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2019年度 統計データ分析コンペティション | 特別賞(高校生の部)

旅館及びホテルにおける日本人・外国人宿泊客の
都道府県別増減から考える旅館の復活
―岡山県湯原温泉の視点からインバウンド需要を旅館に取り込む方策―

⏱️ 推定読了時間: 約35分
池田 雅子(岡山県立岡山操山高等学校) SSDSE-B-2026 実データ+原論文の報告値
🔬 相関分析🔬 箱ひげ図🔬 階級区分図🏷 観光🏷 外国人・国際
🔬 手法タグ / 🏷 応用タグ(クリックで同タグの論文をネットワーク検索)
🔬 再現カルテ — 原論文と同じデータ・同じ手法で再現(一部を除く)

この教材は原論文と同じデータを読み込み、同じ手順で計算し直しています。画面に出る数値と図は、あなたのブラウザがその場で計算した結果です。
⚠ ただし一部は再現していません:旅館とホテルの分離が SSDSE では行えないため、 図1 は合算値による参考再現です。 図2・図3(階級区分図)は地図データが無く再現していません。

原論文が使ったデータSSDSE-B・衛生行政報告例・宿泊旅行統計調査・湯原町旅館協同組合調べ
分析単位:都道府県
中核手法:相関分析
この教材が使うデータ
原論文(PDF)旅館及びホテルにおける日本人・外国人宿泊客の都道府県別増減から考える旅館の復活 ―岡山県湯原温泉の視点からインバウンド需要を旅館に取り込む方策―
特別賞/
✅ この教材でできること
  • 原論文の中核手法(相関分析)を実データで実行できる
  • 分析に使うデータは同梱済みで、ブラウザ上でそのまま読み込める
  • 数値・図を最後まで再計算できる(相関分析)
突合監査の結果、主要データと中核手法はいずれも原論文と一致しています。

▶ ここに書いてある分析は、ページ下部の「🐍 ブラウザで動かす」でそのまま実行できます(インストール不要)。動かしているのは code/2019_H5_1_shorei.py(252 行)そのものです。

🏅 論文審査会コメント(審査員はここを評価した)
「旅館やホテル、宿泊タイプの違いに着目し地域観光振興につながる方策を提案している。結論に関わる議論がもう少し丁寧に考察されると良いが、テーマも含めて面白いレポートと評価された。」
出典:統計センター「統計データ分析コンペティション」受賞論文PDF掲載の審査講評。プロの審査員が何を評価し、何を注文したかは論文の読み方の最良の手本になる。
📝 3行で分かる要約

目次

  1. 研究概要と背景
  2. データと再現方針
  3. 旅館・ホテルの客室数の増減と都道府県間の格差
  4. 旅館×ホテルの増減の関係と稼働率との相関
  5. 外国人宿泊客の増加と旅館需要
  6. 都道府県別の外国人宿泊客増減と湯原温泉
  7. まとめと考察
  8. 📥 データの準備
  9. 💼 実社会での応用
  10. ⚠️ よくある誤解
  11. 📖 用語集
  12. 📐 手法ガイド
  13. 🚀 発展の可能性
  14. 🎯 自分でやってみよう
  15. 🤔 Q&A
  16. 🐍 ブラウザで動かす

🎯 この記事を読むと何ができるようになるか

📥 データの準備(再現コードを動かす前に)

このページの分析を自分で再現するには、以下の手順でデータを準備してください。コードの編集は不要です。

1
データをダウンロードする 独立行政法人統計センターの SSDSE(教育用標準データセット)配布ページから、以下のファイルをダウンロードします。
SSDSE-B-2026.csv ← SSDSE-B(都道府県・時系列データ)📥 直接DL
⬇ SSDSEダウンロードページを開く
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ファイルを所定のフォルダに配置する ダウンロードしたCSVを、プロジェクトの data/raw/ フォルダに入れます。
2026 統計・データ解析コンペ/ ├── code/ │ └── 2019_H5_1_shorei.py ← 実行するスクリプト └── data/ └── raw/ SSDSE-B-2026.csv ← ここに置く
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スクリプトをそのまま実行する ターミナルでプロジェクトルートに移動し、以下を実行します。
python3 code/2019_H5_1_shorei.py
図は html/figures/ に自動保存されます。
研究概要と背景

岡山県北部の湯原温泉には宿泊施設が15軒ある。宿泊者数はバブル期の1989年に220,832人だったが、2018年には128,274人まで減少した(湯原町旅館協同組合調べ・原論文の報告値)。著者は湯原温泉の旅館「米屋」の娘として温泉街で生まれ育ち、「日本全体でインバウンド消費が話題になっているのに、湯原温泉にその実感がない」という当事者の問題意識から本研究を出発させている。

まず「旅館」と「ホテル」という宿泊タイプの違いに注目して、都道府県別の宿泊客・客室数の増減を統計的に確かめることが有効だと考えられる。 その理由は「観光客が増えている/いない」という印象論では、どのタイプの宿にどの地域で需要が集まっているのかを見極められないからである。 原論文は公的統計とGIS・相関分析を組み合わせ、湯原温泉の旅館を生き返らせる「地方の旅館再生モデル」を導くことを目指した。

論文の概要(原論文1ページ目より要約) 生まれ育った温泉地の復興に向けて、インバウンド消費が重要であるという仮説の下、GISソフトを用いた分析や相関分析などを行った。ビジネスホテルと外国人観光客数には正の相関が観察されることから、設備投資を行い「和風のビジネスホテル」にするなど、地方の旅館再生モデルを提案している。
論文審査会コメント(原論文より) 旅館やホテル、宿泊タイプの違いに着目し地域観光振興につながる方策を提案している。結論に関わる議論がもう少し丁寧に考察されると良いが、テーマも含めて面白いレポートと評価された。
分析の流れ(原論文)
SSDSE-2019B
客室数
2007→2016年
箱ひげ図+
階級区分図
(MANDARA)
X-Yグラフ+
相関分析
(SPSS)
外国人宿泊×
宿泊タイプの相関
→ 再生モデル提案
本ページの再現方針(重要) 原論文が使った SSDSE-2019B(旅館・ホテル別の客室数)と宿泊旅行統計調査の2008・2016年集計は現行の配布データに含まれないため、本ページは(1)現行 SSDSE-B-2026 に収録されている変数は実データで再現し、(2)収録されていない数値は「原論文の報告値」と明示して可視化(再計算ではない)する。地図(階級区分図)は同一指標のランキングとして再表現し、再現できない図は「原論文参照」と明記する。新しい数値の捏造は行わない。

SSDSE-B-2026(実データ) 原論文の報告値(SSDSE-2019B・宿泊旅行統計調査) 相関分析 箱ひげ図 階級区分図(GIS)

データと再現方針

原論文が使用したデータ

データ期間出典原論文での用途
旅館営業客室数・ホテル営業客室数 2007〜2016年 SSDSE-2019B(厚生労働省「衛生行政報告例」) 図1〜4:宿泊タイプ別の増減率・都道府県間格差
日本人・外国人の延べ宿泊者数、宿泊タイプ別稼働率 2007〜2018年 宿泊旅行統計調査(国土交通省観光庁) 図5・6、表1・2:外国人需要と宿泊タイプの関係
湯原温泉の大人宿泊者数 1989〜2018年 湯原町旅館協同組合調べ(非公開) 図7:湯原温泉の長期衰退の確認

再現可能性のトリアージ(原論文の図表 → 本ページでの扱い)

原論文の図表内容本ページでの扱い
図1(箱ひげ図)旅館・ホテル別客室数増減率のばらつき参考再現:SSDSE-B-2026の「ホテルを含む」合算値・2012→2023年で図1を作成(旅館・ホテルの分離は不可)
図2・3(階級区分図)旅館・ホテル客室数増減率の地図再現不可(データ・GIS環境なし)→ 集計結果を本文・表で提示、地図は原論文参照
図4(X-Yグラフ)・表1旅館×ホテル増減率の相関(r=0.421)、稼働率との相関原論文の報告値の可視化(図2):報告された相関係数を棒グラフ化(再計算ではない)
図5(推移)日本人・外国人延べ宿泊者数 2007〜2018年実データ再現(図3):SSDSE-B-2026・2012〜2023年で同指標を作図
表2(相関)外国人宿泊増減×宿泊タイプ別増減原論文の報告値の可視化(図2右)+同趣旨の実データ計算(増減数/増減率の比較)
図6(階級区分図)都道府県別外国人宿泊客増減 2008→2016年実データ再現+再表現(図4):同一指標を2012→2019年のランキングとして作図
図7(推移)湯原温泉の宿泊者数 1989〜2018年非公開データのため再現不可 → 本文記載の2時点の報告値のみ提示、グラフは原論文参照
やってみよう1. SSDSE-B の読み込み
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import os
import numpy as np
import pandas as pd
import matplotlib
matplotlib.use('Agg')
import matplotlib.pyplot as plt
from scipy import stats

plt.rcParams['font.family'] = 'Hiragino Sans'
plt.rcParams['axes.unicode_minus'] = False
plt.rcParams['figure.dpi'] = 150

FIG_DIR = 'html/figures'
DATA_B  = 'data/raw/SSDSE-B-2026.csv'
os.makedirs(FIG_DIR, exist_ok=True)

df = pd.read_csv(DATA_B, encoding='cp932', header=1)
df = df[df['地域コード'].str.match(r'^R\d{5}', na=False)].copy()
df['年度'] = df['年度'].astype(int)

cols = ['旅館営業施設数(ホテルを含む)', '旅館営業施設客室数(ホテルを含む)',
        '延べ宿泊者数', '外国人延べ宿泊者数']
print("収録年度:", df['年度'].min(), "〜", df['年度'].max())
print("2019年の都道府県数:", (df['年度'] == 2019).sum())
print("使用する列:", cols)
▼ 実行結果
収録年度: 2012 〜 2023
2019年の都道府県数: 47
使用する列: ['旅館営業施設数(ホテルを含む)', '旅館営業施設客室数(ホテルを含む)', '延べ宿泊者数', '外国人延べ宿泊者数']
💡 解説
  • pd.read_csv(..., encoding='cp932', header=1) — SSDSE-B は1行目が変数コード、2行目が日本語の列名なので header=1 で読み込みます。
  • df['地域コード'].str.match(r'^R\d{5}', ...) — 「R+数字5桁」の行(47都道府県)だけを残します。
  • SSDSE-B-2026 は2012〜2023年の12年分のパネルデータ。原論文が使った SSDSE-2019B(2007〜2016年)とは収録期間も列構成も異なる点に注意してください。
💡 TIPS SSDSE は毎年更新され、列の追加・削除・定義変更があります。分析前に必ず df.columns で列名を確認しましょう。
やってみよう2. 施設数・客室数の増減率(2012→2023年)
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piv_shisetsu = df.pivot(index='都道府県', columns='年度',
                        values='旅館営業施設数(ホテルを含む)')
piv_kyakushitsu = df.pivot(index='都道府県', columns='年度',
                           values='旅館営業施設客室数(ホテルを含む)')

chg_shisetsu    = (piv_shisetsu[2023]    - piv_shisetsu[2012])    / piv_shisetsu[2012]    * 100
chg_kyakushitsu = (piv_kyakushitsu[2023] - piv_kyakushitsu[2012]) / piv_kyakushitsu[2012] * 100

print("=== 2012→2023年 増減率(ホテルを含む合算・%) ===")
print(f"施設数が減少した都道府県: {(chg_shisetsu < 0).sum()} / 47")
print(f"客室数が減少した都道府県: {(chg_kyakushitsu < 0).sum()} / 47")
print(f"施設数増減率  中央値: {chg_shisetsu.median():+.1f}%")
print(f"客室数増減率  中央値: {chg_kyakushitsu.median():+.1f}%")
print(f"客室数増減率  最大: {chg_kyakushitsu.idxmax()} {chg_kyakushitsu.max():+.1f}% / "
      f"最小: {chg_kyakushitsu.idxmin()} {chg_kyakushitsu.min():+.1f}%")
print(f"岡山県: 施設数 {chg_shisetsu['岡山県']:+.1f}% / 客室数 {chg_kyakushitsu['岡山県']:+.1f}%")
▼ 実行結果
=== 2012→2023年 増減率(ホテルを含む合算・%) ===
施設数が減少した都道府県: 42 / 47
客室数が減少した都道府県: 20 / 47
施設数増減率  中央値: -18.2%
客室数増減率  中央値: +2.5%
客室数増減率  最大: 沖縄県 +72.1% / 最小: 高知県 -15.5%
岡山県: 施設数 -16.4% / 客室数 -4.0%
💡 解説
  • df.pivot(index='都道府県', columns='年度', values=...) — 縦持ちのパネルデータを「行=県、列=年」の表に変形。2時点の比較が1行で書けるようになります。
  • 増減率=(2023年値 − 2012年値)÷ 2012年値 × 100(%)。原論文と同じ定義です。
  • 施設数は42/47県で減少、客室数の減少は20/47県。施設は減っても客室はさほど減らない=「小さな宿が消え、大型施設に集約」という構造変化が、原論文(旅館は36道県で減少・ホテルはほぼ全県で増加)と同じ方向で確認できます。
💡 TIPS 現行 SSDSE-B の宿泊施設の列は「ホテルを含む」合算です。原論文のように旅館とホテルを分けるには e-Stat の「衛生行政報告例」の原表が必要です。

旅館・ホテルの客室数の増減と都道府県間の格差(原論文 §3)

原論文はまず、SSDSE-2019B の2007〜2016年データで「旅館営業客室数」と「ホテル営業客室数」の都道府県別増減率を箱ひげ図(図1)と階級区分図(図2・3)で比較した。

原論文の発見(いずれも原論文の報告に基づく)
  • 旅館の増減率は第1四分位から第3四分位までが減少域に含まれる。増加したのは関東圏・関西圏・広島県・北九州圏・沖縄県のみで、その他36の道県では減少
  • ホテルの増減率は箱が増加域にあり、減少したのは秋田県・長野県・高知県の3県のみ
  • ホテルの方が箱ひげ図の範囲が広く、都道府県間の格差が大きい
図1 宿泊施設数・客室数の増減率の箱ひげ図(参考再現)

図1(参考再現・実データ):SSDSE-B-2026「旅館営業施設数/客室数(ホテルを含む)」の2012→2023年増減率(47都道府県)。現行SSDSEでは旅館とホテルを分離できないため、原論文の図1(旅館・ホテル別、2007→2016年)とは定義・期間が異なる。原論文の図1そのものは原論文を参照。

📖 図の読み方
中央50%の県(第1〜第3四分位)が入る範囲。箱が0%線より下なら「過半の県で減少」。
赤線
中央値。施設数は−18.2%、客室数は+2.5%(実データの計算結果)。
読み取り
施設数は42/47県で減少する一方、客室数の減少は20/47県。小規模な宿が退出し、1施設あたりが大型化(ホテル化)という原論文と同じ方向の構造変化が最新データでも続いている。

ここまでで「旅館は減り、ホテルは増える」という全国構造が見えた。では、旅館の増減とホテルの増減は無関係なのか、それとも連動しているのか——原論文は次に散布図と相関分析で確かめる。

やってみよう3. 図1:増減率のばらつき(箱ひげ図・参考再現)
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fig, ax = plt.subplots(figsize=(8, 6))
bp = ax.boxplot([chg_shisetsu.values, chg_kyakushitsu.values],
                tick_labels=['施設数の増減率', '客室数の増減率'],
                patch_artist=True, widths=0.45,
                medianprops=dict(color='#C62828', linewidth=2))
for patch, c in zip(bp['boxes'], ['#90CAF9', '#1565C0']):
    patch.set_facecolor(c)
    patch.set_alpha(0.85)
ax.axhline(0, color='#555', linewidth=1, linestyle='--')
ax.set_ylabel('2012→2023年 増減率(%)')
ax.set_title('図1(参考再現): 宿泊施設数・客室数の増減率のばらつき(47都道府県)\n'
             'SSDSE-B-2026「旅館営業施設数/客室数(ホテルを含む)」\n'
             '※原論文(図1)は SSDSE-2019B で旅館とホテルを分離・2007→2016年',
             fontsize=11)
ax.grid(axis='y', alpha=0.3)
plt.tight_layout()
plt.savefig(f'{FIG_DIR}/2019_H5_1_fig1.png', bbox_inches='tight')
plt.close()
print('図1 保存: 2019_H5_1_fig1.png')
▼ 実行結果
図1 保存: 2019_H5_1_fig1.png
💡 解説
  • ax.boxplot([...]) — 47都道府県の増減率の分布を箱ひげ図で比較します。箱の下端・上端が第1・第3四分位数、中の赤線が中央値です。
  • 原論文の図1は「旅館」と「ホテル」の箱ひげ図で、旅館は箱全体が0%より下(大半の県で減少)、ホテルは箱が0%より上(大半の県で増加)でした。
  • 本図は旅館・ホテル合算のため定義が異なりますが、「施設数の箱はほぼ全体がマイナス側、客室数の箱は0をまたぐ」という同じ構図が実データで見えます。
💡 TIPS ax.axhline(0, ...) で0%の基準線を引くと「増加か減少か」がひと目で判断できます。

旅館×ホテルの増減の関係と稼働率との相関(原論文 §3〜4)

X-Yグラフ(原論文 図4):旅館とホテルの増減率は連動する

原論文は、X軸に旅館営業客室数の増減率、Y軸にホテル営業客室数の増減率をとった散布図(X-Yグラフ)を描き、相関係数 0.421(有意確率0.3%)の有意な正の関係を報告した(原論文の報告値)。さらに散布図上の位置から都道府県を3グループに分けて考察している。

グループ該当する都道府県原論文の解釈
A(ホテルが特化的に増加)三重県・長崎県2007年時点のホテル客室数が少なく(三重5,956室・長崎3,795室)、伊勢志摩サミット(2016年)や長崎港・佐世保港への外国クルーズ船寄港で需要が急増した
B(全国的な標準型)37道県旅館客室数は減少し、ホテル客室数は増える——日本全体の標準的な構図
C(旅館もホテルも増加)東京・大阪・福岡の都市圏の各都府県、沖縄県都市型・海洋リゾートの観光資源と人口・空港などの交通インフラを持ち、宿泊需要が大きい

※散布図の原データ(旅館・ホテル別の県別増減率)は現行SSDSEに未収録のため、X-Yグラフの再現図は作成していない。グラフは原論文の図4を参照。

稼働率との相関(原論文 表1)

原論文は、旅館営業施設客室数の増減(2007→2016年)と、2008年・2016年の宿泊タイプ別客室稼働率との相関を SPSS で計算した。旅館の稼働率とは有意な相関がない一方、リゾート・ビジネス・シティホテルの稼働率とはいずれも有意確率1%未満で有意な正の相関だった(下表・原論文の報告値)。

相関の相手(稼働率)2008年2016年
旅館0.320(有意でない)0.225(有意でない)
リゾートホテル0.530 **0.662 **
ビジネスホテル0.477 **0.438 **
シティホテル0.492 **0.492 **

**:有意確率1%未満で有意。表の数値はすべて原論文(表1)の報告値であり、本ページで再計算したものではない。

図2 原論文が報告した相関係数の可視化

図2(原論文の報告値の可視化・再計算ではない):原論文の表1(左)と表2(右)が報告した相関係数を棒グラフ化したもの。青=有意確率1%未満で有意、灰色=有意でない。

原論文の解釈 各種ホテルの稼働率が高い(=宿泊需要が多い)地域では、旅館の客室数の増加にもつながっている。つまり旅館の盛衰は旅館単独ではなく、地域全体の宿泊需要と連動している
やってみよう4. 図2:原論文の相関係数の可視化(再計算ではない)
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# 以下の相関係数はすべて【原論文の報告値】であり、本スクリプトで再計算したものではない。
# 原データ: SSDSE-2019B(衛生行政報告例)・宿泊旅行統計調査(2008年・2016年)
paper_t1 = {   # 原論文 表1: 旅館営業施設客室数増減(2007→2016)× 宿泊タイプ別稼働率
    '2008年 旅館稼働率':         (0.320, False),
    '2008年 リゾートホテル稼働率': (0.530, True),
    '2008年 ビジネスホテル稼働率': (0.477, True),
    '2008年 シティホテル稼働率':   (0.492, True),
    '2016年 旅館稼働率':         (0.225, False),
    '2016年 リゾートホテル稼働率': (0.662, True),
    '2016年 ビジネスホテル稼働率': (0.438, True),
    '2016年 シティホテル稼働率':   (0.492, True),
}
paper_t2 = {   # 原論文 表2: 外国人延べ宿泊者数増減(2008→2016)× 宿泊タイプ別の増減
    '旅館':          (0.150, False),
    'リゾートホテル': (0.325, False),
    'ビジネスホテル': (0.620, True),
    'シティホテル':   (0.545, True),
}

fig, axes = plt.subplots(1, 2, figsize=(12.5, 5.5))
for ax, d, ttl in zip(
        axes, [paper_t1, paper_t2],
        ['表1: 旅館営業施設客室数増減と\n宿泊タイプ別稼働率の相関',
         '表2: 外国人延べ宿泊者数増減と\n宿泊タイプ別増減の相関']):
    labels = list(d.keys())[::-1]
    vals   = [d[k][0] for k in labels]
    sig    = [d[k][1] for k in labels]
    colors = ['#1565C0' if s else '#B0BEC5' for s in sig]
    bars = ax.barh(labels, vals, color=colors)
    for b, v, s in zip(bars, vals, sig):
        ax.text(v + 0.012, b.get_y() + b.get_height()/2,
                f'{v:.3f}' + ('**' if s else ''), va='center', fontsize=10)
    ax.set_xlim(0, 0.8)
    ax.set_xlabel('相関係数(原論文の報告値)')
    ax.set_title(ttl, fontsize=11)
    ax.grid(axis='x', alpha=0.3)
fig.suptitle('図2: 原論文(表1・表2)が報告した相関係数の可視化 '
             '(**=有意確率1%未満、灰色=有意でない)\n'
             '※本図は原論文の報告値をそのまま図示したものであり、再計算ではない',
             fontsize=12)
plt.tight_layout(rect=[0, 0, 1, 0.90])
plt.savefig(f'{FIG_DIR}/2019_H5_1_fig2.png', bbox_inches='tight')
plt.close()
print('図2 保存: 2019_H5_1_fig2.png(原論文の報告値の可視化)')
▼ 実行結果
図2 保存: 2019_H5_1_fig2.png(原論文の報告値の可視化)
💡 解説
  • 原論文の表1・表2の相関係数は、手元にない SSDSE-2019B と宿泊旅行統計調査(2008年・2016年)から SPSS で計算されたものです。本ステップは原論文の報告値を辞書に転記して棒グラフ化しているだけで、再計算していません。
  • 数値をコードに直書きするときは、コメントで「原論文の報告値」と出典を必ず明記します。出所の明示は捏造を防ぐ基本動作です。
  • 有意(**=有意確率1%未満)のバーだけを濃い色にすると、「旅館だけが有意でない」という原論文のメッセージが際立ちます。

外国人宿泊客の増加と旅館需要(原論文 §5)

原論文は宿泊旅行統計調査(2007〜2018年)から日本人・外国人の延べ宿泊者数の推移を確認した(原論文 図5)。2009年まで3億人泊程度だった全体の宿泊者数は2018年に5億人泊を超え、2012年以降は日本人の伸びが鈍化する一方で外国人の伸びが著しい——ここから「外国人宿泊客を取り込むことが旅館の宿泊客を増やすことにつながる」と論じる。

東日本大震災の影響(原論文の報告値) 2011年は外国人宿泊客が減少し、前年度比で42都道府県がマイナス。特に岩手県−60.06%、宮城県−66.44%、福島県−68.41%と、被災3県の落ち込みが際立った。
図3 日本人・外国人の延べ宿泊者数の推移(実データ再現)

図3(実データ再現):SSDSE-B-2026による日本人・外国人の延べ宿泊者数の全国推移(2012〜2023年)。原論文の図5(宿泊旅行統計調査・2007〜2018年)と同一指標だが、収録期間・集計定義が異なる。外国人は2012→2019年で4.25倍に増え、コロナ禍(2020〜21年)でほぼ消失した後、2023年にコロナ前水準近くまで回復した。

外国人宿泊の増減はどの宿泊タイプと相関するか(原論文 表2)

原論文の核心となる分析。2008→2016年の外国人延べ宿泊者数の増減と、宿泊タイプ別の増減との相関を計算した(下表・原論文の報告値)。

宿泊タイプ外国人延べ宿泊者数増減との相関係数
旅館0.150(有意でない)
リゾートホテル0.325(有意でない)
ビジネスホテル0.620 **
シティホテル0.545 **

**:有意確率1%未満。数値は原論文(表2)の報告値。

原論文の解釈と提案 外国人宿泊需要はビジネスホテル・シティホテルに集中し、旅館には向かっていない。旅館が外国人宿泊客を取り込むには、和風を残しつつ業態を少し変えて、客室管理などをコンピュータ化して人件費を抑制し、安価なサービスを提供することが必要。そのためには公的機関からの設備投資への補助金などが求められる。
クリティカル・リーディング:増減「数」の相関に潜む規模の影響 表2は都道府県別の増減(絶対数)どうしの相関とみられる。絶対数どうしの相関は「県の規模」という第3の変数に引っ張られて大きくなりやすい(見かけの相関)。実際、本ページの実データ計算(下の「やってみよう6」)では、外国人宿泊の増減と客室数の増減の相関は r=0.943 に達する一方、増減どうしでは r=−0.019 とほぼ無相関になる。原論文の「宿泊タイプ間の相関の差」(旅館だけ低い)という比較は規模の影響を受けにくく有効だが、相関係数の絶対的な大きさは割り引いて読む必要がある。
やってみよう5. 図3:日本人・外国人の延べ宿泊者数の推移(実データ)
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nat = df.groupby('年度')[['延べ宿泊者数', '外国人延べ宿泊者数']].sum()
nat['日本人延べ宿泊者数'] = nat['延べ宿泊者数'] - nat['外国人延べ宿泊者数']
nat_man = nat / 10000  # 万人泊

print("=== 全国の延べ宿泊者数(万人泊) ===")
for y in [2012, 2019, 2020, 2023]:
    print(f"{y}年  日本人 {nat_man.loc[y, '日本人延べ宿泊者数']:,.0f}  "
          f"外国人 {nat_man.loc[y, '外国人延べ宿泊者数']:,.0f}")
r1219 = nat.loc[2019, '外国人延べ宿泊者数'] / nat.loc[2012, '外国人延べ宿泊者数']
print(f"外国人延べ宿泊者数 2012→2019年: {r1219:.2f}倍(+{(r1219-1)*100:.0f}%)")

fig, ax = plt.subplots(figsize=(9.5, 5.5))
ax.plot(nat_man.index, nat_man['日本人延べ宿泊者数'], marker='o',
        color='#1565C0', label='日本人(延べ−外国人)')
ax.plot(nat_man.index, nat_man['外国人延べ宿泊者数'], marker='s',
        color='#E65100', label='外国人')
ax.axvspan(2020, 2021, color='#FFCDD2', alpha=0.4)
ax.text(2020.5, nat_man['日本人延べ宿泊者数'].max()*0.55, 'コロナ禍',
        ha='center', color='#C62828', fontsize=11)
ax.set_xlabel('年')
ax.set_ylabel('延べ宿泊者数(万人泊)')
ax.set_title('図3(実データ再現): 日本人・外国人の延べ宿泊者数の推移(全国計)\n'
             'SSDSE-B-2026・2012〜2023年 ※原論文(図5)は宿泊旅行統計調査 2007〜2018年',
             fontsize=11)
ax.legend()
ax.grid(alpha=0.3)
plt.tight_layout()
plt.savefig(f'{FIG_DIR}/2019_H5_1_fig3.png', bbox_inches='tight')
plt.close()
print('図3 保存: 2019_H5_1_fig3.png')
▼ 実行結果
=== 全国の延べ宿泊者数(万人泊) ===
2012年  日本人 33,612  外国人 2,382
2019年  日本人 39,967  外国人 10,131
2020年  日本人 25,074  外国人 1,589
2023年  日本人 40,488  外国人 9,503
外国人延べ宿泊者数 2012→2019年: 4.25倍(+325%)
図3 保存: 2019_H5_1_fig3.png
💡 解説
  • df.groupby('年度')[cols].sum() — 47都道府県を合計して全国値を作ります。
  • 日本人分は「延べ宿泊者数 − 外国人延べ宿泊者数」で近似しています。
  • 2012→2019年で外国人延べ宿泊者数は4.25倍(+325%)。原論文が2007〜2018年のデータで指摘した「日本人の伸びは鈍化、外国人の伸びは著しい」構図が、SSDSE-B の実データでも確認できます。
  • 原論文の執筆後に起きたコロナ禍(2020〜21年)で外国人はほぼ消失し、2023年にはコロナ前近くまで回復——原論文の「インバウンド重視戦略」のリスクと復元力の両方が見える延長データです。
💡 TIPS 原論文の図5は宿泊旅行統計調査(2007〜2018年)です。SSDSE-B の宿泊データも同調査由来ですが、収録期間・集計定義が異なるため数値は一致しません。

都道府県別の外国人宿泊客増減と湯原温泉(原論文 §6〜7)

どの県で外国人宿泊客が伸びたか(原論文 図6)

原論文は2008→2016年の都道府県別外国人宿泊客増減をMANDARAの階級区分図(地図)で示した。増加率が高いのは香川県の812%と鳥取県の574%(原論文の報告値)。香川県は高松空港がソウル・香港・上海とLCCで結ばれ、鳥取県は境港に多数の豪華客船が寄港している——海外から直接その県に入れる交通手段が伸びの要因と原論文は考察する。一方、原発事故のあった福島県はマイナスだった。

岡山県の増加率は268%(原論文の報告値)と両隣県には及ばないものの大きく伸びた。しかし、岡山県北部の湯原温泉にはその恩恵が見られない——これが原論文の課題設定である。

図4 都道府県別外国人延べ宿泊者数増減率ランキング(実データ再現)

図4(実データ再現・地図をランキングに再表現):SSDSE-B-2026による都道府県別の外国人延べ宿泊者数増減率(2012→2019年・コロナ前)。原論文の図6(2008→2016年の階級区分図)と同一指標を、期間を変えてランキング形式で再表現したもの。赤=原論文が注目した香川県・鳥取県、橙=岡山県、紫=福島県。原論文の地図そのものは原論文を参照。

📖 図の読み方(原論文との比較)
香川県
本期間でも+1,372%で全国1位。原論文(2008→2016年で812%・最大)の発見は期間を変えても頑健。
岡山県
+575%で全国9位。原論文の期間では268%。
鳥取県
+361%。原論文の期間では574%と全国2位だった。期間の取り方で順位は変わる。
福島県
+520%。原論文の期間(2008→2016年)では震災の影響でマイナスだった。基準年を震災後(2012年)に置くと回復分が増加率として現れる——増減率は基準年に強く依存する好例。

湯原温泉の現実(原論文 図7)

湯原温泉の宿泊者数(原論文の報告値)
1989年(バブル期)220,832 人
2018年128,274 人(1989年比 −41.9%

出典:湯原町旅館協同組合調べ(非公開データ)。1989〜2018年の推移グラフは原論文の図7を参照(本ページでは2時点の報告値以外を提示しない)。全国で外国人宿泊客が急増した期間にも、湯原温泉では外国人宿泊増加の影響が見られない、と原論文は指摘する。

やってみよう6. 図4:都道府県別 外国人宿泊増減率ランキング(実データ)
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piv_gaikoku = df.pivot(index='都道府県', columns='年度', values='外国人延べ宿泊者数')
chg_gaikoku = ((piv_gaikoku[2019] - piv_gaikoku[2012]) / piv_gaikoku[2012] * 100).sort_values()

print("=== 外国人延べ宿泊者数 増減率 2012→2019年(コロナ前・%) ===")
print("上位5県:")
for p, v in chg_gaikoku.tail(5)[::-1].items():
    print(f"  {p}: +{v:,.0f}%")
print("下位3県:")
for p, v in chg_gaikoku.head(3).items():
    print(f"  {p}: {v:+,.0f}%")
print(f"岡山県: +{chg_gaikoku['岡山県']:,.0f}%(全国 {int((chg_gaikoku.rank(ascending=False))['岡山県'])} 位)")

# 原論文 表2 の趣旨の実データ版: 外国人宿泊の増減と客室数の増減の相関(同期間)
# 「増減数(絶対数)」と「増減率」の両方で計算し、結果の違いを確認する
diff_gaikoku = piv_gaikoku[2019] - piv_gaikoku[2012]
diff_kyaku   = piv_kyakushitsu[2019] - piv_kyakushitsu[2012]
r_n, p_n = stats.pearsonr(diff_gaikoku, diff_kyaku.reindex(diff_gaikoku.index))
chg_kyaku1219 = (piv_kyakushitsu[2019] - piv_kyakushitsu[2012]) / piv_kyakushitsu[2012] * 100
r_r, p_r = stats.pearsonr(chg_gaikoku.reindex(chg_kyaku1219.index), chg_kyaku1219)
print("外国人宿泊の増減 × 客室数の増減(2012→2019, ホテルを含む合算):")
print(f"  増減数どうし: r = {r_n:.3f}, p = {p_n:.5f}  ← 県の規模に引っ張られて強い正")
print(f"  増減率どうし: r = {r_r:.3f}, p = {p_r:.4f}  ← 規模の影響を除くとほぼ無相関")

highlight = {'香川県': '#C62828', '鳥取県': '#C62828',
             '岡山県': '#E65100', '福島県': '#6A1B9A'}
colors = [highlight.get(p, '#90A4AE') for p in chg_gaikoku.index]
fig, ax = plt.subplots(figsize=(9, 12))
ax.barh(chg_gaikoku.index, chg_gaikoku.values, color=colors)
for p in highlight:
    v = chg_gaikoku[p]
    ax.text(v + 15, list(chg_gaikoku.index).index(p), f'{p} +{v:,.0f}%',
            va='center', fontsize=10, color=highlight[p], fontweight='bold')
ax.set_xlabel('外国人延べ宿泊者数 増減率 2012→2019年(%)')
ax.set_title('図4(実データ再現): 都道府県別 外国人延べ宿泊者数の増減率ランキング\n'
             'SSDSE-B-2026・2012→2019年(コロナ前) '
             '※原論文(図6)は宿泊旅行統計調査 2008→2016年の階級区分図',
             fontsize=11)
ax.grid(axis='x', alpha=0.3)
ax.tick_params(axis='y', labelsize=9)
plt.tight_layout()
plt.savefig(f'{FIG_DIR}/2019_H5_1_fig4.png', bbox_inches='tight')
plt.close()
print('図4 保存: 2019_H5_1_fig4.png')
▼ 実行結果
=== 外国人延べ宿泊者数 増減率 2012→2019年(コロナ前・%) ===
上位5県:
  香川県: +1,372%
  佐賀県: +764%
  青森県: +757%
  奈良県: +726%
  山形県: +690%
下位3県:
  長崎県: +106%
  宮崎県: +119%
  埼玉県: +122%
岡山県: +575%(全国 9 位)
外国人宿泊の増減 × 客室数の増減(2012→2019, ホテルを含む合算):
  増減数どうし: r = 0.943, p = 0.00000  ← 県の規模に引っ張られて強い正
  増減率どうし: r = -0.019, p = 0.8989  ← 規模の影響を除くとほぼ無相関
図4 保存: 2019_H5_1_fig4.png
💡 解説
  • 原論文の図6(MANDARA による階級区分図)と同じ指標「外国人延べ宿泊者数の増減率」を、地図の代わりにランキングの横棒グラフで再表現しています(期間は2012→2019年)。
  • 香川県が+1,372%で全国1位——原論文が2008→2016年で報告した「香川県812%が最大」と同じ顔ぶれが期間を変えても上位に来ます。岡山県も+575%(9位)と大きく伸びています。
  • 一方、原論文で574%だった鳥取県は本期間では+361%、原論文でマイナスだった福島県は+520%。基準年を震災前(2008年)に取るか震災後(2012年)に取るかで増減率は大きく変わる——増減率の読み方の重要な教訓です。
  • 最後の相関計算に注目:増減「数」どうしなら r=0.943 の強い正、増減「率」どうしなら r=−0.019 でほぼ無相関。絶対数どうしの相関は「県の規模」という第3の変数に引っ張られます(見かけの相関)。原論文の表2(増減の相関)を読むときにも意識したい点です。
💡 TIPS 地図(階級区分図)は分布の「位置」を伝えるのに強く、ランキングは「順位と差の大きさ」を伝えるのに強い。目的に応じて使い分けましょう。
やってみよう7. 湯原温泉の宿泊者数(原論文の報告値)
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# 湯原温泉の宿泊者数は「湯原町旅館協同組合調べ」の非公開データのため再現不可。
# 原論文本文が明記した2時点の値のみを示す(推移グラフは原論文の図7を参照)。
yubara_1989 = 220832   # 原論文の報告値(バブル期のピーク)
yubara_2018 = 128274   # 原論文の報告値
chg = (yubara_2018 - yubara_1989) / yubara_1989 * 100
print("=== 湯原温泉の宿泊者数(原論文の報告値・湯原町旅館協同組合調べ) ===")
print(f"1989年: {yubara_1989:,} 人")
print(f"2018年: {yubara_2018:,} 人")
print(f"増減率: {chg:.1f}%(約30年でほぼ半減。推移グラフは原論文の図7を参照)")
print("\n完了: 図は html/figures/ に保存されました")
▼ 実行結果
=== 湯原温泉の宿泊者数(原論文の報告値・湯原町旅館協同組合調べ) ===
1989年: 220,832 人
2018年: 128,274 人
増減率: -41.9%(約30年でほぼ半減。推移グラフは原論文の図7を参照)

完了: 図は html/figures/ に保存されました
💡 解説
  • 湯原温泉の宿泊者数は「湯原町旅館協同組合調べ」の非公開データのため、再現計算はできません。原論文本文が明記した2時点の値のみを扱います。
  • 1989年(バブル期)の220,832人から2018年の128,274人へ−41.9%。全国でインバウンドが急増した同時期に、湯原温泉はその恩恵をほとんど受けていない——これが原論文の出発点です。
  • 1989〜2018年の推移の形(グラフ)は原論文の図7を参照してください。本ページでは2時点の報告値以外を推定・補間していません。

まとめと考察

原論文の結論(湯原温泉・地方旅館への提案)

  1. 「和風のビジネスホテル」への業態転換:外国人宿泊客の需要はビジネスホテルで高い(r=0.620・原論文の報告値)。設備投資により客室管理などをコンピュータ化して人件費を抑え、和風でありながら安価なサービスを提供できるようにする。公的機関の設備投資補助金が必要。
  2. 交通インフラの整備:香川県(LCC)・鳥取県(クルーズ寄港)の成功例にならい、岡山県として玉野・水島・玉島など瀬戸内海の港湾への豪華客船誘致や、岡山空港へのLCC就航を実現する。
この研究の優れている点
  • 当事者性のある問い:実家の旅館・地元温泉街という切実な課題を、印象論でなく公的統計で検証した。
  • 「宿泊タイプ別」という切り口:観光客数の総量ではなく旅館/ホテル別に分解したことで、「インバウンドの恩恵が旅館に届かない」メカニズムを特定できた。
  • 複数手法の組み合わせ:箱ひげ図(分布)→地図(地域差)→散布図・相関(関係)と、目的に応じて可視化と統計を使い分けている。
本分析の限界(教材としての注記) (1) 相関因果を示さない——「ビジネスホテルが外国人を呼ぶ」のか「外国人が多い地域にビジネスホテルが建つ」のかは相関だけでは区別できない。(2) 増減の絶対数どうしの相関は県の規模という交絡の影響を受ける(本文のクリティカル・リーディング参照)。(3) 都道府県単位の関係を湯原温泉という一地区にそのまま当てはめるのは生態学的誤謬のリスクがある。(4) 増減率は基準年の選び方(震災前後など)に強く依存する。
教育的価値(この論文から学べること)
  • 身近な課題を統計の問いに翻訳する力:「うちの温泉が寂れている」→「宿泊タイプ別・都道府県別の増減の差」という検証可能な形に落とす。
  • 再現の作法:手に入るデータは実データで再現し、手に入らない数値は「原論文の報告値」と明示する——本ページ自体がその実践例。
  • 増減率のリテラシー:812%・1,372%といった巨大な増加率は「基準値の小ささ」の裏返しでもある。数と率、基準年の3点セットで確認する習慣。

データ・コードのダウンロード

分析スクリプト(2019_H5_1_shorei.py)
データ出典・説明
SSDSE-B-2026(都道府県別・時系列独立行政法人統計センター SSDSE(教育用標準データセット)— 旅館営業施設数・客室数(ホテルを含む)、延べ宿泊者数、外国人延べ宿泊者数(2012〜2023年)
原論文使用データ(本ページ未収録)SSDSE-2019B(旅館・ホテル別客室数)、宿泊旅行統計調査の2008・2016年集計(稼働率・宿泊タイプ別増減)、湯原町旅館協同組合調べ(非公開)— これらに基づく数値は「原論文の報告値」として引用

本教育用コードの図1・3・4は SSDSE-B-2026 の実データ、図2は原論文の報告値の可視化(再計算ではない)合成データによる数値の捏造は一切行っていない。

教育用再現コード | 2019年度 統計データ分析コンペティション 特別賞(高校生の部) | SSDSE-B-2026 実データ+原論文の報告値

⚠️ よくある誤解と注意点

この論文(と本ページの再現)を読むときに初心者がやりがちな勘違いをまとめます。特に「増減率の読み方」と「相関と因果の混同」は、観光統計を扱うときの定番の落とし穴です。

❌ 「ビジネスホテルと外国人宿泊の相関が強い=ビジネスホテルを建てれば外国人が来る」ではない
r=0.620という相関は「外国人が増えた県でビジネスホテルも増えた」ことを示すだけで、方向(因果)は特定できません

考えられる説明は少なくとも3つ:(1) ビジネスホテルの供給が外国人を呼んだ、(2) 外国人需要の増加がビジネスホテル建設を促した、(3) 空港・港湾など第三の要因交絡)が両方を増やした。原論文自身も香川・鳥取の考察で(3)の交通インフラ説を示しており、「ホテル業態」と「交通アクセス」のどちらが効いているかは相関だけでは分離できない点を意識して読みましょう。
❌ 「増加率812%はとてつもない観光地になった証拠」ではない
増加率(%)は基準値が小さいほど巨大になります。外国人宿泊者数がもともと少ない県は、絶対数がわずかに増えるだけで数百%の増加率になります。

例:本ページの実データでは香川県は2012→2019年で+1,372%ですが、絶対数では東京都・大阪府の増加分の方がはるかに大きい。

正しい読み方:増加「率」と増加「数」、そして基準年の値の3点セットで確認する。原論文の図6(812%・574%)も「小さかった県が急伸した」ことを示す指標として読むのが適切です。
❌ 「増減数どうしの相関」と「増減率どうしの相関」は同じではない
本ページの実データ計算では、外国人宿泊の増減と客室数の増減の相関は r=0.943、増減どうしでは r=−0.019 でした。

絶対数どうしの相関は「大きい県は何でも大きく増える」という規模の効果見かけの相関)を含みます。

対処法:(1) 率に変換する、(2) 人口などで割って規模を調整する、(3) 規模を統制した偏相関を使う。どの変換を選ぶかで結論が変わり得るので、複数の定義で計算して両方報告するのが誠実な作法です。
❌ 「p値(有意確率0.3%)が小さい=効果が大きい」ではない
原論文の図4の相関(r=0.421、有意確率0.3%)は「偶然とは考えにくい」ことを示しますが、r=0.421は中程度の相関で、決定係数に直すと約18%——旅館の増減のばらつきの8割以上はホテルの増減では説明できません。

正しい読み方:p値(偶然かどうか)と効果量(関係の強さ=相関係数そのもの)をセットで判断する。「有意=強い関係」ではありません。
❌ 「都道府県で成り立つ関係は湯原温泉でも成り立つ」ではない
原論文の分析単位は都道府県(n=47)です。県レベルで「外国人宿泊とビジネスホテルが相関する」ことは、湯原温泉という一つの温泉街で同じ関係が成り立つことを保証しません(生態学的誤謬)。

岡山県全体では外国人宿泊が268%(原論文の報告値)増えたのに湯原温泉には波及していない——という原論文自身の観察が、まさに「県の平均と地区の実態は違う」ことを示しています。集計レベルの違いをまたぐ結論には、より細かいデータ(市町村・地区別)での検証が必要です。
❌ 「合算データでも旅館とホテルの結論は出せる」ではない
本ページの図1は現行SSDSE-Bの「旅館営業施設数(ホテルを含む)」を使った参考再現です。旅館とホテルを分離できないため、「旅館だけが減っている」という原論文の核心の主張はこのデータからは検証できません

教訓:変数の定義(何を含み何を含まないか)はデータの脚注・定義書で必ず確認する。定義が一致しない再現は「参考」と明示し、元の主張の検証とは区別する——本ページがその実例です。

📖 用語集(この記事に出てくる統計用語)

この論文の理解に必要な用語を初心者向けに解説します。本文中で見慣れない言葉が出てきたら、ここに戻って確認してください。

相関係数
2変数が一緒に増減する傾向の強さと向きを−1〜+1で表す指標。原論文はSPSSでPearsonの相関係数を計算(例:旅館×ホテル増減率 r=0.421)。0.4前後は「中程度」の相関。
有意確率(p値)
「本当は関係がない」と仮定したとき、観察された相関(またはそれ以上)が偶然生じる確率。原論文の「有意確率0.3%」は p=0.003 の意味。慣例的に5%または1%未満で「有意」と判断する。
箱ひげ図
データの分布を「最小値・第1四分位・中央値・第3四分位・最大値」で要約した図。箱が0より上か下かで「大半の県が増加か減少か」がひと目で分かる(原論文 図1)。
四分位範囲
データを小さい順に並べて4等分したときの、下から25%(第1四分位)〜75%(第3四分位)の範囲。中央の50%の県がここに入る。
階級区分図
地域ごとの数値を色の濃淡で塗り分けた地図(コロプレス図)。原論文はGISソフトMANDARAで増減率を10%刻みに色分けした(図2・3・6)。
増減率
(期末値−期初値)÷期初値×100(%)。基準値(期初値)が小さいと率は巨大になりやすく、基準年の選び方にも強く依存する。
延べ宿泊者数
宿泊した人数×泊数の合計(人泊)。2人が2泊すれば延べ4人泊。観光庁「宿泊旅行統計調査」の基本指標。
客室稼働率
販売可能な客室のうち実際に利用された割合。宿泊需要の強さを表し、原論文は表1でこの指標との相関を調べた。
インバウンド
訪日外国人旅行(者)のこと。原論文の中心概念で、外国人延べ宿泊者数の増減として定量化されている。
見かけの相関
第三の変数(この論文の文脈では「県の規模」など)が両方の変数に影響して生じる、実質的な関係のない相関。増減数どうしの相関で特に起きやすい。
交絡
注目する2変数の両方に影響する第三の要因。空港・港湾などの交通インフラは「ホテル増」と「外国人増」の両方に効く交絡候補。
外れ値
他から極端に離れた値。散布図で香川県のような突出した県は、除外するのではなく「なぜ突出したのか」を考察する材料にする(原論文はLCC就航に注目した)。

📐 使っている手法をわかりやすく解説

原論文が使った手法について「何のためか」「結果をどう読むか」を初心者向けに解説します。

◆ 統計の基本概念(どの論文にも共通)

🔍 p値有意確率)とは
何?
「もし本当に関係がなかったとしたら、今回の結果(またはもっと極端な結果)が偶然起きる確率」のこと。
なぜ必要?
n=47の都道府県データでは、無関係な変数どうしでも偶然ある程度の相関が出る。偶然で説明できるかどうかの客観的な物差しが要る。
何がわかる?
原論文の「相関係数0.421・有意確率0.3%」は「無関係なら1000回に3回しか出ない強さの関係」という意味。
読み方
p < 0.05(5%未満)や p < 0.01 を「統計的に有意」と判断するのが慣例。ただし「p値が小さい=関係が強い」ではない。関係の強さは相関係数そのもの(効果量)で判断する。
🔗 相関因果の区別
何?
「一緒に動く」(相関)と「一方が他方を引き起こす」(因果)は別物、という統計学の大原則。
なぜ必要?
この論文の提案(旅館のビジネスホテル化)は「ビジネスホテル的な業態が外国人需要を引き寄せる」という因果の想定に基づくが、データが示すのは相関まで。
何がわかる?
相関は因果の「候補」を絞る強力な手がかりになる。ただし逆方向の因果や交絡(交通インフラなど)を排除するには追加の検証が要る。
読み方
相関に基づく政策提案を読むときは「逆はないか」「第三の要因はないか」を必ず自問する。原論文の審査会コメント「結論に関わる議論がもう少し丁寧に考察されると良い」もこの点を指すと考えられる。

◆ この論文で使われている手法

🔗 相関分析(Pearson・SPSS)
何?
2つの変数の「一緒に増減する傾向の強さと向き」を−1〜+1の相関係数 r で数値化する手法。原論文はSPSSで計算した。
どう使う?
旅館増減×ホテル増減(図4)、客室数増減×稼働率(表1)、外国人宿泊増減×宿泊タイプ別増減(表2)と、問いを変えながら3回使われている。
何がわかる?
「外国人需要はどの宿泊タイプと結びついているか」をタイプ間で比較できる。旅館0.150(n.s.)とビジネスホテル0.620(**)の対比が結論の根拠。
結果の読み方
|r|>0.7 強い、0.4〜0.7 中程度、<0.3 弱い。**(1%未満)は偶然では説明しにくいことを示す。
⚠️ 注意点
(1) 増減の絶対数どうしの相関は県の規模に引っ張られる——率への変換や人口調整をした値と比べる。(2) n=47と標本が小さいので外れ値1県(香川など)でrが大きく動く——散布図を必ず併読。(3) 相関の差の比較(旅館 vs ビジネスホテル)は有効だが、差自体が有意かは別の検定が必要。(4) 相関から因果(業態転換すれば客が来る)へは飛躍がある。
📦 箱ひげ図
何?
分布を最小値・第1四分位中央値・第3四分位・最大値の5数で要約した図。
どう使う?
47都道府県の増減率を旅館・ホテル別に並べ、「箱が0%より上か下か」「箱とひげの長さ(ばらつき)」を比較する(原論文 図1)。
何がわかる?
平均1つに要約せず「大半の県で減少か」「地域差はどちらが大きいか」を同時に読める。原論文は旅館=箱ごと減少域、ホテル=増加域だが格差大、と読んだ。
結果の読み方
箱=中央50%の県。ひげの外の点は外れ値候補。中央値の線が0より下なら過半の県で減少。
⚠️ 注意点
(1) 箱ひげ図は「どの県か」の情報を捨てる——地図やランキングと併用する(原論文も図2・3の地図と併用)。(2) n=47程度なら個票の点を重ねる(ジッター付き散布)方が情報量が多い場合もある。(3) 2群の箱の比較は分布の重なりを見るもので、差の検定ではない。
🗺️ 階級区分図(コロプレス図・GISソフトMANDARA)
何?
都道府県などの区域を、指標の値の階級ごとに色分けした地図。原論文は教育現場で広く使われるGISソフトMANDARAで作成した。
どう使う?
増減率を10%刻みなどの階級に区切り、増加=暖色・減少=寒色のように塗り分ける(原論文 図2・3・6)。
何がわかる?
「旅館が増えたのは関東圏・関西圏・広島・北九州圏・沖縄だけ」のような空間的なまとまり(隣接県で似る傾向)を一目で発見できる。
結果の読み方
色の濃淡は階級の代表値であり、同じ色でも階級内で値に幅がある。凡例の区切り方を必ず確認する。
⚠️ 注意点
(1) 階級の区切り方(等間隔・分位数など)で印象が激変する——恣意的な区切りに注意。(2) 面積の大きい県(北海道)が視覚的に過大評価される。(3) 率を塗るか数を塗るかで別の地図になる。本ページのように同じ指標をランキングで再表現すると、順位と差の大きさを補完的に確認できる。
📈 散布図(X-Yグラフ)とグループ分け
何?
2変数を縦軸・横軸にとり、47都道府県を点として打った図。原論文はX軸=旅館増減率、Y軸=ホテル増減率とした(図4)。
どう使う?
相関係数と必ずセットで描く。原論文はさらに点の位置からA(ホテル特化増)・B(標準型37道県)・C(両方増の都市圏・沖縄)の3グループに分けて解釈した。
何がわかる?
相関係数1個では見えない「どの県がどこにいるか」「外れた県はなぜ外れたか」(三重=サミット、長崎=クルーズ)という文脈が読める。
結果の読み方
右上がりの点の並び=正の相関。分布から離れた点は除外せず、その県の事情(イベント・インフラ)を調べて考察の材料にする。
⚠️ 注意点
(1) グループ分けの境界は分析者の主観——なぜそこで切るかの根拠を言語化する。(2) 軸のスケール次第で「強い相関」に見えてしまう——rの値と併記する。(3) 少数の外れ値がrを押し上げていないか、外れ値を除いたrも確認するとよい。

🚀 発展の可能性(結果 X → 新仮説 Y → 課題 Z)

この研究をさらに発展させるための3つの方向性を示します。「今回わかったこと(X)」から「次に検証すべき仮説(Y)」を立て、「具体的に何をするか(Z)」まで考えてみましょう。

① コロナ禍をまたいだ検証:インバウンド戦略は頑健か
結果 X
原論文(2019年)は外国人宿泊需要の取り込みを旅館再生の柱に据えた。本ページの図3では、その外国人需要が2020〜21年にほぼ消失し、2023年に回復したことが確認できた。
新仮説 Y
コロナ禍で落ち込みが小さかった(日本人客に強い)県と、回復が速かった(外国人客に強い)県は異なり、宿泊タイプ構成がその差を説明するのではないか。
課題 Z
(1)SSDSE-B-2026で2019→2020年の減少率と2021→2023年の回復率を県別に計算する。(2)旅館比率の高い県とホテル比率の高い県で落ち込み・回復を比較する。(3)「インバウンド依存のリスク分散」の観点から原論文の提案を再評価する。
② 手法の発展:規模を統制した相関・重回帰へ
結果 X
増減数どうしの相関(r=0.943)と増減率どうしの相関(r=−0.019)が大きく食い違い、県の規模が結果を左右することがわかった。
新仮説 Y
人口や総客室数を統制すれば、「外国人需要が宿泊供給を動かす」純粋な関係の強さを推定できるのではないか。
課題 Z
(1)総人口を統制した偏相関係数を計算する。(2)客室数増減率を目的変数、外国人宿泊増減率・人口・観光資源指標を説明変数とする重回帰で頑健性を確かめる。(3)e-Statの「衛生行政報告例」原表から旅館・ホテル別データを取得し、原論文の図4(r=0.421)の完全再現に挑戦する。
③ 分析単位の細分化:湯原温泉に届く分析へ
結果 X
岡山県全体では外国人宿泊が大きく増えた(原論文268%、本ページ+575%)のに、湯原温泉には波及していない。
新仮説 Y
県内でも空港・新幹線駅・港湾からの所要時間が長い地区ほどインバウンドの恩恵が小さいのではないか(交通アクセス仮説)。
課題 Z
(1)観光庁の宿泊旅行統計や自治体観光統計から市町村・観光地点別の宿泊データを集める。(2)主要交通結節点からの所要時間と外国人宿泊増加率の関係を分析する。(3)真庭市・湯原温泉の実データで「和風ビジネスホテル化」提案の前提条件(客単価・稼働率・人件費)を試算する。

🎯 自分でやってみよう(5つのチャレンジ)

学んだだけでは身につきません。実際に手を動かすのが最強の学習方法です。本論文のスクリプトをベースに、以下のチャレンジに挑戦してみてください。難易度別に5つ用意しました。

★☆☆☆☆ 入門
CH1. スクリプトを実行して4つの図を再現する
付属の Python スクリプトをそのまま実行し、図1〜4を再現してください。
ポイント: どの図が「実データ再現」で、どの図が「原論文の報告値の可視化」かをコードのコメントから確認する。この区別が再現研究の第一歩。
★★☆☆☆ 初級
CH2. 期間を変えて増減率ランキングを作り直す
図4の期間(2012→2019年)を 2012→2023年 や 2015→2019年 に変えて再実行してください。
ポイント: 香川県は常に上位か? 福島県の順位はどう動くか? 増減率が基準年にどれだけ依存するかを体感する。
★★★☆☆ 中級
CH3. 「自分の県」の宿泊構造を診断する
自分の住む県について、施設数・客室数・延べ宿泊者数・外国人延べ宿泊者数の推移を1枚の図にまとめてください。
ポイント: 施設は減って客室は増えていないか(大型化)? 外国人比率は何%か? 原論文の「湯原温泉の視点」をあなたの地元に置き換える練習。
★★★★☆ 上級
CH4. 規模を統制して表2の議論を検証する
外国人宿泊の増減と客室数の増減について、(a)増減数どうし、(b)増減率どうし、(c)総人口を統制した偏相関、の3通りで相関を計算し比較してください。
ポイント: 3つの結果が食い違ったら、どれが「知りたいこと」に一番近い定義かを言葉で説明できるように。
★★★★★ 発展
CH5. e-Stat原表で原論文の完全再現に挑む
e-Stat「衛生行政報告例」から旅館営業・ホテル営業別の客室数(2007・2016年)を取得し、原論文の図1(箱ひげ図)と図4(X-Yグラフ、r=0.421)の完全再現に挑戦してください。
ポイント: 再現値が報告値とずれたら、定義・年次・集計方法のどこが違うのかを突き止める。これが本物の再現性検証。
💡 ヒント: 詰まったら本サイトの他の論文(相関分析・観光データを使っている)のスクリプトをコピーして組み合わせるのが効率的です。手法ガイド・用語集も参考に。

💼 この手法は実社会でこう使われている

本論文で学んだ「宿泊タイプ別×地域別の増減分析」と相関分析は、観光・地域づくりの現場で日常的に使われています。具体的なシーンを紹介します。

🏨
ホテル・旅館の経営戦略
宿泊業界では、稼働率・客単価・客層(国籍別比率)を地域相場と比較して料金や改装投資を決めます。「和風ビジネスホテル化」のような業態転換の判断も、まさに原論文と同じタイプの増減・相関分析が出発点です。
🏛️
観光庁・DMOの観光政策
観光庁や各地のDMO(観光地域づくり法人)は宿泊旅行統計調査を使って国籍別・宿泊タイプ別の需要を分析し、プロモーションの重点市場や補助金の配分を決めます。原論文が使ったのと同じ統計が政策の根拠です。
✈️
空港・港湾のインフラ誘致
LCC路線やクルーズ寄港の誘致提案書には「就航後に宿泊者数がどれだけ増えたか」の他地域事例分析が必ず載ります。原論文の香川(LCC)・鳥取(クルーズ)の考察は、この実務分析の高校生版です。
💰
地域金融機関・補助金審査
地方銀行や自治体は、旅館の設備投資融資・補助金の審査で地域の宿泊需要データを参照します。「その投資で需要を取り込めるか」を増減トレンドと相関から評価する仕事です。
📰
データジャーナリズム
「インバウンドはどこに来ているか」「オーバーツーリズムの偏在」といった報道は、都道府県別宿泊統計の増減マップ・ランキングで作られます。地図とランキングの使い分けは本ページで学んだ通りです。
🎓
観光学・地域経済学の研究
観光需要の決定要因分析や温泉地の盛衰研究では、宿泊統計×交通アクセス×為替などを組み合わせた相関・回帰分析が標準的手法。原論文の問いはそのまま卒業論文・学術研究のテーマになり得ます。

🤔 よくある質問(読者からの想定Q&A)

この論文を読んで初心者が抱きやすい疑問に、教育的観点から答えます。

Q1. この分析、自分でもできますか? SPSSやMANDARAを持っていません。
できます。原論文はSPSS(相関分析)とMANDARA(地図)を使いましたが、本ページのスクリプトはすべて無料の Python(pandas・scipy・matplotlib)で書かれています。相関係数は scipy.stats.pearsonr で1行、地図の代わりのランキングも棒グラフで作れます。MANDARA自体も無料公開されているので、地図に挑戦したい人はそちらもどうぞ。
Q2. なぜ本ページの図は原論文と同じ数値にならないのですか?
原論文が使った SSDSE-2019B(旅館・ホテル別客室数、2007〜2016年)と宿泊旅行統計調査の2008・2016年集計が、現行の配布データに含まれていないためです。本ページでは、現行 SSDSE-B-2026 にある変数(宿泊施設数・客室数〔ホテルを含む合算〕・延べ宿泊者数・外国人延べ宿泊者数、2012〜2023年)で同じ趣旨の分析を再現し、手に入らない数値は「原論文の報告値」と明示して引用しています。数値の違いは主に期間と変数定義の違いによるものです。
Q3. 「ビジネスホテルと外国人の相関 r=0.620」で旅館のビジネスホテル化を提案するのは飛躍では?
よい着眼です。相関は因果を保証しないので、「ビジネスホテル的業態が外国人を呼ぶ」のか「外国人が多い都市部にビジネスホテルが建つ」のかはこのデータだけでは区別できません。審査会コメントの「結論に関わる議論がもう少し丁寧に考察されると良い」もこの点に関わります。ただし、旅館(0.150)とビジネスホテル(0.620)の相関の差から「現状の旅館業態がインバウンドの受け皿になれていない」ことを読み取る筋道は妥当で、そこから業態転換という仮説を立てたこと自体は高校生の研究として優れています。
Q4. 香川県の812%(原論文)や1,372%(本ページ)って本当ですか? 大きすぎませんか?
計算上は本当ですが、読み方に注意が必要です。香川県は基準年の外国人宿泊者数が小さかったため、瀬戸内国際芸術祭や高松空港のLCC就航(ソウル・香港・上海)で絶対数が増えると増加「率」が非常に大きくなります。絶対数では東京都・大阪府の増加分の方がずっと大きい。増加率は「小さかった県の急成長」を捉える指標として読み、増加数・基準値とセットで確認してください。
Q5. 原論文の提案(和風ビジネスホテル化・LCC/クルーズ誘致)はその後どうなりましたか?
原論文は2019年執筆で、直後にコロナ禍が起き、インバウンドは2020〜21年にほぼ消失しました(本ページ図3)。しかし2023年には全国の外国人延べ宿泊者数がコロナ前水準近くまで回復しており、インバウンド需要の長期トレンド自体は続いています。無人チェックイン等の「客室管理のコンピュータ化」は、コロナ禍の非接触ニーズでむしろ加速しました。最新データで「湯原温泉・岡山県への波及」を検証し直すのは、絶好の発展課題です(発展の可能性①③参照)。

✅ 理解度チェック(4問)

この論文を理解できたか、クリックで確認しましょう。間違えても解説が出ます。

🐍 ブラウザで動かす — インストール不要でこの論文の分析を再現する

このページの分析は、この画面の中でそのまま実行できます。 Python をインストールする必要も、CSV をダウンロードする必要もありません。 下のセルの 「▶ ブラウザで実行」 を上から順に押すか、 「▶ 最初から全部実行」 で一気に流してください。 表示されるのは、本文の図表とまったく同じ計算の結果です (動かしているのは再現スクリプト code/2019_H5_1_shorei.py そのもの)。

コードは書き換えられます。「✏️ 書き換える」で数字や変数を変えて ▶ を押すと、 結果がどう変わるかをその場で確かめられます(元に戻すボタンつき)。 ページを開いた時点で裏で実行環境の準備が始まっているので、待ち時間はほとんどありません。 初回だけ実行環境の取得にインターネット接続が必要です。