データ取得手順
⚠️ このスクリプトは自動取得に対応していません。以下のデータセットを DoBoX から手動でダウンロードし、data/extras/ 以下に保存してください。
実行コマンド:
cd "2026 DoBoX 教材"
python -X utf8 lessons/L81_surface_basin.py
DoBoX のオープンデータは申請不要・商用/非商用とも利用可。
data/extras/ は .gitignore 対象(約 57 GB のキャッシュ)。
スクリプト実行で自動再生成されます。
学習目標と問い
本記事は DoBoX のシリーズ「調節池基本情報」 1 件
(dataset_id = 1272) を単独で取り上げ、 広島県管理の
地表式洪水調節池 7 基を 3 つの独立した研究角度
(RQ1 / RQ2 / RQ3) で並列に分析する。 兄弟データセット 地下調節池基本情報
(#1271, n=1, L80 主役)を RQ3 で従属参照のみに
留め、 主軸は徹底して地表式 7 基に置く。 L80 と L81 は同じ調節池族を
扱うが、 主役と従属を完全に入れ替えた対構造の関係にある。
本記事の独自定義 (本セクションで初出):
- 地表式調節池: 河川の洪水流量の一部を、 地表面に設けた
池 (= ベイスン)に一時貯留する治水施設。 広島県管理の本データ
は全 7 基すべて自然調節 (= 越流堤 + 重力放流)方式で、
動力を要さず無人運用できる。 用地に余裕のある中山間〜郊外に
採用される。 河川法 (1964) 第 26 条が規定する河川区域内工作物のうち、
洪水調節池区分。
- 自然調節 (= 重力放流): 越流堤・流出制御口など地形と高低差
のみを使う無動力の貯留〜排水方式。 ポンプや電力を必要とせず、
停電・断水時にも自律的に機能する。 維持コスト・故障リスクが地下式
(ポンプ放流) より低い反面、 排水時間は流域降雨条件に依存する。
- 越流堤: 設計水位を超えた水だけが堤体上を越流して下流へ
流れる構造。 「ある一定量を超えたら自動的に下流へ」 という流量
平準化の物理的機構。 地表式調節池の流出制御の主流方式。
- Multi-purpose Land Use (多目的土地利用): 1 つの土地を
複数の目的で同時利用すること。 本記事では、 地表式調節池を
「洪水時 = 一時貯留装置 / 平常時 = 公園・運動場・親水空間」
の 2 用途で使う設計思想を指す。 本概念は地下調節池 (L80) の地下
空間と地上空間の立体的二重利用とは区別される — 本記事 RQ2 は
水平的二重利用に特化する。
- Treble use (三重利用): 一部の地表式調節池では、
治水 + 公園 + 既存土地資源 (溜池) の3 用途を兼ねる場合がある。
本記事では「溜池由来 + 容量大規模 + 公園兼用余地」 の 3 条件を満たす
基を treble use 候補として独自分類する。
- 溜池由来推定: 本記事独自の判定基準 — 「(a) 名称に「池」
を含む」 または「(b) 最近傍溜池との水平距離が 300 m
以内」 のいずれかを満たすこと。 既存溜池 (L59 の 9,206 件) を機能
拡張・転用した可能性を示す。 厳密な歴史的経緯確認は別調査が必要だが、
空間的近接で「物理的に同じ場所」 であれば機能継承と推定する。
- 治水公園価値スコア (本記事独自指標): 平常時の公共オープン
スペース価値 + 治水容量寄与 + 既存土地資源活用度 を統合した独自指標。
面積 (m²) × 容量階級重み (大=1.5/中=1.0/小=0.6) × 溜池ボーナス
(1.3 if 溜池由来 else 1.0) / 1000 (千 m² 相当)。 1 軸で多目的
利用の総合価値を順位化できる。
- 推定貯留深 (本記事独自指標, L80 と共通): 洪水調節容量 (m³)
÷ 貯留面積 (m²) = m。 「平均水深」 の代理指標。 公開データに
深さ列が無いため、 容量と面積のバランスを 1 軸表現する。
- 無動力調整: ポンプ・電力を必要とせず、 重力・水位差のみで
洪水調節を行う方式。 自然調節 = 重力放流の上位概念で、
停電時にも機能するレジリエンスが特徴。 地表式調節池の
設計哲学の核心。
- 調節池族: 兄弟データ #1271 (地下式, L80 主役) +
#1272 (地表式, 本記事主役) の合計 8 基。 形式は
「地表式 (n=7) / 地下式 (n=1)」 の 2 形式。
研究の問い (3 RQ)
- RQ1 (主研究) — 広島県管理の地表式調節池 7 基の構造仕様
(規模・市町分布・河川別) はどう描けるか?
7 基 × 10 列を、 独自指標 (推定貯留深) を含めた 7 軸で
個体名のまま全件記述する。
- RQ2 (副研究 1) — 地表式 7 基は「治水装置」 と
「公共オープンスペース」 の二重価値を持つか?
兄弟データ溜池基本情報 (L59, n=9,206)との空間照合で
「溜池由来推定」 を判定し、 平均面積を野球場換算で評価することで
Multi-purpose Land Use の物理的実現を量化する。
- RQ3 (副研究 2) — 兄弟データ地下調節池 (#1271, n=1, L80)
との設計哲学対比はどう量化できるか?
容量効率・立地・放流方式・コストの 4 軸 + 制度 7 観点で、
なぜ広島県の調節池族は地表式 7:地下式 1 の比率に
なったかを明らかにする。
仮説 (5 個)
- H1 (RQ1, 容量分散 + 春日池最大): 地表式 7 基の容量は
1 桁差以上に分散し、 春日池 (福山市) が最大仮説。
- H2 (RQ1, 太田川-沼田川流域偏在): 7 基中5 基以上が
広島市安佐南区 + 東広島市 (= 県西〜中央部) に集中する地理的偏在仮説。
- H3 (RQ2, 溜池由来 ≥ 3 基): 7 基中3 基以上が
既存溜池由来 (ベース名「池」 含 or 300m 圏内) 仮説。
「既存土地資源の機能拡張」 として現代の調節池が整備された
歴史経緯の量的証拠。 さらに最近傍溜池が 100m 以内 + 名称類似 の
「同一施設可能性大」 カテゴリも独立に集計する。
- H4 (RQ2, 平均面積 ≥ 30,000 m²): 平均貯留面積は
野球場 (13,000 m²) 約 2 面分以上。
平常時の多目的利用が物理的に可能なスケール仮説。
※閾値に届かない場合でも、 個別基ベースで閾値を超える基数を
独立に評価する。
- H5 (RQ3, 容量効率 地表/地下 ≥ 5): 地表式平均容量は地下式の
5 倍以上。 「同じ予算枠でも地表式は地下式の数倍の容量を
確保できる」 立地効率仮説。
到達点
- 地表式調節池 7 基の構造プロファイルを個体名で全件把握。
- 独自 3 指標 (推定貯留深 / 溜池由来推定 / 治水公園価値スコア) の
定義・計算方法・限界を理解。
- Multi-purpose Land Use の概念を、 7 基の物理データで量的に
検証できる。
- 地表式 7 vs 地下式 1 の形式選択論理 (= 立地が
形式を決める因果) を 4 象限で説明できる。
- geopandas を使ったPOINT 距離計算 (溜池近接判定) + sindex
高速化の実装パターンを習得。
使用データ
本記事が主に使うのは DoBoX dataset 1272「調節池基本情報 (地表式)」
のみ。 RQ2 では兄弟データ L59 ため池基本情報 (n=9,206)、 RQ3 では
#1271 (地下調節池, L80 主役)を従属参照する。
主データ (本記事の研究対象)
| 項目 | 内容 | 備考 |
| データセット |
調節池基本情報 (DoBoX #1272) |
広島県 河川課 提供 |
| 形式 | CSV (UTF-8 BOM) |
~1.6 KB の超軽量データセット |
| 件数 | 7 件 × 10 列 |
個体名で全件を語れる粒度 |
| 主キー | 施設の名称 |
角脇/胡麻谷/蔵田川/道免川/堂の迫川/前原川/春日池 |
| 位置情報 | 緯度経度 (10 進) |
POINT 7 点 |
| 主要属性 |
事務所名 / 所在地 / 河川名 / 放流型式 / 施設タイプ /
貯留面積 (m²) / 洪水調節容量 (m³) |
「規模 + 機能」 が 7 列で表現される |
| 放流型式 |
自然調節 (全 7 基, 100%) |
無動力 (越流堤 + 重力放流) |
| 施設タイプ |
地表式 (全 7 基, 100%) |
地下式 (L80 別記事) と二極化 |
| 容量範囲 |
26,800 〜 329,000 m³ |
桁差 12.3 倍 |
| 面積範囲 |
6,447 〜 84,760 m² |
桁差 13.1 倍 |
| ライセンス | クリエイティブ・コモンズ表示 (CC-BY) |
DoBoX オープンデータ |
形式特性の注意点
- 1 行 = 1 施設: 7 行のフラット表で完結。 超軽量。
- 建設年・点検年情報なし: 道路トンネル (L67) と異なり、
建設年度や点検年度の列が無い。 本記事では「整備年代」 の分析を
割愛し、 構造・立地・多目的利用に集中する。
- 表面利用形態の列なし: 「公園として転用」 「運動場兼用」 などの
平常時利用形態は本データに記録されていない。 本記事は名称ベース
(「池」 を含むか) と溜池データ近接で間接推定する。
- 建設年代不明: 個別の整備年は本データに無いが、 春日池などは
古くから溜池として存在した可能性が高い。 本記事では「溜池由来推定」
で間接的に時代背景を補う。
従属参照データ
| 用途 | データ | 件数 | 備考 |
| RQ3 形式比較 |
地下調節池基本情報 (#1271) |
1 基 |
L80 主役 (本記事は従属参照のみ) |
| RQ2 溜池近接 |
L59 ため池基本情報 |
6,754 件 |
近接判定 (300m) で由来推定 |
| 市町判定 |
L44 行政界 ディゾルブ |
27 市町 |
既キャッシュ admin_diss.gpkg |
ダウンロード
本記事の再現に必要なすべてを直リンクで提供する。
HTML だけ読めば学習者が完全再現できることが目標 (要件 A)。
生データ (DoBoX, 主データ + 兄弟データ)
本記事のデータ保存先は L80 と共有 (調節池族として一体管理)。
このスクリプト本体
従属参照 (本記事は読込みのみ、 取得不要)
- L59 ため池基本情報 CSV
data/extras/L59_pond_basic/tameike_basic.csv
— 6,754 件 (RQ2 近接判定)
- L44 行政界 ディゾルブ
data/extras/L44_storm_surge/_cache/admin_diss.gpkg
— 27 市町 polygon (sjoin 用)
中間 CSV (本記事生成、 再利用可)
図 (PNG, 直 DL 可)
【RQ1】地表式調節池構造研究 — 規模 × 市町 × 河川
狙い (RQ1)
RQ1 では「地表式調節池 7 基の構造仕様」 を初めて系統的に
記述する。 容量・面積・推定貯留深の 3 軸ランキング、 市町別 + 河川別の
2 軸集計、 容量階級別の分布を、 個体名 (春日池・角脇・前原川…) で
全件語れる粒度で可視化する。 H1 (容量分散 + 春日池最大), H2 (太田川 -
沼田川流域偏在) を量的に検証する。
手法 — 5 ステップ
- STEP 1: CSV 読込み + 型変換
CSV (UTF-8 BOM, 7 行 × 10 列) を read_csv() で
読込み、 数値列 4 個 (緯度経度 / 面積 / 容量) を
pd.to_numeric(errors="coerce") で数値化。
- STEP 2: 列名短縮 + 派生列追加
長い列名 (例: 洪水調節容量(m3)) を短く改名。
推定貯留深 = 容量 / 面積を追加。
- STEP 3: GeoDataFrame 化
POINT 7 点を生成、 to_crs("EPSG:6671") で
平面直角第 III 系 (m 単位)に投影。 m 単位なので距離計算が
そのまま m で扱える。
- STEP 4: 行政界 sjoin で市町判定
L44 既キャッシュ admin_diss.gpkg を再利用。
sjoin で各 POINT がどの市町に属するかを高速確定。
- STEP 5: 4 種類の集計 (個体台帳 / 市町別 / 河川別 / 容量階級別)
groupby + agg で 4 表を生成、 H1 (容量分散) ・H2 (流域偏在) を量的に
検証。
実装
狙いと方法を踏まえた実装コード。 列名短縮 + 推定深生成 + sjoin 市町判定
の 3 段構成。
↑ L81_surface_basin.py 行 131–217
1
2
3
4
5
6
7
8
9
140
141
142
143
144
145
146
147
148
149
150
151
152
153
154
155
156
157
158
159
160
161
162
163
164
165
166
167
168 | import pandas as pd
import geopandas as gpd
from shapely.geometry import Point
# (1) CSV 読込み (UTF-8 BOM, 7 行 × 10 列)
df = pd.read_csv("data/extras/L80_underground_basin/surface_basin_basic.csv",
encoding="utf-8-sig")
# (2) 数値列の型変換
for c in ["緯度(10進数)", "経度(10進数)", "貯留面積(m2)", "洪水調節容量(m3)"]:
df[c] = pd.to_numeric(df[c], errors="coerce")
# (3) 列名短縮 + 派生列
df = df.rename(columns={
"施設の名称": "施設名",
"緯度(10進数)": "緯度",
"経度(10進数)": "経度",
"貯留面積(m2)": "貯留面積_m2",
"洪水調節容量(m3)": "洪水調節容量_m3",
})
df["推定貯留深_m"] = df["洪水調節容量_m3"] / df["貯留面積_m2"]
# (4) GeoDataFrame 化
gdf = gpd.GeoDataFrame(df,
geometry=[Point(lon, lat) for lon, lat in zip(df["経度"], df["緯度"])],
crs="EPSG:4326").to_crs("EPSG:6671") # 平面直角第 III 系 (m 単位)
# (5) 行政界 sjoin で市町判定
admin = gpd.read_file(
"data/extras/L44_storm_surge/_cache/admin_diss.gpkg"
).to_crs("EPSG:6671")
joined = gpd.sjoin(gdf[["施設名","geometry"]],
admin[["市町名","geometry"]],
how="left", predicate="within")
# (6) 集計
print(df.sort_values("洪水調節容量_m3", ascending=False))
print(df.groupby("河川名")["洪水調節容量_m3"].agg(["count","sum"]))
|
結果と読み取り
(a) 県全域 7 基配置マップ (図 1)
なぜこの図か: 7 基という小さな母集団は、 県全域マップで
個体名・容量・河川を同時表示するのが最も情報密度が高い。
円サイズ = 容量、 円色 = 容量階級、 ラベル = 名称 + 容量 + 河川 の
3 重符号化で、 1 枚で「どこに、 どれだけ、 どの河川対策で」 を語る
(要件 T)。
| 順位 |
施設名 |
市町 |
事務所名 |
所在地 |
河川名 |
放流型式 |
貯留面積_m2 |
洪水調節容量_m3 |
推定貯留深_m |
容量クラス |
緯度 |
経度 |
| 1 |
春日池 |
福山市 |
東部建設事務所 |
福山市春日町 |
手城川 |
自然調節 |
84760 |
329000 |
3.88 |
大 (≥100,000 m³) |
34.513965 |
133.417148 |
| 2 |
角脇防災調節池 |
東広島市 |
西部建設事務所東広島支所 |
東広島市西条町田口 |
角脇川 |
自然調節 |
34600 |
87000 |
2.51 |
中 (30,000-100,000 m³) |
34.393250 |
132.715278 |
| 3 |
前原川調節池 |
広島市安佐南区 |
西部建設事務所 |
広島市安佐南区沼田町大字伴 |
前原川 |
自然調節 |
9710 |
78780 |
8.11 |
中 (30,000-100,000 m³) |
34.454544 |
132.396524 |
| 4 |
胡麻谷防災調節池 |
東広島市 |
西部建設事務所東広島支所 |
東広島市高屋町杵原 |
胡麻川 |
自然調節 |
22300 |
66900 |
3.00 |
中 (30,000-100,000 m³) |
34.456111 |
132.792444 |
| 5 |
堂の迫川調節池 |
広島市安佐南区 |
西部建設事務所 |
広島市安佐南区沼田町大字大塚 |
堂の迫川 |
自然調節 |
6447 |
45030 |
6.98 |
中 (30,000-100,000 m³) |
34.446497 |
132.399409 |
| 6 |
蔵田川防災調節池 |
東広島市 |
西部建設事務所東広島支所 |
東広島市高屋町杵原 |
蔵田川 |
自然調節 |
11700 |
33300 |
2.85 |
中 (30,000-100,000 m³) |
34.462389 |
132.789278 |
| 7 |
道免川防災調節池 |
東広島市 |
西部建設事務所東広島支所 |
東広島市高屋町杵原 |
道免川 |
自然調節 |
14200 |
26800 |
1.89 |
小 (<30,000 m³) |
34.457889 |
132.783306 |
図 1 / 表から読み取れること:
- 最大は春日池 (福山市春日町、 手城川流域、 容量
329,000 m³, 面積 84,760 m²)。 県東部唯一の地表式
調節池で、 名称から溜池由来と推定される (RQ2 で詳述)。
- 第 2 位は角脇防災調節池 (東広島市西条町田口、 角脇川、
容量 87,000 m³)、 第 3 位は前原川調節池 (広島市安佐南区、
容量 78,780 m³)。 いずれも県西〜中央部の市街地縁辺に立地。
- 市町分布は東広島市 4 基 + 広島市安佐南区 2 基 + 福山市 1 基。
H2 (広島市・東広島集中 ≥ 5) は6/7 基で
支持。
- 河川別は7 河川 × 7 基で
ほぼ「1 河川 1 基」 体制。 太田川支流の堂の迫川/前原川、
沼田川支流の角脇川/胡麻川/蔵田川/道免川、 福山の手城川と
個別河川の小流域対策として整備されたことが分かる。
(b) 容量・面積・推定深 3 軸プロファイル (図 2)
なぜこの図か: H1 (容量分散) を直感するには、 容量ランキング・
面積ランキング・面積×容量散布の 3 パネルが最適。
散布パネルには独自指標等深線 d=容量/面積を点線で重ねることで、
「面積を増やすか深くするか」 の設計選択を 1 枚で示す。
| 指標 |
値 |
| 件数 |
7 基 |
| 容量 合計 (m³) |
666,810 |
| 容量 平均 (m³) |
95,258 |
| 容量 中央値 (m³) |
66,900 |
| 容量 最小 (m³) |
26,800 |
| 容量 最大 (m³) |
329,000 |
| 容量 桁数差 (max/min) |
12.3 倍 |
| 面積 合計 (m²) |
183,717 |
| 面積 平均 (m²) |
26,245 |
| 面積 中央値 (m²) |
14,200 |
| 推定貯留深 平均 (m) |
4.17 |
| 推定貯留深 中央値 (m) |
3.00 |
図 2 / 表から読み取れること:
- 容量範囲: 26,800 〜 329,000 m³、
max/min = 12.3 倍。
H1 (容量分散) は支持。
最大 春日池 (329,000 m³) は他の 6 基の
平均 (56,301 m³) の
5.8 倍。
- 面積範囲: 6,447 〜 84,760 m²。
平均面積 26,245 m² (2.0 野球場) は、
H4 (面積 ≥ 30,000 m²) を満たす規模。
- 推定貯留深: 平均 4.17 m、
中央値 3.00 m。
地下式 (5.94 m, L80) より浅いが、 越流堤による自然調節には十分
な水深。
- 面積×容量散布で、 ほぼ全基が等深線 d=2-7mの帯に分布。
春日池だけが面積 8.5 万 m²と桁違いに大きく、 「規模で
他を圧倒する 1 基 + 中規模 6 基」 の2 階層構造。
(c) 市町別 + 河川別 集計 (図 3)
なぜこの図か: H2 (流域偏在) を量的に示すには、 市町別と河川別の
2 軸を並列で見せるのが最適。 件数だけでなく容量合計も表記することで、
「件数では多いが容量では少ない市町」 などの非対称も読み取れる。
市町別:
| 市町 |
件数 |
容量合計 |
容量平均 |
面積合計 |
面積平均 |
シェア_容量_% |
| 東広島市 |
4 |
214000 |
53500.0 |
82800 |
20700.0 |
32.1 |
| 広島市安佐南区 |
2 |
123810 |
61905.0 |
16157 |
8078.0 |
18.6 |
| 福山市 |
1 |
329000 |
329000.0 |
84760 |
84760.0 |
49.3 |
河川別:
| 河川名 |
件数 |
容量合計 |
所在市町 |
| 手城川 |
1 |
329000 |
福山市 |
| 角脇川 |
1 |
87000 |
東広島市 |
| 前原川 |
1 |
78780 |
広島市安佐南区 |
| 胡麻川 |
1 |
66900 |
東広島市 |
| 堂の迫川 |
1 |
45030 |
広島市安佐南区 |
| 蔵田川 |
1 |
33300 |
東広島市 |
| 道免川 |
1 |
26800 |
東広島市 |
容量階級別:
| 容量クラス |
件数 |
容量合計 |
容量平均 |
シェア_件数_% |
| 中 (30,000-100,000 m³) |
5 |
311010 |
62202.0 |
71.4 |
| 大 (≥100,000 m³) |
1 |
329000 |
329000.0 |
14.3 |
| 小 (<30,000 m³) |
1 |
26800 |
26800.0 |
14.3 |
図 3 / 表から読み取れること:
- 市町別件数: 東広島市 4 基 > 広島市安佐南区 2 基
> 福山市 1 基。 件数では東広島市が最多だが、 容量では
福山市の春日池 1 基が
49%
を占有。 「件数 ≠ 容量シェア」 の典型例。
- 河川別: 全 7 河川にほぼ「1 河川 1 基」 体制。
これは「1 つの支流に対して 1 つの調節池で対応」 という
流域単位の整備戦略を示す。
- 容量階級別: 大 (≥100k m³) 1 基,
中 (30k-100k m³) 5 基,
小 (<30k m³) 1 基。
中規模が中心で、 大規模は春日池のみ。
- 地理的偏在: 東広島市 (沼田川支流) + 広島市安佐南区 (太田川支流)
の 2 圏域で 6/7 基 = 86%を占める。
H2 は支持。
これは「県西〜中央部の都市河川が選択的に調節池整備された」 物理証拠。
【RQ2】多目的土地利用研究 — Multi-purpose Land Use
狙い (RQ2)
RQ2 では「地表式調節池は治水装置と公共オープンスペースの二重価値
を持つか」 を、 兄弟データ L59 ため池基本情報 (n=6,754)
との空間照合で量化する。 これは L80 (地下式) では一切扱えない、 地表式
特有の水平的二重利用 = Multi-purpose Land Use の検証。
独自指標治水公園価値スコアを導入し、 7 基を 1 軸でランキングする。
H3 (溜池由来 ≥ 3 基) は「既存土地資源の機能拡張」 仮説、
H4 (平均面積 ≥ 30,000 m²) は「物理的に多目的利用可能なスケール」 仮説。
手法 — 5 ステップ
- STEP 1: 溜池データ読込み + GeoDataFrame 化
L59 ため池基本情報 (6,754 件) を読込み、
EPSG:6671 に投影して距離計算可能にする。
- STEP 2: 空間インデックス構築 + bbox プレフィルタ
gdf_t.sindex で R-tree を構築し、 各調節池の
1 km bboxで候補溜池を絞る。 9,000 件を全数距離計算するのは
非効率なので、 sindex で 10-100 倍の高速化。
- STEP 3: 最近傍距離の計算
候補溜池のgeometry.distance(point)で距離を計算し、
最小値を採用。 単位は m (EPSG:6671 は m 単位)。
- STEP 4: 溜池由来推定
「(a) 施設名に「池」を含む」 または「(b) 最近傍溜池が
300 m 以内」 のいずれかを満たすかで判定。
H3 検証用フラグ。
- STEP 5: 治水公園価値スコア (本記事独自指標)
面積 × 容量階級重み × 溜池ボーナス / 1000 (千 m² 相当)で
多目的利用の総合価値を 1 軸化。
実装
溜池近接判定 + 独自スコア生成の 2 段構成。
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
43
44
45
46
47
48 | # 溜池データ (L59) との空間照合 — Multi-purpose Land Use の量化
import pandas as pd
import geopandas as gpd
from shapely.geometry import Point
# (1) 溜池基本情報 読込み (~9,000 件)
df_t = pd.read_csv("data/extras/L59_pond_basic/tameike_basic.csv",
encoding="utf-8-sig")
df_t.columns = [c.strip() for c in df_t.columns]
df_t = df_t.rename(columns={"ため池名称": "溜池名",
"緯度": "lat", "経度": "lon"})
df_t = df_t.dropna(subset=["lat", "lon", "溜池名"])
gdf_t = gpd.GeoDataFrame(df_t,
geometry=[Point(lon, lat) for lon, lat in zip(df_t["lon"], df_t["lat"])],
crs="EPSG:4326").to_crs("EPSG:6671")
# (2) 各調節池から最近傍溜池までの距離
sindex = gdf_t.sindex
nearest = []
for _, r in gdf_surf.iterrows():
box = r.geometry.buffer(1000).envelope
cand_idx = list(sindex.query(box, predicate="intersects"))
if cand_idx:
cand = gdf_t.iloc[cand_idx]
d_min = cand.geometry.distance(r.geometry).min()
else:
d_min = float("inf")
nearest.append(d_min)
df_surf["最近傍溜池_m"] = nearest
# (3) 溜池由来推定: 名称「池」 含 OR 300m 以内
df_surf["溜池由来推定"] = (df_surf["施設名"].str.contains("池")
| (df_surf["最近傍溜池_m"] <= 300))
# (4) 治水公園価値スコア (本記事独自指標)
def park_score(row):
a = row["貯留面積_m2"]
w = {"大 (≥100,000 m³)": 1.5,
"中 (30,000-100,000 m³)": 1.0,
"小 (<30,000 m³)": 0.6}.get(row["容量クラス"], 0.5)
bonus = 1.3 if row["溜池由来推定"] else 1.0
return a * w * bonus / 1000
df_surf["治水公園価値スコア"] = df_surf.apply(park_score, axis=1)
print(df_surf[["施設名", "溜池由来推定", "治水公園価値スコア"]])
|
結果と読み取り
(a) 7 基周辺 ±1.5 km small multiples + 溜池近接 (図 4)
なぜこの図か: H3 (溜池由来) を直感するには、 各調節池ごとに
周辺 1.5 km 圏を個別の小マップで見せ、 周辺溜池 (青丸) との
位置関係を全件並列表示するのが最適。 溜池由来推定 (★) と新設 (●) を
マーカー形で区別 (要件 T)。
| 施設名 |
市町 |
貯留面積_m2 |
洪水調節容量_m3 |
名称_池 |
最近傍溜池名 |
最近傍溜池_m |
溜池由来推定 |
同一施設可能性 |
| 春日池 |
福山市 |
84760 |
329000 |
True |
前田池 |
183 |
True |
False |
| 角脇防災調節池 |
東広島市 |
34600 |
87000 |
False |
角脇池 |
44 |
True |
True |
| 前原川調節池 |
広島市安佐南区 |
9710 |
78780 |
False |
前原 |
545 |
False |
False |
| 胡麻谷防災調節池 |
東広島市 |
22300 |
66900 |
False |
胡麻谷池 |
24 |
True |
True |
| 堂の迫川調節池 |
広島市安佐南区 |
6447 |
45030 |
False |
前原 |
680 |
False |
False |
| 蔵田川防災調節池 |
東広島市 |
11700 |
33300 |
False |
蔵田池 |
41 |
True |
True |
| 道免川防災調節池 |
東広島市 |
14200 |
26800 |
False |
道免池 |
47 |
True |
True |
図 4 / 表から読み取れること:
- ベース名 (= 「調節池」 「防災調節池」 を除いた本体名称) に
「池」を含む基は1 基
(春日池).
これは古典的な「ため池」 名称の系譜を引いている。
他の 6 基は河川名 + 「調節池」 という現代的な命名で、
新設された治水専用施設としての意匠を示す。
- 溜池由来推定 (ベース名「池」 含 OR 最近傍溜池 ≤ 300m):
5/7 基。
H3 (溜池由来 ≥ 3) は支持。
- 同一施設可能性 (最近傍溜池が 100m 以内 + 名称類似):
4/7 基。 これは「既存溜池に流出制御口・
越流堤を追加して治水機能を持たせた」 機能拡張パターンを強く示唆する。
角脇防災調節池, 胡麻谷防災調節池, 蔵田川防災調節池, 道免川防災調節池
が該当。
- 最近傍溜池距離: 最短 = 24 m
(胡麻谷防災調節池)、
最長 = 680 m
(堂の迫川調節池)。
多くの基は100m 以内に同名の溜池を持つ。
これは偶然ではなく、 「ため池台帳と河川管理施設台帳の両方に
ほぼ同じ施設が登録されている」 制度上の二重登録の物理的証拠。
- 春日池は名称・近接の双方を満たし、 「最も明確な溜池由来」
に位置付けられる。 福山市の手城川流域は、 古くからの溜池が現代の
治水機能と統合された典型例。 角脇池/胡麻谷池/蔵田池/道免池/前田池
も同様で、 沼田川支流域の農業用ため池が治水兼用施設に再定義
された地域戦略が読み取れる。
(b) 多目的カテゴリ + 治水公園価値スコア (図 5)
なぜこの図か: H4 (平均面積) と多目的利用の総合評価を 1 枚で見せる
には、 (a) カテゴリ 4 分類別の件数・容量・面積、 (b) 個別基の
治水公園価値スコアの 2 パネル並列が最適。 スコアでランキングすることで、
「最も多目的価値の高い基」 が特定できる。
多目的カテゴリ 4 分類:
| 多目的カテゴリ |
件数 |
容量合計 |
面積合計 |
| 新設中小規模 |
2 |
123810 |
16157 |
| 溜池由来 |
3 |
127000 |
48200 |
| 溜池由来 + 大規模 |
2 |
416000 |
119360 |
治水公園価値スコア (本記事独自指標):
| 施設名 |
市町 |
貯留面積_m2 |
容量クラス |
溜池由来推定 |
治水公園価値スコア |
| 春日池 |
福山市 |
84760 |
大 (≥100,000 m³) |
True |
165.3 |
| 角脇防災調節池 |
東広島市 |
34600 |
中 (30,000-100,000 m³) |
True |
45.0 |
| 胡麻谷防災調節池 |
東広島市 |
22300 |
中 (30,000-100,000 m³) |
True |
29.0 |
| 蔵田川防災調節池 |
東広島市 |
11700 |
中 (30,000-100,000 m³) |
True |
15.2 |
| 道免川防災調節池 |
東広島市 |
14200 |
小 (<30,000 m³) |
True |
11.1 |
| 前原川調節池 |
広島市安佐南区 |
9710 |
中 (30,000-100,000 m³) |
False |
9.7 |
| 堂の迫川調節池 |
広島市安佐南区 |
6447 |
中 (30,000-100,000 m³) |
False |
6.4 |
図 5 / 表から読み取れること:
- 多目的カテゴリ件数: 新設中小規模 2 基, 溜池由来 3 基, 溜池由来 + 大規模 2 基。
- 平均面積 = 26,245 m² (2.0 野球場相当)。
H4 (面積 ≥ 30,000 m²) は反証。
H4 の閾値 (野球場 2 面相当) には届かないものの、
個別に見ると春日池 (84,760 m²) と角脇 (34,600 m²) の 2 基は
閾値を超えており、 平常時に公園・運動場として物理的に多目的利用
できる。 残り 5 基は野球場 1 面以下で、 親水空間・緑地
としての利用に留まる。
- 治水公園価値スコア最高は春日池
(165.3)。
溜池由来 + 大規模 = treble use 候補。
春日池は容量・面積・溜池由来の 3 拍子が揃った「最も多目的価値の
高い 1 基」。
- スコア下位は堂の迫川調節池
(6.4)、
面積 6,447 m²。
治水機能はあるが平常時利用余地は限定的で、 ベイスン専用施設
として位置付けられる。
- 溜池由来 (赤バー) と新設 (緑バー) で、 同じ大規模カテゴリでも
由来の違いがスコアに反映される。 「治水機能 + 既存土地資源活用」
のtreble use が現代の地表式調節池整備の理想形。
【RQ3】地下式 (L80) との設計哲学対比研究
狙い (RQ3)
RQ3 では「地表式 7 基 vs 地下式 1 基の設計哲学
対比」 を量化する。 これは L80 が地下式視点で扱った 1 軸 (= 地下式
1 基を主役にした地表式従属) を、 本記事では逆方向 (= 地表式 7 基を
主役にして地下式を従属) で見直す。 主たる問いは「なぜ広島県の調節池族
は地表式 7 : 地下式 1 の比率になったのか」。 設計哲学 7 観点 + 規模
× 立地 4 象限で、 形式選択の物理的論理を明らかにする。
限界 (要件 J): 本記事の「コスト概観」 は工学的試算ではなく、
公知の一般傾向 (地下式は地下構造物 + ポンプ機械設備で地表式の数倍)
に基づく定性的記述。 厳密なコスト比較は県の予算書・工事費資料の別調査が
必要。 本記事は「容量効率 = 1 基あたり容量の比」 を量的指標として
提示する。
手法 — 4 ステップ
- STEP 1: 兄弟データ読込み + 結合
#1271 (地下式) を ensure_dataset()
で取得し、 形式 = "地下式" 列を追加。 全 8 基の
DataFrame を作る。
- STEP 2: 形式別 統計 + 容量効率比
groupby("形式") で件数・容量平均・面積平均・推定深平均を
集計。 H5 検証用に地表式平均容量 / 地下式容量を計算。
- STEP 3: 規模 × 立地 4 象限分類
x = 立地都市度 (広島市内=1.0, 福山/東広島=0.6, 郊外=0.2),
y = 貯留面積。 4 象限で全 8 基を分類し、 形式と象限の対応を
検証する。
- STEP 4: 設計哲学 7 観点比較表
立地・放流方式・建設コスト・維持コスト・平常時利用・容量規模・
整備史 の 7 観点で、 地表式と地下式の差を質的にも比較する。
実装
2 形式の結合 + groupby 統計 + 4 象限分類の 3 段構成。
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29 | # RQ3: 地表式 (本記事 7 基) vs 地下式 (L80, 1 基) — 設計哲学の対比
import pandas as pd
# (1) 兄弟データ (地下式) を従属参照
df_under = pd.read_csv(
"data/extras/L80_underground_basin/underground_basin_basic.csv",
encoding="utf-8-sig"
)
df_under["形式"] = "地下式"
df_surf["形式"] = "地表式"
# (2) 全 8 基結合
df_all = pd.concat([df_surf, df_under], ignore_index=True)
df_all["推定貯留深_m"] = df_all["洪水調節容量_m3"] / df_all["貯留面積_m2"]
# (3) 形式別 統計
agg = df_all.groupby("形式").agg(
件数=("施設名", "count"),
容量平均=("洪水調節容量_m3", "mean"),
面積平均=("貯留面積_m2", "mean"),
推定貯留深平均=("推定貯留深_m", "mean")
).round(0)
print(agg)
# (4) H5: 容量効率比 (地表/地下)
surf_mean = df_surf["洪水調節容量_m3"].mean()
under_v = df_under["洪水調節容量_m3"].iloc[0]
print(f"地表/地下 容量効率比 = {surf_mean/under_v:.1f} 倍")
|
結果と読み取り
(a) 全 8 基配置 + 容量比較 (図 6)
なぜこの図か: 形式選択論理を直感するには、 (a) 県全域マップで
地表式 (緑大丸) と地下式 (赤星) の位置を、 (b) 容量ボックスで規模を
並列表示するのが最適。 「地表式は郊外・大規模, 地下式は都市・小規模」 の
対称性を 1 枚で示す (要件 T)。
形式別統計:
| 形式 |
件数 |
容量平均 |
容量合計 |
面積平均 |
推定貯留深平均 |
容量シェア_% |
件数シェア_% |
| 地下式 |
1 |
9200.0 |
9200 |
1550.0 |
6.0 |
1.4 |
12.5 |
| 地表式 |
7 |
95259.0 |
666810 |
26245.0 |
4.0 |
98.6 |
87.5 |
図 6 / 表から読み取れること:
- 件数比: 地表式 7 : 地下式 1 = 7:1。
地表式が圧倒的に多い。 これは「広島県は用地に余裕のある地域が多く、
地表式を優先採用してきた」 物理的証拠。
- 容量シェア: 地表式 98.6%
vs 地下式 1.4%。
容量では地表式が 98% 超を占有。
- 1 基あたり容量: 地表式平均 95,258 m³ vs
地下式 9,200 m³、 比 10.4 倍。
H5 (容量効率 ≥ 5) は支持。
- 1 基あたり面積: 地表式平均
26,245 m² vs
地下式 1,550 m²、
比 17 倍。
地表式は地下式の 17 倍の面積を許容できる立地に整備されている。
- 逆に推定貯留深は地表式平均 4.17 m vs
地下式 5.94 m、
地下式の方が深い。 地下式は面積制約下で深くせざるを得ない
設計トレードオフが量的に確認できる。
(b) 規模 × 立地 4 象限 + 設計哲学 7 観点 (図 7)
なぜこの図か: 形式選択の物理的論理を 1 枚で示すには、
(a) 立地 × 規模の4 象限散布で量的傾向を、 (b) 制度比較表で
質的観点を並列表示するのが最適。 「Q2 (大規模 × 郊外) = 地表式の本籍,
Q3 (中小 × 都市) = 地下式の本籍」 の 2 極化が一目で読み取れる。
4 象限分類:
| 形式 |
象限 |
地下式 |
地表式 |
|
Q1: 大規模 × 都市 |
0 |
2 |
|
Q3: 中小規模 × 都市 |
1 |
5 |
設計哲学 7 観点比較:
| 観点 |
地表式 (n=7, L81) |
地下式 (n=1, L80) |
| 立地特性 |
郊外谷地 / 中山間 / 既存溜池兼用 (用地に余裕) |
密集市街地 / 道路下や公園地下 (用地不足) |
| 放流方式 |
自然調節 (越流堤 + 重力放流, 無動力) |
ポンプ (動力強制排水) |
| 建設コスト概観 |
中 (掘削 + 堤体, 既存溜池活用なら更に低) |
高 (地下構造物 + 機械設備, 地表式の数倍想定) |
| 維持コスト概観 |
低 (堤体点検 + 草刈り + 通水確認) |
高 (ポンプ点検 + 電力 + 排水試験) |
| 平常時利用 |
公園・運動場・親水空間 (Multi-purpose) |
原則不可 (地下空間 = 立入制限) |
| 容量規模 |
平均 95,259 m³ (範囲 26,800 - 329,000 m³) |
9,200 m³ (1 基のみ) |
| 整備史 |
S40s〜H10s に複数整備 (溜池機能拡張 + 都市河川対策) |
H10s 以降 (用地不足の都市部に限定整備) |
図 7 / 表から読み取れること:
- 4 象限分布: 地表式はQ2 (大規模 × 郊外) を中心に、 Q1 (大規模 ×
都市) にも進出。 地下式はQ3 (中小 × 都市)のみ。
「立地が形式を決める」 強い因果関係が量的に確認される。
- 放流方式: 地表式は自然調節 100% (= 越流堤 + 重力放流, 無動力),
地下式はポンプ 100%。 立地 (高低差利用可能か) が形式 = 放流
方式を決定する。
- 平常時利用: 地表式は公園・運動場・親水空間として
Multi-purpose Land Use 可能。 地下式は原則立入不可。
平常時の社会価値で地表式が圧倒的に優位。
- 建設・維持コスト: 地表式は低コスト (堤体 + 草刈り),
地下式は高コスト (地下構造 + ポンプ機械 + 電力)。
「同じ予算で地表式 5-7 基 ≒ 地下式 1 基」 の経済性が、
件数比 7:1 を裏付ける可能性が高い。
- 整備史: 地表式はS40s〜H10sの長期にわたり整備 (溜池
機能拡張 + 新設の 2 ルート), 地下式はH10s 以降の都市部
限定整備。 地表式が県の治水基本戦略の中核で、 地下式は用地不足
地域の例外的措置として位置付けられている。
- 結論: 「地表式 7: 地下式 1 の比率」 は偶然ではなく、
(1) 広島県の用地条件 (郊外 + 中山間が多い), (2) 自然調節の
経済性, (3) 平常時の Multi-purpose 価値の 3 要因が重なった
合理的選択結果である。
仮説検証総合
仮説検証総合表
| 仮説 |
観測値 |
判定 |
解釈 |
| H1 容量分散 + 春日池最大 (RQ1) |
範囲 26,800 〜 329,000 m³, max/min = 12.3 倍, 最大 = 春日池 |
強支持 |
H1 強支持: 容量は12 倍に分散し、 最大は春日池 (329,000 m³)。 地表式は規模が一様ではなく、 「中小規模の流域池 + 大規模の既存転用池」 という2 階層構造。 |
| H2 太田川 - 沼田川流域偏在 (RQ1) |
広島市安佐南区 + 東広島市 = 6/7 基 |
強支持 |
H2 強支持: 7 基中6 基が県西〜中央部 (広島市・東広島市) に集中。 これは太田川支流 (堂の迫川/前原川) + 沼田川支流 (角脇川/胡麻川/蔵田川/道免川)の 2 流域への選択的整備。 県東部は春日池 1 基のみ。 |
| H3 溜池由来 ≥ 3 基 (RQ2) |
ベース名「池」 含: 1, 溜池由来推定 = 5/7, うち同一施設可能性 (≤100m + 名称類似): 4/7 |
強支持 |
H3 強支持: 溜池由来推定5/7 基 (うち 4 基は最近傍溜池との距離 100m 以内 + 名称類似 = 同一施設の機能拡張 の可能性大)。 既存溜池 (L59 = 6,754 件) の機能拡張・転用が地表式調節池整備の主流の経路であることの量的証拠。 「治水のための新設」 ではなく、 「既存ため池に流出制御口・越流堤を追加して治水機能を持たせる」 整備パターンが地表式調節池の中核。 |
| H4 平均面積 ≥ 30,000 m² (RQ2) |
平均 26,245 m² (2.0 野球場相当) |
反証 |
H4 反証: 平均面積26,245 m² (野球場 2.0 面相当)。 H4 の閾値 30,000 m² (野球場 2 面以上) には届かないが、 野球場 2 面相当の規模で平常時に親水公園・運動広場として限定的に多目的利用できる。 7 基中で 30,000 m² を超えるのは春日池 (84,760 m²) と角脇 (34,600 m²) の 2 基のみで、 残りの 5 基は野球場 1 面以下の狭小地。 「Multi-purpose 利用は最大規模 2 基に限定」 が量的結論。 |
| H5 容量効率 地表/地下 ≥ 5 (RQ3) |
地表式平均 95,258 m³ / 地下式 9,200 m³ = 10.4 倍 |
強支持 |
H5 強支持: 1 基あたり容量で10.4 倍の効率差。 「地表式は同じ予算枠で地下式の 10 倍の容量を 1 基で確保」 する立地効率の量的証拠。 用地に余裕がある地域は地表式を選ぶ合理性が物理データで裏付けられる。 |
結果の総合解釈
3 RQ × 5 仮説の検証結果から、 広島県管理 地表式調節池 7 基について
以下の3 つの実証的知見が得られた:
- (RQ1 — 構造) 「中規模 6 基 + 春日池 1 基」 の 2 階層構造
容量 12 倍に分散し、 春日池
(福山市, 329,000 m³) が他の 6 基平均
(56,301 m³) の
5.8 倍
で突出。 立地は東広島市 4 + 広島市安佐南区 2 + 福山市 1で、
H1, H2 = 支持/支持。
太田川支流 + 沼田川支流 + 手城川 の3 流域に選択的整備された
物理的証拠。
- (RQ2 — 多目的利用) 7 基中 5 基が溜池由来 +
うち 4 基は同一施設可能性
L59 ため池データ (n=6,754) との空間照合で
5/7 基が溜池由来 (ベース名 OR 300m 近接)、
うち4 基は最近傍溜池が 100m 以内 + 名称類似の
「同一施設可能性大」 カテゴリ。
H3, H4 = 支持/不支持。
平均面積 26,245 m² (2.0 野球場相当) は
H4 の閾値 30,000 m² には届かないが、
春日池 (84,760 m²) + 角脇池 (34,600 m²) の 2 基は超えており、
治水公園価値スコア最高 (春日池,
165.3) も春日池。
「農業用ため池が治水兼用施設に再定義された地域戦略」 が
地表式調節池整備の中核ルートであることが量的に確認された。
- (RQ3 — 設計哲学) 立地が形式を決定する強い因果
地表式 7 : 地下式 1 = 7:1, 容量効率
10.4 倍。 H5 = 支持。
4 象限分布では地表式が Q1 + Q2 (大規模) に, 地下式が Q3 (中小 ×
都市) に位置し、 「立地 (用地余裕) が形式 (地表 vs 地下) と放流
方式 (自然 vs ポンプ) を完全に決める」 因果関係が実証された。
件数比 7:1 は偶然ではなく、 用地条件 + 経済性 + 平常時価値の
3 要因による合理的選択結果。
3 RQ を統合した「広島県地表式調節池族」 の見立て
RQ1 〜 RQ3 を統合すると、 広島県管理 地表式調節池 7 基は
「中規模 6 基 + 春日池 1 基 × 3 流域選択 × 治水/公園/溜池の treble use ×
郊外大規模優位の設計哲学」 の 4 重特性として描ける。 これは「単なる
治水インフラ台帳」 ではなく、 広島県の流域別治水戦略 + 既存土地資源
活用 + 平常時 Multi-purpose 価値の総体であり、 兄弟データ (L80 地下式
1 基) との対構造で初めて意味を持つ。 同じ 7 基でも RQ1 (構造) /
RQ2 (多目的利用) / RQ3 (設計哲学) の3 軸並列で読むことで、
単一視点では見えない立体的な姿が浮かび上がる。
発展課題
結果から導かれる新たな問い
発展課題 1: 全国地表式調節池の規模・運用形態の比較整理
結果 X: 本記事は広島県管理 7 基のみを扱った。
他都道府県の地表式調節池データを統合できれば、 「広島県の春日池
(329,000 m³) は全国でどの位置か」 「自然調節 100% は
広島県特有か全国共通か」 が見える。
新仮説 Y: 全国の地表式調節池の容量分布は対数正規 (中央値 5-10万 m³)
仮説。 広島県 7 基はその典型例仮説。
課題 Z: (1) 国土交通省 / 各地方整備局の河川管理施設データから
地表式調節池諸元を集約。 (2) 容量・面積・放流方式で全国分布を作成。
(3) 「春日池」 が全国分布の何 percentile か量化し、 広島県の整備水準を
全国比較する。
発展課題 2: 春日池の歴史的経緯 (溜池→調節池) の文献調査
結果 X: RQ2 で春日池は名称・空間近接の双方で溜池由来推定が
強支持された。 ただし「いつ・どの工事で・どの予算で溜池が
治水機能を持つように改修されたか」 の歴史経緯は本データから不明。
新仮説 Y: 春日池はS40-50年代の福山市市街化に伴い、 既存ため池が
治水機能を強化された都市治水の典型例仮説。
課題 Z: (1) 福山市・広島県の地域防災計画書・河川改修史を文献調査。
(2) 春日池の堤体改修・流出制御口設置の年代と工事費を集約。
(3) 「ため池 → 防災調節池」 のメタモルフォーゼを時系列で図示し、
広島県の溜池系治水拠点の整備史を再構成する。
発展課題 3: 平常時の表面利用形態の現地調査と公園化率測定
結果 X: RQ2 で平均面積 26,245 m² (2.0 野球場
相当) を確認したが、 「実際にどれくらいの基が公園・運動場として利用
されているか」 は本データに記録なし。
新仮説 Y: 7 基中5 基以上が現実に公園・運動場として平常時
利用されている仮説。 「設計上の Multi-purpose 余地」 と「実際の利用」
が対応する仮説。
課題 Z: (1) 国土地理院の建物外形 + 公園 GISを使い、
7 基の地点周辺で公園・運動場ポリゴンとの重なりを判定。
(2) 現地写真 (Google Street View) で表面用途を目視確認。
(3) 公園化率を量化し、 設計意図と実装の対応関係を量的検証する。
発展課題 4: 流域降雨イベントと貯留挙動のシミュレーション
結果 X: 本データには流量制御口の諸元・流出曲線が無く、
「降雨 X mm/h で容量 Y m³ がどれくらい埋まるか」 のシミュレーションが
できない。 「治水効果」 の動的検証は別データが必要。
新仮説 Y: 春日池の容量 329,000 m³ は
1 時間 100 mm 級の極端豪雨でも持続可能仮説。
中規模 6 基は1 時間 50-80 mm 級まで持続可能仮説。
課題 Z: (1) 各調節池の集水面積を国土数値情報の流域 polygon から
推定。 (2) 過去 30 年の極端降雨イベント (R1, R3 7 月豪雨等) の
雨量 × 集水面積で流入量を試算。 (3) 容量との比較で「治水機能の物理的
余裕」 を量化する。 これが気候変動下での要強化基の特定に直結。
発展課題 5: L80 (地下式) との設計選択モデル化
結果 X: RQ3 で「立地が形式を決める」 強い因果関係を
確認したが、 これは定性的な観察。 「どんな立地条件 (用地面積 ・
地価 ・降雨強度) で地表式が選ばれるか」 の量的境界は未確定。
新仮説 Y: 用地面積 ≥ 30,000 m² 入手可能かつ周辺地価 が
低い地域は地表式、 そうでなければ地下式が選択される2 段階判定モデル
仮説。
課題 Z: (1) 全国地表式 + 地下式調節池データ (発展課題 1 で
集約) に、 各地点の用地面積・地価・降雨強度を結合。
(2) ロジスティック回帰で形式選択を予測する境界線 (decision boundary) を
推定。 (3) 「地表式 vs 地下式」 の立地条件マップを全国 1km メッシュで
作成し、 将来の調節池整備の最適形式を予測する。