🎯 この記事を読むと何ができるようになるか
仮説を相関で選抜する: 思いついた要因(学歴・年収・生活満足度など多数)を一気に相関係数 で当たり、効きそうな変数だけ残す という探索の進め方。
理論モデルで解釈する: 投票行動のR = P·B − C + D (利益・確率・便益・コスト・義務感)という枠組みで、相関の意味を「なぜ効くのか」まで説明する力。
共線性に気づく: 単独・核家族・その他世帯の割合は足すと100% になり多重共線性 を持つため重回帰に入れられない、という実務的な判断。
誠実な再現: 投票率は SSDSE に無いので相関そのものは報告値の可視化 にとどめ、進学率など SSDSE 収録の説明変数だけを実再現 する。捏造しないデータの扱い方。
📥 データの準備(再現コードを動かす前に)
このページで実再現できるのは図4(大学等進学率のランキング)だけ です。コードの編集は不要です。 (原論文の中心である投票率・投票所数・地方交付税額・体育施設数・世帯構成は SSDSE-B に列が無いため、図1〜図3は原論文の報告値を転記して可視化します。)
1
データをダウンロードする
独立行政法人統計センターの
SSDSE (教育用標準データセット)配布ページから、以下をダウンロードします。
SSDSE-B-2026.csv ←
SSDSE-B (都道府県別・基礎データ、社会・人口統計体系)
📥 直接DL
⬇ SSDSEダウンロードページを開く
2
ファイルを所定のフォルダに配置する
ダウンロードした
CSV を、プロジェクトの
data/raw/ フォルダに入れます。
2026 統計・データ解析コンペ/
├── code/
│ └── 2022_H5_8_shorei.py ← 実行するスクリプト
└── data/
└── raw/
SSDSE-B-2026.csv ← ここに置く
3
スクリプトをそのまま実行する
ターミナルでプロジェクトルートに移動し、以下を実行します。
python3 code/2022_H5_8_shorei.py
図は
html/figures/ に自動保存されます。投票率・投票所数など SSDSE-B 収録外の指標はスクリプト内に原論文の報告値を転記して可視化し、進学率のみ SSDSE-B から実再現します。
著者はイギリスの Westminster School に通う高校生である。父の仕事の関係でアメリカ・イギリスに暮らし、現地の若者が政治をよく話題にすることから、「日本の若者はなぜ政治に関心が薄く、投票率が低いのか」 に興味を持った。総務省のデータで第49回衆議院議員総選挙の投票率を見ると、若年層の投票率は他世代より低いだけでなく、都道府県ごとにも差がある ことに気づく。そこで「その差を生む要因を突き止めれば、ピンポイントで投票率向上策が打てる」と考えた。
最初に立てた仮説は「若者の投票率の県差は、学歴・年収・生活満足度・投票所への行きやすさで説明できる」 。アメリカでは学歴と年収が投票率に効くという調査があるからだ。分析の背骨には政治学で広く使われるライカー=オードシュックの投票モデル R = P·B − C + D を据えた。R が正なら投票、負なら棄権。B(便益)・C(コスト)・D(義務感)のどれが県差を生むのかを相関で探る、という発想である。
R = P · B − C + D
R=投票の利益/P=自分の一票で結果が変わる確率/B=支持者が当選する便益/C=投票のコスト(手間)/D=投票する義務感
−0.521
核家族世帯割合×投票率の相関(原論文の報告値・表4)
+0.443
その他世帯(三世代同居)×投票率(原論文の報告値・表4)
+0.394
投票所割合×投票率(原論文の報告値・表4)
+0.066
世帯年収×投票率(原論文の報告値・表4)ほぼ無相関
研究の問い
都道府県で差がある若者(18〜24歳)の投票率は何によって決まるのか。学歴・年収・生活満足度・投票所へのアクセスのうち、本当に効いているのはどれか。そして、それは R = P·B − C + D のどの項に対応するのか。
分析のキモ:多数の候補を相関でふるいにかけ、理論で意味づける
著者は「住み心地ランキング」の観点をヒントに数十個の代理変数を用意し、投票率との相関を一気に計算した。強い相関が出た変数だけ残し、なぜ効くのかを R = P·B − C + D で説明 する。相関の数値だけで終わらせず理論モデルに接続したのが見どころ。
高校生の部
SSDSE-A/B/E+総務省・厚労省・各県選管
相関分析
重回帰分析
年代別投票率プロファイル
使用データと再現可能性の整理
本研究は多数の出典を組み合わせている。中心である投票率 は総務省と各県選挙管理委員会、投票所数・地方交付税額・世帯年収 は総務省、世帯構成(単独・核家族・その他) は厚生労働省(2013)、公共施設・進学率・産業・治安など は SSDSE-A/E と e-Stat から取っている。粒度は都道府県で揃えているが、投票率そのものは SSDSE に収録されていない 。
主なデータと出典(原論文 表1〜3)
役割 データ 出典(年度) 本ページでの扱い
目的量 都道府県別 投票率(第49回衆院選ほか) 総務省・各県選挙管理委員会(2021〜2022) 報告値の可視化
コストC 投票所数(有権者1万人あたり)・地方交付税額 総務省(2021) 報告値の可視化
義務感D 単独・核家族・その他世帯の割合 厚生労働省(2013) 報告値の可視化
便益B 公共施設割合・生活満足度の代理・産業就業者比率・治安 SSDSE-A/E・e-Stat(2016〜2022) 報告値の可視化
年代別 年齢別投票率(20県) 各県選挙管理委員会(2022) 報告値の可視化
学歴 大学等進学率(高校卒業者のうち進学者数/卒業者数) SSDSE-B(都道府県・2023) 実再現
再現可能性の整理(このページの図の作り方)
報告値の可視化(再計算ではない): 原論文の中心である投票率・投票所数・地方交付税額・体育施設数・世帯構成 は SSDSE-B に列が無く、出典も総務省・厚労省・各県選管・独自集計である。よって図1(表4の相関係数)・図2(表6の年代別投票率)・図3(表5の重回帰)は原論文の報告値を符号・桁そのまま転記して可視化 する。
実再現できる部分: 原論文が「学歴」の代理として用いた進学率 は SSDSE-B に E4601 高校卒業者数・E4602 高校卒業者のうち進学者数 として収録されている。そこで 大学等進学率(E4602/E4601)を都道府県別に実データで再計算 する(図4)。ただし投票率が SSDSE に無いため、進学率×投票率の相関(報告値 −0.074)は再現できない点を図注に明記する。
新しい数値の捏造はしない: 報告値と再計算値はラベルで分離する。GDP・県内総生産・高齢化率などは本研究の分析に用いず、SSDSE-B に無い列は使わない。
分析の流れ:相関で選抜 → 重回帰 → 年代別
分析の流れ
多数の候補 学歴・年収・満足度 投票所・世帯…
→
相関で選抜 表4:核家族−0.52 投票所+0.39
→
重回帰 表5:公共施設 補正R2=0.285
→
年代別分析 表6:20-24歳で 急落→回復
→
提言 親世代への 主権者教育
① 候補変数を相関でふるいにかける(表4)
学歴・年収・生活満足度の代理変数、投票所割合、世帯構成、公共施設割合など数十個を用意し、投票率との相関係数 を一括で計算。強い相関の変数だけ次に進める。
② 公共施設で重回帰分析(表5)
相関が出た公共施設割合(公民館・図書館・体育施設など)を説明変数に重回帰 。モデル全体の有意性(有意F)と各変数のP値 を見る。
③ 世帯構成は散布図で確認(共線性回避)
単独・核家族・その他世帯の割合は合計100% で多重共線性 があり重回帰に入れられない。そこで散布図と単相関で確認する。
④ 年代別投票率を分析(表6)
20県の年齢別投票率から、18-19歳→20-24歳→25-29歳の動きを追う。若年層の落ち込みがどこで起きるかを特定する。
⑤ 学歴(進学率)の実再現(SSDSE-B)
原論文の学歴変数に対応する進学率を SSDSE-B から実再現し、県差が大きいことを確かめる。投票率との相関そのものは報告値。
相関は「関係の強さ」であって因果ではない 本研究は相関 を中心に用いる。核家族割合と投票率に負の相関が出ても核家族を減らせば投票率が上がる わけではない。著者は R = P·B − C + D の義務感 D (三世代同居で高齢世代から投票習慣が伝わる)という機序で解釈しており、相関を理論で意味づける姿勢が重要である。
まず原論文の出発点である、多数の説明変数と投票率の相関係数 を見る。投票率は SSDSE に無い変数のため、原論文 表4 の報告値を転記して可視化する(再計算ではない)。
① このブロックの目的: 数十個の候補変数について、投票率とのピアソン相関係数を符号・桁そのままに書き出す。投票率が SSDSE に無いため再計算ではなく報告値の転記。 |R|≥0.3 の「弱相関以上」を抜き出す。
② 前後のつながり: 「どの要因が効くのか」を一望する本研究の出発点。ここで残った変数が重回帰(図3)や年代別分析(図2)につながる。
▼ 実行結果(原論文の報告値)
=== [1] 表4:投票率との相関係数(原論文の報告値)===
変数の数: 32 最強の正: 社会体育施設割合 R=+0.464
最強の負: 核家族世帯割合 R=-0.521
|R|>=0.3(弱相関以上)の変数: 11件
核家族世帯割合 R=-0.521
社会体育施設割合 R=+0.464
その他の世帯割合 R=+0.443
公民館割合 R=+0.403
図書館割合 R=+0.399
博物館割合 R=+0.397
投票所割合 R=+0.394
劇場・音楽堂等割合 R=+0.368
大型小売店割合 R=-0.358
教育事務所数割合 R=-0.330
教養娯楽費 R=+0.327
世帯年収 R=+0.066 / 進学(学歴代理) R=-0.074 → ほぼ無相関
図1 保存: html/figures/2022_H5_8_fig1_temp_ranking.png
④ 実行結果の読み取り: ① 当初仮説の世帯年収(+0.066)・学歴代理(−0.074)・生活満足度系はほぼ無相関 で、アメリカの先行研究と違い日本の県差は説明できなかった。② 効いたのは核家族世帯割合 −0.521 (最強の負)、社会体育施設割合 +0.464・その他世帯 +0.443・公民館 +0.403・投票所割合 +0.394 など。③ 公共施設と世帯構成、そして投票所という「行きやすさ」が浮かび上がった。すべて原論文の報告値である。
📊 この図の読み方
0の縦線 右(正)=その要因が多いほど投票率が高い、左(負)=多いほど低い。破線は±0.3(弱相関の目安)。
灰色の短い棒 年収・学歴・産業・医療などは|R|<0.3で、県差を説明できない。当初仮説の多くはここで棄却された。
色付きの長い棒 核家族(−0.521)・その他世帯(+0.443)・公共施設・投票所割合。義務感DとコストCに関わる変数が残った。
世帯構成が効くのはなぜか。著者は「家族から投票習慣が伝わる(義務感D)」と考え、次に年代別投票率を調べた。年齢別投票率を公表していた20県のデータで、これも原論文 表6 の報告値を可視化する。
① このブロックの目的: 年齢別投票率を公表していた20県について、18-19歳・20-24歳・25-29歳の投票率と全国平均を書き出す。選管の公表値で SSDSE に無いため、報告値の転記。 20-24歳/18-19歳 の比なども集計する。
② 前後のつながり: 「若年層のどこで投票率が落ちるのか」を特定する部分。20-24歳の落ち込みが、進学・就職で家を離れコスト C が上がる/親の影響(D)が薄れる、という解釈につながる。
▼ 実行結果(原論文の報告値)
=== [2] 表6:年代別投票率 18-19→20-24→25-29(原論文の報告値)===
対象: 20県(年代別投票率を公表していた県のみ)
全国平均: 18-19歳=43.2% 20-24歳=33.6% 25-29歳=39.7%
20-24歳/18-19歳 の比: 平均 76.6%(原論文の記述「約76%」に対応)
25歳以降の5歳ごと増加率: 平均 4.20ポイント
全国平均カーブとの相関: 最小 0.930(高知県) 〜 最大 1.000
図2 保存: html/figures/2022_H5_8_fig2_scatter.png
④ 実行結果の読み取り: ① どの県でも18-19歳から20-24歳にかけて投票率が急落 し、20-24歳は18-19歳の平均76.6%(原論文の「約76%」に対応) まで下がる。② その後25-29歳で回復 し、以降は加齢とともにほぼ直線的に上昇(5歳ごと平均4.2ポイント)。③ 各県のカーブは全国平均とほぼ一致(相関0.930〜1.000) 。つまり若者だけが特別なのではなく、県全体の投票率が低い県では若者も低い 。数値はすべて原論文の報告値。
📊 この図の読み方
V字の谷 中央の20-24歳が谷。進学・就職で親元を離れ、住民票を移さず投票しづらくなる(コストCの上昇)時期に対応。
赤い太線 全国平均。各県の灰線は全国平均とほぼ平行で、相関0.93以上。若者の低投票は県全体の傾向とセット。
25-29歳での回復 就職・定住が進むと持ち直す。以降は加齢で直線的に上昇し、ゆるやかなS字を描く。
相関で残った公共施設割合を説明変数に、投票率を重回帰分析 した。体育施設数などは SSDSE-E・独自加工で SSDSE-B に無いため、原論文 表5 の報告値を可視化する。
① このブロックの目的: 公民館・図書館・博物館・社会体育施設・民間体育施設・映画館・劇場音楽堂の7変数を説明変数にした重回帰の、各変数のP値 とモデル全体の指標(有意F・重決定R2・補正R2)を書き出す。再計算ではなく報告値の転記。
② 前後のつながり: 「公共施設が本当に投票率を押し上げているのか」を検定する部分。ただし補正R2が低く、著者は別の潜在因子(地方交付税額)へと考察を進める。
▼ 実行結果(原論文の報告値)
=== [3] 表5:公共施設 重回帰分析(原論文の報告値)===
重相関R=0.628 重決定R2=0.394 補正R2=0.285
有意F=0.0042(<0.05: モデル全体は有意) 観測数=47
公民館割合 係数= 612.99 P値=0.8796
図書館割合 係数= -20787.70 P値=0.7441
博物館割合 係数= 87247.69 P値=0.3106
社会体育施設割合 係数= 7479.98 P値=0.0397 *
民間体育施設割合 係数= -16323.50 P値=0.0080 ***
映画館割合 係数= 504311.30 P値=0.0794
劇場・音楽堂等割合 係数= -51865.80 P値=0.6171
→ 有意なのは社会体育施設割合(0.0397)と民間体育施設割合(0.0080)のみ。補正R2=0.285で説明力は低い。
図3 保存: html/figures/2022_H5_8_fig3_coef.png
④ 実行結果の読み取り: ① モデル全体の有意F=0.0042 で、7変数まとめれば投票率と関係がある。② しかし個別に有意 (P<0.05)なのは社会体育施設割合(0.0397)と民間体育施設割合(0.0080)だけ 。③ 補正R2=0.285 と説明力は低い。著者はここから「公共施設は投票所として使われる中間因子で、その背後に人口1人あたり地方交付税額 がある」と考察を進めた(交付税×投票所数 R=0.84、交付税×体育館数 R=0.77)。すべて原論文の報告値。
📊 この図の読み方
破線(0.05)より左 P値が有意水準より小さい=統計的に有意。社会体育施設と民間体育施設の2本だけが該当。
破線より右(灰) 公民館・図書館・映画館などはP値が大きく、単独では投票率への効果を断定できない。
補正R2が低い意味 モデルの説明力は約29%どまり。公共施設だけでは投票率を十分説明できず、背後の要因(地方交付税額)が示唆される。
ここは唯一の実再現 である。原論文が「学歴」の代理に使った進学率を、SSDSE-B の実データで都道府県別に再計算する。投票率との相関そのものは報告値(−0.074)だが、進学率という変数は実再現できる。
① このコードの目的: SSDSE-B-2026 を cp932 ・ラベル行 skiprows=[1] で読み込み、2023年(df[df["SSDSE-B-2026"]==2023])について E4602 高校卒業者のうち進学者数/E4601 高校卒業者数 から大学等進学率 を計算し、降順に並べる。原論文が「学歴」の代理に使った進学率を、実データで再現する。
② 前後のつながり: 原論文は学歴(進学率)と投票率の相関を検討し、報告値では −0.074(ほぼ無相関)だった。投票率は SSDSE に無いので相関は再現できないが、進学率という説明変数そのもの は SSDSE-B から実データで確かめられる。
📝 コード
📋 コピー 244
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253
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256 df = pd . read_csv ( DATA_B , encoding = 'cp932' , skiprows = [ 1 ])
d23 = df [ df [ 'SSDSE-B-2026' ] == 2023 ] . copy ()
d23 = d23 [ d23 [ 'Prefecture' ] != '全国' ]
for c in ( 'E4601' , 'E4602' ):
d23 [ c ] = pd . to_numeric ( d23 [ c ], errors = 'coerce' )
d23 [ '進学率' ] = d23 [ 'E4602' ] / d23 [ 'E4601' ] * 100
d23 = d23 . dropna ( subset = [ '進学率' ]) . sort_values ( '進学率' , ascending = False ) . reset_index ( drop = True )
print ( f ' 対象: { len ( d23 ) } 都道府県(E4602 進学者数 / E4601 高校卒業者数)' )
print ( f ' 進学率レンジ: { d23 [ "進学率" ] . min () : .1f } % 〜 { d23 [ "進学率" ] . max () : .1f } %' )
print ( ' 上位5県: ' + ', ' . join ( f ' { r . Prefecture } { r . 進学率 : .1f } %'
for r in d23 . head ( 5 ) . itertuples ()))
print ( ' 下位5県: ' + ', ' . join ( f ' { r . Prefecture } { r . 進学率 : .1f } %'
for r in d23 . tail ( 5 ) . itertuples ()))
▼ 実行結果
=== [4] 実再現:SSDSE-B から大学等進学率を再計算(2023年)===
対象: 47都道府県(E4602 進学者数 / E4601 高校卒業者数)
進学率レンジ: 46.7% 〜 74.1%
上位5県: 東京都 74.1%, 京都府 74.0%, 神奈川県 69.4%, 大阪府 68.9%, 兵庫県 68.5%
下位5県: 山口県 48.5%, 佐賀県 48.4%, 鹿児島県 48.1%, 宮崎県 48.0%, 沖縄県 46.7%
※ 投票率との相関(-0.074, ほぼ無相関)は原論文の報告値。SSDSEに投票率が無いため実再現できない。進学率という変数自体はこの通り実再現できる。
図4 保存: html/figures/2022_H5_8_fig4_timeseries.png
④ 実行結果の読み取り: 進学率は沖縄県 46.7% 〜 東京都 74.1% と県差が非常に大きい(上位=東京・京都・神奈川、下位=沖縄・宮崎・鹿児島)。これだけ大きく分かれる変数でも投票率とはほぼ無相関(報告値 −0.074) だった、という原論文の負の発見の背景が実データで確認できる。学歴で県別の投票率差は説明できない。
📊 この図の読み方
大きな県差 進学率は46.7%〜74.1%と約28ポイントも開く。都市部(東京・京都)が高く、地方が低い。
投票率との関係 これだけ差があっても投票率とはほぼ無相関(報告値 −0.074)。学歴では県別の投票率差を説明できない。
位置づけ 実再現 。SSDSE-Bの実データから計算。相関の値は報告値で、実再現しているのは進学率という変数そのもの。
結果の解釈と提言
当初仮説(学歴・年収・生活満足度)はほぼ空振り。効いたのは世帯構成・公共施設・投票所という「家族」と「行きやすさ」だった。著者はこれを R = P·B − C + D で読み解く。
コストC:投票所への行きやすさ(原論文 5.1)
有権者1万人あたりの投票所数と投票率に正の相関(+0.394)。投票所が多いほど投票の手間(コスト C)が下がり投票率が上がる。さらに公共施設(公民館・体育館)は投票所に使われることが多く、その供給は人口1人あたり地方交付税額 に強く連動する(交付税×投票所数 R=0.84、交付税×体育館数 R=0.77)。つまり公共施設は中間因子で、根には地方交付税額がある。ただし都市部は交付税が少なくても公共交通が発達しコストが低いため、相関は弱まる。
義務感D:家族から伝わる投票習慣(原論文 5.2・5.3)
核家族世帯割合は投票率と負の相関(−0.521)、その他世帯(三世代同居)は正の相関(+0.443)。三世代同居では投票率の高い高齢世代から、若年層・中年層に「投票は義務」という意識(D) が伝わる、と著者は解釈する。年代別分析(図2)とも整合し、親世代の投票率が高い県では若者の投票率も高い 。実際、25-29歳の投票率が低い3県(山口・福岡・茨城)は全年齢の投票率でも下位である。先行研究でも、親と同居する若者は一人暮らしより投票割合が30%高く、幼少期に親の投票についていった経験がある人は20%以上高いという。
悪循環の構図(原論文 5.3)
親世代の投票率が低い
→
義務感Dが伝わらない
→
若年層の投票率も低い
→
その世代が親になる
→
次世代も低い
提言:親世代への主権者教育と住民票移動の啓蒙(原論文 5.4)
若者に自力で便益 B を持たせるのは難しく、現実の主な動機は義務感 D である。ならば親世代の投票率を上げることが若者の投票率向上への近道 だ、と著者は説く。高校までの主権者教育は効果があるので継続しつつ、親世代(特に選挙に関心の薄い層)への主権者教育 と、進学・就職で家を離れる若者への住民票移動の啓蒙 (コスト C の低減)を提案する。海外の事例(居酒屋を投票所にする/棄権に罰金)も参考になるとする。
この考察の限界 相関は因果 を示さない。「三世代同居→義務感→投票」も、同居と投票率の両方を動かす別要因(地域性・年齢構成)が背後にある可能性がある。年代別分析の対象は20県に限られ、県差が生まれる根本要因までは特定できていない、と著者自身も述べている。
まとめと今後の課題
本研究は、都道府県で差がある若者の投票率は何で決まるか という問いに、多数の説明変数との相関分析 と重回帰分析 、年代別投票率の分析 で挑んだ。当初仮説の学歴・年収・生活満足度はほぼ無相関(世帯年収 +0.066・学歴 −0.074・報告値)。効いたのは核家族世帯割合 −0.521・その他世帯 +0.443・投票所割合 +0.394 (報告値)で、著者はこれを R = P·B − C + D の義務感 D (家族から伝わる投票習慣)とコスト C (投票所への近さ)で説明した。年代別では20-24歳で投票率が18-19歳の約76%まで落ち、25-29歳で回復する。提言は親世代への主権者教育と住民票移動の啓蒙 である。本ページでは、学歴の代理である進学率をSSDSE-Bで実再現し(図4)、投票率にまつわる相関は報告値として切り分けた。海外経験を持つ高校生が理論モデルと多変量データを結びつけた探究が見どころである。
この研究の限界 ①中心の相関は投票率・投票所数・世帯構成などが対象で、本ページのSSDSE-Bでは実再現できず報告値の可視化 にとどまる(進学率のみ実再現)。②相関中心のため因果 の向きは不明。③年代別データは20県のみで全国を代表しない。④なぜ県ごとに義務感(D)や交付税(C)に差が出るのか、根本要因は今後の課題と著者自身が述べている。
この研究から学べること 思いつく仮説(学歴・年収)を相関で一気に検証して棄却できるものは棄却し 、残った変数を理論モデル(R = P·B − C + D)で意味づける探究の進め方、共線性のある変数を重回帰から外す判断、そして実再現できる部分と報告値を切り分ける 誠実さ。審査会も高校生による理論と実証の接続を評価し、審査員奨励賞に選んだ。
データ・コードのダウンロード
このページの実再現の図(図4)は、以下から再現できます。
🐍 再現コード(.py)
📊 SSDSE-B-2026.csv
※ 図4(大学等進学率のランキング)はSSDSE-Bの E4601/E4602 から算出した実再現です。図1(相関係数一覧)・図2(年代別投票率)・図3(重回帰分析)は、投票率・投票所数・体育施設数・世帯構成が出典でSSDSE-B外のため、原論文の報告値を符号・桁そのまま可視化したものです(新たな数値の捏造はしていません)。
⚠️ よくある誤解と注意点
この研究を読むとき・まねするときに陥りやすい誤解を整理する。
誤解1:「核家族と投票率に負の相関(−0.521)があるなら、核家族を減らせば投票率が上がる」
相関 は因果 ではない。著者は「三世代同居で高齢世代から投票習慣(義務感D)が伝わる」という機序を推測しているが、同居率と投票率の両方を動かす地域性や年齢構成 が背後にある可能性がある。世帯構成を操作すれば投票率が変わる、とは言えない。
誤解2:「学歴や年収と相関がないなら、それらは投票に無関係」
今回都道府県単位の集計 では相関が出なかっただけ。個人単位ではアメリカの先行研究のように学歴・年収が効くという結果もある。集計データ(都道府県平均)の相関を個人にそのまま当てはめない (生態学的誤謬)注意が要る。
誤解3:「単独・核家族・その他世帯の割合はまとめて重回帰に入れればよい」
3つの割合は足すと100% になり完全な多重共線性 を持つ。重回帰にそのまま入れると係数が不安定になる。著者はこれを避けて散布図と単相関で確認した。合計が一定になる割合データの扱いには注意が必要。
誤解4:「このページの図はすべて原論文と同じ数値を計算し直したもの」
図4(進学率のランキング)だけがSSDSE-Bからの実再現 。図1〜図3は投票率・投票所数・体育施設数・世帯構成が出典でSSDSE-B外のため報告値の可視化(再計算ではない) 。図注に区別を明記している。
📖 用語集(この記事に出てくる統計用語)
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相関(相関係数) 2つの量が一緒に動く強さを−1〜+1で表す。本研究は投票率×核家族(−0.521)、投票率×投票所割合(+0.394)などの相関で説明変数を選抜した。
重回帰分析 複数の説明変数から目的変数(投票率)を同時に説明する回帰。本研究では公共施設7変数で投票率を説明し、有意F=0.0042、補正R2=0.285(報告値)だった。
P値 「その変数の係数は本当は0」という帰無仮説のもとで、観測された係数がどれくらい珍しいかを表す。0.05未満なら有意。表5では社会体育施設(0.0397)・民間体育施設(0.0080)が有意。
補正R2(自由度調整済み決定係数) 説明変数の数を考慮した決定係数。本研究は0.285で、公共施設だけでは投票率の3割弱しか説明できない。
多重共線性 説明変数どうしが強く相関し、回帰係数が不安定になる問題。単独・核家族・その他世帯の割合は合計100%で完全共線のため、著者は重回帰から外した。
有意水準 帰無仮説を棄却する基準(通常0.05)。P値がこれを下回れば「偶然とは言いにくい」と判断する。
因果関係 一方が原因で他方が結果という関係。相関があっても因果は言えない。本研究の相関も因果の向きは特定されていない。
SSDSE 教育用標準データセット。本ページの実再現はSSDSE-B(都道府県別)の高校卒業者数・進学者数を用いる。原論文の投票率・投票所数・世帯構成はSSDSE-Bに無い。
📐 使っている手法をわかりやすく解説
この研究で使われている手法を、手を動かす順に説明する。
全体像
まず
相関係数 で多数の候補から効きそうな変数を選抜し → 残った公共施設で
重回帰分析 し(各変数のP値と補正R2を見る)→ 割合データの
多重共線性 に気をつけつつ、年代別プロファイルで機序を確かめる。
相関で絞り、理論モデルで意味づける のが見どころ。
🔗 相関分析
何をする 2つの量が一緒に動く強さを相関係数(−1〜+1)で測る。投票率と数十個の説明変数を一括で当たり、強い相関の変数を選ぶ。
読み方 絶対値が0.5以上で「強い」、0.3前後で「弱い相関」、0.3未満で「ほとんど無し」。符号は向き(+なら同方向、−なら逆方向)。
注意 相関は因果 ではない。また都道府県の集計値 での相関を個人にそのまま当てはめない(生態学的誤謬)。
📊 重回帰分析
何をする 複数の説明変数から目的変数を同時に予測する。各変数のP値 で個別の有意性を、有意F でモデル全体を、補正R2 で説明力を評価する。
読み方 有意Fが小さければモデルは意味がある。個々の変数はP<0.05なら有意。補正R2は0〜1で、大きいほどよく説明できる(本研究は0.285=低め)。
注意 説明変数どうしが強く相関する多重共線性 があると係数が不安定になる。合計が100%になる割合変数は全部同時に入れない。
🧩 多重共線性への対処
何をする 説明変数間の強い相関を確認し、片方を外す・合成するなどして回帰に入れる変数を選ぶ。本研究では合計100%の世帯構成を重回帰から外し、単相関と散布図で見た。
なぜ有効 共線性を放置すると係数の符号が反転したり、標準誤差が膨らんで有意性が正しく測れない。外すことで解釈可能な結果になる。
注意 外した変数が無意味なわけではない。単相関では核家族(−0.521)は最強の説明変数であり、重回帰に入れないだけで重要な情報を持つ。
🚀 発展の可能性(結果 X → 新仮説 Y → 課題 Z)
この研究の「若者の投票率は親世代の義務感と投票所への近さで決まる」という結論は、次の研究の出発点になる。
発展1:親世代への主権者教育の効果を検証する(著者の今後の展望)
結果X 三世代同居ほど投票率が高く(+0.443・報告値)、親世代の投票率が若者に伝わると示唆。
新仮説Y 親世代に主権者教育を行った地域では、その後に若年層の投票率が上がるのではないか。
課題Z 施策の前後で年代別投票率の変化を追跡し、因果 に踏み込む。年代別データを20県から全国へ広げる必要がある。
発展2:投票所アクセスと交付税の関係を掘り下げる
結果X 投票所割合×投票率 +0.394、地方交付税額×投票所数 R=0.84(報告値)。交付税が投票所供給の根にあると示唆。
新仮説Y 交付税が減り投票所が統廃合された地域では、若年層の投票率がより下がるのではないか。
課題Z 投票所数の時系列と年代別投票率を突き合わせ、都市部(公共交通が代替)と過疎地で効果が違うかを検討する。
🎯 自分でやってみよう(5つのチャレンジ)
再現コードを少し変えるだけで試せる課題を、易しい順に用意した。
★☆☆☆☆ 難易度1
別の年で進学率ランキングを出す
図4のコードは df[df['SSDSE-B-2026']==2023] で2023年を選んでいる。ここを2015年や2019年に変えて、進学率の順位がどう変わるかを見てみよう。
★★☆☆☆ 難易度2
進学率の上位・下位5県を表で出す
2023年の進学率を降順に並べ、上位5県と下位5県を表示してみよう。都市部と地方で大きく分かれることが確認できる。
★★★☆☆ 難易度3
表4の相関係数を絶対値で並べ替える
スクリプトの CORR_TABLE(報告値)を abs() で並べ替え、投票率と関係が強い順のランキングを作ってみよう。核家族が1位に来るはず。
★★★★☆ 難易度4
年代別投票率の「増加率」を可視化する
AGE_TABLE の増加率(5歳ごとの投票率の上がり方)を県別に棒グラフにし、県ごとの若年層の回復ペースの違いを見てみよう。
★★★★★ 難易度5
なぜ投票率の相関は再現できないのか説明する
原論文の中心(投票率×核家族 −0.521 など)が、なぜSSDSE-Bで実再現できないのかを、投票率という列の有無 と出典(選管・厚労省 vs SSDSE) の2点から自分の言葉で説明してみよう。
💼 この手法は実社会でこう使われている
「多数の候補を相関でふるいにかけ、理論モデルで意味づける」発想は、行政や企業で広く使われている。
🗳️
選挙管理・投票率向上策
投票所の配置や期日前投票所の増設が投票率に効くかを地域データで検証し、コスト(行きやすさ)の観点から施策を設計する。本研究と同じ発想。
📈
マーケティングの要因分析
売上に効く要因を多数の候補から相関・重回帰で絞り込み、共線性に注意しながら施策の優先順位を決める。
🏛️
政策の効果検証(EBPM)
教育・福祉施策の効果を地域指標との相関で当たりをつけ、理論(行動モデル)と突き合わせて因果に踏み込む。
🤔 よくある質問(読者からの想定Q&A)
この研究を読んで浮かびやすい疑問に答える。
Q. なぜ学歴や年収は投票率と相関しなかったの?
A. 今回は都道府県単位の集計値 での相関だからです。個人単位ではアメリカの先行研究のように学歴・年収が効くこともありますが、県ごとに平均してしまうと差が消えてしまいます(報告値:世帯年収 +0.066、学歴 −0.074)。集計データの相関を個人にそのまま当てはめない注意が必要です。
Q. このページの図は原論文と同じ数値ですか?
A. 図4(進学率ランキング)はSSDSE-Bからの実再現です。図1(相関係数一覧)・図2(年代別投票率)・図3(重回帰分析)は、投票率・投票所数・体育施設数・世帯構成が出典でSSDSE-Bに無いため、原論文の報告値を符号・桁そのままに転記して可視化しています。新たな数値の捏造はしていません。
Q. R = P·B − C + D とは何ですか?
A. ライカーとオードシュックが提唱した投票行動のモデルです。R(投票の利益)が正なら投票、負なら棄権。P(一票で結果が変わる確率)、B(支持者当選の便益)、C(投票のコスト=手間)、D(投票する義務感)から決まります。本研究は投票所の多さをC、家族から伝わる投票習慣をDとして相関を解釈しました。
Q. なぜ三世代同居だと投票率が高いの?
A. 著者の解釈では、三世代同居では投票率の高い高齢世代から、若年層・中年層に「投票は義務」という意識(D)が伝わるためです。実際、親と同居する若者は一人暮らしより投票割合が30%高いというデータもあります。ただし相関であり、因果は厳密には特定されていません。
✅ 理解度チェック(4問)
この論文を理解できたか、クリックで確認しましょう。間違えても解説が出ます。