転入者数の範囲)。散布図に点を打って傾向を目で確認する。
何がわかる?
「一方が大きいほど他方も大きい/小さい」という関連の強さ。
⚠️ 注意点
(1) 相関≠因果:共通要因(人口規模など)に注意。(2) 外れ値に弱い:大都市1点で係数が動く。散布図で必ず目視。(3) 直線関係のみを捉える:曲線的な関係は見逃す。(4) 単位・年次の一致:宿泊者数(観光庁)と転入者数(SSDSE-A)で対象年・定義が揃っているか確認する。
🔢 記述統計(平均)
何?
データを1つの代表値に要約する。本論文では平均。
何がわかる?
旅行費 平均1,841円、交通費 平均3,178円という消費水準。
⚠️ 注意点
(1) 平均は外れ値に引っ張られる:高額支出者がいると実感より高く出る。分布(円グラフ)と併読する。(2) 「大半が1,000円未満」のように平均と最頻の区分がずれる点に注意。(3) 母集団(n=12,942)と調査方法を明示する。
📈 時系列グラフ
何?
時間に沿った値の推移を折れ線・棒で可視化する。
何がわかる?
観光客数の増減(イベント年の山)、人口の減少トレンド。
⚠️ 注意点
(1) 縦軸の起点:0から始めないと変化を誇張して見せてしまう(本教材では意図を明記して範囲を絞っている)。(2) イベント等の外部要因を並記して解釈する。(3) 年度の定義(平成表記・調査主体)を揃える。
🗳️ アンケート集計
何?
回答を選択肢ごとに集計し棒グラフで示す(複数回答可の場合あり)。
何がわかる?
移住希望者が重視する条件(自然環境が7割超)。
⚠️ 注意点
(1) 標本の代表性:対象は東京圏20〜30代の既婚男女500人で、全移住希望者を代表するとは限らない。(2) 複数回答だと割合の合計が100%を超える。(3) 設問の言い回しが回答を誘導しうる。

🚀 発展の可能性

この研究をさらに深めるための方向性です。

① データ更新:最新の統計で再確認
結果 X
本論文は2018年前後の断面・平成期の時系列で分析した。
課題 Z
(1)観光庁・e-Stat・観音寺市の最新データで同じ図を作り直す。(2)コロナ禍前後で観光客数・宿泊者数がどう変わったかを考察する。
② 手法の発展:相関から一歩進む
新仮説 Y
宿泊者数と転入者数の関係は、人口規模という共通要因を偏相関や回帰で統制すると弱まるかもしれない。
課題 Z
(1)人口を制御変数に入れた偏相関を計算する。(2)複数年のパネルで関係の安定性を確認する。
③ 政策への接続:滞在・消費を増やす
課題 Z
(1)費用区分の分布から「消費が少ない層」を特定。(2)宿泊・飲食を促す具体策を1枚のアクションプランにまとめる。

🎯 自分でやってみよう

難易度別の練習課題です。

★☆☆☆☆ 難易度1
CH1. 図をそのまま再現する
python3 code/2020_H3_suri.py を実行し、図1〜図4が html/figures/ に保存されることを確認しよう。
★★☆☆☆ 難易度2
CH2. CORRELを体験する
適当な2系列(例:都道府県の人口と面積)をExcelに入れ、=CORREL(...) で相関係数を計算し、散布図と見比べよう。
★★★☆☆ 難易度3
CH3. 相関の落とし穴を探す
「相関はあるが因果とは言えない」例(アイスの売上と水難事故など)を1つ挙げ、共通要因を説明しよう。
★★★★☆ 難易度4
CH4. 自分の街で再現する
自分の住む市区町村の観光客数・人口の推移を公開データから集め、時系列グラフを作って課題を考察しよう。
💡 ヒント:e-Statや自治体の統計ページ、SSDSE-A/C(市区町村データ)が出発点になります。

🤔 Q&A

この論文について、よくある疑問に答えます。

Q. この教材の図は原論文と同じ数値ですか?
はい。図1〜図4は原論文(PDF)に印字された報告値をそのまま可視化したもので、再計算ではありません。元データの多くが SSDSE 未収録(観音寺市の市レベル統計・観光庁データ)のため、数値を作り直さない方針です。
Q. なぜ相関 r=0.8194 の散布図を再現しないのですか?
相関の一方の変数「都道府県別 延べ宿泊者数(観光庁)」が SSDSE に収録されておらず、手元データから再計算できないためです。散布図は原論文 図6 を参照してください。
Q. 相関が強ければ「観光を増やせば移住が増える」と言えますか?
言えません。相関は関連の強さを示すだけで因果の証明ではありません。人口規模などの共通要因も考えられます。
Q. 高校生でもここまで分析できるのですか?
はい。本論文はExcelの基本機能(CORREL・グラフ)と公開データ、アンケートで構成されています。身近なテーマに複数の方法で丁寧に取り組んだ点が評価されました。

✅ 理解度チェック(4問)

この論文を理解できたか、クリックで確認しましょう。間違えても解説が出ます。

🐍 ブラウザで動かす — インストール不要でこの論文の分析を再現する

このページの分析は、この画面の中でそのまま実行できます。 Python をインストールする必要も、CSV をダウンロードする必要もありません。 下のセルの 「▶ ブラウザで実行」 を上から順に押すか、 「▶ 最初から全部実行」 で一気に流してください。 表示されるのは、本文の図表とまったく同じ計算の結果です (動かしているのは再現スクリプト code/2020_H3_suri.py そのもの)。

コードは書き換えられます。「✏️ 書き換える」で数字や変数を変えて ▶ を押すと、 結果がどう変わるかをその場で確かめられます(元に戻すボタンつき)。 ページを開いた時点で裏で実行環境の準備が始まっているので、待ち時間はほとんどありません。 初回だけ実行環境の取得にインターネット接続が必要です。