Lesson 53

届出盛土等(法第21条第1項・40条第1項) 単独 3 研究例分析 — 盛土規制法二段階監督モデルを 284 件の届出から読み解く

L53盛土規制法届出盛土RQ×3Format B二段階監督経過措置L52比較累積効果
所要 40 分 / 想定レベル: 中級+ / データ: DoBoX dataset 1430 (CSV 284 行 + XLSX 規制資料) + L52 (dataset 1429) 比較

データ取得手順

このスクリプトは初回実行時にデータを自動取得します(DoBoX からの直接ダウンロード)。

IDデータセット名
#333dataset #333
#444dataset #444
#666dataset #666
#888都市計画区域情報_区域データ_安芸高田市_行政区域
#1429許可盛土等(法第12条第1項・30条第1項)
#1430届出盛土等(法第21条第1項・40条第1項)

実行コマンド:

cd "2026 DoBoX 教材"
python -X utf8 lessons/L53_notified_earthfill.py

DoBoX のオープンデータは申請不要・商用/非商用とも利用可。 data/extras/.gitignore 対象(約 57 GB のキャッシュ)。 スクリプト実行で自動再生成されます。

学習目標と問い

本記事は DoBoX のシリーズ「届出盛土等(法第21条第1項・40条第1項)」 1 件 (dataset_id = 1430) を 単独で取り上げ、 広島県内の届出盛土 284 件 (2023-09〜2025-03 期間) を 3 つの独立した研究角度 (RQ1 / RQ2 / RQ3) で並列に分析する。本データは 2021 熱海土石流を契機に 制定された盛土規制法 (2023-05-26 施行) の届出制下で、広島県知事が 受理した届出台帳である。

本記事の独自ポイントは、L52 (許可盛土 152 件) と並列で読むことで、 盛土規制法の「許可制 + 届出制」 の二段階監督モデルを初めてデータから可視化する点。 許可制は「強い禁止権 + 事前審査」 という重い手続きで大規模工事を捕捉するのに対し、 届出制は「情報把握のみ」 という軽い手続きで中規模工事を広くカバーする。 この設計が広島県の地理にどう実装されているかを、3 つの問いで読み解く。

独自用語の定義

研究の問い (3 RQ)

仮説 H1〜H5

  1. H1 (山間部偏重, RQ1): 上位 5 市町シェアは L52 (63%) より低い ~50% 。 届出盛土は山間部市町に分散立地し、許可制の都市部偏重と異なる地理を描く。
  2. H2 (届出 / 許可比 ≈ 1.87, RQ1): 件数は許可の 1.87 倍だが、 規模は経過措置による遡及届出が含まれるため許可と同等以上。
  3. H3 (経過措置遡及 50% 以上, RQ3): 工事着手日が法施行前の案件が大半。 届出制度の運用実態は「既存盛土の事後台帳化」 が主軸。
  4. H4 (累積土量の市町偏在, RQ2): 上位 3 市町の累積土量が全県の 50% を占める。 件数は分散していても、土量は集中する地理累積効果。
  5. H5 (警戒区域近接率 < L52, RQ2): 届出盛土の警戒区域近接率は許可制 (49%) より低い。 経過措置で山間平地・農地転用が多く含まれるため。

到達点

本記事を読み終えた学習者は次の 3 点を体感できる:

  1. 1 つの「届出台帳 CSV」 (284 行 × 14 列) から、盛土規制法の届出制度の運用実態を、 L52 (許可制) との対比で読み取る方法を習得する。
  2. 市町別累積土量の計算で、件数の偏在と土量の偏在が別軸であることを体感し、 地理累積効果の概念を獲得する。
  3. 経過措置遡及という制度移行特有の現象を、データから定量化することで、 「制度設計の本来目的と運用実態のギャップ」を読む眼を養う。

使用データ

DoBoX のシリーズ「届出盛土等(法第21条第1項・40条第1項)」 1 件のみを単独で扱う。 リソースは CSV 1 件 + XLSX 1 件の2 ファイル構造 (L52 と並行):

項目
dataset_id1430
名称届出盛土等(法第21条第1項・40条第1項)
組織広島県土木建築局 都市環境整備課
リソース 151165 — 届出台帳 CSV (284 行 × 14 列, 75.6 KB, 2025-08-26 版)
リソース 251166 — 盛土規制法関係資料 XLSX (規制内容 + 手続き先, 23.1 KB)
根拠法宅地造成及び特定盛土等規制法 (2022-05-27 公布, 2023-05-26 施行)
対象期間届出 2023-09-28 〜 2025-03-11 / 工事着手 1981-04-01 〜 2023-10-01
ライセンスクリエイティブ・コモンズ表示 4.0
取得日2026-05-09

データの構造

データ品質に関する注記

本データの精査中、以下のデータ品質課題を発見した。研究の透明性のため明記する:

これらのデータ品質課題は制度移行期の典型現象であり、 今後の届出台帳更新で漸次正規化されると予想される。研究結果の解釈時には注意が必要。

本記事は dataset 1430 を単独で扱う Format B 記事。 L52 (dataset 1429 = 許可盛土) との比較対照は二段階監督モデルの可視化に 不可欠なため、L52 の処理済 CSV (assets/L52_permits_processed.csv) を 参照する。土砂災害警戒区域 (sediment_shp) は L10/L11 で扱った既存データを RQ2 で空間結合に利用するが、警戒区域そのものの分析は別レッスンに委ねる。

ダウンロード

本レッスンの再現に必要な全データ・中間 CSV・図 PNG・スクリプトを以下から直接 DL できる:

生データ (DoBoX 直リンク)

本記事の中間 CSV (再現用)

図 (PNG 9 枚)

再現スクリプト

個別取得 (PowerShell):

cd "2026 DoBoX 教材"
iwr "https://hiroshima-dobox.jp/resource_download/51165" -OutFile "data/extras/L53_notified_earthfill/340006_reported_earth_filling_21-1_40-1_declaration_register_20250826.csv"
iwr "https://hiroshima-dobox.jp/resource_download/51166" -OutFile "data/extras/L53_notified_earthfill/340006_earth_filling_regulation_related_documents.xlsx"
py -X utf8 lessons\L53_notified_earthfill.py

注: 本記事の比較研究 (L52 との対比) には L52 の処理済 CSV (lessons/assets/L52_permits_processed.csv) が必要。事前に L52 を実行しておくと完全再現できる。 未生成の場合、本スクリプトは比較部分を「データ無し」 表示にしてフォールバック実行する。

【RQ1】 地理分布と件数構造の研究 — 届出盛土 284 件と許可盛土 (L52) の比較

狙い (RQ1)

届出盛土 284 件は L52 許可盛土 152 件の約 1.87 倍の件数で、 盛土規制法の軽い手続側 (届出制)を担う。本 RQ1 では地理分布 + 規模分布 + 工事主体 + 許可制との比較の4 軸で構造を読む。これは「県は何を、どこで、どんな規模で、誰が、 許可とどう違う形で監督しているか」 を全方位で記述する基礎研究。

手法 (CSV パース → GeoDataFrame → 集計 → L52 比較)

入出力 Before/After 具体例 (1 件追跡)

整理番号 「西0001」 (1 行目) の CSV → 数値化への変換例:

段階整理番号届出高さ面積盛土量工事主
RAW (CSV)西00012023-10-121.67074.286515.9東亜地所株式会社...
1. 数値化 + prefixprefix=西2023-10-121.6 m7074 m²6516 m³民間法人
2. 規模分類L_大規模 (≥2000m²)
3. 制度区分G_経過措置遡及 (start=2022)
4. 警戒距離海田町に立地

実装コード (CSV パース + GeoDataFrame + L52 比較読込)

L53_notified_earthfill.py 行 1685–1774

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# CSV パース + GeoDataFrame 化 + L52 比較読込
import pandas as pd, geopandas as gpd, re, numpy as np
from pathlib import Path

df = pd.read_csv("340006_reported_earth_filling_21-1_40-1_declaration_register_20250826.csv",
                 encoding="utf-8")

# L52 と同じパース関数を再利用
def parse_height(s):
    if pd.isna(s): return np.nan
    nums = re.findall(r"\d+\.?\d*", str(s))
    return max(float(x) for x in nums) if nums else np.nan

def parse_numeric(s):
    if pd.isna(s) or str(s).strip() in ("―","-","ー",""): return np.nan
    m = re.search(r"(\d+\.?\d*)", str(s).replace(",", ""))
    return float(m.group(1)) if m else np.nan

df["height_max_m"] = df["盛土切土の高さ又は土石の堆積の最大堆積高さ(m)"].apply(parse_height)
df["area_m2"]      = df["盛土切土又は土石の堆積を行う土地の面積(m2)"].apply(parse_numeric)
df["fill_m3"]      = df["盛土の土量又は土石の堆積の最大堆積土量(m3)"].apply(parse_numeric)

# 整理番号 prefix (受理事務所手がかり)
df["ref_prefix"] = df["整理番号"].astype(str).str.extract(r"^([^\d]+)")[0]

# 主体分類 (届出は電力・JR が登場するため「公共/インフラ」)
def classify(s):
    if re.search(r"町長|市長|機構|公社|電力|JR", str(s)): return "公共/インフラ"
    if re.search(r"株式会社|有限会社|地所|開発", str(s)): return "民間法人"
    return "個人/その他"

df["owner_type"] = df["工事主"].apply(classify)

# Point geometry (EPSG:4326 → 6671)
gdf = gpd.GeoDataFrame(df,
    geometry=gpd.points_from_xy(df["座標(経度)"], df["座標(緯度)"]),
    crs="EPSG:4326").to_crs("EPSG:6671")

# L52 比較データ読込 (任意)
l52_path = Path("lessons/assets/L52_permits_processed.csv")
df_l52 = pd.read_csv(l52_path, encoding="utf-8-sig") if l52_path.exists() else None
todoke_kyoka_ratio = len(gdf) / len(df_l52) if df_l52 is not None else None

図 1: 県全域 284 点マップ + 市町別件数コロプレス (2 panel)

なぜこの図か: 学習者がまず「届出盛土はどこに集中しているか」 を 一目で把握するため。L52 (許可) では沿岸都市部 (東広島・尾道・廿日市) に集中していたが、 L53 (届出) は分布パターンが異なるはず — それを左の点マップ + 右のコロプレスで対比する。 背景には警戒区域を薄く重ね、RQ2 への伏線にもなる。

図 1 (RQ1): 届出盛土 284 件の地理分布 (点マップ + コロプレス)
図 1 (RQ1): 届出盛土 284 件の地理分布 (点マップ + コロプレス)

この図から読み取れること:

図 2: 規模分布 (高さ・面積・土量) — 届出 vs 許可 中央値比較

なぜこの図か: 「届出盛土 (L53) と許可盛土 (L52) のどちらが規模が大きいか」 という 仮説検証の中核。直感的には「届出 < 許可」 (= 規模閾値以下が届出) だが、 経過措置による遡及届出には旧法時代の大規模盛土も含まれるため、 中央値比較は予想を裏切る可能性がある。3 軸 (高さ・面積・土量) を log で並列。

図 2 (RQ1): 規模分布 — 届出 (L53) と許可 (L52) の中央値比較
図 2 (RQ1): 規模分布 — 届出 (L53) と許可 (L52) の中央値比較

この図から読み取れること:

図 3: 許可 (L52) vs 届出 (L53) 併置マップ + 市町別件数比較

なぜこの図か: 二段階監督モデルの地理的実装を 1 図で見る。 左で点 (許可=赤△ vs 届出=青○) を県地図上に併置し、 右で市町別件数を横並べ棒で比較する。両者の地理パターンの違いを直接読む。

図 3 (RQ1): 許可 (L52) と 届出 (L53) の併置 — 二段階監督モデル
図 3 (RQ1): 許可 (L52) と 届出 (L53) の併置 — 二段階監督モデル

この図から読み取れること:

表: 全体サマリ (届出 vs 許可 比較)

指標
総件数284 件
対象市町数19 市町
最大高さ 中央値 / 最大5.00m / 105.00m
面積 中央値 / 最大3,700 m² / 302,733 m²
盛土量 中央値 / 最大5,702 m³ / 4,819,625 m³
累積盛土量26,079,055 m³ (26.08 百万 m³, 25m プール約 34,772 杯)
民間法人シェア79.2%
経過措置遡及 (start<法施行)214 件 (75.4%)
純新規届出 (start>=法施行)70 件 (24.6%)
最古工事着手1981-04-01
警戒区域内 件数2 件 (0.7%)
警戒区域 100m 以内 (含む区域内)102 件 (35.9%)
熱海型 (高さ≥5m+面積≥5000m²)99 件 (34.9%) [L52 = 10.5%]
最大盛土 (面積)302,733 m² @ 竹原市
届出 / 許可 比284/152 = 1.87

この表から読み取れること: 284 件の届出盛土は 22 市町に分散し、民間法人 79%、警戒区域内+100m 36%、熱海型 34.9%、経過措置遡及 75% という5 軸の構造的事実が初めて定量化された。L52 (許可) との対比から、二段階監督モデルの初期運用実態が読み取れる。

表: 市町別件数 + 累積土量 ランキング (Top 15)

順位市町名届出件数シェア_%許可件数_L52届出/許可比累積盛土量_m3土量シェア_%高さ中央値_m面積中央値_m2
1三原市4214.80123.501,455,9845.585.605,918
2尾道市3311.60221.50316,2641.213.001,184
4庄原市258.8064.171,060,1974.0712.758,479
3三次市258.80131.921,281,4154.918.504,260
5東広島市248.50350.6902,372,7859.104.257,768
6安芸高田市217.4045.251,729,3896.634.001,250
7竹原市196.70101.9010,937,23241.943.906,307
8世羅町155.3062.50377,1861.459.707,211
10北広島町144.9027.001,188,5094.563.241,467
9廿日市市144.90141.0099,7410.3801.702,688
11江田島市113.9025.504,674,50417.924.601,518
12神石高原町113.90111.00210,2590.8104.50970.00
13府中市103.5025.00173,5540.6704.701,818
15熊野町62.1032.0053,4050.2005.00529.00
14大竹市62.1023.0024,7440.0905.002,320

この表から読み取れること: 届出件数の上位市町は (三原市, 尾道市, 三次市, 庄原市, 東広島市) で全体の 52% を占める。同表で許可件数 (L52) と並べることで、届出 / 許可比が市町別に異なる事実が見える: ある市町は届出のみ多い (= 山間部の中規模)、ある市町は両方多い (= 都市部の混在)、ある市町は許可だけ多い (= 高密度都市開発)。累積盛土量シェアと件数シェアが乖離する市町もあり、これは図 4 の累積 choropleth と整合する。

表: 整理番号 prefix (受理事務所手がかり) Top 10

prefix件数代表市町シェア_%
?117三原市41.20
西43北広島町15.10
31世羅町10.90
30庄原市10.60
16竹原市5.60
東広島市 14東広島市4.90
12廿日市市4.20
11神石高原町3.90
10江田島市3.50

この表から読み取れること: 整理番号 prefix は県の建設事務所別シリアル番号と推察される (西=西部建設事務所、東=東部、北=北部、竹=竹原支所、神=神石支所等)。件数最多 prefix は地理的に対応市町と一致 → 届出受理体制が地域分業されていることを示す。個別市町の窓口に届出が集約される行政運営構造が見える。

【RQ2】 累積土量と警戒区域研究 — 中規模が多数の地理累積効果

狙い (RQ2)

届出盛土 284 件は個別では中規模 (= 許可閾値以下) でも、 多数が地理に集積することで累積的な地形改変効果を生む。 本 RQ2 では (1) 累積土量の市町別偏在、(2) 警戒区域との空間関係 (L52 と比較)、 (3) 中〜大規模盛土のパッチワーク立地 を読み解く。

累積土量という指標は件数とは異なる軸で偏在を示す。 件数が分散していても、1 件の大規模盛土が圧倒的な土量を占めて市町別ランキングを変える可能性がある。 これは「中規模が多数 = 累積で大規模」 という直観と必ずしも一致せず、 「少数の超大規模 + 多数の中小規模」という分布構造が現れるかもしれない。

手法 (累積集計 + STRtree 警戒区域距離)

入力: 284 Point + 43K polygon + L52 距離分布。
出力: 284 行に dist_kyukei_m, dist_doseki_m, warn_class、市町別累積土量。
限界: 「累積土量」 は単純合計で、盛土の体積分布は無視している (= 1 つの 5 万 m³ と 100 件 × 500 m³ は同じ累積扱い)。本記事の累積指標は 「行政が監督する土量の総量」 を表す。

実装コード (累積集計 + STRtree 距離)

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# 累積土量 + 警戒区域距離 + L52 比較
from shapely import STRtree

# 1. 市町別累積
city_volume = gdf.groupby("市町名").agg(
    件数=("ref_no", "count"),
    累積盛土量_m3=("fill_volume_m3", "sum"),
).sort_values("累積盛土量_m3", ascending=False)
top3_share = city_volume.head(3)["累積盛土量_m3"].sum() / city_volume["累積盛土量_m3"].sum()

# 2. 警戒区域までの距離 (STRtree)
def nearest_dist(points, polys):
    tree = STRtree(polys.values)
    out = np.zeros(len(points), dtype=np.float32)
    for i, pt in enumerate(points.values):
        idx = tree.nearest(pt)
        out[i] = pt.distance(polys.values[idx])
    return out

gdf["dist_kyukei_m"] = nearest_dist(gdf.geometry, warn_kyukei.geometry)
gdf["dist_doseki_m"] = nearest_dist(gdf.geometry, warn_doseki.geometry)
gdf["dist_warn_m"]   = gdf[["dist_kyukei_m", "dist_doseki_m"]].min(axis=1)

# 3. 距離区分 (L52 と統一)
def warn_class(d):
    if d == 0:    return "0_警戒区域内"
    if d <= 100:  return "1_100m以内 (隣接)"
    if d <= 500:  return "2_100-500m (近接)"
    return "3_500m超 (離隔)"
gdf["warn_class"] = gdf["dist_warn_m"].apply(warn_class)

図 4: 市町別累積土量 choropleth + 上位 15 市町ランキング (log)

なぜこの図か: 件数の偏在 (図 1) と土量の偏在 (図 4) を別軸で見る。 件数 Top 5 と土量 Top 5 が一致しないことが「累積効果の独自軸」 の証拠になる。 右の log 軸ランキングで、上位市町が下位市町より何桁多い土量を扱っているかを一目で読む。

図 4 (RQ2): 市町別累積盛土量 choropleth + Top 15 ランキング
図 4 (RQ2): 市町別累積盛土量 choropleth + Top 15 ランキング

この図から読み取れること:

図 5: 警戒区域オーバーレイ + 距離分布比較 (届出 vs 許可)

なぜこの図か: L52 で確認した「許可盛土の警戒区域近接率 49%」 と 本データの近接率を直接比較する。届出盛土は経過措置で農地・山間平地も含むため、 許可制より離隔立地が多いはず。これを 2 panel (左: 地図, 右: 比較ヒスト) で示す。

図 5 (RQ2): 警戒区域オーバーレイ + 距離分布比較 (届出 vs 許可)
図 5 (RQ2): 警戒区域オーバーレイ + 距離分布比較 (届出 vs 許可)

この図から読み取れること:

図 6: 中〜大規模届出盛土の累積パッチワーク (盛土量サイズ表示)

なぜこの図か: 「中規模が多数 = 累積で大規模」 の仮説を地理上で確かめる。 小規模 (戸建相当) は除外し、中規模 + 大規模 + 熱海型のみを 土量 (=サイズ) で表示。多数の中規模点が地理に集積する様子と、少数の巨大点が支配する場所を 1 つの地図で並列表示する。

図 6 (RQ2): 中〜大規模届出盛土の累積パッチワーク
図 6 (RQ2): 中〜大規模届出盛土の累積パッチワーク

この図から読み取れること:

表: 警戒区域距離区分サマリ (届出 vs 許可)

距離区分件数シェア_%L52_許可件数L52_シェア_%最小距離_m中央距離_m最大距離_m
0_警戒区域内20.70032.000.0000.0000.000
1_100m以内 (隣接)10035.207247.400.88551.6798.71
2_100-500m (近接)14952.505938.80100.62220.06488.86
3_500m超 (離隔)3311.601811.80512.29728.081,557

この表から読み取れること: 届出盛土の警戒区域内 + 100m 以内は36% (L52 許可は 49%)。離隔 (500m+) は届出 12% vs 許可で大きな差 → 届出盛土は経過措置で農地・山間平地を含むため、許可制より広く分散立地。ただし区域内立地はゼロでなく、災害想定区域内の既存盛土が一定数行政把握下にある。

表: 規模カテゴリ集計 (届出 vs 許可)

規模カテゴリ件数シェア_%L52_許可件数L52_シェア_%高さ中央値_m面積中央値_m2盛土量中央値_m3盛土量合計_m3
L_大規模 (3m+ or 2000m²+)13748.205938.804.002,1413,5353,045,639
S_熱海型 (5m+5000m²+)9934.901610.5017.009,90846,73022,608,695
M_中規模 (1.5m+ or 500m²+)4515.807046.101.50900.00787.0041,052
S_小規模 (戸建相当)20.70074.601.07229.69286.25572.50
未分類10.40000.00015.00nan383,096383,096

この表から読み取れること: 中規模 + 大規模が累積土量の主軸で、届出と許可でカテゴリ構成が類似。熱海型は L53 = 99 件 (34.9%) vs L52 = 16 件 (10.5%)。規模カテゴリで明確な棲み分けはない → 経過措置遡及により大規模も届出に含まれるため。盛土量合計列で「中規模が多数 = 累積で大規模」 仮説の数値根拠が確認される。

【RQ3】 制度設計検証 — 二段階監督モデルと経過措置遡及

狙い (RQ3)

届出制度の本来目的は「許可不要規模の新規工事を、行政が事前に把握する」 こと。 しかし本データの大半は経過措置遡及 (= 法施行前から存在する既存盛土の事後届出)。 この事実は二段階監督モデルの運用実態本来目的のずれを示唆する。 本 RQ3 は (1) 経過措置遡及の比率と年代分布、(2) 純新規届出との規模差、 (3) 二段階監督モデル全体の制度比較表を読み解く。

手法 (制度区分分類 + 着手日 vs 届出日散布)

入力: 284 行に start_date, declare_date が付与済。
出力: regime_class (G/N/X) を新たに付与。
限界: 工事着手日が大幅に古い案件 (1981 年等) は、 当時の盛土が未管理のまま現在まで存在し続けた = 本データで初めて行政台帳化された 「埋没盛土」と解釈できる。これは制度的に重要な発見だが、 施工当時の安全性は本データでは検証不可能。

実装コード (制度区分分類)

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# 経過措置遡及 vs 純新規届出 の制度区分
import pandas as pd, numpy as np

LAW_ENFORCED = pd.Timestamp("2023-05-26")  # 盛土規制法 施行日

def regime_class(row):
    if pd.isna(row["start_date"]):    return "X_着手不明"
    if row["start_date"] < LAW_ENFORCED:  return "G_経過措置遡及"
    return "N_純新規届出"

gdf["regime_class"] = gdf.apply(regime_class, axis=1)

# 経過措置遡及 = 法施行前に着手した工事の届出
grandfathered = gdf[gdf["regime_class"] == "G_経過措置遡及"]
print(f"経過措置遡及: {len(grandfathered)} 件 ({100*len(grandfathered)/len(gdf):.1f}%)")
print(f"最古工事着手: {grandfathered['start_date'].min().date()}")

# 着手から届出までの遅延 (日)
gdf["delay_days"] = (gdf["declare_date"] - gdf["start_date"]).dt.days

図 7: 届出日 vs 着手日 散布 + 工事着手年ヒスト (経過措置遡及の時間構造)

なぜこの図か: 「届出日 vs 着手日」 という2 つの時間軸を 1 図に重ねることで、経過措置遡及の構造を可視化。法施行ライン (縦+横) と対角線 (届出=着手) の相対位置で、各案件の制度的位置付けが一目で分かる。 右ヒストは経過措置遡及の遡及範囲を年代別に集計し、最古を強調。

図 7 (RQ3): 届出日 vs 着手日 + 工事着手年分布
図 7 (RQ3): 届出日 vs 着手日 + 工事着手年分布

この図から読み取れること:

図 8: 規模カテゴリ パイ + 高さ × 面積 散布 (届出 vs 許可重ね)

なぜこの図か: 左パイで届出 (L53) の規模構成、 右散布で許可 (L52) との重ねを見る。図 2 (中央値比較) では分布の中央値しか見えなかったが、 散布図では個別の点として「届出と許可がどう棲み分けているか」 を視覚的に検証できる。

図 8 (RQ3): 届出 規模構成 + 高さ × 面積 (許可との重ね)
図 8 (RQ3): 届出 規模構成 + 高さ × 面積 (許可との重ね)

この図から読み取れること:

図 9: 上位 12 市町 × 規模 + 制度区分 stacked (RQ1+RQ2+RQ3 統合)

なぜこの図か: 3 RQ の知見を 1 図に統合 — 左で市町 × 規模、 右で市町 × 制度区分 (経過措置 vs 純新規)。同じ y 軸 (Top 12 市町) で並べることで、 「件数の多い市町は規模が偏るか?」 「件数の多い市町は経過措置遡及が多いか?」 を 横断的に読む。

図 9 (統合 RQ1+RQ2+RQ3): 上位 12 市町の規模 × 制度区分
図 9 (統合 RQ1+RQ2+RQ3): 上位 12 市町の規模 × 制度区分

この図から読み取れること:

表: 制度区分集計 (経過措置遡及 vs 純新規届出)

制度区分件数シェア_%高さ中央値_m面積中央値_m2盛土量中央値_m3盛土量合計_m3最古工事着手
経過措置遡及 (start<法施行)21475.405.10532811922256523941981-04-01
純新規届出 (start≥法施行)7024.601.95156313664266602023-06-05

この表から読み取れること: 経過措置遡及 214 件 (75%) が大半を占め、純新規届出は少数。経過措置遡及の最古工事着手は 1981-04-01 (42 年前!) で、旧法時代の埋没盛土が新法で初めて行政把握下に入った。規模中央値も経過措置遡及 ≥ 純新規 という傾向 → 旧法時代の大規模工事が遡及届出されている。

表: 経過措置遡及 最古 15 件 (1981-1995)

整理番号工事着手届出日市町名高さ_m面積_m2盛土量_m3規模警戒距離区分
21981-04-012023-10-18大竹市5.002,0111,200L_大規模 (3m+ or 2000m²+)1_100m以内 (隣接)
31981-04-012023-10-18大竹市5.002,6291,600L_大規模 (3m+ or 2000m²+)1_100m以内 (隣接)
11981-09-022023-09-28尾道市2.00200.00300.00M_中規模 (1.5m+ or 500m²+)1_100m以内 (隣接)
61993-11-012024-11-19熊野町5.00440.001,400L_大規模 (3m+ or 2000m²+)1_100m以内 (隣接)
51993-11-012024-11-19熊野町5.00618.002,241L_大規模 (3m+ or 2000m²+)1_100m以内 (隣接)
41993-11-012024-03-07熊野町5.0084.00180.00L_大規模 (3m+ or 2000m²+)1_100m以内 (隣接)
31993-11-012024-03-07熊野町5.00409.50911.00L_大規模 (3m+ or 2000m²+)1_100m以内 (隣接)
第146915号1995-02-012023-10-23廿日市市3.002,0603,953L_大規模 (3m+ or 2000m²+)1_100m以内 (隣接)
9071995-04-282024-11-27安芸高田市5.001,0611,918L_大規模 (3m+ or 2000m²+)1_100m以内 (隣接)
竹00061996-09-262023-10-13竹原市0.800302,733242,000L_大規模 (3m+ or 2000m²+)2_100-500m (近接)
本00091996-09-262023-10-13竹原市0.800302,733242,000L_大規模 (3m+ or 2000m²+)2_100-500m (近接)
71998-04-012023-10-11三次市18.001,99814,000L_大規模 (3m+ or 2000m²+)2_100-500m (近接)
61998-04-012023-10-11三次市26.003,74214,000L_大規模 (3m+ or 2000m²+)2_100-500m (近接)
51998-04-012023-10-11三次市16.002,84710,000L_大規模 (3m+ or 2000m²+)3_500m超 (離隔)
本00012000-03-242023-09-28三原市6.00296,360199,300S_熱海型 (5m+5000m²+)2_100-500m (近接)

この表から読み取れること: 1981 年・1993 年・1995 年等、40 年以上前に着手した盛土が現在まで管理外で存在し続けていた事実が読み取れる。これらの埋没盛土は施工当時の安全基準が緩く、現法準拠の安全性は不明。事後点検が必要な重要案件群で、発展課題 3 で議論する。

表: 熱海型 (≥5m+≥5000m²) 全件詳細

整理番号届出日工事着手市町名高さ_m面積_m2盛土量_m3警戒距離制度区分
本00012023-09-282000-03-24三原市6.00296,360199,3002_100-500m (近接)G_経過措置遡及
本00032023-09-282023-03-01江田島市105.00281,1312,813,6802_100-500m (近接)G_経過措置遡及
本00082023-10-112019-06-14竹原市95.00209,8634,819,6252_100-500m (近接)G_経過措置遡及
竹00052023-10-112019-06-14竹原市95.00209,8634,819,6252_100-500m (近接)G_経過措置遡及
本00052023-10-122007-07-01北広島町19.40105,569636,9002_100-500m (近接)G_経過措置遡及
本00022023-09-282010-01-27江田島市65.0085,2601,662,2213_500m超 (離隔)G_経過措置遡及
本00072023-10-162020-05-21東広島市52.0078,2881,313,1003_500m超 (離隔)G_経過措置遡及
本00062023-10-022010-03-30大竹市20.0059,81019,5601_100m以内 (隣接)G_経過措置遡及
東00122023-10-102022-01-21三原市15.0049,997106,2893_500m超 (離隔)G_経過措置遡及
西00182023-10-132020-04-01北広島町37.0048,675406,5012_100-500m (近接)G_経過措置遡及
西00202024-06-202008-07-14北広島町33.5042,27066,4932_100-500m (近接)G_経過措置遡及
北00052024-06-032020-04-01庄原市20.8039,551136,9983_500m超 (離隔)G_経過措置遡及
西00302023-10-182022-07-13東広島市5.9039,47961,4001_100m以内 (隣接)G_経過措置遡及
西00372023-10-182018-03-30江田島市14.5037,878105,0002_100-500m (近接)G_経過措置遡及
北00032023-10-042010-10-07三次市21.6037,801209,0002_100-500m (近接)G_経過措置遡及
北00012023-10-022011-09-30庄原市5.0037,799133,3053_500m超 (離隔)G_経過措置遡及
西00312023-10-182019-12-23東広島市27.5036,694210,8492_100-500m (近接)G_経過措置遡及
西00272024-08-232014-07-18東広島市55.0032,12886,0812_100-500m (近接)G_経過措置遡及
西00262023-10-122014-04-14東広島市19.3031,087156,7332_100-500m (近接)G_経過措置遡及
北00302024-09-022020-08-17安芸高田市20.9030,25352,2021_100m以内 (隣接)G_経過措置遡及

この表から読み取れること: 届出 熱海型 99 件のうち上位 20 件を表示。ほぼ全てが経過措置遡及 = 旧法時代の大規模盛土で、新法で初めて台帳化。盛土量が数十万 m³ 級の超大型も含まれ、これらは個別に施工監視・完成後点検を要する重要案件。L52 の熱海型 (新法下の新規許可) と性格が大きく異なる。

仮説検証総合

本記事の 5 仮説と観測結果の照合:

仮説予想観測判定
H1 (山間部偏重・上位 5 市町集中度 < L52, RQ1)上位 5 シェア 50% 程度 (L52 = 63.2% より低い)上位 5 = ['三原市', '尾道市', '三次市', '庄原市', '東広島市'], シェア 52.5%支持
H2 (届出 / 許可比 ≈ 1.87, 規模は許可と同等以上, RQ1)届出 / 許可 = 1.87 倍, 規模は経過措置で許可と同等以上届出 284 / 許可 152 = 1.87, L53 面積中央値 3700 m² vs L52 968 m²支持
H3 (経過措置遡及 50% 以上, RQ3)工事着手 < 法施行 が 50% 以上経過措置遡及 214 件 (75.4%), 純新規 70 件 (24.6%), 最古着手 1981 年支持
H4 (上位 3 市町 累積土量シェア ≥ 50%, RQ2)上位 3 市町で累積土量の 50% 以上を占める上位 3 (竹原市, 江田島市, 東広島市) で 69.0%, 全県累積 26.08 百万 m³支持
H5 (警戒区域近接率 < L52, RQ2)区域内+100m が L52 (49.3%) より低いL53 区域内+100m = 102 件 (35.9%)支持

3 RQ × 3 結論

二段階監督モデル — 許可制 (L52) vs 届出制 (L53) 比較表

側面許可制 (L52)届出制 (L53)
根拠条文法 12 条 1 項 (宅造区域) / 30 条 1 項 (特定盛土区域)法 21 条 1 項 (宅造区域) / 40 条 1 項 (特定盛土区域)
規模閾値盛土 1m 超 / 切土 2m 超 / 面積 500m² 超 等上記閾値以下でも規制区域内なら届出
本データ件数152 件 (2023-11〜2026-01)284 件 (2023-09〜2025-03)
高さ 中央値2.25m5.00m
面積 中央値968 m²3,700 m²
盛土量 中央値671 m³5,702 m³
経過措置 (法 22/41 条) 適用なし (新法下の新規許可のみ)あり (214 件 = 75% が遡及届出)
工事着手最古新法施行後 (2023-11〜)1981-04-01 (旧法時代の盛土を含む)
行政の監督力事前審査・許可条件・崖面防止施設要件 等の強い制限事前通知のみ。禁止権はなく情報把握が主目的
二段階監督モデルの含意高リスク案件 (大規模・崖面生成) を強制審査中規模を含む地理パッチワークのカバレッジ拡張

この表から読み取れること: 許可制 (L52) と届出制 (L53) は同じ盛土規制法の下で規模閾値で棲み分ける制度設計だが、実装は (1) 件数比 1.87 (届出 > 許可)、(2) 規模中央値は届出 ≥ 許可 (経過措置のため)、(3) 経過措置遡及により本来想定された棲み分けがぼやける、(4) 行政の監督力は許可 (強制限) > 届出 (情報把握) と差が大きい — の 4 軸で非対称。二段階監督は規模カバレッジを広げる利点がある一方、監督力の弱い届出制が中〜大規模盛土をどう実効的に監視するかは今後の制度課題。

発展課題

結果 X → 新仮説 Y → 課題 Z (3 RQ × 1 課題以上)

発展課題 1 (RQ1 由来): 件数比の人口・面積補正

発展課題 2 (RQ2 由来): 累積土量の地形・水文影響

発展課題 3 (RQ3 由来): 経過措置遡及の管理連続性検証