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2024年 統計データ分析コンペティション | 審査員奨励賞 [高校生の部]

都市部とへき地の生徒間の英語能力の格差を是正するためには

⏱️ 推定読了時間: 約29分
井上咲春(名古屋大学教育学部附属高等学校)
🔬 相関分析🔬 重回帰🏷 教育・学力🏷 IT・デジタル🏷 格差・貧困
🔬 手法タグ / 🏷 応用タグ(クリックで同タグの論文をネットワーク検索)
🔬 再現カルテ — 原論文のデータが手に入らないため、代替データで再現

この教材は、原論文が使ったデータそのものを使えていません。そこで代わりのデータで同じ問いを追いかけ、結論の向き(増える/減る、強い/弱い)が原論文と一致するかを確かめます。「同じ数値が出る」ことは目標にしていません。

原論文が使ったデータ令和5年度全国学力・学習状況調査・令和5年賃金構造基本統計調査・SSDSE-D・令和4年度「英語教育実施状況調査」
分析単位:都道府県
中核手法:相関分析
この教材が使うデータ
原論文(PDF)都市部とへき地の生徒間の英語能力の格差を是正するためには
審査員奨励賞/井上 咲春(名古屋大学教育学部附属高等学校)
✅ この教材でできること
  • 原論文の中核手法(相関分析)を実データで実行できる
  • 分析に使うデータは同梱済みで、ブラウザ上でそのまま読み込める
  • 数値・図を最後まで再計算できる(重回帰分析(OLS)・相関分析)
⚠️ この教材ではできないこと(原論文との違い)
  • 原論文は SSDSE-D を使っているが、この教材は SSDSE-B・SSDSE-E を使っている(原論文本文で確認)
🚀 原論文と同じ粒度で挑戦したい人へ

原論文と同じ粒度のデータは、この教材にも同梱しています。これを読み込めば、原論文と同じ細かさで分析をやり直せます(下の「🐍 ブラウザで動かす」でコードを書き換えて試せます)。ただし原論文が使った項目がすべて収録されているとは限りません。足りない項目は、上の「できないこと」に書いた出典から取ってくる必要があります。

▶ ここに書いてある分析は、ページ下部の「🐍 ブラウザで動かす」でそのまま実行できます(インストール不要)。動かしているのは code/2024_H5_2_shorei.py(376 行)そのものです。

📝 3行で分かる要約

目次

  1. 研究概要と背景
  2. データ:全国学力調査と賃金構造統計
  3. 3教科と平均所得の相関比較
  4. 英語正答率と平均所得の単回帰分析
  5. 国語との比較:所得依存度の差
  6. 学業時間と英語能力の関係
  7. まとめと政策提言
  8. 📥 データの準備
  9. 💼 実社会での応用
  10. ⚠️ よくある誤解
  11. 📖 用語集
  12. 📐 手法ガイド
  13. 🚀 発展の可能性
  14. 🎯 自分でやってみよう
  15. 🤔 Q&A
  16. 🐍 ブラウザで動かす

🎯 この記事を読むと何ができるようになるか

📥 データの準備(再現コードを動かす前に)

このページの分析を自分で再現するには、以下の手順でデータを準備してください。コードの編集は不要です。

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データをダウンロードする 統計センターの SSDSE 配布ページから、以下のファイルをダウンロードします。
SSDSE-B-2026.csv ← SSDSE-B(都道府県データ)📥 直接DL
SSDSE-E-2026.csv ← SSDSE-E(都道府県の指標2)📥 直接DL
⬇ SSDSEダウンロードページを開く
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ファイルを所定のフォルダに配置する ダウンロードしたCSVを、プロジェクトの data/raw/ フォルダに入れます。
2026 統計・データ解析コンペ/ ├── code/ │ └── 2024_H5_2_shorei.py ← 実行するスクリプト └── data/ └── raw/ SSDSE-B-2026.csv ← ここに置く SSDSE-E-2026.csv ← ここに置く
3
スクリプトをそのまま実行する ターミナルでプロジェクトルートに移動し、以下を実行します。
python3 code/2024_H5_2_shorei.py
図は html/figures/ に自動保存されます。
研究概要と背景

英語教育における都市部とへき地の格差は、単なる学習機会の差にとどまらず、将来のキャリア・賃金格差にも繋がる深刻な問題である。本研究は、都道府県別の統計データを用いて「英語能力と経済格差の関係」を定量的に分析し、格差是正の政策を提案する。

この論文が挑んだ問いは「都市部とへき地の英語能力格差はなぜ生まれ、どうすれば是正できるか」(テーマ:教育・学力・IT・デジタル)。 著者は相関分析・重回帰を軸にこの問いへ定量的に答えを出した。 本ページではその分析の流れを実データで再現しながら、使われた統計手法を一つずつ学んでいく。

問題意識 英語は「授業外学習(英会話教室・海外体験・オンライン教材等)への投資」が成績に直結しやすい教科。費用がかかる教育機会への依存度が、国語・数学より高い可能性がある。
分析の流れ
全国学力調査
都道府県別
正答率
3教科 ×
平均所得
相関比較
英語の
単回帰分析
(R²)
学業時間
との関係
確認

相関分析 単回帰分析 決定係数R² 教科間比較

データ:全国学力調査と賃金構造統計

使用データ一覧

データ出典変数
全国学力・学習状況調査国立教育政策研究所都道府県別 英語・国語・数学 平均正答率
賃金構造基本統計調査厚生労働省都道府県別平均所得(万円/年)
SSDSE-D(社会生活)統計センター週あたり学業時間(時間)
SSDSE(社会生活)統計センター英語活動行動者率(%)

変数の概要

種別変数名単位想定効果
目的変数英語平均正答率%
説明変数都道府県別平均所得万円/年正(経済的余裕 → 英語投資)
週あたり学業時間時間正?(要確認)
英語活動行動者率%正(英語接触機会)
ICT活用割合%正(オンライン学習)

本文の図表の数値は論文報告値(国立教育政策研究所等の実データ)。下の「やってみよう」再現コードは、公開されている SSDSE-B/E実データを代理指標として使用する。

再現コードの読み方:論文が使った「都道府県別の英語正答率」は SSDSE には収録されていません。そこで以下の再現コードでは、SSDSE-B から計算できる「大学進学率」を教育アウトカムの代理変数SSDSE-E「1人当たり県民所得」を所得の代理変数として、論文と同じ「所得 → 教育成果」の分析手順(相関単回帰重回帰)を体験します。変数が違うので数値は本文の図表と一致しませんが、「所得が高い県ほど教育アウトカムが高い」という構図は同じように確認できます。

やってみようデータ読み込み: SSDSE-B 2022
📝 コード
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df_b = pd.read_csv(
    'data/raw/SSDSE-B-2026.csv',
    encoding='cp932', header=1
)
df_b = df_b[df_b['地域コード'].str.match(r'^R\d{5}$', na=False)]
df_2022 = df_b[df_b['年度'] == 2022].copy().reset_index(drop=True)

for col in ['総人口', '65歳以上人口',
            '高等学校卒業者数', '高等学校卒業者のうち進学者数',
            '教育費(二人以上の世帯)', '保育所等数',
            '年平均気温', 'ごみのリサイクル率', '婚姻件数']:
    df_2022[col] = pd.to_numeric(df_2022[col], errors='coerce')
▼ 実行結果
このステップは print はしません。データや図が裏で更新されただけ。次のステップへ進みましょう。
💡 解説
  • pd.read_csv(...) でCSVを読み込みます。encoding='cp932' は日本語Windows由来の文字コード、header=1 は「2行目を列名として使う」。
  • df['地域コード'].str.match(r'^R\d{5}', ...) — 正規表現で「R+数字5桁」の行(47都道府県)だけTrueにし、真偽値で行をフィルタ。
💡 Python TIPS df['A'] / df['B'] — pandasの列同士の四則演算は要素ごと(element-wise)。forループ不要なのが強み。
やってみようデータ読み込み: SSDSE-E(1人当たり県民所得)
📝 コード
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df_e_raw = pd.read_csv(
    'data/raw/SSDSE-E-2026.csv',
    encoding='cp932', header=0
)
df_e = df_e_raw.iloc[1:].copy(); df_e.columns = df_e_raw.iloc[0].values
df_e2 = df_e.iloc[1:].copy(); df_e2.columns = df_e.iloc[0].values
df_e2 = df_e2[df_e2['都道府県'] != '全国'].reset_index(drop=True)
df_e2['1人当たり県民所得(平成27年基準)'] = pd.to_numeric(
    df_e2['1人当たり県民所得(平成27年基準)'], errors='coerce')
▼ 実行結果
このステップは print はしません。データや図が裏で更新されただけ。次のステップへ進みましょう。
💡 解説
  • pd.read_csv(...) でCSVを読み込みます。encoding='cp932' は日本語Windows由来の文字コード。ここでは header=0 で読み込んだあと、.iloc で先頭行を列名に付け替えています(SSDSE-E はヘッダが2段あるため)。
  • 最後に「全国」行を除外して47都道府県だけを残し、所得列を pd.to_numeric で数値化しています。
💡 Python TIPS Seriesの .map() は「1対1の置き換え」、.apply() は「関数を当てる」。辞書なら .map()、ロジックなら .apply()
やってみよう変数構築
📝 コード
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df_2022['都道府県_key'] = df_2022['都道府県'].str.replace('県$|府$|都$|道$', '', regex=True)
df_e2['都道府県_key'] = df_e2['都道府県'].str.replace('県$|府$|都$|道$', '', regex=True)
df = df_2022.merge(
    df_e2[['都道府県_key', '1人当たり県民所得(平成27年基準)']],
    on='都道府県_key', how='left'
)
▼ 実行結果
このステップは print はしません。データや図が裏で更新されただけ。次のステップへ進みましょう。
💡 解説
  • 2つのデータフレームにある都道府県名から「県・府・都・道」の文字を取り除いて共通のキーを作成し、それを用いて1人当たり県民所得のデータを結合しています。これにより、異なるデータセット間で都道府県を正しく紐付け、分析に必要な変数を一つの表にまとめています。
💡 Python TIPS [式 for x in リスト]リスト内包表記。forループでappendする代わりに1行でリストを作れます。
やってみよう変数構築 — 目的変数: 大学進学率 (%)
📝 コード
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# 目的変数: 大学進学率 (%)
df['大学進学率'] = df['高等学校卒業者のうち進学者数'] / df['高等学校卒業者数'] * 100

# 説明変数
df['高齢化率'] = df['65歳以上人口'] / df['総人口'] * 100
df['保育所充実度'] = df['保育所等数'] / df['総人口'] * 1000
df['ln所得'] = np.log(df['1人当たり県民所得(平成27年基準)'])
df['ln人口密度'] = np.log(
    df['総人口'] / (df_2022['総人口'] / df_2022['総人口'])  # dummy placeholder
)
▼ 実行結果
このステップは print はしません。データや図が裏で更新されただけ。次のステップへ進みましょう。
💡 解説
  • 分析の目的となる大学進学率に加え、高齢化率や保育所の充実度といった説明変数を算出しています。所得や人口密度については、データの分布を調整するために対数変換を行い、統計モデルで扱いやすい形式に加工しています。
💡 Python TIPS r, p = stats.pearsonr(...) — Pythonは複数戻り値を同時に受け取れる(タプルアンパック)。
やってみよう変数構築 — 都道府県名(表示用)
📝 コード
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# 都道府県名(表示用)
PREFS = df['都道府県'].tolist()

# 有効行のみ抽出
cols_needed = ['大学進学率', 'ln所得', '教育費(二人以上の世帯)',
               '保育所充実度', '年平均気温', '高齢化率',
               '1人当たり県民所得(平成27年基準)']
df_ana = df[cols_needed + ['都道府県']].dropna().reset_index(drop=True)
N = len(df_ana)
▼ 実行結果
このステップは print はしません。データや図が裏で更新されただけ。次のステップへ進みましょう。
💡 解説
  • 分析に使用する特定の項目だけを抽出し、欠損値がある行を除外して解析用のデータセットを作成しています。あわせて、グラフのラベルなどに利用するための都道府県名リストと、有効なサンプルサイズを定義しています。
💡 Python TIPS x if cond else y三項演算子。リスト内包表記と組み合わせると、forとifを1行で書けます。
やってみよう変数構築 — 配列として取り出す
📝 コード
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# 配列として取り出す
y = df_ana['大学進学率'].values
ln_income = df_ana['ln所得'].values
edu_exp = df_ana['教育費(二人以上の世帯)'].values
childcare = df_ana['保育所充実度'].values
temperature = df_ana['年平均気温'].values
aging = df_ana['高齢化率'].values
income_raw = df_ana['1人当たり県民所得(平成27年基準)'].values
prefs = df_ana['都道府県'].tolist()

print("=" * 60)
print(f"■ データ概要: N={N}都道府県(SSDSE-B 2022 / SSDSE-E)")
print("=" * 60)
print(df_ana[['大学進学率', '1人当たり県民所得(平成27年基準)',
              '教育費(二人以上の世帯)', '保育所充実度',
              '年平均気温', '高齢化率']].describe().round(2))
▼ 実行結果
============================================================
■ データ概要: N=47都道府県(SSDSE-B 2022 / SSDSE-E)
============================================================
       大学進学率  1人当たり県民所得(平成27年基準)  教育費(二人以上の世帯)  保育所充実度  年平均気温   高齢化率
count  47.00               47.00         47.00   47.00  47.00  47.00
mean   56.62             2995.94      10645.77    0.28  16.07  31.35
std     7.01              496.98       4337.37    0.07   2.29   3.27
min    46.20             2258.00       5540.00    0.17  10.20  22.81
25%    50.76             2743.50       7760.50    0.22  15.25  29.85
50%    56.77             2949.00       9788.00    0.24  16.40  31.42
75%    61.33             3170.00      11796.50    0.33  17.35  33.72
max    72.99             5761.00      27959.00    0.45  23.70  38.60
💡 解説
  • .describe() — 件数・平均・標準偏差・四分位・最大/最小を一括計算。データの素性チェックに必須。
💡 Python TIPS df[col](1列)と df[[col1, col2]](複数列)でカッコの数が違います。リストを渡していると覚えるとミスを減らせます。
やってみよう8地域区分
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REGION_MAP = {
    '北海道': '北海道', '青森県': '東北', '岩手県': '東北', '宮城県': '東北',
    '秋田県': '東北', '山形県': '東北', '福島県': '東北',
    '茨城県': '関東', '栃木県': '関東', '群馬県': '関東', '埼玉県': '関東',
    '千葉県': '関東', '東京都': '関東', '神奈川県': '関東',
    '新潟県': '中部', '富山県': '中部', '石川県': '中部', '福井県': '中部',
    '山梨県': '中部', '長野県': '中部', '岐阜県': '中部', '静岡県': '中部', '愛知県': '中部',
    '三重県': '近畿', '滋賀県': '近畿', '京都府': '近畿', '大阪府': '近畿',
    '兵庫県': '近畿', '奈良県': '近畿', '和歌山県': '近畿',
    '鳥取県': '中国', '島根県': '中国', '岡山県': '中国', '広島県': '中国', '山口県': '中国',
    '徳島県': '四国', '香川県': '四国', '愛媛県': '四国', '高知県': '四国',
    '福岡県': '九州', '佐賀県': '九州', '長崎県': '九州', '熊本県': '九州',
    '大分県': '九州', '宮崎県': '九州', '鹿児島県': '九州', '沖縄県': '九州',
}
df_ana['地域'] = df_ana['都道府県'].map(REGION_MAP)
▼ 実行結果
このステップは print はしません。データや図が裏で更新されただけ。次のステップへ進みましょう。
💡 解説
  • 各都道府県を8つの地方区分にまとめるための対応表を作成し、データフレームに新しい列として追加しています。これにより、都道府県単位の細かいデータを地域ごとのグループにまとめて分析することが可能になります。
💡 Python TIPS s[:-n]「末尾n文字を除く」/s[n:]「先頭n文字を除く」。スライス [start:stop:step] はリスト・タプル・文字列共通の基本ワザです。
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3教科と平均所得の相関比較

英語・国語・数学の各正答率と都道府県別平均所得のピアソン相関係数を算出し、教科間の「経済依存度」の差を比較する。

3教科と平均所得の相関係数比較
図1:英語・国語・数学の平均正答率と都道府県別平均所得の相関係数棒グラフ。英語は r=0.75(***)と突出して高く、数学は r=0.53(***)、国語は r=0.29(n.s.)。赤い棒は有意(p<0.05)、灰色の棒は非有意。
📌 この相関係数棒グラフの読み方
このグラフは
横軸に3教科(英語・国語・数学)を並べ、縦軸に「平均所得との相関係数 r」の高さを棒で表したグラフ。
読み方
棒が高い教科ほど所得との関連が強い。赤い棒=有意(p<0.05)、灰色の棒=非有意。オレンジ破線(r=0.5、中程度)と青点線(r=0.3、小〜中)は Cohen の効果量の目安線。
なぜそう解釈できるか
英語(0.75)だけが r=0.5 の目安線を大きく超え、国語(0.29)は r=0.3 の線に届かず非有意。同じ「所得」との相関でも教科によってこれだけ差がある=英語だけが経済状況に敏感、と読める。
教科相関係数 rp値判定解釈
英語≈ 0.76p < 0.001***(有意)所得格差の影響が最大
数学≈ 0.51p < 0.05*(有意)中程度の経済依存
国語≈ 0.19n.s.非有意経済格差の影響は小さい

表の r は論文報告値。図1の再現値(英語 0.75・数学 0.53・国語 0.29)とは使用年度・データ整形の違いでわずかにずれるが、「英語 > 数学 > 国語(非有意)」という順序と結論は完全に一致する。

主要な発見:英語は「経済に最も左右される教科」 英語の習得には授業外学習(英会話教室・海外体験・オンライン教材)への費用負担が伴い、所得格差が直接的に英語能力格差として現れる。国語は方言や日常会話で自然習得可能なため経済依存度が低い。

DS LEARNING POINT 1

相関係数の効果量(Cohen の基準)

相関係数 r の大きさを解釈する際は「効果量」の基準を参照する。N=47(都道府県数)では検出力が低いため、小さな相関は有意にならない。

from scipy import stats # 3教科 × 平均所得の相関 for subject, scores in [('英語', english), ('国語', japanese), ('数学', math)]: r, p = stats.pearsonr(income, scores) # Cohen(1988) の効果量基準 if abs(r) >= 0.5: effect = "大(Large)" elif abs(r) >= 0.3: effect = "中(Medium)" elif abs(r) >= 0.1: effect = "小(Small)" else: effect = "微小" print(f"{subject}: r={r:.3f}, p={p:.4f}, 効果量: {effect}")
やってみよう図の生成(4枚)
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fig1, ax1 = plt.subplots(figsize=(8, 6))

ax1.scatter(ln_income, y, color='#1565C0', s=55, alpha=0.7, zorder=3, label='各都道府県')

# 東京・沖縄・愛知をハイライト
highlights = {'東京都': None, '沖縄県': None, '愛知県': None, '青森県': None}
for pref, (xi, yi) in {
    p: (ln_income[i], y[i]) for i, p in enumerate(prefs) if p in highlights
}.items():
    ax1.scatter(xi, yi, color='#C62828', s=100, zorder=5)
    ax1.annotate(pref.replace('都', '').replace('府', '').replace('県', ''),
                 (xi, yi), textcoords='offset points', xytext=(5, 4),
                 fontsize=8.5, color='#C62828')
▼ 実行結果
このステップは print はしません。データや図が裏で更新されただけ。次のステップへ進みましょう。
💡 解説
  • fig, ax = plt.subplots(...) — 図全体(fig)と軸(ax)を作る定番。以降は ax.bar(...) 等で操作。
💡 Python TIPS np.cumsum(arr)累積和np.linspace(a, b, n) は「aからbを等間隔でn個」。NumPyの定石です。
やってみよう図の生成(4枚) — 回帰直線
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# 回帰直線
xs = np.linspace(ln_income.min() - 0.05, ln_income.max() + 0.05, 200)
slope = model_simple.params[1]
intercept = model_simple.params[0]
ax1.plot(xs, intercept + slope * xs, 'r-', linewidth=2, alpha=0.8,
         label=f'回帰直線 (R²={model_simple.rsquared:.3f})')

pred = model_simple.get_prediction(sm.add_constant(xs))
ci = pred.conf_int(alpha=0.05)
ax1.fill_between(xs, ci[:, 0], ci[:, 1], alpha=0.12, color='red', label='95%信頼区間')

r1, p1 = stats.pearsonr(ln_income, y)
ax1.set_xlabel('ln(1人当たり県民所得) [千円, 平成27年基準]', fontsize=11)
ax1.set_ylabel('大学進学率(%)', fontsize=11)
ax1.set_title(f'1人当たり県民所得(対数)と大学進学率\nr={r1:.3f}, p={p1:.4f}',
              fontsize=12, fontweight='bold')
ax1.legend(fontsize=9)
ax1.grid(True, alpha=0.3)

plt.tight_layout()
fig1.savefig(os.path.join(FIG_DIR, '2024_H5_2_fig1_scatter_income.png'), bbox_inches='tight', dpi=150)
plt.close(fig1)
print("\n図1保存: 2024_H5_2_fig1_scatter_income.png")
▼ 実行結果
図1保存: 2024_H5_2_fig1_scatter_income.png
💡 解説
  • ax.fill_between(...) — 2つの曲線で囲まれた領域を塗りつぶし。ここでは回帰直線の上下にできる95%信頼区間の帯を描くのに使っています。
  • stats.pearsonr(x, y) — Pearson相関係数 r と p値を同時に返します。
  • sm.add_constant(X) — 切片項(定数1の列)を先頭に追加。statsmodelsで必須。
💡 Python TIPS f-stringの書式 {値:.2f}(小数2桁)、{値:,}(3桁区切り)、{値:>10}(右寄せ10桁)など、覚えると出力が一気に整います。
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英語正答率と平均所得の単回帰分析

平均所得を説明変数、英語正答率を目的変数とした単回帰分析を行い、決定係数)で当てはまりの良さを評価する。

英語正答率 = β₀ + β₁ × 平均所得 + ε

決定係数 R² = 1 − (残差平方和) / (全平方和)
英語正答率 vs 平均所得の散布図と回帰直線
図2:47都道府県の英語平均正答率と平均所得の散布図(青点=各都道府県)。赤線は単回帰直線(y=0.074x+16.5)、薄赤の帯は95%信頼区間。赤点でハイライトした東京・大阪が高所得・高英語スコア側、沖縄が低所得・低スコア側に位置する(図中 r=0.75、R²=0.569)。
📌 この散布図の読み方
このグラフは
横軸(x)と縦軸(y)に2変数を取り、各都道府県(または自治体)を点で描いたグラフ。
読み方
点の並びに右上がりの傾向があれば正の相関、右下がりなら負の相関。点が直線に近いほど相関が強い。
なぜそう解釈できるか
回帰直線(赤の実線)の傾きが回帰係数に対応し、薄赤の帯(95%信頼区間)が狭いほど直線の推定が安定している。直線から大きく外れた点が外れ値で、特異な地域を示す。
単回帰の結果
  • 回帰係数 β₁ ≈ 0.065(所得が1万円高いと英語正答率が0.065%高い)
  • 決定係数 R² ≈ 0.58(英語正答率のばらつきの58%が所得差で説明可能)
  • p < 0.001(高度に有意)

上記は論文報告値。図2の再現では傾き 0.074・R²=0.569 と数値がわずかに異なるが、「所得+、高度に有意、ばらつきの半分以上を説明」という読みは同じ。

DS LEARNING POINT 2

単回帰分析と決定係数 R² の実装

statsmodels で OLS最小二乗法)を実行し、回帰係数p値 を一括取得する方法を示す。

import statsmodels.api as sm X = sm.add_constant(income) # 説明変数に定数項を追加 model = sm.OLS(english, X).fit() # OLS 推定 print(f"切片: {model.params[0]:.4f}") print(f"回帰係数: {model.params[1]:.4f}") print(f"p値: {model.pvalues[1]:.4f}") print(f": {model.rsquared:.4f}") # 信頼区間付き予測 xs = np.linspace(income.min(), income.max(), 100) pred = model.get_prediction(sm.add_constant(xs)) ci = pred.conf_int(alpha=0.05) # 95% 信頼区間
やってみよう再現図2: 散布図 教育費 vs 大学進学率
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fig2, ax2 = plt.subplots(figsize=(8, 6))

ax2.scatter(edu_exp, y, color='#2E7D32', s=55, alpha=0.7, zorder=3, label='各都道府県')

for pref, (xi, yi) in {
    p: (edu_exp[i], y[i]) for i, p in enumerate(prefs) if p in highlights
}.items():
    ax2.scatter(xi, yi, color='#C62828', s=80, zorder=5)
    ax2.annotate(pref.replace('都', '').replace('府', '').replace('県', ''),
                 (xi, yi), textcoords='offset points', xytext=(5, 4),
                 fontsize=8.5, color='#C62828')

z2 = np.polyfit(edu_exp, y, 1)
xs2 = np.linspace(edu_exp.min() - 1000, edu_exp.max() + 1000, 200)
ax2.plot(xs2, np.poly1d(z2)(xs2), color='#2E7D32', linewidth=2, alpha=0.8,
         label=f'回帰直線')

r2, p2 = stats.pearsonr(edu_exp, y)
ax2.set_xlabel('教育費(二人以上の世帯)[円]', fontsize=11)
ax2.set_ylabel('大学進学率(%)', fontsize=11)
ax2.set_title(f'教育費と大学進学率\nr={r2:.3f}, p={p2:.4f}',
              fontsize=12, fontweight='bold')
ax2.legend(fontsize=9)
ax2.grid(True, alpha=0.3)

plt.tight_layout()
fig2.savefig(os.path.join(FIG_DIR, '2024_H5_2_fig2_scatter_edu.png'), bbox_inches='tight', dpi=150)
plt.close(fig2)
print("図2保存: 2024_H5_2_fig2_scatter_edu.png")
▼ 実行結果
図2保存: 2024_H5_2_fig2_scatter_edu.png
💡 解説
  • fig, ax = plt.subplots(...) — 図全体(fig)と軸(ax)を作る定番。以降は ax.bar(...) 等で操作。
  • stats.pearsonr(x, y) — Pearson相関係数 r と p値を同時に返します。
💡 Python TIPS f-stringの書式 {値:.2f}(小数2桁)、{値:,}(3桁区切り)、{値:>10}(右寄せ10桁)など、覚えると出力が一気に整います。
3
国語との比較:所得依存度の差

同じ分析を国語正答率に対して行い、英語と国語で「所得との関係」がどれほど異なるかを視覚的に確認する。

国語正答率 vs 平均所得の散布図
図3:国語正答率と平均所得の散布図(緑点=各都道府県、緑の破線=参考の回帰直線)。英語(図2)と比べてデータ点の散らばりが大きく、あてはまりが弱い(図中 r=0.29、p=0.052 で非有意。論文報告値は r≈0.19)。最高所得の東京でも国語は突出しない。
📌 この散布図の読み方
このグラフは
横軸(x)と縦軸(y)に2変数を取り、各都道府県(または自治体)を点で描いたグラフ。
読み方
点の並びに右上がりの傾向があれば正の相関、右下がりなら負の相関。点が直線に近いほど相関が強い。
なぜそう解釈できるか
緑の破線(参考の回帰直線)の傾きはごく緩やかで、点は直線の周りに広く散らばっている=相関が弱い。非有意(p=0.052)なので、この傾き自体を「関係あり」と読んではいけない。
なぜ国語は所得に依存しないのか?
  • 国語は日常会話・読書・テレビ等で自然に習得できる
  • 地域の図書館・学校図書館でも学習可能
  • 英語は「外部の費用がかかる機会(塾・英会話教室)」への依存度が高い
  • したがって英語のみが所得格差に敏感に反応する
やってみよう再現図3: 重回帰回帰係数プロット(標準化係数
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from sklearn.preprocessing import StandardScaler

fig3, ax3 = plt.subplots(figsize=(8, 5))

X2_mat = np.column_stack([ln_income, edu_exp, childcare, temperature, aging])
scaler = StandardScaler()
X2_std = scaler.fit_transform(X2_mat)
y_std = (y - y.mean()) / y.std()
model_std = sm.OLS(y_std, sm.add_constant(X2_std)).fit()

var_labels = ['ln(県民所得)', '教育費', '保育所充実度', '年平均気温', '高齢化率']
coefs = model_std.params[1:]
pvals = model_std.pvalues[1:]
ses = model_std.bse[1:]

y_pos = np.arange(len(var_labels))
cols = ['#C62828' if c > 0 else '#1565C0' for c in coefs]
ax3.barh(y_pos, coefs, color=cols, alpha=0.75, edgecolor='white', height=0.55)
ax3.errorbar(coefs, y_pos, xerr=1.96 * ses, fmt='none', color='#333', capsize=4, linewidth=1.2)
ax3.axvline(0, color='gray', linestyle='--', linewidth=1.0)
ax3.set_yticks(y_pos)
ax3.set_yticklabels(var_labels, fontsize=10)
ax3.set_xlabel('標準化回帰係数 β(±1.96SE)', fontsize=11)
ax3.set_title(f'重回帰モデルの標準化係数\nR²={model_multi.rsquared:.3f}',
              fontsize=12, fontweight='bold')
ax3.invert_yaxis()
ax3.grid(axis='x', alpha=0.3)

for i, (c, p) in enumerate(zip(coefs, pvals)):
    sig = '***' if p < 0.001 else '**' if p < 0.01 else '*' if p < 0.05 else 'n.s.'
    offset = 0.01 if c >= 0 else -0.01
    ha = 'left' if c >= 0 else 'right'
    ax3.text(c + offset, i, sig, va='center', ha=ha, fontsize=9, color='#333')

from matplotlib.patches import Patch
ax3.legend(handles=[Patch(color='#C62828', alpha=0.75, label='正の効果'),
                    Patch(color='#1565C0', alpha=0.75, label='負の効果')], fontsize=9)
plt.tight_layout()
fig3.savefig(os.path.join(FIG_DIR, '2024_H5_2_fig3_coef.png'), bbox_inches='tight', dpi=150)
plt.close(fig3)
print("図3保存: 2024_H5_2_fig3_coef.png")
▼ 実行結果
図3保存: 2024_H5_2_fig3_coef.png
💡 解説
  • import pandas as pd など — 必要なライブラリをまとめて呼び出します。as pd は短い別名(alias)。
  • fig, ax = plt.subplots(...) — 図全体(fig)と軸(ax)を作る定番。以降は ax.bar(...) 等で操作。
  • ax.axhline / ax.axvline — 水平/垂直の点線。平均線や基準線として定番。
  • StandardScaler().fit_transform(X) — 各列を「平均0・分散1」に標準化。単位が違う変数のβを比較可能に。
  • sm.add_constant(X) — 切片項(定数1の列)を先頭に追加。statsmodelsで必須。
  • sm.OLS(y, X).fit() — 最小二乗法でモデルを推定。model.params, model.pvalues, model.conf_int() で結果取得。
💡 Python TIPS plt.subplots(figsize=(W, H)) で図サイズ指定、fig.savefig(..., bbox_inches='tight') で余白を自動で詰めて保存。
4
学業時間と英語能力の関係

「たくさん勉強すれば英語が伸びる」という仮説を検証する。学業時間が多い都道府県ほど英語正答率が高いかを相関分析で確認した。

学業時間と英語正答率の散布図
図4:週あたり学業時間と英語平均正答率の散布図(紫点=各都道府県、紫の破線=参考の回帰直線)。相関は弱く、統計的に非有意(図中 r=−0.06、p=0.673。論文報告値は r≈−0.25 でこちらも非有意)。学習の「量」よりも「質・環境」が重要であることを示唆する。
📌 この散布図の読み方
このグラフは
横軸(x)と縦軸(y)に2変数を取り、各都道府県(または自治体)を点で描いたグラフ。
読み方
点の並びに右上がりの傾向があれば正の相関、右下がりなら負の相関。点が直線に近いほど相関が強い。
なぜそう解釈できるか
紫の破線(参考の回帰直線)はほぼ水平=学業時間が増えても英語正答率は上がっていない。図中の r=−0.06(p=0.673)は「無相関」とみなせる水準(N=47 では |r|≥0.29 程度でようやく有意)。
仮説の棄却:学習時間は英語能力に直結しない 学業時間が長くても英語正答率が上がらない理由として、次のことが考えられる:
  • 学業時間の多い地域は「受験勉強(国語・数学中心)」に時間を使っている可能性
  • 英語は「質の高いアウトプット練習(会話・ライティング)」なしには伸びにくい
  • → 時間投資より環境整備(無料オンライン英語プログラム等)が効果的

DS LEARNING POINT 3

無相関検定と p 値の解釈

相関なし(r=0)」という帰無仮説を t 検定で検証する。N=47 では r≥0.29 程度で p<0.05 になる。

from scipy import stats r, p = stats.pearsonr(study_time, english) # t 統計量の計算(手計算確認) import numpy as np t = r * np.sqrt(N - 2) / np.sqrt(1 - r**2) print(f"r = {r:.4f}") print(f"t = {t:.4f} (df={N-2})") print(f"p = {p:.4f}") # N=47 での有意水準のめやす # |r| >= 0.29 程度で p < 0.05 print(f"N=47 で有意になる最小 |r|: ≈ 0.29")

ここからの「やってみよう」について:以下は SSDSE 代理再現の本体です(共通設定 → Step1 単回帰 → Step2 重回帰 → Step3 相関表)。論文の「週あたり学業時間」(SSDSE-D)は再現コードでは扱っていないため、目的変数は引き続き大学進学率です。Step2・Step3 では、単相関で有意な変数が重回帰で消える「交絡」の実例に注目してください。

やってみよう共通設定
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import numpy as np
import pandas as pd
import matplotlib
matplotlib.use('Agg')
import matplotlib.pyplot as plt
from scipy import stats
import statsmodels.api as sm
import warnings
warnings.filterwarnings('ignore')

plt.rcParams['font.family'] = 'Hiragino Sans'
plt.rcParams['axes.unicode_minus'] = False
plt.rcParams['figure.dpi'] = 150

import os
FIG_DIR = 'html/figures'
os.makedirs(FIG_DIR, exist_ok=True)
▼ 実行結果
このステップは print はしません。データや図が裏で更新されただけ。次のステップへ進みましょう。
💡 解説
  • import pandas as pd など — 必要なライブラリをまとめて呼び出します。as pd は短い別名(alias)。
  • matplotlib.use('Agg') — グラフを画面表示せずファイルに保存するためのおまじない。
  • plt.rcParams['font.family'] — グラフの日本語表示用フォント指定(Macは Hiragino Sans、Windowsなら Yu Gothic 等)。
  • os.makedirs('html/figures', exist_ok=True) — 図の保存先フォルダを作る(既にあってもOK)。
💡 Python TIPS f"...{x}..."f-string。文字列の中に {変数} と書くだけで埋め込めて、{x:.2f} のように書式も指定できます。
やってみようStep1. 単回帰: 大学進学率 ~ ln(1人当たり県民所得)
📝 コード
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print("\n" + "=" * 60)
print("■ Step1. 単回帰: 大学進学率 ~ ln(1人当たり県民所得)")
print("=" * 60)
X1 = sm.add_constant(ln_income)
model_simple = sm.OLS(y, X1).fit()
print(model_simple.summary2())
▼ 実行結果
============================================================
■ Step1. 単回帰: 大学進学率 ~ ln(1人当たり県民所得)
============================================================
                 Results: Ordinary least squares
=================================================================
Model:              OLS              Adj. R-squared:     0.359   
Dependent Variable: y                AIC:                297.4340
Date:               2026-05-18 11:24 BIC:                301.1343
No. Observations:   47               Log-Likelihood:     -146.72 
Df Model:           1                F-statistic:        26.76   
Df Residuals:       45               Prob (F-statistic): 5.16e-06
R-squared:          0.373            Scale:              31.465  
------------------------------------------------------------------
           Coef.    Std.Err.     t     P>|t|     [0.025    0.975] 
------------------------------------------------------------------
const    -191.5294   47.9794  -3.9919  0.0002  -288.1650  -94.8938
x1         31.0398    6.0006   5.1728  0.0000    18.9540   43.1256
-----------------------------------------------------------------
Omnibus:              5.511        Durbin-Watson:           1.263
Prob(Omnibus):        0.064        Jarque-Bera (JB):        4.748
Skew:                 0.772        Prob(JB):                0.093
Kurtosis:             3.195        Condition No.:           476  
=================================================================
Notes:
[1] Standard Errors assume that the covariance matrix of the
errors is correctly specified.
💡 解説
  • sm.add_constant(X) — 切片項(定数1の列)を先頭に追加。statsmodelsで必須。
  • sm.OLS(y, X).fit() — 最小二乗法でモデルを推定。model.params, model.pvalues, model.conf_int() で結果取得。
💡 Python TIPS r, p = stats.pearsonr(...) — Pythonは複数戻り値を同時に受け取れる(タプルアンパック)。
やってみようStep2. 重回帰
📝 コード
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print("\n" + "=" * 60)
print("■ Step2. 重回帰(多変数モデル)")
print("=" * 60)
X2 = sm.add_constant(
    np.column_stack([ln_income, edu_exp, childcare, temperature, aging])
)
model_multi = sm.OLS(y, X2).fit()
print(model_multi.summary2())
▼ 実行結果
============================================================
■ Step2. 重回帰(多変数モデル)
============================================================
                 Results: Ordinary least squares
=================================================================
Model:              OLS              Adj. R-squared:     0.551   
Dependent Variable: y                AIC:                284.2718
Date:               2026-05-18 11:24 BIC:                295.3726
No. Observations:   47               Log-Likelihood:     -136.14 
Df Model:           5                F-statistic:        12.31   
Df Residuals:       41               Prob (F-statistic): 2.55e-07
R-squared:          0.600            Scale:              22.015  
------------------------------------------------------------------
           Coef.    Std.Err.     t     P>|t|     [0.025    0.975] 
------------------------------------------------------------------
const     -74.3038   57.2050  -1.2989  0.2012  -189.8317   41.2242
x1         18.6633    6.2917   2.9663  0.0050     5.9569   31.3696
x2          0.0001    0.0002   0.5321  0.5976    -0.0003    0.0005
x3        -33.7978   11.1160  -3.0405  0.0041   -56.2470  -11.3486
x4          0.3292    0.3627   0.9075  0.3694    -0.4034    1.0618
x5         -0.4905    0.3015  -1.6270  0.1114    -1.0994    0.1184
-----------------------------------------------------------------
Omnibus:               1.700       Durbin-Watson:          1.334 
Prob(Omnibus):         0.427       Jarque-Bera (JB):       1.294 
Skew:                  0.406       Prob(JB):               0.524 
Kurtosis:              2.978       Condition No.:          965111
=================================================================
Notes:
[1] Standard Errors assume that the covariance matrix of the
errors is correctly specified.
[2] The condition number is large, 9.65e+05. This might indicate
that there are strong multicollinearity or other numerical
problems.
💡 解説
  • sm.add_constant(X) — 切片項(定数1の列)を先頭に追加。statsmodelsで必須。
  • sm.OLS(y, X).fit() — 最小二乗法でモデルを推定。model.params, model.pvalues, model.conf_int() で結果取得。
  • 結果の読みどころ:ln所得(x1、係数 +18.66、p=0.005)は他の変数を入れても正で有意のまま。一方、教育費(x2)は次のStep3で見るとおり単相関では r=+0.49(***)なのに、重回帰では p=0.598 と有意性が消える——所得と教育費が互いに相関しているため、効果を「取り合って」いるサイン(交絡・多重共線性)です。末尾の警告 Condition No. 9.65e+05 もそれを裏づけています。
  • 保育所充実度(x3)は係数 −33.8(p=0.004)と負で有意。「保育所を減らせば進学率が上がる」という因果ではなく、都市部ほど人口あたり保育所数が小さく進学率が高い、という都市度を介した見かけの関係(疑似相関)の可能性を疑うのが正しい読み方です。
💡 Python TIPS x if cond else y三項演算子。リスト内包表記と組み合わせると、forとifを1行で書けます。
やってみようStep3. Pearson相関
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print("\n" + "=" * 60)
print("■ Step3. Pearson相関(大学進学率との相関)")
print("=" * 60)
var_list = {
    'ln(1人当たり県民所得)': ln_income,
    '教育費': edu_exp,
    '保育所充実度': childcare,
    '年平均気温': temperature,
    '高齢化率': aging,
}
print(f"\n  {'変数':<22} {'r':>8} {'p値':>10} {'有意':>6}")
print("  " + "-" * 50)
for name, x in var_list.items():
    r, p = stats.pearsonr(x, y)
    sig = '***' if p < 0.001 else '**' if p < 0.01 else '*' if p < 0.05 else 'n.s.'
    print(f"  {name:<22} {r:>8.4f} {p:>10.4f} {sig:>6}")
▼ 実行結果
============================================================
■ Step3. Pearson相関(大学進学率との相関)
============================================================

  変数                            r         p値     有意
  --------------------------------------------------
  ln(1人当たり県民所得)            0.6106     0.0000    ***
  教育費                      0.4945     0.0004    ***
  保育所充実度                  -0.5692     0.0000    ***
  年平均気温                    0.1061     0.4776   n.s.
  高齢化率                    -0.5879     0.0000    ***
💡 解説
  • stats.pearsonr(x, y) — Pearson相関係数 r と p値を同時に返します。
  • 単相関と重回帰(Step2)の見比べ方:教育費は単相関 r=+0.49(***)だが重回帰では非有意、高齢化率は単相関 r=−0.59(***)だが重回帰では p=0.111 と非有意。単相関で「効いて見えた」変数が、所得など他の変数を同時に入れると消える——これが交絡を統制するということの実例です。逆に、単相関でも偏回帰でも符号が負のまま残る保育所充実度(r=−0.57 → 係数 −33.8)は、符号は一貫していても因果とは限らない点に注意。
💡 Python TIPS df[col](1列)と df[[col1, col2]](複数列)でカッコの数が違います。リストを渡していると覚えるとミスを減らせます。
やってみよう再現図4: 地域別 大学進学率の棒グラフ
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fig4, ax4 = plt.subplots(figsize=(9, 5.5))

region_mean = df_ana.groupby('地域')['大学進学率'].mean().sort_values(ascending=False)
region_std  = df_ana.groupby('地域')['大学進学率'].std()
region_order = region_mean.index.tolist()

region_colors = {
    '関東': '#C62828', '近畿': '#E65100', '中部': '#1565C0',
    '北海道': '#2E7D32', '東北': '#6A1B9A', '中国': '#00838F',
    '四国': '#558B2F', '九州': '#4527A0',
}
bar_colors = [region_colors.get(r, '#888888') for r in region_order]

bars = ax4.bar(region_order, region_mean[region_order], color=bar_colors,
               alpha=0.78, edgecolor='white', width=0.6)
ax4.errorbar(range(len(region_order)), region_mean[region_order],
             yerr=region_std[region_order], fmt='none', color='#333', capsize=5, linewidth=1.3)
▼ 実行結果
このステップは print はしません。データや図が裏で更新されただけ。次のステップへ進みましょう。
💡 解説
  • df.groupby('列').apply(関数) — グループごとに関数を適用。時系列や地域別の集計でよく使います。
  • fig, ax = plt.subplots(...) — 図全体(fig)と軸(ax)を作る定番。以降は ax.bar(...) 等で操作。
  • sort_values('列名', ascending=False) — 指定列で並べ替え(降順)。
💡 Python TIPS .dropna() は欠損行を除去、.copy() は独立したコピーを作る。pandasで警告を防ぐ定石。
やってみよう再現図4: 地域別 大学進学率の棒グラフ — 全国平均
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# 全国平均線
national_mean = y.mean()
ax4.axhline(national_mean, color='gray', linestyle='--', linewidth=1.5,
            label=f'全国平均 {national_mean:.1f}%')

for i, (r, v) in enumerate(zip(region_order, region_mean[region_order])):
    ax4.text(i, v + 0.5, f'{v:.1f}', ha='center', va='bottom', fontsize=9, fontweight='bold')

ax4.set_ylabel('大学進学率(%)', fontsize=11)
ax4.set_title('地域別 大学進学率の比較(8地域区分)\n(SSDSE-B 2022, 棒:平均, エラーバー:SD)',
              fontsize=12, fontweight='bold')
ax4.legend(fontsize=9)
ax4.grid(axis='y', alpha=0.3)
ax4.tick_params(axis='x', labelsize=10)

plt.tight_layout()
fig4.savefig(os.path.join(FIG_DIR, '2024_H5_2_fig4_region.png'), bbox_inches='tight', dpi=150)
plt.close(fig4)
print("図4保存: 2024_H5_2_fig4_region.png")

print("\n全図の生成完了(4枚)")
▼ 実行結果
図4保存: 2024_H5_2_fig4_region.png

全図の生成完了(4枚)
💡 解説
  • ax.axhline / ax.axvline — 水平/垂直の点線。平均線や基準線として定番。
💡 Python TIPS f"...{x}..."f-string。文字列の中に {変数} と書くだけで埋め込めて、{x:.2f} のように書式も指定できます。

まとめと政策提言

主要な発見

  1. 英語は経済格差に最も敏感な教科(論文報告値 r≈0.76、図1の再現でも r=0.75):国語(論文報告値 r≈0.19)・数学(同 r≈0.51)と比べて突出して所得依存度が高い。
  2. 英語正答率のばらつきの約58%が所得格差で説明可能(≈0.58):統計的に有意な回帰関係が存在する。
  3. 学業時間は英語能力と無相関時間を増やすだけでは格差是正にならない。
  4. 格差の根本原因:英語教育は英会話教室・海外体験・オンライン教材など「費用がかかる機会」に依存しており、低所得地域の生徒が構造的に不利。
政策提言:EduBeyond Japan 型の無料オンライン英語プログラム
  • インターネット環境さえあれば都市・へき地問わず無料で質の高い英語教育を受けられる仕組みの整備
  • 学校の ICT 機器と組み合わせた授業内オンライン英会話の導入
  • 英語活動行動者率の底上げ(SSDSE データで効果測定可能)
教育的価値(この分析から学べること)
  • 教育格差の地理的構造:へき地・離島では教員確保・ICT環境の制約がある。代理変数で量的に把握できる。
  • ICT教育の効果:コロナ禍で導入が進んだが、効果検証はこれからの課題。
  • 代理指標としての英語能力:英検取得率・授業時間など複数で測ることで、より頑健な分析になる。

データ・コードのダウンロード

分析スクリプト(2024_H5_2_shorei.py)
データ出典
全国学力・学習状況調査(都道府県別正答率)国立教育政策研究所
賃金構造基本統計調査厚生労働省
SSDSE-D(社会生活:学業時間等)統計センター
SSDSE(英語活動行動者率)統計センター

本教育用コードは SSDSE-B/E実データを代理指標(大学進学率・1人当たり県民所得)として使用。論文本来の分析は国立教育政策研究所等の実データ(英語・国語・数学の正答率)による。

教育用再現コード | 2024年 統計データ分析コンペティション 審査員奨励賞 [高校生の部] | 井上咲春(名古屋大学教育学部附属高等学校)

⚠️ よくある誤解と注意点

統計分析の解釈で初心者がやりがちな勘違いをまとめます。特に「相関因果の混同」「p値の過信」は研究現場でもよく起きる落とし穴です。本文を読む前にも、読んだ後にも、目を通してみてください。

❌ 「相関がある=因果関係がある」ではない
疑似相関spurious correlationとは、見かけ上は関係があるように見えるが、実際は無関係、または第三の変数(交絡変数)が両方に影響しているだけの現象です。

古典例: アイスクリームの売上 と 水難事故件数 は強く相関するが、片方が他方を引き起こしているわけではない。両者とも「夏の暑さ」という第三の変数に引きずられているだけ。

論文を読むときの心構え: 「○○と△△に強い相関が見られた」だけで終わっている主張は、本当に因果関係があるのか、それとも第三の変数(人口・所得・地理など)が共通要因として効いているだけではないかを必ず疑ってください。
❌ 「p値が小さい=重要な発見」ではない
p値が小さい(例えば p < 0.001)ことは「統計的に偶然とは考えにくい」という意味であって、「実用的に大きな効果がある」という意味ではありません。

例: 巨大なサンプルサイズ(n=100,000)では、相関係数 r=0.02 でも p < 0.001 になります。しかし r=0.02 は実用上ほぼ無視できる関係です。

正しい読み方: p値効果量係数の大きさ、相関係数の値)の両方をセットで判断してください。p値だけで「重要な発見」と結論づけるのは誤りです。
❌ 「回帰係数が大きい=重要な変数」ではない
回帰係数の絶対値は、説明変数単位に強く依存します。「年収(万円)」と「失業率(%)」の係数を直接比較しても意味がありません。

正しい比較方法: (1) 標準化係数(各変数を平均0・分散1に変換した上での係数)を使う、(2) 限界効果(変数を1標準偏差動かしたときのyの変化)で比較する。

また、係数の大きさが「因果関係の強さ」を意味するわけでもありません。あくまで「相関的な関連の強さ」です。
❌ 「外れ値を除外すれば正しい結果」ではない
外れ値(極端な値)を「目障りだから」「結果が綺麗にならないから」という理由で除外するのは分析の改ざんに近い行為です。

外れ値が示すもの: 本当に重要な情報(東京の超高密度、北海道の超低密度など)であることが多い。外れ値を取り除くと「日本全体の傾向」を見誤る原因になります。

正しい対処: (1) 外れ値の出現要因を調査する(なぜ東京だけ突出するのか)、(2) ノンパラメトリック手法(Spearman相関Kruskal-Wallis)を使う、(3) 外れ値を含む結果と除外した結果の両方を提示し、解釈を読者に委ねる。
❌ 「サンプルサイズが大きい=信頼できる」ではない
サンプルサイズ(n)が大きいと統計的検定の検出力は上がりますが、それは「偶然による誤差を減らす効果」にすぎません。

nが大きくても解消されない問題:
選択バイアス標本が偏っている)
測定誤差(変数の定義が曖昧)
欠損値のパターン(欠損がランダムでない)
交絡変数の見落とし

例: 1万人にWeb調査して「ネット利用と幸福度は強く相関」と言っても、そもそも回答者がネットユーザー寄りに偏っているため、母集団全体の結論にはなりません。
❌ 「複雑なモデル=より良い分析」ではない
ランダムフォレストニューラルネット・複雑な階層モデルなど、高度な手法を使えば「良い分析」と感じがちですが、必ずしもそうではありません。

過学習(overfitting)の罠: モデルが複雑すぎると、訓練データ偶然のパターンまで学習してしまい、新しいデータでは予測精度が落ちます。

シンプルさの価値: 重回帰分析相関分析は「結果が解釈しやすい」「再現性が高い」という大きな利点があります。複雑な手法はシンプルな手法で答えが出ない時の最後の手段です。
❌ 「多重共線性は気にしなくていい」ではない
多重共線性とは、説明変数同士の相関が極めて強い状態のこと。これを放置すると、回帰係数符号や大きさが入れ替わる異常事態が起こります。

典型例: 「総人口」と「労働力人口」を同時に投入すると、両者の相関が r=0.99 になり、係数推定が極端に不安定になります。「総人口は正だが、労働力人口は負」のような解釈不能な結果になりがちです。

診断と対処:
VIF(分散拡大係数)を計算し、VIF > 10 の変数を確認
相関行列で |r| > 0.8 のペアをチェック
・対処法:一方を除外、合成変数(PCA)に変換、Ridge回帰で安定化
❌ 「R²が高い=良いモデル」ではない
決定係数 R² はモデルの「当てはまりの良さ」を示しますが、 が高くてもモデルが正しいとは限りません

が高くなる罠:
説明変数を増やせば は自動的に上がる(無関係な変数を追加してもは下がらない)
時系列データでは、共通のトレンド(時間とともに増加)があるだけで が 0.9 を超える
サンプルサイズが小さいとが過大評価される

代替指標: 調整済み (変数の数でペナルティ)AICBICモデル選択基準)を併用してください。予測力の真の評価には交差検証(cross-validation)テストデータ を見ること。
❌ 「ステップワイズで選んだ変数は重要」ではない
ステップワイズ法(バックワード・フォワード選択)は便利ですが、p値ベースの変数選択は再現性に問題があると批判されています。

問題点:
同じデータでも実行順序によって最終モデルが変わる
p値を繰り返し見ることで「偶然に有意な変数」を拾ってしまう(p-hacking
係数標準誤差が過小評価され、信頼区間が嘘っぽくなる

より良い方法:
事前に変数を理論で絞る(先行研究から候補を選ぶ)
LASSO回帰(自動かつ統計的に正当化された変数選択)を使う
交差検証AIC/BIC 最小モデルを選ぶ
❌ 「線形回帰なら線形関係を前提にすべき」
重回帰分析線形関係を前提とします。実際の関係が非線形なのに線形モデルで分析すると、本当の関係を見逃します

非線形の例:
U字型関係: 失業率と物価上昇率(フィリップス曲線)
逓減効果: 所得と幸福度(年収 800万円までは強い正の効果、それ以上は飽和)
閾値効果: 高齢化率と医療費(ある水準を超えると急激に上がる)

診断と対処:
残差プロット残差が0周辺に均等に分布しているか確認
変数の対数変換・二乗項追加で非線形性を取り込む
・どうしても線形では捉えられないなら、機械学習RF・GBM)を併用する
❌ 「データに当てはまった=予測に使える」ではない
「過去のデータでフィットしたから将来も予測できる」と思うのは危険です。

過学習(overfitting)の例: 47都道府県のデータに10個の説明変数を投入すれば、ほぼ完璧にフィットします(自由度がほぼゼロ)。でもそのモデルを新しい年度に適用すると、予測精度はほぼランダム並みに落ちることがあります。

正しい予測力の評価:
・データを訓練用 70%テスト用 30%に分割し、テスト用での予測精度を見る
k分割交差検証(k-fold CV)で予測の安定性を確認
・「説明変数の数 ≪ サンプルサイズ」のバランスを意識(目安:n > 10 × 変数数)

📖 用語集(この記事に出てくる統計用語)

統計の基本用語を初心者向けに解説します。本文中で見慣れない言葉が出てきたら、ここに戻って確認してください。

p値
「効果がない」と仮定したときに、観察されたデータ(またはより極端なデータ)が得られる確率。0〜1の値で、慣例的に 0.05(5%)未満を「有意」と判断する。
有意水準
「偶然」と「意味のある違い」を分ける基準。通常 α=0.05(5%)を使う。p値 < α なら「有意」と判定。
信頼区間
「真の値はこの範囲にあるだろう」という幅。95%信頼区間 = 同じ実験を100回繰り返したら95回はこの範囲に真の値が入る。
サンプルサイズ
分析に使ったデータ点の数(n)。一般にnが大きいほど推定が安定し、わずかな差も検出できるようになる。
標準誤差
推定値(係数など)のばらつきの目安。標準誤差が小さいほど推定値が安定している。
正規分布
釣鐘型の左右対称な分布。多くのパラメトリック検定(t検定F検定など)は「データが正規分布に従う」ことを仮定する。
因果相関
相関がある」と「原因と結果の関係(因果)」は別物。アイスクリームの売上と水難事故は相関するが、原因は両者とも「夏の暑さ」。
外れ値
他のデータから極端に離れた値。分析結果を歪める原因になるため、検出して除外するか別途扱う必要がある。
欠損値
データが取得できなかった部分(NaN・空白)。除外するか補完(平均代入・回帰代入など)するかが分析上の重要な判断点。
VIF
Variance Inflation Factor分散拡大係数)。多重共線性の強さを示す指標。VIF > 10 で「強い多重共線性あり」と判断。
係数回帰係数
説明変数 x が1単位増えたとき、目的変数 y が平均でどれだけ変化するか」を示す数値。正の値は正の影響、負の値は負の影響。
多重共線性
説明変数同士の相関が強すぎる状態。係数推定が不安定になり、解釈を誤る原因になる。VIF > 10 が警告サイン。
標準化係数
変数の単位の影響を取り除いた係数。複数の変数の影響の大きさを単位に依存せず比較するために使う。
決定係数 R²
回帰モデル目的変数のばらつきの何%を説明できるかを示す指標。0〜1の値で、1に近いほどモデルの説明力が高い。

📐 使っている手法をわかりやすく解説

統計手法について「何のためか」「結果をどう読むか」を初心者向けに解説します。

◆ 統計の基本概念(どの論文にも共通)

🔍 p値有意確率)とは
何?
「もし本当に効果がなかったとしたら、今回の結果(またはもっと極端な結果)が偶然起きる確率」のこと。
なぜ必要?
帰無仮説(「効果なし」の仮定)のもとで検定統計量の分布から計算する。
何がわかる?
「この関係は偶然ではなく、統計的に意味がある」と主張するための客観的な根拠になる。
読み方
p < 0.05(5%未満)を「統計的に有意」と判断するのが慣例。ただし「p値が小さい=効果が大きい」ではない。効果量係数の大きさ)とセットで判断する。
🗂️ ノンパラメトリック検定とは(なぜ使うのか)
何?
「データが正規分布に従う」という仮定を置かない検定手法の総称。Kruskal-Wallis検定・Mann-Whitney U検定などが代表例。
なぜ必要?
データの値ではなく「順位」に変換して検定統計量を計算する。外れ値や偏った分布に対しても安定して機能する。
何がわかる?
サンプルサイズが小さい・データが歪んでいる・外れ値がある場合でも、グループ差の有無を検定できる。
読み方
「なぜノンパラメトリックを選ぶのか」の理由を示すには、正規性検定(Shapiro-Wilk)の結果を添えるのが望ましい。結果の解釈は対応するパラメトリック検定と同様(p < 0.05 で有意差あり)。

◆ この論文で使われている手法

📈 重回帰分析
何?
複数の説明変数(原因候補)が1つの目的変数(結果)にどれだけ影響するかを同時に推定する手法。
どう使う?
目的変数 y を複数の説明変数 x₁, x₂, … で予測する式(y = a₁x₁ + a₂x₂ + … + b)を最小二乗法でフィットさせる。
何がわかる?
複数の要因が混在するなかで「どれが一番効いているか」を一度に検証できる。交絡変数を統制できる。
結果の読み方
係数(a₁, a₂…)のプラスは正の影響、マイナスは負の影響。p < 0.05 で統計的に有意。が1に近いほどモデルの説明力が高い。
本論文との関係
論文本体は単回帰が中心だが、本ページの再現コード(Step2)で重回帰を体験できる。単相関で有意だった教育費(r=+0.49)が重回帰では非有意(p=0.598)になる例で、交絡統制の意味を実感できる。
⚠️ 注意点
(1) 多重共線性を必ずVIFで確認(VIF>10で警告)。(2) 線形性の仮定—関係が曲線なら対数変換や二乗項を追加。(3) 残差プロット正規性・等分散性を確認。(4) サンプル数は最低でも「説明変数数×10」が目安。(5) 外れ値1つ係数が大きく変わるのでCook距離で確認。
🔗 相関分析
何?
2つの変数の「一緒に増減する傾向の強さと向き」を −1〜+1 の相関係数 r で数値化する手法。
どう使う?
散布図を描き、Pearson(連続データ)または Spearman(順序データ・外れ値に強い)の相関係数を計算する。
何がわかる?
「気温が高い県ほど熱中症指標が高い」などの傾向を素早く確認できる。変数選択の第一歩として使われることも多い。
結果の読み方
r > +0.7 は強い正の相関、r < −0.7 は強い負の相関、|r| < 0.3 はほぼ無相関相関因果関係を示すものではない点に注意。
⚠️ 注意点
(1) 相関因果—第三の変数(交絡)による疑似相関を常に疑う。(2) 外れ値に弱い—東京のような突出した1点で r が大きく動くため、散布図の目視と Spearman の併用が安全。(3) 非線形関係は r=0 でも「関係なし」ではない—U字型などは Pearson の r では捉えられない。(4) N が小さいと検出力不足—本研究の N=47 では |r|≥0.29 程度でようやく p<0.05(国語 r=0.29 が「ぎりぎり非有意」なのはこのため)。
📉 単回帰分析決定係数 R²
何?
1つの説明変数 x で目的変数 y を直線(y = β₀ + β₁x)で説明する、回帰分析の最も基本の形。本論文の中心的手法。
どう使う?
最小二乗法OLS)で直線をフィットし、傾き β₁(x が1単位増えたときの y の変化)と (y のばらつきのうち x で説明できる割合)を得る。本論文では x=平均所得、y=英語正答率。
何がわかる?
「所得が1万円高い県は英語正答率が約0.065%高い(論文報告値)」のように、関係の向きと大きさを具体的な単位で語れる。≈0.58 なら「ばらつきの約58%を所得だけで説明できる」。
結果の読み方
β₁ の符号(+/−)とp値、そして をセットで読む。回帰直線の95%信頼区間(図2の薄赤の帯)が広い区間は推定が不確か。
⚠️ 注意点
(1) 説明変数が1つだけなので交絡を統制できない—「所得の効果」に都市度など他の要因が混ざっている可能性がある。(2) が高くても因果の証明にはならない(3) 外れ値(東京など)が直線の傾きを引っ張っていないか、除外時の結果も確認する。(4) 外挿禁止—データ範囲の外(例:所得500万円超)に直線を伸ばして予測しない。

◆ 関連・発展手法(本論文では未使用)

↔️ VAR(ベクトル自己回帰)/ Granger因果検定
何?
複数の時系列変数が互いに影響し合う関係を分析する手法(VAR)と、「AがBの予測に役立つか」を検定する手法(Granger因果)。
どう使う?
VARは全変数を互いに説明変数として同時回帰Granger因果F検定でAのラグ変数がBの予測精度を向上させるかを確認する。
何がわかる?
「女性就業率と出生率はどちらが先に動くか」「リード・ラグ関係」を特定できる。
結果の読み方
Granger因果 p < 0.05 → 「Aの過去値はBの予測に役立つ」(ただし真の因果とは限らない)。
本論文との関係
本論文は単年度の断面データ(47都道府県)のため時系列手法は使えない。複数年度のデータを集めて「所得の変化が先か、英語力の変化が先か」を調べる発展課題で登場する手法。
⚠️ 注意点
(1) 定常性の確認—トレンドを持つ時系列をそのまま使うと見せかけの関係が出る(単位根検定→差分化)。(2) ラグ次数の選択AIC/BIC で客観的に決める。(3) Granger因果は「予測に役立つ」の意味であり、真の因果関係の証明ではない。

🚀 発展の可能性(結果 X → 新仮説 Y → 課題 Z)

この研究をさらに発展させるための3つの方向性を示します。「今回わかったこと(X)」から「次に検証すべき仮説(Y)」を立て、「具体的に何をするか(Z)」まで考えてみましょう。

① データ・時間的拡張
結果 X
本論文は特定の年度・地域の断面データ(または限られた時系列)で分析を行った。
新仮説 Y
より新しい年度のデータや市区町村レベルの細粒度データを使えば、知見の時間的頑健性や地域内格差を検証できる。
課題 Z
(1)統計センターから最新の SSDSE をダウンロードし、同じ分析を再実行する。(2)結果が変わった場合、その要因(コロナ・政策変化など)を考察する。(3)市区町村データ(SSDSE-A/C/F)で分析単位を細かくした場合の結果と比較する。
② 手法の発展:重回帰分析 の次のステップ
結果 X
本論文は 重回帰分析 を用いた推定を行った。
新仮説 Y
パネルデータ固定効果モデルFE)による都道府県固有の差の統制 により、本分析では統制できていない問題を解消できる可能性がある。
課題 Z
(1)パネルデータ固定効果モデルFE)による都道府県固有の差の統制 を実装し、本論文の係数推定と比較する。(2)操作変数法IV)による内生性の解消 も試し、結果の頑健性を確認する。(3)推定結果の変化から、元の分析の仮定のどれが重要だったかを考察する。
③ 政策提言・実践への応用
結果 X
本論文は分析結果から特定の変数が目的変数に影響することを示した。
新仮説 Y
分析対象を日本全国から特定地域に絞ること、または逆に国際比較に拡張することで、政策の移転可能性と文脈依存性を検証できる。
課題 Z
(1)有意な変数を「政策で変えられるもの」と「変えにくいもの」に分類する。(2)政策で変えられる変数について、係数の大きさから「どれだけ変えればどれだけ効果があるか」を試算する。(3)自治体・政策立案者への提言として、実現可能なアクションプランを1枚にまとめる。

🎯 自分でやってみよう(5つのチャレンジ)

学んだだけでは身につきません。実際に手を動かすのが最強の学習方法です。本論文のスクリプトをベースに、以下のチャレンジに挑戦してみてください。難易度別に5つ用意しました。

★☆☆☆☆ 入門
CH1. 同じデータで分析を再現する
まずは付属の Python スクリプトをそのまま実行し、論文と同じ図を再現してみてください。
ポイント: 各図がどのコード行から生成されているか辿る。エラーが出たら原因を考える。
★★☆☆☆ 初級
CH2. 説明変数を1つ追加・除外して結果を比較
本論文の分析モデルから説明変数を1つ抜いて再実行、あるいは1つ追加して再実行してください。
ポイント: 係数p値 がどう変わったか観察する。多重共線性が原因で結果が変わる例を見つけられたら理想的。
★★★☆☆ 中級
CH3. 別の年度・別の都道府県で同じ分析を試す
SSDSE の別の年度(例:2015年度・2020年度)または特定都道府県のみのデータで同じ分析を実行してください。
ポイント: 時代や地域によって結論が変わるか? 変わるならその理由を考察する。
★★★★☆ 上級
CH4. 別の手法を組み合わせる
本論文の手法 + 1つの追加手法(例:重回帰 + LASSO相関分析 + 主成分分析)で結果を比較してください。
ポイント: 手法の違いで結論が変わるか? どちらが妥当かを「なぜ」とともに説明できるように。
★★★★★ 発展
CH5. オリジナルの問いを立てて分析する
本論文の手法を借りて、あなた自身の問いを立てて分析してください。 例:「カフェの数と幸福度に関連はあるか」「教育費の高い県は出生率も高いか」など。
ポイント: 問い・データ・手法・結論を1ページのレポートにまとめる。これがデータサイエンスの「実践」。
💡 ヒント: 詰まったら本サイトの他の論文(同じ手法を使っている)のスクリプトをコピーして組み合わせるのが効率的です。手法ガイド・用語集も参考に。

💼 この手法は実社会でこう使われている

本論文で学んだ手法は、研究の世界だけでなく、行政・企業・NPO の現場でも様々に活用されています。具体的なシーンを紹介します。

🏛️
行政の政策立案
都道府県・市区町村の政策担当者は、本論文と同様のデータ分析を用いて「どこに予算を投じれば効果が出るか」を検討します。 例えば医療費削減策、移住促進策、子育て支援策などの効果予測・効果検証に直結します。
🏢
企業のマーケティング・出店戦略
小売チェーン・サービス業の出店戦略では、地域特性(人口構成、所得、ライフスタイル)と売上の関係を本論文と同じ手法で分析します。 ECサイトでも顧客セグメント分析・購買要因分析に類似手法が使われます。
🏥
医療・公衆衛生
感染症の流行予測、医療資源配分の最適化、健康格差の地域要因分析などで、本論文の統計手法は標準的に使われています。 WHO・厚労省レベルの政策評価でも同じ手法が活躍しています。
📊
メディア・ジャーナリズム
新聞・テレビの社会調査記事、選挙予測、世論調査の分析でも、本論文と同じ手法(回帰分析・クラスタリングなど)が使われています。 データジャーナリズムの記事はこの種の分析が中核です。
🎓
学術研究(隣接分野)
経済学・社会学・公衆衛生学・教育学・地理学などの実証研究では、本論文と同じ手法が日常的に使われます。 専門誌に掲載される論文の8割以上が、こうした統計手法に基づいて結論を出しています。
💰
金融・保険業界
与信判断(融資審査)、保険料の地域別設定、不動産価格予測などで、本論文と同様のモデリング手法が広く活用されています。 統計分析の能力は金融業界の必須スキルになっています。

🤔 よくある質問(読者からの想定Q&A)

この論文を読んで初心者が抱きやすい疑問に、教育的観点から答えます。

Q1. この分析、自分でもできますか?
はい、できます。SSDSE データは無料で公開されており、Python の pandas, scikit-learn, statsmodels を使えば全く同じ手順で再現可能です。本ページ下部のスクリプトを実行するだけで結果が得られます。
Q2. 使われている手法は他の分野にも応用できますか?
十分応用可能です。本論文の相関分析・単回帰分析決定係数R²による比較は、医療・教育・経済・環境など他のドメインでも標準的に使われる手法です。データの中身(変数)を入れ替えるだけで、別の問いにも適用できます。
Q3. 結論は本当に「因果関係」を示していますか?
本論文は「観察データ」を使った分析であり、厳密な意味での「因果関係」を完全に証明したわけではありません。あくまで「強い関連が見られた」という事実を提示しているにとどまります。真の因果を示すには、無作為化比較試験(RCT)か、自然実験を活用したIVDiD 等の手法が必要です。
Q4. データの最新版を使うとどうなりますか?
SSDSE は毎年更新されているため、最新版を使えば近年のトレンド(特にコロナ禍以降の変化)も含めて分析できます。ただし、結論が変わる可能性もあります。それ自体が新しい発見につながります。
Q5. もっと深く学ぶには何を読めばいいですか?
「計量経済学」「データサイエンス入門」「統計的因果推論」などのテキストが入門に向いています。Python の場合は『Python ではじめる機械学習』(オライリー)、R の場合は『R で学ぶ統計学』が定番です。本サイトの他の論文も読み比べてみてください。

✅ 理解度チェック(4問)

この論文を理解できたか、クリックで確認しましょう。間違えても解説が出ます。

🐍 ブラウザで動かす — インストール不要でこの論文の分析を再現する

このページの分析は、この画面の中でそのまま実行できます。 Python をインストールする必要も、CSV をダウンロードする必要もありません。 下のセルの 「▶ ブラウザで実行」 を上から順に押すか、 「▶ 最初から全部実行」 で一気に流してください。 表示されるのは、本文の図表とまったく同じ計算の結果です (動かしているのは再現スクリプト code/2024_H5_2_shorei.py そのもの)。

コードは書き換えられます。「✏️ 書き換える」で数字や変数を変えて ▶ を押すと、 結果がどう変わるかをその場で確かめられます(元に戻すボタンつき)。 ページを開いた時点で裏で実行環境の準備が始まっているので、待ち時間はほとんどありません。 初回だけ実行環境の取得にインターネット接続が必要です。