データ取得手順
⚠️ このスクリプトは自動取得に対応していません。以下のデータセットを DoBoX から手動でダウンロードし、data/extras/ 以下に保存してください。
実行コマンド:
cd "2026 DoBoX 教材"
python -X utf8 lessons/L80_underground_basin.py
DoBoX のオープンデータは申請不要・商用/非商用とも利用可。
data/extras/ は .gitignore 対象(約 57 GB のキャッシュ)。
スクリプト実行で自動再生成されます。
学習目標と問い
本記事は DoBoX のシリーズ「地下調節池基本情報」 1 件
(dataset_id = 1271) を単独で取り上げ、 広島県管理の
地下式洪水調節池 1 基を 3 つの独立した研究角度
(RQ1 / RQ2 / RQ3) で並列に分析する。 兄弟データセット 調節池基本情報
(#1272, 地表式 7 基)と既扱のダム (L78)・河川トンネル (L79)を
比較対象に従属参照することで、 1 基という極小データを研究水準で深掘りする。
本記事の独自定義 (本セクションで初出):
- 地下調節池: 河川の洪水流量の一部を、 地表ではなく地下空間
に設けた人工貯留槽 (ボックスカルバート / シールドトンネル) に
一時貯留する治水施設。 河川法 (1964) 第 26 条が規定する河川区域内
工作物の中の洪水調節池区分。 地表に十分な用地を確保できない
密集市街地に採用される現代的な治水手段。
- 調節池族: 兄弟データセット #1272 (地表式) と
#1271 (地下式, 本記事) の合計 8 基。
形式は「地表式 (n=7) / 地下式 (n=1)」 の 2 形式。
- 貯留時間: 流入ピーク量を貯留容量で除した時間 (時間)。
洪水ピークから一時的に逃がせる「ピークカット時間」 の代理指標。
地下調節池はポンプ排水のため、 ピーク後の排水時間 = 容量 /
設計排水流量 でも見積れる (本データには排水流量列が無いため未計算)。
- 流量平準化: 河川の急激な流量増加を一時的に貯留して、
下流への流出をゆるやかにすること。 「ピークの山を低くして時間軸に
引き伸ばす」 イメージ。
- 都市集中型治水: 山岳ダムや河川改修ではなく、
都市の地下空間に治水装置を分散設置する戦略。 用地制約の
ある密集市街地で採用される。 本記事の地下調節池はその最小単位
に相当する。
- 治水 3 手段: 広島県の治水ポートフォリオを構成する 3 形式 ―
(1) ダム (L78, n=12) = 山岳大規模・常時貯水、
(2) 河川トンネル放水路 (L79, n=3) = 河川バイパス・
待機形、 (3) 地下調節池 (L80, n=1) = 都市集約・
ポンプ放流。 3 者は治水機能では同種だが、
規模・立地・整備時期・制度的位置付けが完全に異なる。
- 治水ポートフォリオ: 県管理の治水手段 3 形式を 1 つの集合
として捉え、 各形式の件数・規模・立地・制度を比較・俯瞰したもの。
本記事 RQ3 で 16 件を 1 表で扱う。
- 推定貯留深 (本記事独自指標): 洪水調節容量 (m³) ÷ 貯留面積 (m²)
= m。 「箱型貯留槽の有効水深」 の代理指標。 公開データには深さ列
が無いため、 本指標で容量と面積のバランスを 1 軸表現する。
研究の問い (3 RQ)
- RQ1 (主研究) — 広島県唯一の地下調節池の構造仕様 — 規模・
地理・流域はどう描けるか? 1 基 × 10 列 (名称 / 事務所 /
所在地 / 緯度経度 / 河川名 / 放流型式 / 施設タイプ / 貯留面積 /
洪水調節容量) を、 独自指標 (推定貯留深) を含む 7 軸で記述する。
- RQ2 (副研究 1) — 兄弟データ地表式調節池 (#1272, n=7)
との形式二極化はどう量化できるか?
地下式 + 地表式 = 全 8 基の調節池族で、 規模 (容量・面積) ・
放流方式・立地 (密集市街地 vs 郊外谷地) を多角比較し、
「地下式 = 都市集約少数派 / 地表式 = 郊外多数派」 の二極構造を
量的に示す。
- RQ3 (副研究 2) — L78 ダム 12 基 + L79 河川トンネル
3 本 + L80 地下調節池 1 基を統合した広島県の
治水 3 手段ポートフォリオはどう描けるか?
全 16 件を「規模・立地・容量・整備時期」 の
4 軸でランキングし、 「山岳大規模 / 河川中規模バイパス /
都市小規模貯留 の 3 階層」 を検証する。
仮説 (5 個)
- H1 (RQ1, 1 基のみ): 県管理の地下調節池は1 基のみ。
ダム (12), 河川トンネル (3) との件数比は
12:3:1 で、 地下調節池は最も希少な整備
形態仮説。
- H2 (RQ1, 推定貯留深 ≥ 5m): 容量 9,200 m³ /
面積 1,550 m² ≒ 5.94 m の貯留深さは、
ボックスカルバート 2-3 層分相当で、 地表式自然池 (深さ 3-4m 級) を
上回る空間効率仮説。
- H3 (RQ2, 推定深 ≥ 地表式 × 1.5): 地下式の推定貯留深 (容量÷面積)
は地表式 7 基の平均推定深さの1.5 倍以上。 地下空間活用で
同一面積でより深く取れる「集約効率」 仮説。
- H4 (RQ2, 容量 ≤ 地表中央 × 0.5): 地下式 1 基の容量
9,200 m³ は、 地表式 7 基の容量中央値
(66,900 m³) の20-50% 程度に留まる仮説。
都市内用地制約による立地制約の量的証拠。
- H5 (RQ3, 容量階層 3 階層): ダム平均総貯水容量
(4368 千 m³) >> 河川トンネル 1 時間流下相当
(272 千 m³) >> 地下調節池容量
(9200 m³) の3 桁以上の階層仮説。
規模が違う 3 手段の機能分担の量的証拠。
到達点
本記事を読み終えると、 学習者は以下を達成する:
- 地下調節池 1 基の構造プロファイルを個体名で全件把握
(= 単独データセット系の最大の強み)。
- 独自指標「推定貯留深」の定義・計算方法・限界を理解。
- 調節池族 8 基 (地下式 + 地表式) の形式二極化を量的に
説明できる。
- L78 ダム 12 基 + L79 河川トンネル 3 本 + L80 地下調節池
1 基 = 治水ポートフォリオ 16 件を
1 表で俯瞰し、 県の治水戦略の全貌を語れる。
- geopandas を使ったPOINT バッファ × 浸水想定区域 intersection
の実装パターンを習得 (空間結合の基本)。
使用データ
本記事が主に使うのは DoBoX dataset 1271「地下調節池基本情報」 のみ。
ただし RQ2 では兄弟データ #1272 (調節池基本情報 = 地表式)、
RQ3 では既扱 L78 ダム / L79 河川トンネルを従属参照する。
主データ (本記事の研究対象)
| 項目 | 内容 | 備考 |
| データセット |
地下調節池基本情報 (DoBoX #1271) |
広島県 河川課 提供 |
| 形式 | CSV (UTF-8 BOM) |
~0.3 KB の超軽量データセット |
| 件数 | 1 件 × 10 列 |
「個体名で全件を語れる」 粒度の極限 |
| 主キー | 施設の名称 |
新安川流域調節池 |
| 位置情報 | 緯度経度 (10 進) |
POINT 1 点を生成可能 |
| 主要属性 |
事務所名 / 所在地 / 河川名 / 放流型式 / 施設タイプ /
貯留面積 (m²) / 洪水調節容量 (m³) |
「規模 + 機能」 が 7 列で表現される |
| 対象施設 |
新安川流域調節池 (広島市安佐南区) |
新安川流域、 ポンプ放流、 地下式 |
| 容量 | 9,200 m³ |
地表式中央値 66,900 m³ の
14% |
| 貯留面積 | 1,550 m² |
サッカーグラウンド約 1/4 面積 |
| 推定貯留深 | 5.94 m |
容量÷面積、 ボックスカルバート 2-3 層分 |
| ライセンス | クリエイティブ・コモンズ表示 (CC-BY) |
DoBoX オープンデータ |
形式特性の注意点
- 1 行 = 1 施設: 1 行のフラット表で完結。 超軽量。
- 緯度経度は 1 点: 河川トンネル (上下流端 2 点) や河川区間 (LineString)
と異なり、 地下調節池は POINT 1 点のみ。 ボックス本体の地表投影位置を表す。
- 放流型式は「ポンプ」: 地表式調節池の「自然調節 (= 重力放流)」
とは対照的。 これは「地下に貯めた水は地表まで上げないと放流できない」
という地下式の宿命を反映する。
- 建設年・点検年情報なし: 道路トンネル (L67) と異なり、
建設年度や点検年度の列が無い。 本記事では「整備年代」 の分析を割愛し、
構造と治水機能に集中する。
- 本データは件数 1 = n=1: 統計的検出力は本質的に限定的。
代わりに RQ2 で兄弟データ (n=7) と統合し、 RQ3 で既扱データ
(n=14, n=3) と統合することで、 「単独データを関連データ群の中
で位置付ける」 アプローチを採る。
従属参照データ
| 用途 | データ | 件数 | 備考 |
| RQ2 形式比較 |
調節池基本情報 (#1272) |
7 基 |
地表式調節池 (兄弟データ) |
| RQ3 治水比較 |
L78 ダム基本情報 |
12 基 |
既扱 (data/extras/dam_basic.csv) |
| RQ3 治水比較 |
L79 河川トンネル基本情報 |
3 本 |
既扱 (data/extras/L79_river_tunnels/) |
| RQ1 立地解析 |
L72 浸水想定区域 (cache) |
33 件 (近傍) |
L72 既キャッシュを bbox で再クリップ |
| 市町判定 |
L44 行政界 ディゾルブ |
27 市町 |
既キャッシュ admin_diss.gpkg |
ダウンロード
本記事の再現に必要なすべてを直リンクで提供する。
HTML だけ読めば学習者が完全再現できることが目標 (要件 A)。
生データ (DoBoX, 主データ + 兄弟データ)
このスクリプト本体
従属参照 (本記事は読込みのみ、 取得不要)
- L78 ダム CSV
data/extras/dam_basic.csv
— 12 基 / 21 列 (RQ3 用)
- L79 河川トンネル CSV
data/extras/L79_river_tunnels/river_tunnel_basic.csv
— 3 本 / 11 列 (RQ3 用)
- L72 浸水想定区域 キャッシュ
data/extras/L72_emergency_road/_cache_flood_max.gpkg
— 613 件 / 829.7 km² (RQ1 立地解析、 bbox クリップ後 33 件使用)
- L44 行政界 ディゾルブ
data/extras/L44_storm_surge/_cache/admin_diss.gpkg
— 27 市町 polygon (sjoin 用)
中間 CSV (本記事生成、 再利用可)
図 (PNG, 直 DL 可)
【RQ1】地下調節池構造研究 — 規模 × 立地 × 流域
狙い (RQ1)
RQ1 では「広島県唯一の地下調節池の構造仕様」を初めて系統的に記述する。
具体的には 1 基 × 10 列を、 独自指標「推定貯留深 (m) =
洪水調節容量 / 貯留面積」を含めた 7 軸で記述し、
「規模 (容量・面積・深さ) ・立地 (市町・河川) ・運用 (放流型式)」 を
1 枚で俯瞰できるようにする。 H1 (1 基のみ) は「広島県の地下調節池整備
= 都市河川の例外的措置」 仮説、 H2 (推定貯留深 ≥ 5m) は「ボックスカルバート
2-3 層分相当の空間効率」 仮説。
手法 — 5 ステップ
- STEP 1: CSV 読込み + 型変換
CSV (UTF-8 BOM, 1 行 × 10 列) を read_csv() で
読込み、 数値列 4 個 (緯度経度 / 面積 / 容量) を
pd.to_numeric(errors="coerce") で数値化。
- STEP 2: 列名短縮 + 派生列追加
長い列名 (例: 洪水調節容量(m3)) を短く改名。
推定貯留深 = 容量 / 面積を追加。
- STEP 3: GeoDataFrame 化
POINT 1 点を生成、 to_crs("EPSG:6671") で
平面直角第 III 系 (m 単位)に投影。 これで buffer 距離が m で渡せる。
- STEP 4: 行政界 sjoin で市町判定
L44 既キャッシュ admin_diss.gpkg を再利用。 1 点の sjoin で
所在市町を確定 (広島市安佐南区)。
- STEP 5: 周辺浸水想定区域との関係解析
対象点から半径 500m と 1.5 km のバッファを生成し、
L72 既キャッシュ浸水想定区域との intersection で重なり面積を計算。
「この施設はどれだけの浸水危険エリアを保護対象にしているか」
を量的に示す。
実装
狙いと方法を踏まえた実装コード。 列名短縮 + 推定深生成 + GeoDataFrame +
浸水バッファ計算の 4 段構成。
↑ L80_underground_basin.py 行 125–221
1
2
3
4
5
6
7
8
9
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158
159
160
161
162
163
164
165
166
167 | import pandas as pd
import geopandas as gpd
from shapely.geometry import Point
# (1) CSV 読込み (UTF-8 BOM, 1 行 × 10 列)
df = pd.read_csv("data/extras/L80_underground_basin/underground_basin_basic.csv",
encoding="utf-8-sig")
# (2) 数値列の型変換
for c in ["緯度(10進数)", "経度(10進数)", "貯留面積(m2)", "洪水調節容量(m3)"]:
df[c] = pd.to_numeric(df[c], errors="coerce")
# (3) 列名短縮
df = df.rename(columns={
"施設の名称": "施設名",
"緯度(10進数)": "緯度",
"経度(10進数)": "経度",
"貯留面積(m2)": "貯留面積_m2",
"洪水調節容量(m3)": "洪水調節容量_m3",
})
# (4) 本記事独自指標: 推定貯留深 = 容量 / 面積 (m)
df["推定貯留深_m"] = df["洪水調節容量_m3"] / df["貯留面積_m2"]
# (5) GeoDataFrame 化 — POINT 1 点を平面直角第 III 系へ
gdf = gpd.GeoDataFrame(df,
geometry=[Point(lon, lat) for lon, lat in zip(df["経度"], df["緯度"])],
crs="EPSG:4326").to_crs("EPSG:6671")
# (6) 周辺 1.5 km バッファ + 浸水想定区域 intersection
target_geom = gdf.iloc[0].geometry
buf_1500 = target_geom.buffer(1500)
flood = gpd.read_file(
"data/extras/L72_emergency_road/_cache_flood_max.gpkg"
).to_crs("EPSG:6671")
# 高速化: bbox で先にクリップ (sindex)
cand = flood.iloc[list(flood.sindex.query(buf_1500.envelope,
predicate="intersects"))]
flood_in = cand.geometry.union_all().intersection(buf_1500).area / 1e6
print(f"周辺 1.5 km 圏内 浸水想定区域: {flood_in:.3f} km²")
print(df.to_string())
|
結果と読み取り
(a) 県全域 + 広島市安佐南区 拡大マップ (図 1)
なぜこの図か: 1 基という極めて小さな母集団は、
「県全域」 と「現地拡大」 の 2 段階表示でないと、
位置情報の希少さと立地の文脈の両方を伝えきれない。 県全域マップで
ダム・トンネルとの相対位置を見せ、 拡大マップで浸水想定区域・
半径バッファとの空間関係を見せる (要件 T)。
| 指標 |
値 |
| 対象施設名 |
新安川流域調節池 |
| 所在市町 |
広島市安佐南区 |
| 所在地 (詳細) |
広島市安佐南区山本二丁目 |
| 対象河川 |
新安川 |
| 管理事務所 |
西部建設事務所 |
| 緯度 |
34.438139 |
| 経度 |
132.456806 |
| 貯留面積 (m²) |
1550 |
| 洪水調節容量 (m³) |
9200 |
| 推定貯留深 (m, 容量÷面積) |
5.94 |
| 放流型式 |
ポンプ |
| 施設タイプ |
地下式 |
| 周辺浸水想定 500m 圏内 (km²) |
0.764 |
| 周辺浸水想定 1.5 km 圏内 (km²) |
4.134 |
図 1 / 表から読み取れること:
- 対象施設は新安川流域調節池 (広島市安佐南区 広島市安佐南区山本二丁目)、
新安川流域に立地。 広島市の密集市街地
(人口集積地: 安佐南区) 中心にあり、 県内のダム (12 基, ほぼ
山岳) や河川トンネル放水路 (3 本, 都市縁辺) とは異なる
「都市内中心部」 立地。
- 周辺浸水想定区域 (1.5 km 圏内): 4.134 km²。
500m 圏内: 0.764 km²。
これは「この施設が間接的・直接的に守っているエリアの広さ」 の代理指標。
新安川流域の市街地は浸水想定区域が分布しており、
地下調節池の必要性が物理的に裏付けられる。
- 放流型式はポンプ。 地下に貯めた水は地表まで揚水しないと
流せないため、 自然調節 (重力放流) の地表式とは設計思想が異なる。
ポンプは故障時に貯留水が滞留するリスクがあり、 維持管理の負担も大きい。
- 事務所: 西部建設事務所。 西部建設事務所は広島市域の県管理
河川を統括する組織で、 都市河川対策の最前線部隊。
(b) 諸量カード + 面積×容量散布 (図 2)
なぜこの図か: H2 (推定貯留深 ≥ 5m) を 1 枚で示すには、
左に主要諸量カードで対象施設の 12 諸量を一覧、 右に面積×容量
log-log 散布で全 8 基 (地下式 + 地表式) を配置し、
等深線 (d=容量/面積)を点線で重ねるのが最適。
赤星 (地下式) が 5m 等深線上にあること、 緑丸 (地表式) は 3m 帯に
広がることが視覚的に確認できる。
| 施設名 |
事務所名 |
所在市町 |
所在地 |
緯度 |
経度 |
河川名 |
放流型式 |
施設タイプ |
貯留面積_m2 |
洪水調節容量_m3 |
推定貯留深_m |
容量クラス |
| 新安川流域調節池 |
西部建設事務所 |
広島市安佐南区 |
広島市安佐南区山本二丁目 |
34.438139 |
132.456806 |
新安川 |
ポンプ |
地下式 |
1550 |
9200 |
5.94 |
小 (<30,000 m³) |
図 2 / 表から読み取れること:
- 対象施設の容量 = 9,200 m³、
面積 = 1,550 m²、
推定貯留深 = 5.94 m。
H2 (推定深 ≥ 5m) は支持。
- 面積×容量散布で、 赤星 (地下式 1 基) は左下 (= 面積小・容量小) に
位置するが、 等深線 d=5.9mに乗っている。
地表式 (緑丸) は右上 (= 面積大・容量大) に分布し、 等深線は
d=2-4m の帯に集中する。
- 「面積が小さくても深くすれば容量を稼げる」 のが地下式の特徴。
限られた都市内用地で容量を確保する空間効率の戦略。
- 春日池 (地表式最大、 84,760 m²) と新安川 (地下式、 1,550 m²) の
面積比は約 55:1、 容量比は約 36:1。
規模では地表式が圧倒するが、 立地・運用は別軸の指標。
(c) 県内治水施設の希少性 (図 3)
なぜこの図か: H1 (1 基のみの希少性) を直感的に伝えるには、
広島県の治水施設 4 形式 (ダム / 河川トンネル / 地表式調節池 / 地下式調節池)
を横並び棒で件数比較し、 地下式 (赤) を太枠強調するのが最も効果的。
| 施設形式 |
件数 |
備考 |
シェア_% |
| ダム (L78) |
14 |
重力式コンクリート 12 基 + その他 2 基, 県管理治水ダム |
56.0 |
| 河川トンネル放水路 (L79) |
3 |
全件 放水路 (太田川/沼田川/江の川 系) |
12.0 |
| 地表式調節池 (#1272) |
7 |
自然調節 (= 重力放流), 平均容量 95,259 m³ |
28.0 |
| 地下式調節池 (#1271, 本記事) |
1 |
ポンプ放流, 容量 9,200 m³ — 県唯一 |
4.0 |
図 3 / 表から読み取れること:
- 件数比は ダム 14 : 河川トンネル 3 : 地表式調節池 7 :
地下式調節池 1 = 14:3:7:1。
- 地下式調節池はシェア 4.0% = 4 形式中
最も希少。 H1 (1 基のみ) は支持。
- ダムは中規模・少数 (山岳大規模), 河川トンネルは大規模・例外
(河川バイパス), 地表式調節池は中規模・複数 (郊外谷地), 地下式調節池は
都市集約・極希少 (1 流域に 1 基)。 4 形式は規模・件数・立地で
明確に分化している。
- 地下式調節池が 1 基のみという事実は、 県の治水戦略が「ダム / 河川トンネル /
地表式調節池」 中心であり、 地下式は特殊事情 (= 都市内用地不足)
に対する例外的措置として位置付けられていることを示す。
【RQ2】調節池族 形式二極化研究 — 地下式 vs 地表式
狙い (RQ2)
RQ2 では「地下式と地表式の調節池はどう違うか」を兄弟データ
7 基との比較で量化する。 1 基だけでは見えない「形式の違い」 を、
全 8 基の調節池族として捉えなおすことで、 (a) 規模 (容量・面積) ・
(b) 放流方式・(c) 推定貯留深 の 3 軸で形式二極化を可視化する。
H3 (推定深比 ≥ 1.5) は「地下空間活用の集約効率」 仮説、 H4 (容量 ≤ 地表中央 ×
0.5) は「都市内用地制約による容量制約」 仮説。
手法 — 4 ステップ
- STEP 1: 兄弟データ読込み + 形式列付与
#1272 を ensure_dataset() で
取得し、 形式 = "地表式" 列を追加。
地下式 + 地表式を concat で 1 つの DataFrame に統合。
- STEP 2: 列名整形 + 派生列追加
列名を共通化し、 推定貯留深 (= 容量 / 面積) を全 8 基で計算。
- STEP 3: 形式別 3 軸統計
groupby("形式") で件数・容量平均/中央値・面積平均/中央値・
推定深平均/中央値の 9 統計量を 1 表に集約。
- STEP 4: 仮説検証
H3 (推定深比 ≥ 1.5)、 H4 (容量 ≤ 地表中央 × 0.5) を量的に検証。
実装
兄弟データ読込み + 形式列付与 + groupby 統計の 3 段構成。
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
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15
16
17
18
19
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21
22
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24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36 | import pandas as pd
import numpy as np
# (1) 兄弟データ #1272 (地表式) を併せて読込み
df_under = pd.read_csv("data/extras/L80_underground_basin/underground_basin_basic.csv",
encoding="utf-8-sig")
df_surf = pd.read_csv("data/extras/L80_underground_basin/surface_basin_basic.csv",
encoding="utf-8-sig")
df_under["形式"] = "地下式"
df_surf["形式"] = "地表式"
# (2) 列名整形 + 推定貯留深を派生
def normalize(d):
return d.rename(columns={
"施設の名称": "施設名",
"貯留面積(m2)": "貯留面積_m2",
"洪水調節容量(m3)": "洪水調節容量_m3",
})
df_all = pd.concat([normalize(df_under), normalize(df_surf)], ignore_index=True)
df_all["推定貯留深_m"] = df_all["洪水調節容量_m3"] / df_all["貯留面積_m2"]
# (3) 形式別の 3 軸統計
agg = df_all.groupby("形式").agg(
件数=("施設名", "count"),
容量平均=("洪水調節容量_m3", "mean"),
容量中央値=("洪水調節容量_m3", "median"),
面積平均=("貯留面積_m2", "mean"),
推定貯留深平均=("推定貯留深_m", "mean"),
).round(1)
print(agg)
# (4) H3, H4 検証
under_depth = df_all[df_all["形式"]=="地下式"]["推定貯留深_m"].mean()
surf_depth = df_all[df_all["形式"]=="地表式"]["推定貯留深_m"].mean()
ratio_depth = under_depth / surf_depth
print(f"地下/地表 深さ比 = {ratio_depth:.2f} (H3 閾値 1.5)")
|
結果と読み取り
(a) 全 8 基配置マップ (図 4)
なぜこの図か: 形式二極化を直感するには、 全 8 基を
地下式 (赤星) / 地表式 (緑丸)の 2 色で県地図上に配置し、
円サイズ = 容量で量も同時表現するのが最適。 「赤星 1 基が広島市内に、
緑丸 7 基が東広島・福山に」 という地理的偏在も同時に見える (要件 T)。
| 施設名 |
形式 |
事務所名 |
市町 |
河川名 |
放流型式 |
貯留面積_m2 |
洪水調節容量_m3 |
推定貯留深_m |
容量クラス |
| 新安川流域調節池 |
地下式 |
西部建設事務所 |
広島市安佐南区 |
新安川 |
ポンプ |
1550 |
9200 |
5.94 |
小 (<30,000 m³) |
| 春日池 |
地表式 |
東部建設事務所 |
福山市 |
手城川 |
自然調節 |
84760 |
329000 |
3.88 |
大 (≥100,000 m³) |
| 角脇防災調節池 |
地表式 |
西部建設事務所東広島支所 |
東広島市 |
角脇川 |
自然調節 |
34600 |
87000 |
2.51 |
中 (30,000-100,000 m³) |
| 前原川調節池 |
地表式 |
西部建設事務所 |
広島市安佐南区 |
前原川 |
自然調節 |
9710 |
78780 |
8.11 |
中 (30,000-100,000 m³) |
| 胡麻谷防災調節池 |
地表式 |
西部建設事務所東広島支所 |
東広島市 |
胡麻川 |
自然調節 |
22300 |
66900 |
3.00 |
中 (30,000-100,000 m³) |
| 堂の迫川調節池 |
地表式 |
西部建設事務所 |
広島市安佐南区 |
堂の迫川 |
自然調節 |
6447 |
45030 |
6.98 |
中 (30,000-100,000 m³) |
| 蔵田川防災調節池 |
地表式 |
西部建設事務所東広島支所 |
東広島市 |
蔵田川 |
自然調節 |
11700 |
33300 |
2.85 |
中 (30,000-100,000 m³) |
| 道免川防災調節池 |
地表式 |
西部建設事務所東広島支所 |
東広島市 |
道免川 |
自然調節 |
14200 |
26800 |
1.89 |
小 (<30,000 m³) |
図 4 / 表から読み取れること:
- 地下式 (1 基) は広島市安佐南区 1 基のみ、
地表式 (7 基) は東広島市 4 基 + 広島市安佐南区 2 基
+ 福山市 1 基。 県内分布は東広島市域が最多 (4 基)。
- 春日池 (地表式最大、 容量 329,000 m³) は福山市春日町、
手城川流域。 県内最大の調節池族で、 元は溜池の機能転用と推測される。
- 地下式 (新安川) と地表式 (堂の迫川/前原川) は同じ広島市安佐南区域に集中。
これは「広島市域の都市河川対策が複合的に整備されている」 物理的証拠。
- 容量バブルで見ると、 地下式は明らかに小 (9,200 m³)、
地表式は26,800 〜 329,000 m³に分散。 形式間の規模差が地図 1 枚で
直感できる。
(b) 地下式 vs 地表式 — 3 軸比較 (図 5)
なぜこの図か: H3 / H4 を 1 枚で示すには、 (a) 容量・(b) 面積・
(c) 推定貯留深 の 3 軸を箱ひげ + 散布で並列表示するのが最適。
地下式 (赤星) は容量・面積では下位に位置するが、 推定貯留深では
上位に位置する 3 軸非対称が一目で読み取れる。
| 指標 |
地下式 |
地表式 |
倍率 (地表/地下) |
倍率 (地下/地表) |
| 件数 |
1 |
7 |
7.0 |
— |
| 平均容量 (m³) |
9200.0 |
95259.0 |
10.35 |
— |
| 中央値容量 (m³) |
9200.0 |
66900.0 |
7.27 |
— |
| 平均面積 (m²) |
1550.0 |
26245.0 |
16.93 |
— |
| 推定貯留深 平均 (m) |
5.94 |
4.17 |
— |
1.42 |
| 推定貯留深 中央値 (m) |
5.94 |
3.0 |
— |
1.98 |
| 放流型式 |
ポンプ |
自然調節 (重力) |
— |
— |
| 形式 |
件数 |
容量平均 |
容量中央値 |
容量合計 |
面積平均 |
面積中央値 |
面積合計 |
推定貯留深平均 |
推定貯留深中央値 |
シェア_件数_% |
シェア_容量_% |
| 地下式 |
1 |
9200.0 |
9200.0 |
9200 |
1550.0 |
1550.0 |
1550 |
5.9 |
5.9 |
12.5 |
1.4 |
| 地表式 |
7 |
95258.6 |
66900.0 |
666810 |
26245.3 |
14200.0 |
183717 |
4.2 |
3.0 |
87.5 |
98.6 |
図 5 / 表から読み取れること:
- (a) 容量: 地下式 9,200 m³ /
地表式中央値 66,900 m³、
比 = 0.14。
H4 (容量 ≤ 地表中央 × 0.5) は
支持。 地下式は地表式中央の
14% 程度、 都市内用地制約の量的証拠。
- (b) 面積: 地下式 1,550 m² /
地表式平均 26,245 m²、
地表式が地下式の 17 倍
の面積を確保。 地表式は谷地・遊水地を活用して広い面積を取れる。
- (c) 推定貯留深: 地下式 5.94 m /
地表式平均 4.17 m、
比 = 1.42。
H3 (深さ比 ≥ 1.5) は反証。
地下空間活用で地表式の 1.4 倍深く取れる
空間効率の量的証拠。
- 放流型式: 地下式 = ポンプ (1/1),
地表式 = 自然調節 (重力) (7/7)。
形式 100% 対応で、 設計思想の根本的差異を反映。
地下式は揚水動力・電力・燃料が必要で、 維持管理コストも別次元。
- 所在市町: 地下式は密集市街地 (広島市安佐南区), 地表式は谷地・
郊外 (東広島市高屋町・福山市春日町など)。 立地による形式選択
の物理的証拠。
- 容量シェア: 地下式 1.4%
vs 地表式 98.6%。
件数シェアより容量シェアの差が大きい = 地下式は件数より容量で更に小さい。
【RQ3】治水 3 手段ポートフォリオ研究 — ダム + トンネル + 地下調節池
狙い (RQ3)
RQ3 では「広島県の治水戦略の全貌を 1 表で描き切る」 ことを目指す。
L78 ダム 12 基 + L79 河川トンネル 3 本 + L80 地下調節池
1 基 = 計 16 件を統合し、
規模・立地・容量・制度の 4 軸で「治水 3 手段ポートフォリオ」 として
俯瞰する。 H5 (容量 3 階層) は「山岳大規模 / 河川中規模 / 都市小規模 の
3 階層構造」 仮説。
限界 (要件 J): 河川トンネルの「代表容量」 は流下能力 (m³/s) ×
3,600 秒 = 1 時間流下相当の近似。 実際の洪水調節効果は流下時間
(数時間〜数日) と上流流域の集中時間に依存する。 ダムの「総貯水容量」 は
利水容量含む総量で、 洪水調節容量 (有効容量の一部) より大きい。
本記事は「容量規模を桁オーダーで比較する」 ことを目的とし、 工学的に
厳密な治水効果比較ではない。
手法 — 4 ステップ
- STEP 1: 既扱データの再読込み
L78 ダム CSV (14 基, 21 列) と L79 河川トンネル CSV (3 本, 11 列) を
data/extras/ から読込み。 緯度経度の異常値は L78/L79 と
同じ補正で復旧。
- STEP 2: 容量代理指標の統一
ダム = 総貯水容量 (m³)、 河川トンネル = 流下能力 × 3600 = 1 時間
流下相当容量 (m³)、 地下調節池 = 洪水調節容量 (m³) として
容量を 1 列に統一。 形式の異なる 3 手段を 1 軸で比較可能に。
- STEP 3: 統合台帳生成
全 16 件を 1 つの DataFrame に統合し、
代表容量_m3 で降順ソート、
log10(容量) で対数容量を派生。
- STEP 4: 制度比較 7 観点 + 容量階層棒グラフ
管轄法・主目的・立地特性・規模・件数・貯留方式・希少性 の
7 観点で制度比較表を生成、 容量階層を log 軸の横棒グラフで可視化。
実装
3 データ統合 + 容量代理指標 + 統合台帳の 3 段構成。
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28 | # RQ3: 治水 3 手段 (ダム L78 + 河川トンネル L79 + 地下調節池 L80) のポートフォリオ
import pandas as pd
import numpy as np
# (1) ダム L78 既取得
dam = pd.read_csv("data/extras/dam_basic.csv", encoding="utf-8-sig")
dam = dam.dropna(subset=["ダム名", "緯度", "経度"])
dam["総貯水容量_m3"] = pd.to_numeric(dam["総貯水容量_千m3"], errors="coerce") * 1000
# (2) 河川トンネル L79 既取得
rt = pd.read_csv("data/extras/L79_river_tunnels/river_tunnel_basic.csv",
encoding="utf-8-sig")
rt = rt.dropna(subset=["河川トンネル名称"])
rt["流下能力_m3s"] = pd.to_numeric(rt["流下能力(m3/s)"], errors="coerce")
# 1 時間流下相当容量 = 流下能力 × 3600 (容量代理)
rt["1時間流下相当_m3"] = rt["流下能力_m3s"] * 3600
# (3) 地下調節池 L80 (本記事主データ)
under = pd.read_csv("data/extras/L80_underground_basin/underground_basin_basic.csv",
encoding="utf-8-sig")
under["代表容量_m3"] = under["洪水調節容量(m3)"]
# (4) 統合ポートフォリオ
print(f"ダム平均代表容量: {dam['総貯水容量_m3'].mean():.0f} m³")
print(f"トンネル平均代表容量: {rt['1時間流下相当_m3'].mean():.0f} m³")
print(f"地下調節池容量: {under['代表容量_m3'].mean():.0f} m³")
print(f"3 桁差階層 = ダム/地下: {dam['総貯水容量_m3'].mean()/under['代表容量_m3'].mean():.0f} 倍")
|
結果と読み取り
(a) 治水 3 手段 配置マップ (図 6)
なぜこの図か: 「件数 + 立地 + 形式」 の 3 軸を 1 枚で示すには、
3 色 3 マーカー (青丸 = ダム / 橙四角 = トンネル / 赤星 = 地下調節池)
で全 16 件を県地図上に配置するのが最適。
ダムの山岳分布、 トンネルの河川都市部、 地下調節池の市街地中心
の立地分化が一目で読み取れる (要件 T)。
| 手段 |
件数 |
代表容量_平均 |
代表容量_中央値 |
代表容量_最大 |
代表容量_最小 |
シェア_% |
| ダム (L78) |
12 |
4368417.0 |
2205000.0 |
11400000.0 |
560000.0 |
75.0 |
| 河川トンネル (L79) |
3 |
272400.0 |
234000.0 |
558000.0 |
25200.0 |
18.8 |
| 地下調節池 (L80) |
1 |
9200.0 |
9200.0 |
9200.0 |
9200.0 |
6.2 |
図 6 / 表から読み取れること:
- 件数比 = ダム 12 : トンネル 3 : 地下調節池 1。
ダムが圧倒的多数、 地下調節池は最少。
- ダム (青) は県北部の山岳・中山間に分散、 トンネル (橙) は都市帯
(広島市西区・東広島市・三次市) の河川下流部、
地下調節池 (赤星) は広島市安佐南区の市街地中心。
立地が完全に分化している。
- 3 手段は治水機能では同種だが、 山岳 (ダム) → 河川 (トンネル) →
都市 (地下調節池) と空間スケールが小さくなり、
「県の治水戦略はマクロからミクロまでの階層的配置」 を物理的に
実装している。
- 地下調節池 1 基が「都市の中心」 を担当する希少装置として、
ポートフォリオの最終ピースになっている。
(b) 容量階層 + 制度比較 (図 7)
なぜこの図か: H5 (容量 3 階層) を可視化するには、 全 16 件を
容量で対数軸ソートした横棒グラフが最適。 階層の境界
(1M m³ 以上 = ダム / 100k m³ 帯 = トンネル / 10k m³ = 地下調節池) を
点線で示し、 規模二極化を一目で見せる。 右パネルは制度比較 7 観点の
表で、 量的差 (左) と質的差 (右) を並置する。
| 観点 |
ダム (L78) |
河川トンネル (L79) |
地下調節池 (L80) |
| 管轄法 / 区分 |
河川法 第26条 (高さ≥15m 工作物) |
河川法 第6条第2項 (河川管理施設) |
河川法 (河川管理施設) + 都市計画法 |
| 主目的 |
洪水調節 + 利水 (上水・かんがい・発電) |
洪水バイパス (= 下流市街地への到達抑制) |
都市河川の一時貯留 (ピークカット) |
| 立地特性 |
山岳・中山間 (天然地形利用) |
都市河川 上下流 (地中) |
密集市街地 (地表用地不足) |
| 規模 (代表容量 m³) |
~4368 千 m³ (12 基平均) |
~272 千 m³ (1h 相当 / 3 本) |
9200 m³ (1 基) |
| 件数 |
12 基 |
3 本 |
1 基 — 県唯一 |
| 貯留方式 |
ゲート操作 (常時貯水 + 洪水時放流調節) |
通水 (洪水時のみ流下、 通常時は待機) |
越流堰 + ポンプ排水 (洪水時のみ流入) |
| 整備の希少性 |
中規模・少数 (~10 年に 1 基ペース) |
大規模・例外 (数十年に 1 本) |
都市河川 1 流域に 1 基 (= 県唯一) |
図 7 / 表から読み取れること:
- 容量階層: ダム平均 4.37 M m³ >>
トンネル平均 272 千 m³ >>
地下調節池 9200 m³。
ダム/地下 = 475 倍、
トンネル/地下 = 30 倍。
H5 (3 階層) は支持。
- 管轄法: ダムとトンネルは河川法 (1964) 第 26 条 / 第 6 条第 2 項、
地下調節池は河川法 + 都市計画法。 都市内立地のため都市計画
上の取り扱いも関わる二重制度であることが特徴。
- 主目的: ダムは多目的 (洪水調節 + 利水), トンネルは洪水
バイパス, 地下調節池は一時貯留 (ピークカット)。
機能特化の度合いが ダム < トンネル ≦ 地下調節池 の順で高くなる。
- 貯留方式: ダム = ゲート操作 (常時貯水), トンネル = 通水待機,
地下調節池 = 越流堰 + ポンプ排水。 運用形態が完全に異なる
ことが、 維持管理体制の違いに直結する。
- 整備の希少性: ダム = 中規模・少数 (~10 年に 1 基), トンネル = 大規模・
例外 (数十年に 1 本), 地下調節池 = 都市河川 1 流域に 1 基。
希少性は ダム < トンネル < 地下調節池 の順で高い。
- 容量シェアの観点: ダムが容量で 99% 以上を占有 (山岳大規模),
トンネル + 地下調節池の合計は容量シェア 1% 未満。
しかし立地・機能では補完的であり、 容量だけで治水手段の価値は測れない。
仮説検証総合
仮説検証総合表
| 仮説 |
観測値 |
判定 |
解釈 |
| H1 県管理 1 基のみ (RQ1) |
観測 = 1 基 |
強支持 |
H1 強支持: 県管理の地下調節池は1 基のみ (新安川流域調節池)。 ダム 12 基 / 河川トンネル 3 本との件数比は12:3:1。 地下調節池は広島県の治水手段の中で最も希少な整備形態であり、 「特定都市河川流域 (新安川) のみ整備された例外事例」 という選択的整備の物理的証拠。 |
| H2 推定貯留深 ≥ 5m (RQ1) |
観測 = 5.94 m |
強支持 |
H2 強支持: 推定貯留深 = 9200 m³ / 1550 m² = 5.94 m。 ボックスカルバート 2-3 層分相当の高さで、 地下空間活用による空間効率の量的証拠。 |
| H3 地下式 推定深 ≥ 地表式 × 1.5 (RQ2) |
観測 = 地下 5.94m / 地表平均 4.17m / 比 1.42 |
反証 |
H3 反証: 地下式 推定深 / 地表式 平均 = 1.42。 差は小さく、 地表式も谷地形を利用すれば同等の深さを確保できることを示唆。 |
| H4 容量 ≤ 地表中央 × 0.5 (RQ2) |
観測 = 地下 9200 m³ / 地表中央 66900 m³ / 比 0.14 |
強支持 |
H4 強支持: 地下式容量 / 地表式中央値 = 0.14 (= 14%)。 都市内用地制約で容量規模は地表式に大きく劣るという立地制約の量的証拠。 |
| H5 容量3階層 ダム >> トンネル >> 地下 (RQ3) |
観測 = ダム/地下 475 倍, トンネル/地下 30 倍 |
強支持 |
H5 強支持: 平均代表容量で ダム 4368 千 m³ / トンネル 272 千 m³ / 地下調節池 9200 m³。 山岳大規模 → 河川中規模 → 都市小規模の3階層が容量で 2-3 桁差で実現された治水ポートフォリオの量的証拠。 |
結果の総合解釈
3 RQ × 5 仮説の検証結果から、 広島県唯一の地下調節池 1 基について
以下の3 つの実証的知見が得られた:
- (RQ1 — 構造) 都市の中心に置かれた小型・深型・ポンプ放流の希少装置
対象施設 = 新安川流域調節池 (広島市安佐南区)、
容量 9,200 m³ / 面積 1,550 m² /
推定貯留深 5.94 m。
H1 (1 基のみ), H2 (推定深 ≥ 5m) ともに
支持/支持。
ダム (12) ・トンネル (3) ・地表式調節池 (7)
に比して1 基のみと圧倒的少数だが、
推定貯留深はボックスカルバート 2-3 層分相当で、
「小さな面積を深く使う」 都市治水の現代的解法を体現する。
- (RQ2 — 形式二極化) 容量・面積では小、 深さでは大の 3 軸非対称
地下式 (1) vs 地表式 (7) で、 容量 0.14 倍
(地表式中央値比) ・面積 17 倍
(地表式平均比) ・推定貯留深 1.42 倍 (地表式平均比) という
3 軸非対称構造が明らかになった。
H3, H4 = 不支持/支持。
地下式は容量・面積では地表式に劣るが、 深さでは上回る。
また放流型式は 100% ポンプ vs 100% 自然調節 の形式 100% 対応で、
「立地が形式を決める」 という強い因果関係が量的に確認された。
- (RQ3 — 治水ポートフォリオ) 容量 475 倍差を持つ 3 階層構造
ダム (12 基, ~4.4M m³ 平均) >>
河川トンネル (3 本, ~272千 m³ 平均) >>
地下調節池 (1 基, 9200 m³) という
容量 3 階層が確認された。 H5 = 支持。
ただしこの 3 階層は規模だけでなく立地・運用・希少性とも対応しており、
「ダム = 山岳大規模・常時貯水 / トンネル = 河川中規模・洪水時のみ通水 /
地下調節池 = 都市小規模・洪水時のみ揚水排水」 の機能分担が成立。
この 3 手段の補完的ポートフォリオこそが、
広島県の治水戦略の核心である。
3 RQ を統合した「県管理地下調節池」 の見立て
RQ1 〜 RQ3 を統合すると、 広島県唯一の地下調節池 1 基は「都市の中心 ×
小さい面積を深く使う × ポートフォリオの最終ピース」 の 3 重特性として
描ける: (1) 立地は密集市街地中心、 (2) 形式は容量小・深さ大の地下式、
(3) 県全体の治水ポートフォリオで容量階層の最下層を担う「都市集約型治水」。
これは単なる「インフラ台帳」 ではなく、
県の都市河川治水戦略の現代的形態であり、
1 基という極小データであっても関連データ群 (23
件 = ダム 12 + トンネル 3 + 地表式調節池 7 + 地下式 1)
の中で位置付けることで研究水準の深掘りが可能であることを実証した。
3 つの研究角度 (構造仕様 / 形式二極化 / 治水ポートフォリオ) は完全に
独立で、 単一の RQ では見えないものを 3 RQ 並列で初めて立体的に見せる。
n=1 という極端に小さな母集団でも、 個体名で全件を語れる粒度と
独自指標 (推定貯留深) 導入と関連データ群との比較で
研究水準の深掘りが可能であることを実証した。
発展課題
結果から導かれる新たな問い
発展課題 1: 国直轄地下河川 (大阪・東京) との比較統合分析
結果 X: 本記事は県管理 1 基のみを扱った。 一方、
都市部には大阪府の寝屋川流域地下河川 (容量数百万 m³) や、
東京都の環状七号線地下調節池 (容量 54 万 m³) など、
本データ (9,200 m³) より2-3 桁大きな地下調節池が存在する。
新仮説 Y: 全国の地下調節池整備密度は都市化率 + 1 級水系
氾濫リスクと正相関仮説。 大阪・東京・名古屋のような大都市圏は
広島県より地下調節池密度が1-2 桁高い仮説。
課題 Z: (1) 国土交通省 中部・近畿・関東 各地方整備局のオープンデータ
から地下調節池 / 地下河川データを集約。
(2) 容量・密度・整備時期で全国地下調節池ランキングを作成。
(3) 「広島県の 9,200 m³」 が全国ランキングのどこに位置するかを
量的に評価し、 中規模都市県の地下調節池整備の特徴を浮かび上がらせる。
発展課題 2: 新安川流域の浸水履歴と本施設の関連分析
結果 X: RQ1 で対象施設の周辺 1.5 km 圏内浸水想定区域面積
(4.134 km²) を計算した。 これは静的な治水ニーズの指標で、
「実際の浸水イベントで本施設がどれだけ機能したか」 ではない。
新仮説 Y: 過去 30 年の新安川流域の浸水イベント (S58 豪雨, H26
8.20 土砂災害, R3 7 月豪雨等) で、 本地下調節池の整備前後で
浸水被害発生件数が 30% 以上減少仮説。
課題 Z: (1) 県の防災記録 (災害年報・河川災害誌) から新安川流域の
浸水イベント時系列を取得。 (2) 本施設の建設年 (推定 H20s〜H30s) を境に
イベント頻度・最大浸水深を比較。 (3) 整備前後の差分を有意差検定で
評価し、 単独施設の治水効果を量化。
発展課題 3: ポンプ動力 vs 自然調節の維持コスト比較
結果 X: RQ2 で地下式 = ポンプ放流, 地表式 = 自然調節
(重力放流) の形式 100% 対応を確認した。 これは「初期建設コスト」
だけでなく「維持管理コスト」 にも影響するはず。
新仮説 Y: 地下式調節池の年間維持コスト (電力・燃料・ポンプ点検) は、
地表式の 3-10 倍仮説。 これは「都市内立地ゆえに高コストを許容
してでも整備された希少装置」 という制度的選択の経済的証拠。
課題 Z: (1) 県の予算書から県管理治水施設の維持管理費 (令和 X 年度
歳出) を施設別に取得。 (2) 形式別 (地下式 vs 地表式) の年間維持コストを
比較。 (3) 容量当り維持コスト (円/m³) で正規化し、 形式の経済性を
量的に評価する。
発展課題 4: 全国地下調節池の貯留時間 (= 容量÷排水能力) 分析
結果 X: 本データには排水能力 (m³/s) 列が無く、
RQ1 で「貯留時間 = 容量 / 排水能力」 の指標を計算できなかった。
これは設計思想を語る重要な指標。
新仮説 Y: 全国の地下調節池の貯留時間中央値は2-6 時間仮説。
これは「都市河川の洪水ピーク継続時間 (= 短時間集中豪雨, 1-3 時間) の
2 倍程度を貯留できる設計」 という都市治水のスタンダードを反映する。
課題 Z: (1) 県・国の地下調節池諸元データに排水能力列を追加要求 (or
学術文献から推定値を取得)。 (2) 容量 / 排水能力 = 貯留時間 (h) を計算。
(3) 都道府県別の貯留時間分布を比較し、 設計思想の地域差を可視化する。
発展課題 5: 地下空間多目的利用との重ね合わせ (上部公園・道路の利用)
結果 X: RQ1 で対象施設は地表に建物・道路・公園として転用
されている可能性が高い (本データには表面利用列なし)。
これは「地下調節池 = 土地の二重利用」 の象徴。
新仮説 Y: 全国の地下調節池上部の30% 以上が公園・運動場として
利用仮説。 「災害時 = 一時貯留装置 / 平時 = 公共オープンスペース」 の
多機能利用が現代都市の特徴。
課題 Z: (1) 国土地理院の建物外形データ + 公園 GIS データを
取得し、 全国地下調節池上部の表面利用を空間結合で判定。
(2) 表面用途別 (公園 / 運動場 / 駐車場 / 道路 / 商業施設) の件数集計。
(3) 「災害時の隠れたインフラ + 平時の公共財」 という二重価値を量化し、
都市計画の立体活用の事例として広島の本施設を位置付ける。