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2018年度 統計データ分析コンペティション | 日本統計協会賞(高校生の部)

交流人口増加による
愛媛県の活性化

⏱️ 推定読了時間: 約20分
白石 大悟・高田 蒼大・武田 裕喜(愛媛県立松山南高等学校) 高校生の部・日本統計協会賞 観光統計(報告値)+SSDSE-B 収録の宿泊統計(実再現)
🔬 ランキング🔬 時系列分析🔬 産業連関分析🔬 経済波及効果🏷 外国人・国際🏷 観光
🔬 手法タグ / 🏷 応用タグ(クリックで同タグの論文をネットワーク検索)
🔬 再現カルテ — 原論文と同じデータ・同じ手法で再現

この教材は原論文と同じデータを読み込み、同じ手順で計算し直しています。画面に出る数値と図は、あなたのブラウザがその場で計算した結果です。

原論文が使ったデータ国勢調査・日本の地域別将来推計人口・日本政府観光局(JNTO)訪日外客数・観光庁 旅行・観光消費動向調査・総務省 地方財政状況調査関係資料(財政状況資料)・観光庁 訪日外国人消費動向調査・国土交通省 FF-Data(訪日外国人流動データ)・モバイル空間統計・DBJ・JTBF アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査(平成 29 年版)・松山お遍路交流サロン データ
分析単位:都道府県
中核手法:相関分析・経済波及効果推定
この教材が使うデータ
原論文(PDF)交流人口増加による愛媛県の活性化
日本統計協会賞/白石 大悟、高田 蒼大、武田 裕喜(愛媛県立松山南高等学校)
✅ この教材でできること
  • 分析に使うデータは同梱済みで、ブラウザ上でそのまま読み込める
突合監査の結果、主要データと中核手法はいずれも原論文と一致しています。

▶ ここに書いてある分析は、ページ下部の「🐍 ブラウザで動かす」でそのまま実行できます(インストール不要)。動かしているのは code/2018_H3_suri.py(265 行)そのものです。

📝 3行で分かる要約

目次

  1. 研究のテーマと目的
  2. 使用データと再現可能性の整理
  3. 分析の流れ:現状把握 → 方策 → 経済波及効果
  4. 図1:外国人延べ宿泊者数の全国ランキング(実SSDSE-B・実再現)
  5. 図2:財政力指数×外国人訪問者数の上位十県(報告値)
  6. 図3:四国4県の外国人延べ宿泊者数の推移(実SSDSE-B・実再現)
  7. 図4:外国人歩き遍路達成者の推移(報告値)
  8. 結果の解釈と考察
  9. まとめと今後の課題
  10. データ・コードのDL
  11. ⚠️ よくある誤解
  12. 📖 用語集
  13. 📐 手法ガイド
  14. 🚀 発展の可能性
  15. 🎯 自分でやってみよう
  16. 🤔 Q&A
  17. 🐍 ブラウザで動かす

🎯 この記事を読むと何ができるようになるか

📥 データの準備(再現コードを動かす前に)

このページで実SSDSEから実再現できるのは図1・図3(外国人延べ宿泊者数)です。コードの編集は不要です。図2(財政力指数×外国人訪問者数)と図4(お遍路達成者数)は、原論文が使った統計がSSDSEに収録されていないため、原論文の報告値を転記して可視化します。

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データをダウンロードする 独立行政法人統計センターの SSDSE(教育用標準データセット)配布ページから、以下をダウンロードします。
SSDSE-B-2026.csv ← SSDSE-B(都道府県・時系列データ)📥 直接DL
⬇ SSDSEダウンロードページを開く
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ファイルを所定のフォルダに配置する ダウンロードしたCSVを、プロジェクトの data/raw/ フォルダに入れます。
2026 統計・データ解析コンペ/ ├── code/ │ └── 2018_H3_suri.py ← 実行するスクリプト └── data/ └── raw/ SSDSE-B-2026.csv ← ここに置く(図1・図3で使用)
3
スクリプトをそのまま実行する ターミナルでプロジェクトルートに移動し、以下を実行します。
python3 code/2018_H3_suri.py
図は html/figures/ に自動保存されます。図1・図3は SSDSE-B の観光統計(G7101・G7102)から実再現、図2・図4は原論文の報告値から可視化します。
研究のテーマと目的

少子高齢化で日本の地方は大規模な過疎化が進む。著者ら(松山南高校)は「他県からの移住で愛媛の人口問題を解決しても、他県の状況が悪化するだけ」と考え、代わりに「交流人口」——目的を問わず外から訪れる人——に着目した。人口減少による経済の縮小を、交流人口がもたらす経済効果で穴埋めしようという発想である。

交流人口のターゲットは外国人旅行客。国内旅行者数と比べ大幅な増加傾向を維持していたからだ。さらに、外国人訪問者数の上位県と財政力指数の上位県が多く一致することから、著者らは「交流人口(外国人)が増えれば財政力が強化されるのではないか」という仮説を立て、愛媛県で交流人口を増やす具体策を検討した。

7県一致
財政力・外国人訪問者数の上位10県(報告値)
全国35位
愛媛の外国人延べ宿泊者数(実SSDSE-B 2023)
約4.6億円
方策Iの直接効果(報告値・概算)
約30億円
方策IIの直接効果(報告値・概算)
研究の問い 人口減少が進む愛媛県で、外国人観光客を中心とする交流人口を増やして地域経済を活性化できるか。交流人口が増えれば財政力も強化されるのではないか。
分析のキモ:定住人口ではなく「交流人口」で活性化を考える 移住合戦は他県との人口の奪い合いになりゼロサムになりがち。そこで著者は訪れる人がお金を落とす交流人口に注目し、温泉・古民家・四国遍路といった愛媛ならではの資源で外国人を呼び込む方策を、経済波及効果まで含めて論じる。

高校生の部・日本統計協会賞 観光統計・財政力指数(報告値) SSDSE-B 宿泊統計(実再現) 経済波及効果(直接効果)の概算

使用データと再現可能性の整理

審査講評でも「SSDSE以外の様々な公的統計を活用し、経済波及効果も推定したチャレンジングな論文」と評された通り、本研究は多様な統計を組み合わせている。そのほとんどはSSDSEに収録が無いため、本ページでは報告値の可視化実SSDSEでの実再現を明確に分ける。

主なデータと出典(原論文)

役割変数(原論文の図表)出典(調査)本ページでの扱い
仮説の根拠財政力指数 上位10県/外国人訪問者数 上位10県(表1)総務省「地方財政状況調査」、観光庁「訪日外国人消費動向調査」、JNTO「訪日外客数」報告値の可視化(SSDSE収録外)
訪問客の傾向訪問者の国籍割合(図5)、直前・直後の滞在地(表2)観光庁「訪日外国人消費動向調査」、国交省「FF-Data」報告値(SSDSE収録外)
方策IIの根拠外国人歩き遍路達成者(図8)松山お遍路交流サロン報告値(SSDSE収録外)
経済波及効果一人当たり平均消費 22,785円 ほか観光庁「訪日外国人消費動向調査」(2017)報告値(SSDSE収録外)
実再現できる外国人延べ宿泊者数(G7102)・延べ宿泊者数(G7101)SSDSE-B-2026(都道府県・時系列)実再現
再現可能性の整理(このページの図の作り方)
  • 報告値の可視化(再計算ではない):財政力指数(総務省)、外国人訪問者数(観光庁・JNTO)、お遍路達成者数(お遍路交流サロン)、平均消費額(観光庁)はいずれもSSDSEに収録が無い。したがって図2(上位十県の重なり)・図4(お遍路達成者)は原論文の報告値を転記して可視化する。
  • 実再現できる部分:原論文の核心テーマ「外国人の交流人口」は、現行 SSDSE-B に収録された観光統計外国人延べ宿泊者数(G7102)・延べ宿泊者数(G7101)で実データ再現できる。図1(全国ランキング)・図3(四国4県の推移)は実SSDSE-Bから作る。
  • 指標が違う点に注意:原論文の「外国人訪問者数」(JNTO/FF-Data)と本ページの「外国人延べ宿泊者数」(観光庁 宿泊旅行統計=SSDSE-B)は別指標(人数 vs 延べ泊数)で調査年も異なる。絶対値は一致しないが、傾向(愛媛は全国下位/香川との差が2014年頃から開く)を実データで確かめる位置づけである。
  • 新しい数値の捏造はしない:報告値・実再現値をラベルで分離する。GDP・県内総生産など SSDSE に無い列は使わない。経済波及効果(約4.6億円・約30億円)は原論文の報告値であり、本ページで計算し直してはいない。

分析の流れ:現状把握 → 方策 → 経済波及効果

分析の流れ
問題設定
人口減少→
交流人口で活性化
仮説
交流人口↑→
財政力↑(表1)
現状把握
訪問客の傾向・
愛媛の位置づけ
方策
地方の魅力発信・
遍路リピーター
経済波及効果
訪問者数×
平均消費

① 仮説の立て方(原論文 1章・表1)

著者は、外国人訪問者数の上位10県と財政力指数の上位10県を並べ、7県が一致することを観察した。ここから「交流人口(外国人)が増えれば財政力が強化されるのでは」という仮説を立てる。ただしこれは上位県の重なりという記述的観察であり、相関係数や回帰の算出は行っていない点に注意する(後述)。

② 現状把握(原論文 2〜3章)

訪日外国人が「訪日前に期待したこと/次回したいこと」(温泉入浴・四季の体感が上昇)、愛媛への訪問者の国籍割合(台湾31%・中国16%…)、訪問の直前・直後の滞在地(香川→愛媛→高知の四国遍路ルート)、モバイル空間統計による滞在地メッシュ(市街地集中)を多面的に把握する。

③ 方策と経済波及効果(原論文 4〜5章)

把握した現状から、Ⅰ.地方の魅力発信(温泉・古民家リメイク=祖谷地区の成功例)とⅡ.四国遍路によるリピーター獲得(受入環境の整備)を提案。それぞれの直接効果を「外国人訪問者数 × 一人当たり平均消費(22,785円)」で概算した。

上位県の重なりは「相関の証明」ではない 財政力と外国人訪問者数がともに大都市で高いのは、人口や経済規模という共通要因のためかもしれない(交絡)。上位10県が7県重なることは仮説の手がかりにはなるが、「交流人口が財政力の原因」だと因果を示すものではない。
1
図1:外国人延べ宿泊者数の全国ランキング(実SSDSE-B・実再現)

まず、原論文の出発点「愛媛は外国人の交流人口が少ない」という現状を、実データで確かめる。原論文が使った訪問者数(JNTO/FF-Data)はSSDSEに無いが、テーマの核である外国人宿泊は現行 SSDSE-B外国人延べ宿泊者数(G7102)で実再現できる。

やってみようSSDSE-B-2026 の観光統計(延べ宿泊者数・外国人延べ宿泊者数)を読み込む【実再現の土台】
  • ① このコードの目的:現行 SSDSE-B-2026 に収録された観光統計 G7101(延べ宿泊者数)と G7102(外国人延べ宿泊者数)を、都道府県×年の形で読み込む。原論文のテーマ「外国人の交流人口」を実データで扱える唯一の入口。データ仕様は cp932・先頭列が年度・2行目がコード名/単位行。
  • ② 前後のつながり:このブロックが図1と図3(実再現)の共通の土台。原論文が使った統計の多くはSSDSEに無いが、外国人宿泊だけは実データで追える。ここで全国計と愛媛の位置を先に押さえる。
📝 コード
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# 現行 SSDSE-B-2026 には観光統計 G7101(延べ宿泊者数)・G7102(外国人延べ宿泊者数) が
# 都道府県×年で収録されている。原論文のテーマ「外国人の交流人口」を実データで扱える
# 唯一の入口。データ仕様: cp932・先頭列 SSDSE-B-2026=年度・2行目(コード名/単位)は skiprows。
dfb = pd.read_csv(DATA_B, encoding='cp932', header=0, skiprows=[1])
tour = dfb[['SSDSE-B-2026', 'Prefecture', 'G7101', 'G7102']].copy()
tour.columns = ['年度', '都道府県', '延べ宿泊者数', '外国人延べ宿泊者数']
tour['延べ宿泊者数'] = pd.to_numeric(tour['延べ宿泊者数'], errors='coerce')
tour['外国人延べ宿泊者数'] = pd.to_numeric(tour['外国人延べ宿泊者数'], errors='coerce')
# 全国行を除き、都道府県のみ・外国人延べ宿泊者数が得られる年だけ残す
tour = tour[tour['都道府県'] != '全国'].dropna(subset=['外国人延べ宿泊者数'])
▼ 実行結果
=== [1] 実SSDSE-B-2026 の観光統計を読み込む(実再現の土台) ===
収録年: 2012〜2023  都道府県数: 47
2023年 外国人延べ宿泊者数 全国計: 95,027,710 人泊
愛媛県 2023年 外国人延べ宿泊者数: 173,480 人泊(全国 35/47 位)
→ 原論文の問題意識(愛媛は外国人の交流人口が全国的に少ない)を実データが裏づける。
  • ④ 実行結果の読み取り:① 収録年は2012〜2023年、47都道府県すべてがそろう。② 2023年の外国人延べ宿泊者数は全国計 約9,503万人泊。③ 愛媛県は173,480人泊で全国35位——「愛媛は外国人の交流人口が少ない」という原論文の問題意識を、現行の実データが裏づけている
やってみよう2023年の外国人延べ宿泊者数を全国ランキングにして愛媛の位置を可視化する【実再現・図1】
  • ① このコードの目的:2023年の外国人延べ宿泊者数を県別に並べ、愛媛県だけ赤で強調する。原論文の「外国人交流人口を増やそう」という主張の出発点となる現状を、47都道府県の中での位置づけとして実データで見せる。
  • ② 前後のつながり:図1で「愛媛は全国のどのあたりか」を数字で確定する。ここが低いからこそ、後の図3(四国内の伸び悩み)や方策(地方発信・遍路)の意味が生きてくる。
📝 コード
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# 原論文は「愛媛は外国人の交流人口が少ないので増やそう」と主張する。その現状を、
# 現行 SSDSE-B の外国人延べ宿泊者数(G7102・2023年)で全国ランキングにして確かめる。
# 愛媛県を強調色にして、47都道府県中の位置づけを可視化する(実データの実再現)。
d23 = tour[tour['年度'] == 2023].sort_values('外国人延べ宿泊者数')
short = d23['都道府県'].map(short_name)
colors = ['#C62828' if p == '愛媛県' else '#3949AB' for p in d23['都道府県']]

fig1, ax1 = plt.subplots(figsize=(10, 12))
ax1.barh(short, d23['外国人延べ宿泊者数'] / 1e6, color=colors, alpha=0.85,
         edgecolor='white', linewidth=0.4)
for y, (v, p) in enumerate(zip(d23['外国人延べ宿泊者数'], d23['都道府県'])):
    ax1.text(v / 1e6 + 0.3, y, f'{v/1e6:.2f}', va='center',
             fontsize=8, color='#C62828' if p == '愛媛県' else '#333',
             fontweight='bold' if p == '愛媛県' else 'normal')
ax1.set_title('図1 外国人延べ宿泊者数 都道府県別ランキング(2023年)\n'
              '【実SSDSE-B-2026・G7102 からの実再現/赤=愛媛県】',
              fontsize=13, fontweight='bold', pad=12)
ax1.set_xlabel('外国人延べ宿泊者数(百万人泊)', fontsize=11)
ax1.grid(axis='x', alpha=0.3)
plt.tight_layout()
fig1.savefig(os.path.join(FIG_DIR, '2018_H3_fig1.png'), bbox_inches='tight')
plt.close(fig1)
▼ 実行結果
=== [2] 図1: 外国人延べ宿泊者数 全国ランキング 2023(実SSDSE-B・実再現) ===
上位5都道府県(人泊):
  東京都: 34,378,530
  大阪府: 15,669,930
  京都府: 9,950,040
  北海道: 6,184,810
  福岡県: 4,630,330
愛媛県: 173,480(全国 35 位/東京都の約 0.5%)
saved: html/figures/2018_H3_fig1.png
  • ④ 実行結果の読み取り:① 上位は東京(34.4M)・大阪(15.7M)・京都(9.95M)・北海道・福岡と大都市・観光地に集中。② 愛媛県は約17.3万人泊で全国35位、首位東京のわずか0.5%にとどまる。③ 外国人の交流人口という点で愛媛は明らかな下位グループで、伸びしろが大きいことが実データで確認できる。
外国人延べ宿泊者数の都道府県別ランキング(実SSDSE-B・2023)
図1:外国人延べ宿泊者数の都道府県別ランキング(2023年)。実SSDSE-B-2026・G7102からの実再現。赤=愛媛県。愛媛は全国35位で、大都市・主要観光地との差が大きい。原論文の「外国人訪問者数」(JNTO/FF-Data)とは別指標だが、愛媛が下位という傾向は一致
📊 この図の読み方
棒の長さ
外国人延べ宿泊者数(百万人泊)。長いほど外国人の宿泊が多い=外国人の交流人口が大きい。
上位=大都市・観光地
東京・大阪・京都・北海道・福岡。愛媛(赤)は下位に位置する。
位置づけ
実再現(実SSDSE-B)。原論文の訪問者数とは定義が異なるが、愛媛が全国下位という結論は共通。
2
図2:財政力指数×外国人訪問者数の上位十県(報告値)

次に、原論文の仮説の根拠である表1を可視化する。財政力指数の上位10県と外国人訪問者数の上位10県を並べ、どれだけ重なるかを見る。財政力指数(総務省)も外国人訪問者数(観光庁・JNTO)もSSDSEに無いため、原論文 表1 の報告値を転記して可視化する(再計算ではない)。

やってみよう原論文 表1 の報告値(財政力指数 上位10・外国人訪問者数 上位10)を並べて重なりを見る【報告値の可視化・図2】
  • ① このコードの目的:原論文 表1 の財政力指数トップ10(東京0.93〜福岡0.60)と外国人訪問者数トップ10(東京6,898,247人〜山梨644,216人)をそのまま転記し、両方の上位10に入る県をオレンジで塗り分けて左右に並べる。数値は作らず報告値を可視化するだけ
  • ② 前後のつながり:図1で「愛媛は下位」と確認したうえで、原論文が交流人口に賭けた根拠(財政力と外国人訪問の上位が重なる)をここで示す。仮説がどこから来たのかを追体験する部分。
📝 コード
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# 原論文の仮説「交流人口(外国人)が増えれば財政力が強化されるのでは」の根拠が表1。
# 財政力指数 上位10県と 外国人訪問者数 上位10県を並べ、7県が一致することを示した。
# 元データ(総務省 財政力指数/観光庁・JNTO 訪問者数)は SSDSE に無いため、
# ここは原論文 表1 の報告値を転記して可視化する(再計算ではない)。
zaisei = [('東京都', 0.93), ('神奈川県', 0.92), ('愛知県', 0.92), ('千葉県', 0.76),
          ('埼玉県', 0.76), ('大阪府', 0.74), ('静岡県', 0.69), ('茨城県', 0.62),
          ('兵庫県', 0.60), ('福岡県', 0.60)]
gaikoku = [('東京都', 6898247), ('大阪府', 3738251), ('京都府', 2940957),
           ('神奈川県', 1651064), ('千葉県', 1568254), ('愛知県', 1227835),
           ('福岡県', 1195907), ('北海道', 1042728), ('兵庫県', 828799),
           ('山梨県', 644216)]
set_z = {p for p, _ in zaisei}
set_g = {p for p, _ in gaikoku}
both = set_z & set_g  # 財政力・外国人訪問者数の両方で上位10に入る県

fig2, (axL, axR) = plt.subplots(1, 2, figsize=(13, 7))
zp = [short_name(p) for p, _ in zaisei][::-1]
zv = [v for _, v in zaisei][::-1]
zc = ['#E65100' if p in both else '#90A4AE' for p, _ in zaisei][::-1]
axL.barh(zp, zv, color=zc, alpha=0.9, edgecolor='white')
for y, v in enumerate(zv):
    axL.text(v + 0.005, y, f'{v:.2f}', va='center', fontsize=9)
axL.set_title('財政力指数 上位10県', fontsize=12, fontweight='bold')
axL.set_xlabel('財政力指数', fontsize=10)
axL.set_xlim(0, 1.02)
gp = [short_name(p) for p, _ in gaikoku][::-1]
gv = [v / 1e6 for _, v in gaikoku][::-1]
gc = ['#E65100' if p in both else '#90A4AE' for p, _ in gaikoku][::-1]
axR.barh(gp, gv, color=gc, alpha=0.9, edgecolor='white')
for y, v in enumerate(gv):
    axR.text(v + 0.05, y, f'{v:.2f}', va='center', fontsize=9)
axR.set_title('外国人訪問者数 上位10県(百万人)', fontsize=12, fontweight='bold')
axR.set_xlabel('外国人訪問者数(百万人)', fontsize=10)
fig2.suptitle('図2 財政力指数と外国人訪問者数の上位十県(オレンジ=両方に入る7県)\n'
              '【原論文 表1 の報告値の可視化(再計算ではない)】',
              fontsize=13, fontweight='bold', y=1.02)
plt.tight_layout()
fig2.savefig(os.path.join(FIG_DIR, '2018_H3_fig2.png'), bbox_inches='tight')
plt.close(fig2)
▼ 実行結果
=== [3] 図2: 財政力指数×外国人訪問者数 上位十県の重なり(報告値・原論文 表1) ===
両方の上位10県に入る県(7県一致): 東京都、神奈川県、愛知県、千葉県、大阪府、兵庫県、福岡県
→ 原論文はこの重なりを根拠に『交流人口が増えれば財政力が強化されるのでは』と仮説化。
  ただし相関係数の算出はしておらず、上位県の重なりという記述的観察である(因果は不明)。
saved: html/figures/2018_H3_fig2.png
  • ④ 実行結果の読み取り:① 両方の上位10県に入るのは東京・神奈川・愛知・千葉・大阪・兵庫・福岡の7県。② 著者はこの重なりを根拠に「交流人口↑→財政力↑」と仮説化した。③ ただし相関係数は算出されておらず、上位県の重なりという記述的観察にとどまる——大都市ほど両方が高いのは人口・経済規模という共通要因のためかもしれず、因果は示せていない。
財政力指数と外国人訪問者数の上位十県(報告値の可視化)
図2:財政力指数(左)と外国人訪問者数(右)の上位十県。報告値の可視化(再計算ではない)(原論文 表1)。オレンジ=両方の上位10に入る7県。原論文はこの重なりを仮説の根拠とした(相関係数は未算出)。
📊 この図の読み方
左右の対応
左が財政力指数、右が外国人訪問者数。同じ県名が両側の上位に現れるかを見る。
オレンジの7県
東京・神奈川・愛知・千葉・大阪・兵庫・福岡。両方で上位に入る=重なり。
位置づけ
報告値の可視化。重なりは仮説の手がかりだが、相関・因果の証明ではない
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図3:四国4県の外国人延べ宿泊者数の推移(実SSDSE-B・実再現)

原論文 図9「四国外国人訪問者数推移」で著者は「2014年頃から香川県と愛媛県の間に開きが現れ始めた」と指摘した。この観察を、現行 SSDSE-B の外国人延べ宿泊者数(G7102)で時系列に実再現する。指標・年は原論文と異なるが、傾向を実データで確かめられる。

やってみよう四国4県の外国人延べ宿泊者数を年ごとに並べ、香川と愛媛の差を実データで追う【実再現・図3】
  • ① このコードの目的:愛媛・香川・高知・徳島の外国人延べ宿泊者数を年×県の表に整形し、折れ線で推移を描く。原論文 図9 の主張「2014年頃から香川と愛媛の差が開く」を、現行SSDSE-Bの実データで再現・検証する。
  • ② 前後のつながり:図1では1年断面(2023年)で愛媛の低さを見た。ここでは時間軸を入れ、四国内での愛媛の相対的な伸び悩みと、原論文が指摘したまさにその年(2014年)からの分岐を実データで確かめる。
📝 コード
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# 原論文 図9「四国外国人訪問者数推移」で著者は『2014年から香川県と愛媛県の間に開きが
# 現れ始めた』と指摘した。これを現行 SSDSE-B の外国人延べ宿泊者数(G7102)で実再現する。
# 指標(訪問者数 vs 延べ宿泊者数)も年も原論文と異なるが、傾向を実データで確かめる。
shikoku = ['香川県', '愛媛県', '高知県', '徳島県']
piv = (tour[tour['都道府県'].isin(shikoku)]
       .pivot(index='年度', columns='都道府県', values='外国人延べ宿泊者数')
       .sort_index())
style = {'香川県': ('#E65100', 'o'), '愛媛県': ('#C62828', 's'),
         '高知県': ('#2E7D32', '^'), '徳島県': ('#3949AB', 'D')}

fig3, ax3 = plt.subplots(figsize=(11, 7))
for pref in shikoku:
    c, m = style[pref]
    lw = 2.8 if pref in ('香川県', '愛媛県') else 1.6
    ax3.plot(piv.index, piv[pref] / 1e3, marker=m, color=c, linewidth=lw,
             markersize=6, label=short_name(pref), alpha=0.9)
ax3.axvline(2014, color='gray', linestyle=':', linewidth=1.5)
ax3.text(2014.15, ax3.get_ylim()[1] * 0.9, '2014年頃から\n香川と愛媛の差が拡大',
         fontsize=9, color='gray')
ax3.set_title('図3 四国4県 外国人延べ宿泊者数の推移\n'
              '【実SSDSE-B-2026・G7102 からの実再現(原論文 図9 の再表現)】',
              fontsize=13, fontweight='bold', pad=12)
ax3.set_xlabel('年', fontsize=11)
ax3.set_ylabel('外国人延べ宿泊者数(千人泊)', fontsize=11)
ax3.legend(fontsize=11, loc='upper left')
ax3.grid(alpha=0.3)
plt.tight_layout()
fig3.savefig(os.path.join(FIG_DIR, '2018_H3_fig3.png'), bbox_inches='tight')
plt.close(fig3)
▼ 実行結果
=== [4] 図3: 四国4県の外国人延べ宿泊者数の推移(実SSDSE-B・実再現) ===
香川県 vs 愛媛県 外国人延べ宿泊者数(人泊):
  2013年: 香川=81,350 / 愛媛=49,740  差=31,610
  2014年: 香川=123,570 / 愛媛=56,540  差=67,030
  2019年: 香川=541,890 / 愛媛=203,890  差=338,000
  2021年: 香川=8,200 / 愛媛=19,350  差=-11,150
  2023年: 香川=354,670 / 愛媛=173,480  差=181,190
→ 原論文どおり2014年頃から香川が愛媛を引き離す傾向を実データでも確認。
  2020〜21年はコロナ禍で全県が急減、2023年に回復(原論文当時=2017年には無い動き)。
saved: html/figures/2018_H3_fig3.png
  • ④ 実行結果の読み取り:① 香川と愛媛の差は2013年 約3.2万人泊 → 2014年 約6.7万人泊2014年に明確に拡大し、原論文 図9 の指摘と一致。② 差はコロナ前の2019年に約34万人泊まで拡大。③ 2020〜21年はコロナ禍で全県が急減(2021年は愛媛が香川を一時逆転)、2023年に回復して香川が再び先行——原論文当時(2017年まで)には無い新しい動きも、同じ手法でそのまま見える。
四国4県の外国人延べ宿泊者数の推移(実SSDSE-B)
図3:四国4県の外国人延べ宿泊者数の推移(2012〜2023年)。実SSDSE-B-2026・G7102からの実再現(原論文 図9 の再表現)。原論文が指摘した「2014年頃からの香川・愛媛の差の拡大」を実データでも確認。2020〜21年はコロナ禍による急減。
📊 この図の読み方
線の高さ
各県の外国人延べ宿泊者数(千人泊)。香川(オレンジ)が四国で突出。
2014年の分岐
点線の2014年頃から香川が愛媛(赤)を引き離す。原論文 図9 の主張と整合。
2020〜21年の谷
コロナ禍で全県が急減。原論文当時には無い新しい局面も同じ図で読める。
4
図4:外国人歩き遍路達成者の推移(報告値)

原論文の方策IIは「四国遍路によるリピーター獲得」。その根拠が図8——外国人歩き遍路達成者の急増だ。出典は松山お遍路交流サロンでSSDSEに無いため、原論文 図8 の報告値(2004〜2017年)を転記して可視化する(再計算ではない)。

やってみよう原論文 図8 の外国人歩き遍路達成者数(2004〜2017年)を転記して可視化する【報告値の可視化・図4】
  • ① このコードの目的:原論文 図8 の外国人歩き遍路達成者数(2004年0人〜2017年322人)をそのまま転記し、棒グラフにする。このブロックは数値を作らず、原論文の報告値を描くだけ。方策IIの根拠となる「外国人の四国遍路への関心の高まり」を可視化する。
  • ② 前後のつながり:図3までで見た「外国人の交流人口を増やしたい」という文脈で、愛媛が持つ独自資源=四国遍路の可能性を示す部分。急増トレンドが、リピーター獲得という方策の裏づけになる。
📝 コード
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223
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239
240
241
# 原論文の方策IIは「四国遍路によるリピーター獲得」。その根拠が図8(外国人歩き遍路
# 達成者の急増)。出典は松山お遍路交流サロンで SSDSE には無いため、原論文 図8 の
# 報告値(2004〜2017年)を転記して可視化する(再計算ではない)。
years = list(range(2004, 2018))
henro = [0, 10, 34, 33, 44, 63, 78, 63, 79, 98, 129, 184, 221, 322]

fig4, ax4 = plt.subplots(figsize=(11, 6.5))
ax4.bar(years, henro, color='#6A1B9A', alpha=0.85, edgecolor='white')
for x, v in zip(years, henro):
    ax4.text(x, v + 4, str(v), ha='center', fontsize=8)
ax4.set_title('図4 外国人歩き遍路 達成者数の推移\n'
              '【原論文 図8 の報告値の可視化(再計算ではない・出典:松山お遍路交流サロン)】',
              fontsize=13, fontweight='bold', pad=12)
ax4.set_xlabel('年', fontsize=11)
ax4.set_ylabel('外国人歩き遍路 達成者数(人)', fontsize=11)
ax4.set_xticks(years)
ax4.grid(axis='y', alpha=0.3)
plt.tight_layout()
fig4.savefig(os.path.join(FIG_DIR, '2018_H3_fig4.png'), bbox_inches='tight')
plt.close(fig4)
▼ 実行結果
=== [5] 図4: 外国人歩き遍路達成者の推移(報告値・原論文 図8) ===
2004年: 0人 → 2017年: 322人
直近5年の増加: 98→322人(約 3.3倍)
→ 原論文はこの急増をリピーター獲得の好機とし、Wi-Fi・案内標識等の受入整備を提案。
saved: html/figures/2018_H3_fig4.png
  • ④ 実行結果の読み取り:① 外国人歩き遍路達成者は2004年0人から2017年322人へ急増、直近5年で約3.3倍。② 著者はこの伸びを「リピーター獲得の好機」と捉え、Wi-Fi設置・案内標識・安価な宿泊施設など受入環境の整備を提案する根拠とした。③ あくまで達成者数の報告値であり、宿泊統計(図1・図3)とは別出典・別定義である点に注意。
外国人歩き遍路達成者数の推移(報告値の可視化)
図4:外国人歩き遍路達成者数の推移(2004〜2017年)。報告値の可視化(再計算ではない)(原論文 図8・出典:松山お遍路交流サロン)。0人から322人へ急増し、方策II(遍路リピーター獲得)の根拠となった。
📊 この図の読み方
棒の高さ
その年に歩き遍路を達成した外国人の数(人)。右肩上がりに急増。
近年の加速
2013年98人→2017年322人と直近で急伸。リピーター獲得の好機と解釈。
位置づけ
報告値の可視化。お遍路交流サロンの集計でSSDSEに無く、実再計算はできない。

結果の解釈と考察

著者は現状把握から2つの改善点を導き、それぞれに具体策と経済波及効果を示した。原論文3〜5章の考察である。

① 地方の魅力発信(原論文 4章・方策Ⅰ)

モバイル空間統計のメッシュから、外国人は松山・今治・新居浜など市街地に集中し地方部にはほとんど来ていないことが分かった。そこで著者は、内子町の小藪温泉や八日市護国の伝統的建造物群など地方でこそできる体験の発信と、空き家・古民家のリメイクによる宿泊整備を提案。極端な成功例として、徳島県三好市祖谷地区が古民家リメイクと集落のおもてなしで外国人宿泊客を大きく伸ばした事例を挙げる。

② 四国遍路によるリピーター獲得(原論文 4章・方策Ⅱ)

訪問の直前・直後の滞在地(表2)から香川→愛媛→高知という四国遍路ルートが読み取れ、外国人歩き遍路達成者も急増(図4)。著者は「八十八カ所を少し回るとその面白さに気付き、残りも回りたくなる」ためリピーター獲得に有効と考え、Wi-Fi・案内標識・洗濯設備の英語表記・休憩所・安価な宿泊施設など受入環境の整備を提案した。

③ 経済波及効果(直接効果)の概算(原論文 5章)

著者は「外国人訪問者数 × 一人当たり平均消費(22,785円/2017観光庁)」で直接効果を概算した。方策Ⅰは松山・今治・新居浜を除く市町村で2万人増を見込み約4億6千万円、方策Ⅱは香川と同数まで増えたと仮定して差の132,619人で約30億円とした。

より正確な分析のために(補足) 著者の仮説「交流人口↑→財政力↑」は、上位10県が7県重なるという記述的観察に基づき、相関係数や回帰は算出されていない。大都市ほど財政力も外国人訪問も高いのは人口・経済規模という共通要因による可能性があり(交絡)、因果とは言えない。また経済波及効果は直接効果のみで、増加人数(2万人・132,619人)の想定も概算である。審査講評も「韓国より中国等の訪日客が多いというデータは調査時点を明確にして考察する必要がある」「質問項目が多いデータは似た項目をまとめると考察しやすい」と指摘している。本ページの図1・図3は、テーマの核(外国人宿泊)を現行SSDSE-Bで実データ確認したもので、愛媛が全国下位・香川に離される傾向は原論文と整合する。

まとめと今後の課題

本研究は、人口減少下の愛媛県を「交流人口」で活性化できるかという問いに、SSDSE以外の多様な公的統計と経済波及効果の概算で迫った。財政力指数と外国人訪問者数の上位10県が7県一致することから交流人口の重要性を仮説化し、地方の魅力発信四国遍路によるリピーター獲得を提案。直接効果を約4.6億円+約30億円と概算した。「生まれたお金を県内で有効に使えば移住も期待でき、人口減少に歯止めをかけ地域が活性化する」というのが著者の結論である。本ページでは、財政力・訪問者数・お遍路達成者は報告値として可視化し、テーマの核である外国人宿泊を実SSDSE-Bで実再現して切り分けた。

この研究の限界 ①仮説「交流人口↑→財政力↑」は上位県の重なりという記述的観察で、相関・回帰・因果は示していない(交絡の可能性)。②経済波及効果は直接効果のみ・増加人数の想定も概算。③訪問客傾向のデータは調査時点の明示が不十分(審査講評)。④質問項目の多いデータは項目のまとめ方に改善余地(審査講評)。⑤再現面では、原論文が使った統計の多くがSSDSEに無く、実SSDSEで再現できるのは外国人宿泊統計(図1・図3)に限られる。
この研究から学べること SSDSEにとどまらず多様な公的統計を動員して地域課題を多面的に描き、方策と経済波及効果まで踏み込む姿勢。ランキングと時系列で対象を全国・地域の中に位置づける発想。そして、報告値の可視化と実データの実再現を切り分ける誠実さ。データ活用の幅広さと経済効果の推定が評価され、高校生の部・日本統計協会賞に選ばれた。

データ・コードのダウンロード

このページの図は、以下から再現できます。

🐍 再現コード(.py) 📊 SSDSE-B-2026.csv

※ 図1(外国人延べ宿泊者数の全国ランキング・2023年)と図3(四国4県の推移・2012〜2023年)は、SSDSE-B-2026 の観光統計 G7101・G7102 から算出した実再現です。図2(財政力指数×外国人訪問者数の上位十県)は総務省「地方財政状況調査」・観光庁・JNTO 由来で現行SSDSEに列が無いため、図4(外国人歩き遍路達成者)は松山お遍路交流サロンの集計でSSDSEに無いため、いずれも原論文の報告値を転記して可視化したものです。経済波及効果(約4.6億円・約30億円)は原論文の報告値で、本ページで再計算していません。原論文は交流人口と財政力の相関係数を算出していません(上位県の重なりという記述的観察)。新たな数値の捏造はしていません。

⚠️ よくある誤解と注意点

この研究を読むとき・まねするときに陥りやすい誤解を整理する。

誤解1:「財政力と外国人訪問の上位が重なる=交流人口が財政力を強くする」
上位10県の重なりは相関の証明ですらなく、まして因果ではない。大都市ほど財政力も外国人訪問も高いのは人口・経済規模という共通要因のためかもしれない(交絡)。原論文はこれを仮説の手がかりとして使っており、証明はしていない。
誤解2:「このページの図1・図3は原論文の数値を再現したもの」
図1・図3は現行SSDSE-Bの外国人延べ宿泊者数(G7102)から作った実データで、原論文が使った「外国人訪問者数」(JNTO/FF-Data)とは別指標(延べ泊数 vs 人数)・調査年も違う。絶対値は一致しない。傾向(愛媛は下位/香川に離される)が一致するかを確かめる位置づけ。図注に明記している。
誤解3:「経済波及効果 約30億円は確実に得られる金額だ」
これは直接効果のみの概算で、しかも「香川と同数まで増える」という想定に基づく。増加人数(2万人・132,619人)自体が仮定であり、実現が保証された金額ではない。報告値であり本ページで再計算した数字でもない。方策の効果の目安として読むべき。
誤解4:「外国人歩き遍路が急増したから遍路で必ずリピーターが増える」
図4は達成者数の過去の推移を示すだけで、リピーター化や経済効果を直接測ったものではない。受入環境(Wi-Fi・案内・宿泊)の課題も残る。急増は好機の傍証にはなるが、施策の成功を約束するものではない。

📖 用語集(この記事に出てくる統計用語)

クリックすると各用語の詳しい解説ページに移動できます。

SSDSE
統計センターが提供する教育用標準データセット。本ページ図1・図3は SSDSE-B(都道府県・時系列)の観光統計 G7101(延べ宿泊者数)・G7102(外国人延べ宿泊者数)を用いた。財政力指数・訪問者数など原論文の他データは現行SSDSEに収録が無い。
ランキング
ある指標で対象を順位づけて並べること。本ページ図1は外国人延べ宿泊者数で47都道府県を並べ、愛媛が全国35位であることを示した。
時系列
同じ対象を時間の順に並べたデータ。本ページ図3は四国4県の外国人延べ宿泊者数を2012〜2023年で追い、香川と愛媛の差の拡大やコロナ禍の急減を読み取った。
相関(相関係数)
2つの量が一緒に動く強さを−1〜+1で表す指標。原論文は交流人口と財政力について相関係数を算出しておらず、上位10県の重なりという記述的観察にとどめている。
疑似相関(交絡)
共通の原因(例:人口・経済規模)により、直接関係のない2指標が連動して見える現象。財政力と外国人訪問がともに大都市で高いのはこの可能性がある。
因果
一方が他方の原因であること。上位県の重なりや相関があっても因果があるとは限らない。
交流人口
その地域に定住はしないが、観光・仕事・買い物などで外から訪れる人。定住人口の減少を補う経済効果が期待され、本研究の中心概念。
経済波及効果(直接効果)
観光客が現地で支払う消費など、需要増が直接生む効果。本研究は「訪問者数×平均消費」で直接効果のみを概算した(間接・誘発効果は含まない)。

📐 使っている手法をわかりやすく解説

この研究は高度な統計モデルより、多様なデータを組み合わせて現状を描き、方策の効果を概算するアプローチが中心。使われている手法を注意点まで順に説明する。

全体像
多様な公的統計で現状把握(ランキング・国籍割合・滞在地・時系列) → 仮説(上位県の重なり) → 方策(地方発信・遍路) → 経済波及効果(直接効果)の概算。統計モデルの推定より、データを束ねて意思決定の材料にする実務的な分析である。
📊 ランキングによる位置づけ
何をする
ある指標で対象を順位づけて並べ、注目対象が全体のどこにいるかを示す。本研究は外国人延べ宿泊者数で愛媛を全国の中に位置づけた(図1)。
本研究での使い方
愛媛が全国35位=下位という現状を明確化し、「交流人口を増やす余地が大きい」という主張の出発点にした。
注意
実数のランキングは人口・規模に引っ張られる。人口当たりなど分母をそろえた比較や、絶対値だけでなく順位の意味も併せて読む。
📈 時系列トレンドの比較
何をする
同じ指標を時間順に並べ、対象間の差がいつ・どう広がったかを読む。本研究は四国4県の外国人宿泊を2012〜2023年で比較した(図3)。
本研究での使い方
「2014年頃から香川と愛媛の差が開く」という原論文の観察を、現行データで確認。コロナ禍の急減という新局面も同じ図で見える。
注意
外的ショック(コロナ等)で傾向が途切れることがある。異常な期間を区別し、単純な直線外挿で将来を語らない。
🔗 上位県の重なりによる仮説づくり
何をする
2つの指標それぞれの上位グループを並べ、どれだけ重なるかを見て関係の当たりをつける(原論文 表1)。
本研究での使い方
財政力指数と外国人訪問者数の上位10県が7県一致することから「交流人口↑→財政力↑」を仮説化した。
注意
重なりは相関の証明でも因果でもない。共通要因(人口・経済規模)による交絡を疑い、相関係数や回帰で検証する余地がある。
💴 経済波及効果(直接効果)の概算
何をする
「増加する訪問者数 × 一人当たり平均消費」で、観光客が現地で落とす直接的な消費額を見積もる。
本研究での使い方
方策Ⅰで2万人×22,785円≒約4.6億円、方策Ⅱで132,619人×22,785円≒約30億円と概算した。
注意
これは直接効果のみで、増加人数の想定に強く依存する。産業連関表を使う間接・誘発効果までは含まず、実現を保証する金額でもない。

🚀 発展の可能性(結果 X → 新仮説 Y → 課題 Z)

この研究の「交流人口で愛媛を活性化する」という発見は、次の研究の出発点になる。

発展1:仮説「交流人口↑→財政力↑」を相関・回帰で検証する
結果X
財政力指数と外国人訪問者数の上位10県が7県重なる、という記述的観察。
新仮説Y
47都道府県すべてで、外国人宿泊(交流人口)と財政力指数に本当に相関はあるのか。人口規模を統制しても残るのか。
課題Z
SSDSE-B の外国人延べ宿泊者数と財政関連指標で相関・回帰を計算し、人口を統制した偏相関で交絡を切り分ける(原論文は未実施)。
発展2:コロナ後の回復力を県間で比較する
結果X
四国4県の外国人宿泊は2020〜21年に急減し、2023年に回復(図3)。
新仮説Y
コロナ禍からの回復の速さは県によって違うのか。回復力を左右する要因(空港便・観光資源)は何か。
課題Z
各県の2019年比の回復率を時系列で比較し、回復の早い県の特徴を探る。愛媛の遍路・温泉資源が回復にどう効くかを検討する。

🎯 自分でやってみよう(5つのチャレンジ)

再現コードを少し変えるだけで試せる課題を、易しい順に用意した。

★☆☆☆☆ 難易度1
別の年のランキングを出す
図1は tour['年度'] == 2023 の外国人延べ宿泊者数を並べている。ここを 2019(コロナ前)に変えて、愛媛の順位や上位県の顔ぶれがどう変わるか見てみよう。
★★☆☆☆ 難易度2
総数(延べ宿泊者数)でランキングしてみる
図1は外国人延べ宿泊者数(G7102)を使っている。'外国人延べ宿泊者数''延べ宿泊者数'(G7101・日本人含む総数)に変えると、愛媛の順位はどう変わる? 外国人比率が低い県が見えてくる。
★★★☆☆ 難易度3
外国人比率(G7102÷G7101)で並べ替える
延べ宿泊者数に占める外国人の割合 外国人延べ宿泊者数 / 延べ宿泊者数 * 100 を計算して県別に並べてみよう。愛媛(約4.9%)が全国平均(約19%)よりかなり低い=外国人依存が小さいことを確かめる。
★★★★☆ 難易度4
四国以外の県を図3に加える
図3の shikoku リストに '広島県''岡山県' を足して、瀬戸内の近隣県と四国の推移を比べてみよう。愛媛の伸び悩みがより立体的に見える。
★★★★★ 難易度5
交流人口と財政力の相関を実データで確かめる
原論文がやらなかった検証に挑戦。SSDSE-B の外国人延べ宿泊者数を人口で割った値と、財政力に関連する指標との相関を47都道府県で計算し、上位県の重なりだけでは見えない全体の関係を調べてみよう(人口規模の交絡にも注意)。

💼 この発想は実社会でこう使われている

「多様なデータで現状を描き、施策の効果を概算して意思決定につなげる」発想は、観光・行政・ビジネスの現場で広く使われている。

🗾
観光振興・DMO
宿泊統計や国籍別データで自地域の強み・弱みを把握し、ターゲット国や体験コンテンツを絞って誘客策を設計する。本研究と同じ発想。
🏛️
自治体の政策立案
交流人口・関係人口の指標で人口減少を補う効果を試算し、移住・観光・イベントなど施策の優先順位づけに使う。
💹
経済波及効果の試算
イベントや新施設の集客見込みに平均消費額を掛けて経済効果を概算し、投資判断や合意形成の材料にする(産業連関表で間接効果まで広げる)。

🤔 よくある質問(読者からの想定Q&A)

この研究を読んで浮かびやすい疑問に答える。

Q. なぜ移住(定住人口)ではなく「交流人口」を選んだの?
A. 全国で人口が減る中、移住による人口増は他県との奪い合いになり、愛媛が増えても他県が減るだけになりがちです。そこで著者は、定住しなくても地域にお金を落とす交流人口(訪れる人・特に外国人観光客)に注目しました。
Q. 「交流人口が増えれば財政力が強化される」は証明されたの?
A. いいえ。根拠は財政力と外国人訪問の上位10県が7県重なるという記述的観察で、相関係数や回帰は算出されていません。大都市ほど両方が高いのは人口・経済規模という共通要因のためかもしれず、因果は示せていません。仮説の手がかりとして読むのが正確です。
Q. このページの図1・図3は原論文と同じ数値ですか?
A. 図1・図3は現行SSDSE-Bの外国人延べ宿泊者数(G7102)から作った実データです。原論文が使った「外国人訪問者数」(JNTO/FF-Data)とは別指標(延べ泊数 vs 人数)で調査年も違うため、絶対値は一致しません。傾向(愛媛は全国下位/香川に離される)が一致するかを実データで確かめています。新たな数値の捏造はしていません。
Q. 経済波及効果の約30億円はどのくらい信頼できる?
A. これは直接効果のみの概算で、「香川と同数まで外国人が増える」という想定に基づきます。増加人数自体が仮定なので、確実に得られる金額ではありません。施策の効果の目安として捉えるべきで、原論文の報告値であり本ページで計算し直したものでもありません。

✅ 理解度チェック(4問)

この論文を理解できたか、クリックで確認しましょう。間違えても解説が出ます。

🐍 ブラウザで動かす — インストール不要でこの論文の分析を再現する

このページの分析は、この画面の中でそのまま実行できます。 Python をインストールする必要も、CSV をダウンロードする必要もありません。 下のセルの 「▶ ブラウザで実行」 を上から順に押すか、 「▶ 最初から全部実行」 で一気に流してください。 表示されるのは、本文の図表とまったく同じ計算の結果です (動かしているのは再現スクリプト code/2018_H3_suri.py そのもの)。

コードは書き換えられます。「✏️ 書き換える」で数字や変数を変えて ▶ を押すと、 結果がどう変わるかをその場で確かめられます(元に戻すボタンつき)。 ページを開いた時点で裏で実行環境の準備が始まっているので、待ち時間はほとんどありません。 初回だけ実行環境の取得にインターネット接続が必要です。