Lesson 97

L97: 市町別建物用途多様性指数 — 商業コアの衰退を可視化する

都市計画多様性指数建物利用現況クラスタ分析非防災情報理論
所要 60分 / 想定レベル: 応用基礎 / データ: 都市計画区域情報_建物利用現況 (7市町)

データ取得手順

使用データセット:DoBoX 「都市計画区域情報_建物利用現況」シリーズ(7市町)

市町dataset_id棟数
広島市#1469~350,000
福山市#1483~200,000
呉市#1323~60,000
三次市#1327~31,000
府中市#512~15,000
竹原市#1474~15,000
海田町#1316~7,000

各データセットは GeoJSON 形式。TATE_YO 列(建物用途コード)を主分析対象とする。

L13 との違い: L13 は 20 市町 × 2 種類(建物/土地利用)の広域統合分析。 本記事は シャノン多様性指数という情報理論的指標に特化した独立分析。

学習目標と問い

このレッスンで答えたい問い

立てた仮説

シャノン多様性指数とは

H = -Σ(p_i × log₂(p_i)) (生物多様性指数の情報理論版)
p_i = 用途区分 i の棟数比率
H = 0: 全棟が同一用途(単機能)
H = log₂(n): 全 n 用途が均等分布(最大多様性)

分析1: 多様性指数ランキングと住商比率 (RQ1)

図1左: 市町別 Shannon 多様性指数ランキング; 図1右: 商業率 vs 住宅率散布図(色=多様性指数)
図1左: 市町別 Shannon 多様性指数ランキング; 図1右: 商業率 vs 住宅率散布図(色=多様性指数)

市町別統計サマリ

市町棟数多様性指数 H商業系比率住宅系比率
三次市31,8272.25213.9%63.2%
海田町11,0482.2064.9%73.2%
府中市25,3682.0694.9%73.6%
竹原市23,5301.9127.5%75.4%
福山市250,2841.8387.5%77.7%
広島市350,7741.7208.6%83.1%
呉市94,5581.4757.3%85.0%

政令市(広島市)と地方小都市(府中市・竹原市)の間での多様性指数の差は、 都市規模・経済機能の差を反映する「都市機能の豊かさ指標」として解釈できる。

分析2: 建物用途構成比較 (RQ2)

図2: 市町別 建物用途構成比率(積み上げ棒グラフ、主要 8 カテゴリ)
図2: 市町別 建物用途構成比率(積み上げ棒グラフ、主要 8 カテゴリ)

専用住宅(411)の支配的な比率は、日本の多くの地方都市において 「建物のほとんどが一戸建て住宅」であることを示す。 商業・業務系の厚みが、都市の経済的中心性を反映している。

分析3: 用途構成類似度によるクラスタリング (RQ3)

図3: 用途構成コサイン類似度に基づく階層クラスタ デンドログラム
図3: 用途構成コサイン類似度に基づく階層クラスタ デンドログラム

コサイン類似度を距離指標とした Ward 法クラスタリングは、 都市の「用途構成プロファイル」の類似性に基づいてグループ化する。 大都市(広島市・福山市)と地方小都市(三次市・竹原市)の 構造的差異がデンドログラムに現れる。

仮説検証と考察

仮説結果根拠
H1: 広島市が最多多様性棄却 (最多多様: 三次市) 広島市 H = 1.720
H2: 地方都市で住宅 ≥60%支持 (広島市, 福山市, 呉市, 三次市, 府中市, 竹原市, 海田町) 三次市: 63.2%, 竹原市: 75.4%
H3: 商業コア比率最大は広島/福山棄却 (最大: 三次市) 最大: 三次市 (13.9%)
H4: 都市型・地方型に分離目視確認 (デンドログラム参照) デンドログラム(図3)で確認

考察

シャノン多様性指数は単純な棟数分布から都市の「機能的豊かさ」を 情報理論的に定量化する強力な指標である。 商業コア比率との組み合わせにより、「多様かつ商業機能が充実した都市」 と「住宅主体の単機能都市」を明確に識別できる。 この分析アプローチは、コンパクトシティ政策の評価・ 商店街衰退指標の設計・地域間格差の定量化に直接応用できる。

発展課題(結果から導かれる新たな問い)