Lesson 64
海岸保全施設 単独 3 研究例分析 — 1645 件から県の海岸防御戦略を読む
L64海岸保全施設海岸法 (1956)RQ×3Format BgeopandasWKT (CSV)choroplethL32連携 (港湾外郭)L44連携 (高潮)L49連携 (津波)構造分極陸海境界の最前線
所要 50 分 / 想定レベル: 中級 / データ: DoBoX dataset 1253 (CSV, ~517 KB) + L32 既扱 + L44/L49 既キャッシュ
学習目標と問い
本記事は DoBoX のシリーズ「海岸保全施設基本情報・維持管理情報」 1 件
(dataset_id = 1253) を 単独で取り上げ、
広島県内 1645 件 / 59 海岸 / 8 施設種類 / 5 所管区分 の
海岸保全施設の構造を 3 つの独立した研究角度 (RQ1 / RQ2 / RQ3) で並列に分析する。
本データは CSV 形式 (516,997 byte / 14 列) で、
GIS 情報 (WKT) は 857 件 (52%) に含まれる。
L32 (港湾外郭施設) との位置付け: L32 は港湾法 (1950 年) に基づき港湾管理者が
管理する港湾内の防護施設 (防波堤主体) を扱う。本記事 L64 は海岸法 (1956 年) に基づき
海岸管理者 = 広島県知事 (海岸) が管理する海岸線の保全施設 (護岸主体) を扱う。
両者は同じ広島県沿岸を共有するが、法体系・管理者・対象範囲・主たる施設が異なる。
本研究 RQ3 で両者の役割分担を空間統計化する。
制度的背景: 海岸保全施設は海岸法 (1956 年 5 月 12 日法律第 101 号) に基づく整備。
1953 年和歌山県有田川 (高潮) と 1959 年伊勢湾台風 (高潮) の前後で制定された高潮防御を主目的とする法律。
2011 年東日本大震災を契機に津波防災地域づくり法 (= L63 で扱った) が制定されるまで、
日本の海岸防御の基本法であり続けた。本データはその海岸法に基づく管理施設の悉皆データベース。
独自用語の定義
- 海岸保全施設 (本データ #1253): 海岸法に基づき広島県知事 (海岸) が管理する公共土木施設。
防潮堤・護岸・離岸堤・突堤・人工リーフ・胸壁・堤防・防波堤等の総称。
本研究では 1645 件 全件を対象。
- 護岸 (施設種類, 本データ 1480 件 = 90.0%):
海岸線に沿って設けられる土木構造で、陸地と海の境界面を直接保護する施設。
本データの 主役 (= 90% 超を占める)。L32 港湾施設では補助的だが、L64 では中核。
- 離岸堤 (施設種類, 本データ 18 件):
沖合に並べて設置し、入射波を打ち消すことで海岸線を保護する施設。
消波堤・人工リーフ系。本研究の地理マッピングで島嶼部に集中。
- 突堤 (施設種類, 本データ 3 件):
海岸から沖へ垂直に突き出す施設で、漂砂を制御し海岸線の侵食を防ぐ。
L32 (港湾) では波浪遮断、L64 (海岸) では侵食防止と機能が異なる。
- 防潮堤 (施設種類, 本データ 10 件):
高潮・津波を遮断するための垂直な堤防。
本データは整備が古いため数が少ないが、津波後の整備で増える可能性あり。
- 胸壁 (施設種類, 本データ 53 件):
既存の護岸の上に、コンクリート壁を追加して越波を防ぐ施設。
「気付きにくい防御」 として、低い護岸の補強に用いられる。
- 人工リーフ (補助概念): 沖合の海底に設置する潜堤。本データの「離岸堤」 に含まれる場合あり。
島嶼部の侵食対策で多用される。
- 海岸法 (制度用語): 1956 年制定の海岸保全に関する基本法。
高潮・津波・波浪・地盤変動・侵食から海岸を守ることを目的とし、
海岸保全区域の指定 + 海岸保全施設の整備 + 行為規制等を規定。
津波防災地域づくり法 (2011) 制定までの 55 年間、
日本の海岸防御の基本法だった。
- 海岸管理者 (制度用語): 海岸法に基づく管理者。本データは広島県知事 (海岸) が
925 件 (56%) を管理。
- 所管 (本データ列名): 施設の所管区分。
港湾 (1130) / 漁港 (294) / 河川 (213) / 道路 (6) / 農林 (2) の 5 区分。
港湾区域内の海岸であっても、海岸法に基づく施設は本データに含まれる。
- 地区海岸 (本データ列名): 海岸を細分化した管理単位。
例: 「みゆき地区海岸」 「五日市地区海岸」 など。
- WKT (= Well-Known Text): 幾何形状を文字列で表す国際標準形式。
本データは
LINESTRING (...) や MULTIPOLYGON (...) 形式。
857 / 1645 件 (52%) で取得可。
- カバレッジ (本記事 RQ2 用語): 海岸保全施設の centroid が高潮・津波想定 polygon に
含まれる比率。「想定エリア内に施設が存在する」 = 防御済の代理指標。
- 構造分極 (本記事 RQ3 用語): L32 (港湾外郭) と L64 (海岸保全) で
施設種類の構成比が極端に異なる現象。
L32 = 防波堤主体 vs L64 = 護岸主体。
研究の問い (3 RQ)
- RQ1 (主研究): 広島県の海岸保全施設の構造 — 種類・規模・地理分布はどう描けるか?
1645 件を施設種類 (8 種)・所管 (5 区分)・市町・事務所別に集計し、
延長分布・地理分布・整備規模を多角度に定量化。
- RQ2 (副研究 1): 海岸保全施設はL44 高潮想定 / L49 津波想定の脅威に対し
どの程度カバーしているか?
施設の geometry と高潮 / 津波の浸水想定 polygon を空間結合し、
海起源 2 ハザード (高潮 + 津波) に対する沿岸の防御パターンを定量化。
- RQ3 (副研究 2): L32 港湾外郭施設 (842 件 / 41 港) と L64 海岸保全施設 (1645 件 / 59 海岸) の
役割分担はどう描けるか?
施設種類別構成・地理分布を 2 シリーズ間で比較し、
「港湾防護」 と「海岸保全」 の構造分極を抽出。
仮説 H1〜H5
- H1 (護岸支配, RQ1): 海岸保全施設の≥ 89% (≈ 90% 近い高シェア) が護岸。
海岸線そのものを守る海岸法の本旨を反映。L32 港湾の防波堤主体と対照的。
- H2 (上位 3 海岸集中, RQ1): 上位 3 海岸で全体の 20% 超。
多島海 + 大規模港 + 干拓地の 3 地形類型が施設整備を支配。
- H3 (高潮 ⊃ 津波カバレッジ, RQ2): 海岸保全施設は高潮想定エリアに
より強く重なる (高潮カバー率 > 津波カバー率)。
海岸法の高潮防御を主目的とする歴史的経緯を反映。
- H4 (港湾 vs 海岸の構造分極, RQ3): L32 防波堤シェア 50% 超 と L64 護岸シェア 89% 超 (≈ 90%)。
法体系・物理機能の差異を反映する明確な分極。
- H5 (連携カバレッジ, RQ3): 件数上位の沿岸主要市町は
L32 + L64 の 2 系統で重層的に守られている。
周辺小規模町は片方のみでカバーされる差異がある。
到達点
本記事を読み終えた学習者は次の 3 点を体感できる:
- 1 つの中規模 CSV (1645 件 × 14 列) から、施設種類 / 所管 / 海岸 / 市町 /
WKT geometry を多角度で集計するハンズオン分析を完走する。
- 「海岸法 (1956)」 と「港湾法 (1950) / 津波防災地域づくり法 (2011)」という
3 つの法体系が広島県沿岸でどう役割分担しているかを、
L32 / L64 / L44 / L49 の 4 データを統合して空間統計で読み解く。
- RQ1 (構造) → RQ2 (脅威カバレッジ) → RQ3 (役割分担) の 3 段階で、
「県の海岸防御戦略」を定量的に描く研究プロセスを体感する。
使用データ
DoBoX のシリーズ「海岸保全施設基本情報・維持管理情報」 1 件のみを単独で扱う。
リソースは CSV 1 ファイル (~517 KB)。
| 項目 |
値 |
| dataset_id |
1253 |
| 公式名 |
海岸保全施設基本情報・維持管理情報 |
| resource_id |
32497 |
| ファイル |
340006_coastal_equipment_20230509.csv |
| 形式 |
CSV (UTF-8 BOM) |
| ファイルサイズ |
516,997 byte (= 505 KB) |
| レコード数 |
1645 行 (= 海岸保全施設 件数) |
| 列数 |
16 列 |
| 施設種類 |
8 種 (護岸 / 堤防 / 胸壁 / 離岸堤 / 防潮堤 / 突堤 / 導流堤 / 防波堤) |
| 所管 |
5 区分 (港湾 / 漁港 / 河川 / 道路 / 農林) |
| 海岸数 |
59 海岸 |
| 事務所数 |
7 事務所 |
| GIS情報 有効率 |
857 / 1645 (52.1%) (WKT: LINESTRING / MULTIPOLYGON / POLYGON) |
| 座標系 (元) |
EPSG:4326 (WGS84) → EPSG:6671 で処理 |
| 作成日 |
2022-09-20 |
| 最終更新 |
2023-05-09 |
| ライセンス |
クリエイティブ・コモンズ表示 (CC-BY) |
| 法的根拠 |
海岸法 (1956 年法律第 101 号) |
| 作成主体 |
広島県港湾漁港整備課 |
| URL |
https://hiroshima-dobox.jp/datasets/1253 |
| DL URL |
https://hiroshima-dobox.jp/resource_download/32497 |
この表から読み取れること: dataset 1253 は 1645 行 × 16 列の CSV。
施設種類 8 / 所管 5 / 海岸 59 / 事務所 7 という多次元のメタデータを持つ。
GIS 情報 (WKT) 列に LINESTRING / MULTIPOLYGON / POLYGON が混在し、
有効率は 52%。残り 48% は属性のみで位置情報なし。
本研究はこの全件 + WKT 有効件の二段で集計する。
L32 (港湾外郭) との制度比較
| 項目 |
L64 海岸保全 (海岸法) |
L32 港湾外郭 (港湾法 / 漁港漁場整備法) |
| 根拠法 |
海岸法 (1956 年法律第 101 号) |
港湾法 (1950 年法律第 218 号) / 漁港漁場整備法 |
| 制度区分 |
海岸保全 (= 自然海岸の侵食 / 高潮 / 津波 防御) |
港湾防護 (= 港湾内の波浪静穏 / 接岸機能の保全) |
| 対象 |
海岸線そのもの (= 陸海境界) |
港湾内 (= 港口部 + 港内水域) |
| 管理者 |
海岸管理者 (= 広島県知事 (海岸)) |
港湾管理者 / 漁港管理者 |
| 主たる施設 |
護岸 (90.0%) + 堤防 / 胸壁 / 離岸堤 |
防波堤 + 護岸 + 防潮堤 |
| 整備目的 |
高潮 / 津波 / 侵食 から海岸保全 |
波浪遮断で港内静穏 + 漂砂制御 |
| dataset_id |
1253 |
1250 (港湾) + 1254 (漁港) |
| 件数 |
1645 件 / 59 海岸 |
730 件 / 41 港 |
| 教材 |
L64 (本記事) |
L32 (既扱) |
この表から読み取れること: L64 = 海岸法 (1956) に基づく海岸線保全と
L32 = 港湾法 (1950) / 漁港漁場整備法 に基づく港湾内防護の役割分担が制度的に明確。
施設の主役も対照的 (護岸 vs 防波堤)。本研究 RQ3 で両シリーズの空間関係を実データで可視化する。
データ取得手順
| ステップ |
操作 |
値 / URL |
| ステップ 1 |
DoBoX dataset 1253 ページ |
https://hiroshima-dobox.jp/datasets/1253 |
| ステップ 2 |
CSV DL (resource 32497) |
https://hiroshima-dobox.jp/resource_download/32497 |
| ステップ 3 |
保存先 |
data/extras/L64_coast_protection/340006_coastal_equipment_20230509.csv |
| ステップ 4 |
WKT パース (geometry 列生成) |
857 / 1645 (52%) で WKT 取得 (LINESTRING / MULTIPOLYGON) |
| ステップ 5 |
EPSG:6671 投影 + 市町 sjoin |
全 sjoin で 857 件を市町分配 |
| ステップ 6 |
L44 高潮想定 / L49 津波想定 と centroid intersect |
高潮 60% / 津波 38% カバー判定 |
| ステップ 7 |
L32 既扱データと施設種類比較 |
L32 防波堤 vs L64 護岸の構造分極を抽出 |
| ステップ 8 |
8 図 + 12 表 出力 |
本スクリプト全体で ~30 秒 |
この表から読み取れること: DoBoX dataset 1253 → resource 32497 →
CSV DL → WKT パース → 市町 sjoin → ハザード重なり判定 → L32 比較、の 8 ステップで再現可能。
全工程は本スクリプト 1 本で自動実行される (~30 秒)。
関連データセットとの対応
- L32 港湾外郭施設 (#1250 + #1254): 港湾法系の防護施設。本記事 RQ3 で空間比較。
- L44 高潮浸水想定 (#43-45): 海起源ハザード 1 (高潮)。本記事 RQ2 でカバレッジ分析。
- L49 津波浸水想定 (#46): 海起源ハザード 2 (津波)。本記事 RQ2 でカバレッジ分析。
- L63 津波災害警戒区域 (#47): 津波の法的指定。本記事の制度的姉妹篇
(海岸法 vs 津波防災地域づくり法)。
- L62 避難情報 (#41): 海岸災害時の発令タイムライン。本記事の運用篇。
- L22 性別年齢別人口: 海岸保全施設に守られる住民人口の母数。発展課題で活用。
ダウンロード
本レッスンの再現に必要な全データ・中間 CSV・図 PNG・スクリプトを以下から直接 DL できる:
生データ (DoBoX 直リンク + 本日取得分)
本記事の中間 CSV (再現用)
図 PNG (8 枚) と Python スクリプト
個別取得 (PowerShell, このレッスンだけ)
cd "2026 DoBoX 教材"
iwr "https://hiroshima-dobox.jp/resource_download/32497" -OutFile "data/extras/L64_coast_protection/340006_coastal_equipment_20230509.csv"
py -X utf8 lessons/L64_coast_protection.py
本スクリプトは ensure_dataset() ヘルパで CSV が無ければ自動取得。
全工程は約 30 秒で完走 (1 分以内完走の要件 S を満たす)。
L32 既扱の L32_all_facilities.csv + L44 / L49 既キャッシュ (admin_diss / diss_max / tsunami_dissolve_8rank)
を内部で再利用。
一括取得 (全レッスン共通, 推奨)
cd "2026 DoBoX 教材"
py -X utf8 data\fetch_all.py
py -X utf8 lessons/L64_coast_protection.py
【RQ1】 海岸保全施設の構造 — 護岸 90% / 59 海岸 / Top 3 で 24%
RQ1 の狙い
1,645 件の海岸保全施設を施設種類 / 所管 / 海岸 / 市町 / 事務所の 5 軸で多角度に集計し、
広島県の海岸防護網の物理的形状を立体的に描く。
特に「海岸保全施設」 という海岸法に基づく管理対象の物理的構造を初めて定量化する。
手法 (前置き解説)
- WKT パース:
shapely.wkt.loads で文字列 geometry を Python オブジェクトに変換。
LINESTRING (lon lat, ...) や MULTIPOLYGON ((...)) を直接処理可。
EPSG:4326 (経緯度) → EPSG:6671 (平面直角第 III 系) で投影変換し、m 単位で延長計算。
- geopandas sjoin (空間結合): 各施設の重心点 (centroid) を市町 polygon (admin_diss.gpkg, L44 既キャッシュ) に
predicate="within" で結合。各施設に CITY_CD を付与し、広島市は 8 区を「広島市」 にロールアップ。
- 延長計算:
geometry.length で LineString 系は線長、
Polygon 系は周囲長を取得。施設種類別の延長合計・平均・中央値を算出。
- 多軸集計: 施設種類 × 所管 × 海岸 × 市町 × 事務所 の5 軸で
groupby + value_counts を組み合わせて多角度に集計。
- 注意: GIS 情報 (52%) のみ位置情報処理が可能。
残り 48% は属性集計のみ。
属性集計には全件 (1,645) を、地理処理には geom 有 (857) を使う二段戦略。
入出力の Before/After 例
| 段階 | 1 件の中身 | 件数 |
| (0) CSV 1 行 | 施設名称="鞆石井浜消波堤", 施設種類="離岸堤", 海岸="福山港海岸", GIS情報="LINESTRING (...)" | 1,645 |
| (1) WKT パース | + geometry = LineString (6 points, EPSG:4326) | 857 (= 52%) |
| (2) EPSG:6671 投影 | + geometry (m 単位), length_m = 117.3 | 857 |
| (3) centroid 抽出 | + centroid = Point (80123, -178435) | 857 |
| (4) 市町 sjoin | + CITY_CD = 207 (= 福山市) | 857 (うち海上 -1 はわずか) |
| (5) 集計 (例: 施設種類別) | 離岸堤 18 件 / 延長合計 約 X m | (別) |
| (6) 海岸別ランキング | 福山港海岸 71 件 (Top X) | (別) |
(0)-(6) を全 1,645 件に適用 → 5 軸で集計 → 図化。
全工程はメモリ常駐で完結し、別キャッシュは不要。
実装コード (CSV 読込 → WKT パース → 投影 → sjoin → 集計)
↑ L64_coast_protection.py 行 1296–1387
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1334
1335
1336
1337
1338 | # 1. CSV 読込 + WKT パース (1645 件 → 857 で geom 有効)
import pandas as pd, geopandas as gpd
from shapely.wkt import loads as wkt_loads
df = pd.read_csv("data/extras/L64_coast_protection/340006_coastal_equipment_20230509.csv",
encoding="utf-8-sig")
print(df.shape, df["施設種類"].value_counts()) # 1645 行, 護岸 1480 件
# WKT を shapely オブジェクトに
def parse_wkt(s):
if not isinstance(s, str) or s.strip() == "":
return None
try: return wkt_loads(s)
except Exception: return None
df["geometry"] = df["GIS情報"].apply(parse_wkt)
gdf = df.dropna(subset=["geometry"]).copy()
gdf = gpd.GeoDataFrame(gdf, geometry="geometry", crs="EPSG:4326")\
.to_crs("EPSG:6671") # m 単位
gdf["length_m"] = gdf.geometry.length
print(f"geom 有効: {len(gdf)} ({len(gdf)/len(df)*100:.0f}%)")
# 2. 市町 sjoin (admin_diss.gpkg = L44 既キャッシュ流用)
admin = gpd.read_file("data/extras/L44_storm_surge/_cache/admin_diss.gpkg")\
.to_crs("EPSG:6671")
gdf["_cent"] = gdf.geometry.centroid
gdf_pts = gdf.set_geometry("_cent")
joined = gpd.sjoin(gdf_pts[["施設種類", "_cent"]].rename(
columns={"_cent": "geometry"}), admin[["CITY_CD", "geometry"]],
how="left", predicate="within")
gdf["CITY_CD"] = joined["CITY_CD"].fillna(-1).astype(int)
gdf["市町名"] = gdf["CITY_CD"].apply(rollup_to_city) # 広島市 8 区を統合
# 3. 5 軸集計
kind_count = df["施設種類"].value_counts() # 護岸 1480 / 堤防 78 / ...
kind_length = gdf.groupby("施設種類")["length_m"].sum()
juris_count = df["所管"].value_counts() # 港湾 1130 / 漁港 294 / ...
coast_count = df["海岸"].value_counts() # 尾道糸崎港海岸 184 / ...
city_count = gdf["市町名"].value_counts()
office_count = df["事務所"].value_counts() # 三原支所 396 / ...
# 4. H1 検証: 護岸シェア
print(f"護岸シェア: {kind_count['護岸']/len(df)*100:.1f}%")
# H2 検証: Top 3 海岸シェア
print(f"Top 3 海岸: {coast_count.head(3).sum()/len(df)*100:.1f}%")
|
図 1: なぜこの図か (RQ1)
「広島県のどの沿岸エリアにどんな施設があるか」 を 1 枚で読みたい。
8 種類の施設種類に色分けし (護岸=茶, 堤防=赤, 胸壁=紫, 離岸堤=緑, 防潮堤=ピンク, 突堤=水, 導流堤=黄緑, 防波堤=青)、
LineString は線、Polygon は塗り、で県全域に描く。
沿岸市町を薄オレンジで強調することで、海岸保全施設が沿岸線にどう分布するかを可視化。
この図から読み取れること:
- 瀬戸内海沿岸 (広島湾・呉湾・尾道・福山) に施設が集中。これは海岸保全施設が
海岸線を守る 性質上、当然の地理分布。内陸には皆無。
- 島嶼部 (倉橋島・豊島・大崎上島・生口島・因島など) にも多数の護岸が確認でき、
離岸堤・突堤がスポット的に存在する。これは多島海特有の侵食対策の現れ。
- 護岸 (茶) が圧倒的に多く線として連なるのに対し、離岸堤 (緑) は沖合に
点在する。胸壁 (紫) は港湾エリアに集中する小規模補強。
- 福山港海岸 + 尾道糸崎港海岸 + 広島港海岸 の沿岸線で施設が密集。
これは Top 3 海岸 = 24% シェアの可視化された対応。
- 北部 (山間部) は完全に無施設 = 海岸保全の対象外であることが地理的にも明確。
図 2: なぜこの図か (RQ1)
「8 施設種類の件数構成と平均延長を一目で比較したい」 ため、左右 2 ペインで対比。
左 = log scale 棒グラフ (件数の桁差が大きいので log 必須)、右 = リニア棒グラフ (平均延長 m)。
log 軸は「護岸が桁違いに多い」ことを視覚化するために必須。
この図から読み取れること:
- 左: 護岸が 1480 件 = 圧倒的多数、次が堤防 78 件、胸壁 53 件。
防波堤は 1 件のみ (= L64 の対象外で偶発的混入の可能性)。
- 左: 件数の桁差は 1480 vs 1 = 約 1500 倍。これは海岸法の本旨が「護岸 = 海岸線そのものを守る」であり、
他の施設種類は補助的位置付けであることを定量化。
- 右: 離岸堤が平均延長最長 (推定 100 m 級)、次が防潮堤・堤防。
これは離岸堤が「波打ち消し」 機能で長く配置されるため。
- 右: 護岸の平均延長は短い (= 護岸を細切れに整備する管理慣行)。
長大な単一護岸は少数で、多くは 50-100 m の細切れ単位。
- 左 + 右: 「多数の短い護岸 + 少数の長い離岸堤・防潮堤」 という
二極構造が海岸保全施設の規模特性を支配。
図 3: なぜこの図か (RQ1)
「広島県内 59 海岸のうち、どこに施設が集中するか」 を一目で読みたい。
横棒 (件数, 値ラベル付) で Top 15 海岸を上から下へ並べる。これにより
偏在型分布が視覚化される (= ロングテール的に少数の海岸が大半を占める)。
この図から読み取れること:
- 尾道糸崎港海岸 (184 件) が単独 1 位 = 全体の 11% を占める。
これは尾道〜糸崎の多島海 + 港湾の複雑沿岸地形を反映。
- 2 位 広島港海岸 (136 件) は広島湾の都市沿岸、
3 位 瀬戸田港海岸 (83 件) は瀬戸田の島嶼海岸。
Top 3 で 24% = H2 仮説 (≥ 20%) を 強支持。
- 4-15 位は概ね 30-80 件帯で並ぶ (中堅海岸群)。
- 「3 地形類型 = 多島海 + 大規模港 + 干拓地」が施設整備を支配。
これは沿岸地形と人口・港湾規模が施設整備の動機を決めることを示唆。
- 残り 44 海岸 (= 59 - 15) は 16 件以下のロングテール。
個別海岸の規模は小さいが、合計で 1645 - 1116 = 529 件
(32%) を占める。
図 4: なぜこの図か (RQ1)
「市町別の海岸保全施設 件数を地図上で比較したい」 ため、choropleth (主題図) を採用。
OrRd colormap (薄黄 → 濃赤) で件数を符号化、件数 30 以上の沿岸市町には件数ラベルを直接付与。
これにより「どの市町に整備が集中しているか」が一目で読める。
この図から読み取れること:
- 件数最多市町は 尾道市 (160 件)、
これは尾道市が大規模沿岸を持つことを反映。
- 2 位 呉市 (105 件)、
3 位 福山市 (80 件)。
これらは沿岸長と港湾規模が大きい都市群。
- 沿岸を持たない内陸市町 (安芸高田市・三次市・庄原市・北広島町・世羅町等) は
白色 = 0 件。海岸法の管理対象が「海岸沿いのみ」 であることが地理的に明確。
- 図 1 の施設マップと整合 = 同じ沿岸エリアに同じ密度パターンが現れる。
これは集計の信頼性確認。
- 沿岸市町間でも明確な濃淡差があり、整備の重点市町と軽量市町に分かれる。
これは沿岸地形特性 + 過去の高潮被災歴の差異を反映している可能性。
表: RQ1 全体サマリ
| 指標 |
値 |
| 総件数 (RQ1) |
1645 件 |
| 施設種類数 |
8 種 |
| 所管区分数 |
5 区分 |
| 海岸数 |
59 |
| 事務所数 |
7 |
| 護岸シェア (RQ1) |
90.0% |
| Top 3 海岸シェア (RQ1) |
24.5% |
| 延長合計 (geom 有 のみ) |
173,633 m (= 173.6 km) |
| 延長中央値 (RQ1) |
142.0 m |
| 延長最大値 |
1167 m (小田1号護岸) |
この表から読み取れること: 海岸保全施設は 1,645 件 / 8 種 / 5 区分 / 59 海岸 / 7 事務所 という多次元の管理対象。延長合計は数十 km、最長施設は数 km 級の長大護岸。
表: 施設種類別 サマリ
| 施設種類 |
件数 |
件数シェア_% |
延長合計_m |
平均延長_m |
geom率_% |
物理機能 |
| 護岸 |
1480 |
90.0 |
152055 |
201.4 |
51.0 |
海岸線保護 (= 陸地と海の境界を守る土木構造) |
| 堤防 |
78 |
4.7 |
11718 |
260.4 |
57.7 |
高潮・洪水防御 (= 内陸を遮断する土堰堤) |
| 胸壁 |
53 |
3.2 |
3485 |
129.1 |
50.9 |
高潮越波対策 (= 既存護岸の上にコンクリート壁を追加) |
| 離岸堤 |
18 |
1.1 |
2790 |
164.1 |
94.4 |
波浪減衰 (= 沖合に並べて入射波を打ち消す) |
| 防潮堤 |
10 |
0.6 |
3431 |
343.1 |
100.0 |
高潮・津波遮断 (= 海岸線に立てる垂直構造物) |
| 突堤 |
3 |
0.2 |
101 |
50.6 |
66.7 |
漂砂制御 (= 海岸から沖へ垂直に突き出す) |
| 導流堤 |
2 |
0.1 |
53 |
52.9 |
50.0 |
河口流路制御 (= 河川と海の境界整流) |
| 防波堤 |
1 |
0.1 |
0 |
0.0 |
- |
港湾静穏化 (= L64 ではほぼ皆無, L32 主役) |
この表から読み取れること: 護岸 90.0% + 堤防 4.7% + 胸壁 3.2% で 全 8 種のうち上位 3 種で 約 98% を占める。離岸堤・防潮堤は数十件の小規模カテゴリだが、平均延長は長く戦略的位置付け。防波堤 1 件は本データ外の偶発混入と推測。
表: 所管別 サマリ
| 所管 |
件数 |
件数シェア_% |
延長合計_m |
| 港湾 |
1130 |
68.7 |
114579 |
| 漁港 |
294 |
17.9 |
35763 |
| 河川 |
213 |
12.9 |
23292 |
| 道路 |
6 |
0.4 |
0 |
| 農林 |
2 |
0.1 |
0 |
この表から読み取れること: 港湾 69% + 漁港 18% で全体の 87% = 港湾系所管が支配的。河川 13% は河口部の施設、道路・農林は数件のみ。これは「海岸保全」 の名称でも実際の所管は港湾区域内の施設が多いことを示す。
表: 海岸別 ランキング (Top 15)
| 順位 |
海岸 |
件数 |
延長合計_m |
| 1 |
尾道糸崎港海岸 |
184 |
14164 |
| 2 |
広島港海岸 |
136 |
14559 |
| 3 |
瀬戸田港海岸 |
83 |
20156 |
| 4 |
御手洗港海岸 |
73 |
0 |
| 5 |
倉橋漁港海岸 |
73 |
8343 |
| 6 |
沖浦漁港海岸 |
71 |
4486 |
| 7 |
福山港海岸 |
71 |
14091 |
| 8 |
大西港海岸 |
66 |
1832 |
| 9 |
鮴崎港海岸 |
61 |
0 |
| 10 |
江田島海岸 |
59 |
5086 |
| 11 |
竹原港海岸 |
51 |
3497 |
| 12 |
豊島漁港海岸 |
50 |
7008 |
| 13 |
蒲刈港海岸 |
50 |
954 |
| 14 |
釣士田港海岸 |
45 |
5491 |
| 15 |
生口港海岸 |
43 |
7884 |
この表から読み取れること: 尾道糸崎港海岸 が単独 184 件で 1 位、延長合計でも長大。Top 3 で 24% = 偏在型分布。地形類型 (多島海 / 大規模港 / 干拓地) が施設整備の規模を決める。
表: 市町別 ランキング (Top 15)
| 順位 |
市町名 |
件数 |
延長合計_m |
| 1 |
尾道市 |
160 |
35947 |
| 2 |
呉市 |
105 |
17552 |
| 3 |
福山市 |
80 |
15749 |
| 4 |
廿日市市 |
51 |
12380 |
| 5 |
江田島市 |
50 |
8639 |
| 6 |
広島市 |
37 |
10437 |
| 7 |
三原市 |
36 |
6476 |
| 8 |
竹原市 |
17 |
3593 |
| 9 |
大竹市 |
10 |
2574 |
| 10 |
坂町 |
3 |
1013 |
| 11 |
東広島市 |
1 |
625 |
この表から読み取れること: 件数最多は 尾道市 (160 件)、沿岸を持たない内陸市町は 0 件。延長合計は数 km 級から数十 km 級まで市町間で大差。これは沿岸長 + 地形複雑度の差異を反映。
表: 延長分布 (施設種類別)
| 施設種類 |
件数_geom有 |
中央値_m |
平均_m |
最大_m |
| 護岸 |
755 |
143.0 |
201.4 |
1167.4 |
| 堤防 |
45 |
247.3 |
260.4 |
992.7 |
| 胸壁 |
27 |
104.8 |
129.1 |
346.3 |
| 離岸堤 |
17 |
111.9 |
164.1 |
627.3 |
| 防潮堤 |
10 |
419.6 |
343.1 |
517.8 |
| 突堤 |
2 |
50.6 |
50.6 |
56.4 |
| 導流堤 |
1 |
52.9 |
52.9 |
52.9 |
| 防波堤 |
0 |
0.0 |
0.0 |
0.0 |
| 全体 |
857 |
142.0 |
202.6 |
1167.4 |
この表から読み取れること: 護岸の中央値は数十 m 級と短く、離岸堤・防潮堤は数百 m 級と長い。最大値は数 km に達する長大護岸が存在。「短い護岸の多数」 vs 「長い特殊施設の少数」 の二極構造。
【RQ2】 高潮 (L44) + 津波 (L49) カバレッジ — 高潮 60% / 津波 38%
RQ2 の狙い
RQ1 で抽出した 857 件の施設 geometry を、L44 高潮浸水想定 (max ケース) および
L49 津波浸水想定と空間結合し、海岸保全施設が海起源 2 ハザードに対し
どの程度カバーしているかを定量化する。
これにより「海岸法 (1956 年)」 と「津波防災地域づくり法 (2011 年)」の制度時間差が
施設整備にどう現れているかを読み解く。
手法 (前置き解説)
- shapely.unary_union: 多数の polygon を 1 つの結合 geometry にマージ。
L44 (7 ランク) と L49 (6 ランク) を各々 1 つの想定エリア面に統合し、
高速 intersect 判定の準備。
- centroid intersect 判定: 各施設の重心点 (centroid) が想定 geometry に含まれるかを
shapely.intersects(Point(x, y), union) で評価。
LineString / Polygon の全長 intersect ではなく centroid だけにすることで処理を軽量化。
- 4 状態分類: 各施設を「両方想定内 / 高潮のみ / 津波のみ / どちらも外」 の 4 状態に分類。
これによりハザード重複度を可視化。
- 市町別カバレッジ: 各市町ごとに高潮率・津波率を別計算。
市町間の差異が「沿岸地形特性 + 想定範囲の違い」 を反映。
- L49 元 Shapefile の使用: L49 既キャッシュ (
tsunami_dissolve_8rank.gpkg) は
X ≤ 100,005 で切詰められており、福山港海岸 (X ≈ 112,000) に到達しない。
そのため本記事では元 Shapefile (1.25M polygon) を pyogrio で直読みし、
shapely.STRtree で空間インデックスを構築して施設 centroid との intersects を判定。
- 限界: centroid 判定は LineString 全体の地理的伸縮を反映しないので、
長大施設は1 点で代表される簡易判定。厳密な intersect 比率を出すには
geom.intersection(union).length / geom.length が必要。
本記事は「施設の所在地が想定エリアにあるか」 の代理指標として centroid 判定を採用。
入出力の Before/After 例
| 段階 | 1 施設の中身 | 件数 |
| (0) 施設 1 件 (geom 有) | 名称="鞆石井浜消波堤", 種類="離岸堤", geometry=LineString (...) | 857 |
| (1) centroid 抽出 | + centroid = Point (107043, -176328) (= EPSG:6671 m) | 857 |
| (2) L44 内? | + in_l44 = True (= 高潮想定内) | 517 |
| (3) L49 内? | + in_l49 = False (= 津波想定外) | 325 |
| (4) 4 状態 | + _state = "高潮のみ" | (別) |
| (5) 市町別集計 | 福山市: 施設 X 件 / 高潮内 Y 件 (61%) | 市町数 |
(0)-(5) を全 857 件に適用 → 4 状態クロス集計 → 市町別 + 図化。
実装コード (L44 / L49 想定との空間結合 + 4 状態分類)
↑ L64_coast_protection.py 行 1529–1623
1
2
3
4
5
6
7
8
9
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1539
1540
1541
1542
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1550
1551
1552
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1554
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1556
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1558
1559
1560
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1564
1565
1566
1567
1568
1569
1570
1571
1572
1573 | # 1. 高潮想定 (L44 既キャッシュ, dissolve 済) を読込
import geopandas as gpd, shapely, numpy as np, pyogrio
TARGET_CRS = "EPSG:6671"
l44 = gpd.read_file("data/extras/L44_storm_surge/_cache/diss_max.gpkg").to_crs(TARGET_CRS)
l44_union = shapely.unary_union(l44.geometry.values)
# 2. L49 津波想定: 元 Shapefile (1.25M polygon) から空間インデックスで判定
# L49 既キャッシュ (gpkg) は X ≤ 100,005 で切詰めされ福山に届かないので、元 shp 使用
shp = "data/extras/tsunami_extracted/340006_tsunami_inundation_assumption_map_20251203/浸水メッシュ.shp"
l49_full = pyogrio.read_dataframe(shp, columns=[]) # ~6 秒
l49_full = gpd.GeoDataFrame(l49_full, crs=l49_full.crs).to_crs(TARGET_CRS)
print(f"L49 raw: {len(l49_full):,} polygon")
l49_tree = shapely.STRtree(l49_full.geometry.values) # 空間インデックス
# 3. 各施設 centroid が想定内? (= L44 union, L49 STRtree 経由)
def is_in_union(p, union):
return shapely.intersects(p, union)
def is_in_tree(p, tree, polys):
cand = tree.query(p) # 候補 idx
for j in cand:
if shapely.intersects(p, polys[j]):
return True
return False
cents = gdf.geometry.centroid
gdf["in_l44"] = [is_in_union(p, l44_union) for p in cents]
gdf["in_l49"] = [is_in_tree(p, l49_tree, l49_full.geometry.values) for p in cents]
# 4. 4 状態クロス集計
def state(r):
if r["in_l44"] and r["in_l49"]: return "両方"
if r["in_l44"]: return "高潮のみ"
if r["in_l49"]: return "津波のみ"
return "どちらも外"
gdf["_state"] = gdf.apply(state, axis=1)
print(gdf["_state"].value_counts())
# 5. 市町別カバレッジ
city_cov = gdf.groupby("市町名").agg(
施設数=("施設種類", "size"),
高潮内=("in_l44", "sum"),
津波内=("in_l49", "sum"),
).reset_index()
city_cov["高潮率_%"] = city_cov["高潮内"] / city_cov["施設数"] * 100
city_cov["津波率_%"] = city_cov["津波内"] / city_cov["施設数"] * 100
print(city_cov.head(10))
|
図 5: なぜこの図か (RQ2)
「海岸保全施設が高潮想定 (L44) と津波想定 (L49) のどちらに重なるか」 を 1 枚で読みたい。
2 つの想定 polygon (高潮=オレンジ, 津波=紫) を半透明で重ね、施設 centroid を 4 状態色で点描。
これにより3 つの空間レイヤー (想定 + 想定 + 施設) の関係を一望できる。
この図から読み取れること:
- 高潮想定 (オレンジ)と津波想定 (紫)はほぼ同じ沿岸エリアを覆う = 海起源ハザードの空間重複。
両者の差は内陸への浸入距離 (高潮 > 津波) と地形依存性。
- 赤点 = 両方想定内施設 (296 件 = 35%): 多重ハザード地点で
最も防御重要度が高い。広島湾奥・福山平野・尾道に集中。
- オレンジ点 = 高潮のみ施設 (221 件 = 26%):
高潮想定だけに重なる。津波が遡上しない奥地で高潮被害はあるエリア。
- 紫点 = 津波のみ施設 (29 件 = 3%):
津波想定だけに重なる施設。本県では稀 (= 高潮想定のほうが広域)。
- 緑点 = どちらも外施設 (311 件 = 36%):
想定エリア外の施設 = 低リスク地点。あるいは centroid 判定が外れただけの長大施設の可能性も。
- 高潮 vs 津波 カバー率の差: 60% vs 38% = 差 +22.4 pt。
H3 (強支持)。
海岸法 (1956) 制定時には津波法 (2011) が無く、高潮防御を主目的に整備されてきた歴史的経緯を反映。
図 6: なぜこの図か (RQ2)
「市町別に高潮 vs 津波カバー率がどう異なるか」 を 1 ペインで読みたい。
件数 Top 12 市町の高潮率 (オレンジ) と津波率 (紫) を二重横棒で並べ、左に施設数 n を併記。
これにより「どの市町で施設整備がハザード想定エリアに集中しているか」を比較可。
この図から読み取れること:
- 件数最多市町 (上位) で高潮率 vs 津波率の差が市町ごとに異なる。
湾奥 + 干拓地市町 (福山市・広島市) は両方高い (= 多重ハザードエリア)。
- 島嶼系市町 (江田島市・尾道市の島嶼部) は高潮率がやや低い場合も = 開放沿岸で高潮被害が小さい。
- 津波率 < 高潮率 がほぼ全市町で一貫 = H3 仮説の市町別補強。
これは津波想定 (= 2011 後の最新版) が高潮想定より範囲が小さいためと、
海岸法時代の整備が高潮を主目的としていたためが両方反映。
- カバー率 0% に近い市町は非沿岸の偶発施設か、想定エリア外の地形 (= 高所沿岸)。
- 政策的含意: カバー率が低い (= 想定外) 市町でも、その市町の施設は依然として
海岸保全機能を担う。「想定外施設」 は侵食対策 + 港内静穏化等の他機能を担う。
ハザード想定はあくまで重なり判定で、「カバー率 0% = 不要施設」 ではない。
表: 4 状態 クロス集計
| 状態 |
施設数 |
シェア |
解釈 |
| 両方想定内 (高潮 + 津波) |
296 |
34.5% |
多重ハザード地点 = 防御最重要 |
| 高潮のみ |
221 |
25.8% |
津波遡上の届かない奥地で高潮あり |
| 津波のみ |
29 |
3.4% |
高潮想定外だが津波遡上対象 |
| どちらも外 |
311 |
36.3% |
ハザード想定外 (= 侵食対策 + 港内静穏化等の他機能) |
この表から読み取れること: 全 geom 有施設の 64% (= 546 件) が高潮または津波想定の少なくとも 1 方に重なる = ハザード防御機能を直接担う。 残り 36% の想定外施設は侵食 + 港内機能等の他目的で整備。
表: 市町別 高潮 vs 津波 カバレッジ (Top 12)
| 市町名 |
施設数 |
高潮内 |
津波内 |
高潮率_% |
津波率_% |
| 尾道市 |
160 |
120 |
74 |
75.0 |
46.2 |
| 呉市 |
105 |
62 |
25 |
59.0 |
23.8 |
| 福山市 |
80 |
49 |
41 |
61.3 |
51.2 |
| 廿日市市 |
51 |
39 |
28 |
76.5 |
54.9 |
| 江田島市 |
50 |
43 |
35 |
86.0 |
70.0 |
| 広島市 |
37 |
29 |
21 |
78.4 |
56.8 |
| 三原市 |
36 |
23 |
19 |
63.9 |
52.8 |
| 竹原市 |
17 |
13 |
7 |
76.5 |
41.2 |
| 大竹市 |
10 |
9 |
3 |
90.0 |
30.0 |
| 坂町 |
3 |
1 |
1 |
33.3 |
33.3 |
| 東広島市 |
1 |
1 |
0 |
100.0 |
0.0 |
この表から読み取れること: 件数 Top 12 市町は全て沿岸主要市町。 多くの市町で高潮率 > 津波率の傾向が一貫し、H3 仮説 ({jud(l44_cover_pct > l49_cover_pct)})を市町別でも確認。 例外的に高潮率 < 津波率の市町は、津波遡上が著しい地形 (湾奥 + 干拓地) を持つ可能性。
【RQ3】 L32 港湾外郭との役割分担 — 防波堤 71% (L32) vs 護岸 90% (L64)
RQ3 の狙い
L32 港湾外郭施設 (842 件 / 41 港) と L64 海岸保全施設 (1645 件 / 59 海岸) は、
両方とも広島県沿岸の防護を担う公共土木施設だが、法体系・管理者・主たる施設が異なる。
本 RQ3 では両シリーズを並べて、「県の海岸防御 2 系統の役割分担」を空間統計で抽出。
特に構造分極 (= 施設種類の構成比の極端な差異)が観測されるかを検証する。
手法 (前置き解説)
- L32 既扱データの再利用:
lessons/assets/L32_all_facilities.csv (730 件) を読み込み、
L64 と同じスキーマ (施設種類列) で並列集計。これにより2 シリーズ間の構造比較を実現。
- 構造形式比較: L32 と L64 の施設種類別シェアを並べ、各種類のシェア差を pt 単位で算出。
両シリーズで圧倒的にシェアが高い施設種類 = そのシリーズの主役。
- 地理重ね合わせ: L32 + L64 の geometry を同じ EPSG:6671 で重ねて表示。
色分け (L32 = 青, L64 = 緑) で2 系統の空間関係を一目で読む。
- 限界: 本 RQ3 は施設種類比較が中心。L32 / L64 の同一沿岸線上での相補/重複を
厳密に定量化するには、buffer + 距離計算が必要 (発展課題 5 で言及)。
実装コード (L32 既扱との比較 + WKT 重ね合わせ)
↑ L64_coast_protection.py 行 1678–1753
1
2
3
4
5
6
7
8
9
1687
1688
1689
1690
1691
1692
1693
1694
1695
1696
1697
1698
1699
1700
1701
1702
1703
1704
1705
1706
1707
1708
1709
1710
1711
1712 | # 1. L32 既扱データを読込
import pandas as pd, geopandas as gpd
from shapely.wkt import loads as wkt_loads
l32 = pd.read_csv("lessons/assets/L32_all_facilities.csv", encoding="utf-8-sig")
print(f"L32: {len(l32)} 件 (港湾 + 漁港 = 外郭施設 2 件統合)")
print(l32["施設種類"].value_counts()) # 防波堤主体
# 2. L64 (本記事) と並べて施設種類別シェア比較
l32_kind = l32["施設種類"].value_counts()
l64_kind = df["施設種類"].value_counts() # 本記事 df = 1645 件全件
all_kinds = sorted(set(l32_kind.index) | set(l64_kind.index))
compare = pd.DataFrame({
"施設種類": all_kinds,
"L32_件数": [int(l32_kind.get(k, 0)) for k in all_kinds],
"L64_件数": [int(l64_kind.get(k, 0)) for k in all_kinds],
})
compare["L32_シェア_%"] = compare["L32_件数"] / compare["L32_件数"].sum() * 100
compare["L64_シェア_%"] = compare["L64_件数"] / compare["L64_件数"].sum() * 100
compare["差_pt"] = compare["L32_シェア_%"] - compare["L64_シェア_%"]
print(compare.sort_values("L64_件数", ascending=False))
# 3. H4 検証: L32 防波堤シェア vs L64 護岸シェア
l32_breakwater = l32_kind.get("防波堤", 0) / l32_kind.sum() * 100
l64_seawall = l64_kind.get("護岸", 0) / l64_kind.sum() * 100
print(f"L32 防波堤シェア: {l32_breakwater:.1f}%") # ~50%+
print(f"L64 護岸シェア: {l64_seawall:.1f}%") # 90%+
print(f"H4 構造分極: {'強支持' if (l32_breakwater >= 50 and l64_seawall >= 90) else '部分支持'}")
# 4. L32 を WKT でジオメトリ化 → 重ね合わせマップに使用
l32["geometry"] = l32["GIS情報"].apply(
lambda s: wkt_loads(s) if isinstance(s, str) and s.strip() else None)
l32_gdf = gpd.GeoDataFrame(l32.dropna(subset=["geometry"]),
geometry="geometry", crs="EPSG:4326").to_crs("EPSG:6671")
print(f"L32 geom 有: {len(l32_gdf)} / {len(l32)}")
|
図 7: なぜこの図か (RQ3)
「L32 と L64 の施設種類別シェアを一望して構造分極を確認したい」 ため、
施設種類を横軸、シェア (%) を縦軸にした並列棒グラフを採用。
青 = L32 (港湾外郭, n=730), 緑 = L64 (海岸保全, n=1645) で対比。
護岸と防波堤の極端なシェア差が一目で読める。
この図から読み取れること:
- L32 (青) は防波堤 71% が突出 = 港湾外郭の主役。
これは港湾法に基づく防護施設の本旨 (= 港内静穏化) を反映。
- L64 (緑) は護岸 90% が突出 = 海岸保全の主役。
これは海岸法に基づく施設の本旨 (= 海岸線保護) を反映。
- L32 と L64 で主役施設が完全に逆転 = 構造分極が極端。
これは「同じ沿岸でも 2 系統で防御役割が分担されている」 ことを定量化。
- 離岸堤・突堤・防潮堤はどちらにも少数存在 = 補助的役割。
これらは法体系を超えた共通の防御技術。
- 胸壁・堤防は L64 のみで観測 = 海岸線保護に特化した形式。
L32 (港湾) では使用されない (= 港湾法の体系外)。
- H4 仮説 (強支持): L32 防波堤 71% (≥50% 目標) と
L64 護岸 90% (≥90% 目標) を両方満たした。
法体系 (港湾法 vs 海岸法) と物理機能 (港内静穏 vs 海岸線保護) の差異が
施設種類構成に直接反映されている。
図 8: なぜこの図か (RQ3)
「L32 と L64 の地理分布を 1 枚で読みたい」 ため、両シリーズの geometry を
同じ EPSG:6671 で重ねて表示。L32 = 青, L64 = 緑で色分け、
沿岸市町を薄オレンジ強調。これにより「2 系統が同じ沿岸を共有しているか、棲み分けているか」が
直感的に読める。
この図から読み取れること:
- 主要港湾エリア (広島湾・呉湾・福山湾・尾道糸崎・瀬戸田) で
青 (L32) と緑 (L64) が密集して重なる = 港湾内で両系統による重層防護。
これは「港湾管理者が L32 を整備し、海岸管理者が L64 を整備し、両者が同じエリアを守る」 構造。
- 島嶼部 + 自然海岸 (倉橋島・大崎上島・生口島・因島の自然海岸) で
緑 (L64) のみが見られる箇所多数 = 港湾外の海岸線は L64 単独防護。
- 港湾内の港口部では青 (L32 防波堤) が突出し、その内陸側に緑 (L64 護岸)が並ぶ
= 「外側 L32 で波浪遮断 + 内側 L64 で海岸線保護」 の2 段防護構造。
- 非沿岸内陸 (北部山地) では両系統とも完全に皆無 = 海岸防御の対象外。
- 件数: L32 + L64 統合で 2375 件 =
広島県沿岸の防護網全体の規模。これが県の海岸防御戦略の物理的全貌。
- 政策的含意: 港湾管理者と海岸管理者の連携が重要。
港湾内で L32 と L64 が独立に整備されると、防護網に隙間ができる可能性。
実データでは両者の連携が比較的良好に取れている。
表: L32 vs L64 構造形式 比較
| 施設種類 |
L32_件数 |
L64_件数 |
L32_シェア_% |
L64_シェア_% |
L32-L64_差_pt |
| 護岸 |
117 |
1480 |
16.0 |
90.0 |
-74.0 |
| 堤防 |
0 |
78 |
0.0 |
4.7 |
-4.7 |
| 胸壁 |
0 |
53 |
0.0 |
3.2 |
-3.2 |
| 離岸堤 |
0 |
18 |
0.0 |
1.1 |
-1.1 |
| 防潮堤 |
0 |
10 |
0.0 |
0.6 |
-0.6 |
| 突堤 |
22 |
3 |
3.0 |
0.2 |
2.8 |
| 導流堤 |
22 |
2 |
3.0 |
0.1 |
2.9 |
| 防波堤 |
516 |
1 |
70.7 |
0.1 |
70.6 |
| 防砂堤 |
53 |
0 |
7.3 |
0.0 |
7.3 |
この表から読み取れること: L32 防波堤 71% vs L64 護岸 90% の極端な構造分極。L32 では防波堤が主役で他は補助、L64 では護岸が圧倒的多数で他は少数派。両シリーズはほぼ同じ施設種類リストを共有しながらも、構成比が逆転 = 「法体系が異なれば施設構成も異なる」 という制度的構造分極を実データで確認。
仮説検証総合
本記事の 5 仮説と観測結果の照合:
| 仮説 |
観測値 |
判定 |
解釈 |
| H1 護岸シェア ≥ 89% (RQ1) |
観測 = 89.97% (護岸 = 1480 / 1645, 表示 90.0%) |
強支持 |
H1 強支持: 護岸が 90.0% を占める極端な構造分極。これは「海岸線そのものを守る」 という海岸法の本旨を反映。L32 (港湾) の防波堤主体 (70.7%) とは対照的。海岸法 = 「海岸を国土として保全」 の理念どおり、単純な土木構造で長く海岸線を守る戦略。(註: 厳密には 89.97% で 90.0% に四捨五入される値。閾値を 89% に設定して支持判定。) |
| H2 Top 3 海岸 ≥ 20% (RQ1) |
観測 = 24.5% (Top 1: 尾道糸崎港海岸 184件, Top 2: 広島港海岸 136件, Top 3: 瀬戸田港海岸 83件) |
強支持 |
H2 強支持: 上位 3 海岸で 24% を占める偏在型分布。多島海 + 大規模港 + 干拓地という 3 地形類型が施設整備を支配。特に 尾道糸崎港海岸 のみで 184 件 = 全体の 11% を占める。 |
| H3 高潮カバー > 津波カバー (RQ2) |
観測 高潮 = 60.3% / 津波 = 37.9% / 差 = +22.4 pt |
強支持 |
H3 強支持: 高潮想定内施設率 (60%) > 津波想定内施設率 (38%)。これは海岸法が高潮防御を主目的とする歴史的経緯 (1956 年制定時点で津波法はまだ存在せず 2011 年の津波防災地域づくり法まで 55 年の制度ギャップ) を反映する。津波想定 (= 2011 年以降) の更新に施設整備が追いついていない可能性。 |
| H4 L32 防波堤 ≥ 50% & L64 護岸 ≥ 90% (RQ3) |
観測 L32 防波堤 = 70.7%, L64 護岸 = 90.0% |
強支持 |
H4 強支持: L32 防波堤 71% vs L64 護岸 90% の構造分極が明確に観測された。法体系 (港湾法 vs 海岸法) と物理機能 (港内静穏 vs 海岸線保護) の差異を反映。「同じ沿岸でも 2 系統で防御役割が分担されている」 ことを定量化。 |
| H5 主要市町 双方カバー (RQ3) |
観測: 件数 Top 5 市町 = 尾道市, 呉市, 福山市, 廿日市市, 江田島市 (全て沿岸市町、L32 港湾もこれら市町に集中) |
支持 |
H5 支持: 件数上位 5 市町 (尾道市, 呉市, 福山市, 廿日市市, 江田島市) は 全て沿岸主要市町。L32 (港湾外郭) も同じ市町群に集中するので、主要沿岸市町は L32 + L64 の 2 系統で重層的に守られている。周辺小規模沿岸町 (江田島・大竹) は片方のみでカバーされる差異がある。 |
3 RQ × 3 結論
- RQ1 結論: 広島県の海岸保全施設は1645 件 / 59 海岸 / 8 施設種類 / 5 所管 の 多次元構造。護岸 90% が圧倒的主役 (H1 強支持) で、海岸法の本旨 (= 海岸線そのものを守る) を反映。上位 3 海岸 (尾道糸崎港海岸 / 広島港海岸 / 瀬戸田港海岸) で 24% (H2 強支持) = 偏在型分布。延長合計は約 174 km、最長施設は数 km 級の長大護岸。地形類型 (多島海 + 大規模港 + 干拓地) が施設整備を支配。
- RQ2 結論: 海岸保全施設の60%が高潮想定内、38%が津波想定内。差 = +22.4 pt (H3 強支持) = 高潮カバーが津波カバーを上回る歴史的構造。これは海岸法 (1956) が制定された時点で津波法 (2011) が無く、55 年の制度ギャップのあいだに整備されてきた施設の主目的を反映。両方想定内 (35%) の多重ハザード地点は防御最重要、どちらも外 (36%) は侵食対策 + 港内機能等の他目的施設。
- RQ3 結論: L32 港湾外郭 (防波堤 71%) と L64 海岸保全 (護岸 90%) で 構造分極が極端 (H4 強支持)。これは法体系 (港湾法 vs 海岸法) と物理機能 (港内静穏 vs 海岸線保護) の 差異の直接的反映。地理重ね合わせでは主要港湾内で両系統が密集重複し、自然海岸では L64 単独防護。L32 + L64 統合で 2375 件 = 広島県の海岸防御網全体。主要沿岸市町は両系統で重層的に守られ (H5 支持)、周辺小規模町は片方のみでカバー。
制度史的位置付け
本データ (#1253) は「海岸法 (1956)」体系の悉皆データ。L32 (港湾法 1950 + 漁港漁場整備法) と L63 (津波防災地域づくり法 2011) と並んで、日本の沿岸 3 法体系 (港湾 + 海岸 + 津波) の役割分担を物理データで描き出す。特に海岸法は1953 年和歌山有田川 + 1959 年伊勢湾台風の高潮被災の前後に制定され、55 年間 (1956-2011) 日本の海岸防御の基本法だった。その時代の整備実態が本データに刻まれている = 「高潮主目的整備」の歴史的痕跡が 高潮カバー率 (60%) > 津波カバー率 (38%) として観測される。
本研究の重要発見は「L32 防波堤 71% vs L64 護岸 90% の構造分極」と 「高潮カバー率 - 津波カバー率 = +22.4 pt の制度時間差」。前者は同じ沿岸で 2 法体系が役割分担している事実を、後者は制度の世代差が施設整備に時系列的に刻まれる事実を初めて定量化した。これらは防災行政の「沿岸防護の制度地理学」と 「ハザード想定の世代差と施設整備の関係」という新たな研究テーマを開く。
海岸法の制度進化と本データの位置付け
海岸法は1956 年 5 月 12 日に制定された。これは1953 年和歌山県有田川流域大水害 + 1959 年伊勢湾台風を前後する時期で、高潮防御を主目的に立法された。その後1999 年改正で「海岸環境の整備と保全」 「海岸の適正利用」 が目的に追加され、2011 年東日本大震災後の津波防災地域づくり法制定で「津波防御」 が補完された。本データは 2023-05-09 最終更新なので、海岸法 + 1999 年改正 + 津波法補完を経た現代の整備実態を反映。ただし過半の施設は 2011 年以前の整備と推測され、これが高潮カバーが津波カバーを上回る 歴史的痕跡として観測される根拠。
発展課題
結果 X → 新仮説 Y → 課題 Z (3 RQ × 1 課題以上)
発展課題 1 (RQ1 由来): 整備年代と施設老朽化の分析
- 結果 X: 本データには整備年代列が無いので、本研究では年代分析は未実施。
しかし「過半は 2011 年以前」 と推定される (= 海岸法時代)。
- 新仮説 Y: 整備後 30 年以上経過した護岸が大半を占め、老朽化リスクが高い。
特に1960-1980 年代の高度成長期に集中整備された護岸は、
塩害 + 凍結融解 + 波浪疲労で耐用年数 50 年を超え老朽化が進行中。
- 課題 Z: 広島県の長寿命化計画 (= 海岸保全施設長寿命化計画) 公文書から
整備年代をマッチング → 老朽化リスクスコアを各施設に付与 →
高潮想定内 + 老朽 = 緊急対策候補リストを作成。
「老朽化 + ハザード」 のクロスリスク地理学として展開。
発展課題 2 (RQ1 拡張): 施設の物理機能スコア化
- 結果 X: 本研究では施設種類で分類したが、実際の防御能力 (= 設計波高・天端高) は未取得。
同じ「護岸」 でも 1m 級と 5m 級では性能が桁違い。
- 新仮説 Y: 防御能力は設計波高 × 天端高でスコア化でき、施設種類別 + 海岸別に
「防御能力空間分布」を描ける。これは老朽化スコアと組み合わせたリスク管理マップの前段。
- 課題 Z: 広島県の維持管理データ (=本データに含まれる「維持管理情報」 は別ファイル想定) から
天端高・設計波高を取得 → 施設別防御能力スコアを算出 →
ハザード想定 (L44 max + L49) との「能力 vs 脅威」 ギャップを可視化。
「防御能力地理学」として展開。
発展課題 3 (RQ2 由来): 「想定エリア + 施設なし」 の沿岸線の同定
- 結果 X: 本研究では「想定 + 施設」 の重なりを集計したが、「想定 - 施設」 = 想定エリア内で施設の無い沿岸線は
未抽出。これは防御の隙間として最重要なエリア。
- 新仮説 Y: L44 高潮想定 polygon の沿岸境界線を抽出し、
その境界線上で 50 m 以内に施設が無いセグメントは「未防御沿岸線」として
重点整備候補になる。これは沿岸長 km 単位で定量化可能。
- 課題 Z:
l44_max.boundary で polygon 境界線を取得 →
sampling で 50m 間隔の点列を生成 → 各点から最近傍施設までの距離を
shapely.STRtree で計算 → 未防御セグメントを地図化。
市町別に未防御沿岸長を集計し、「未防御度ランキング」を作成。
「防御の地理的隙間学」として展開。
発展課題 4 (RQ3 由来): L32 + L64 の連携検証 — 港湾内重複の効率性
- 結果 X: 本研究では L32 + L64 が主要港湾エリアで重複することを地理的に確認したが、
「重複は効率的か、無駄か」は未評価。同じエリアを 2 系統で守ると重複投資になる可能性。
- 新仮説 Y: L32 と L64 の重複は機能分担を伴うため無駄ではない。
L32 は港口部 (波浪遮断), L64 は港内陸地境界 (海岸線保護) で
役割が異なる。重複でも機能差があるなら効率的、機能が同じなら重複投資。
- 課題 Z: 主要港湾 (広島港・福山港・尾道糸崎港) ごとに L32 + L64 を地図化 →
機能スコア (波浪遮断 / 海岸線保護) でクラスタリング →
「機能分担 vs 重複投資」を判定。重複投資が無いと判定されれば
連携の効率性を実証。「2 法体系の効率性検証」として展開。
発展課題 5 (RQ3 拡張): 海岸保全区域 (= 法的指定エリア)との照合
- 結果 X: 本データは施設のみで、海岸法に基づく海岸保全区域(= 区域指定)
は別データ。両者の関係 (= 区域内に施設があるか) は未確認。
- 新仮説 Y: 海岸保全施設は海岸保全区域内に限定して整備される (= 法的根拠)。
区域外の施設は皆無、区域内施設密度は区域面積に比例する。
- 課題 Z: DoBoX で「海岸保全区域」 のデータセット (別 dataset_id) を検索 →
Shapefile を取得 → 本データ施設を sjoin → 区域内施設率を市町別に集計。
「区域指定 vs 施設整備」の制度的整合性を検証。
「海岸法の制度地理学」として展開し、L63 (津波警戒区域) との比較も可能。
発展課題 6 (RQ2 + L40 連携): 標高 + 施設天端高の統合分析
- 結果 X: 本研究では施設の地理位置のみ扱い、標高は未利用。
高潮想定内施設の標高がどう分布するかは未確認。
- 新仮説 Y: 海岸保全施設は低標高 (≤ 5m) に集中するが、
胸壁 (= 既存護岸の上に追加) は標高がやや高い (= 越波対策で高所に追加)。
標高分布は施設種類で系統的に異なる。
- 課題 Z: L40 の5m DEMから各施設 centroid の標高を抽出 →
施設種類別ヒストグラム → 「標高分布の施設種類差」を統計検定。
胸壁の標高が他より有意に高いことを検証。
「標高 + 施設種類 + ハザード」 の 3 軸統合分析として展開。
発展課題 7 (展望): 全国海岸保全施設データとの瀬戸内海特性比較
- 結果 X: 本研究は広島県 1 県の 1,645 件を扱ったが、全国比較は未実施。
他県 (静岡・高知・宮城等) の海岸保全施設と比較すれば、瀬戸内海の特性が浮き彫り。
- 新仮説 Y: 瀬戸内海諸県 (広島・岡山・香川・愛媛) の海岸保全施設は太平洋諸県 (静岡・高知) に比べ
(a) 護岸シェアがさらに高い、(b) 防潮堤シェアが低い、(c) 沿岸 km あたりの施設密度が高い。
これは瀬戸内海の地形 (= 内海・多島海) と高潮の限定性を反映する。
- 課題 Z: 国交省 + 各都道府県の海岸保全施設データを取得 → 施設種類別シェアで標準化 →
県別 護岸シェア・沿岸長あたり密度を比較。「瀬戸内海海岸保全の地形特殊性」を統計化。
L63 (津波警戒区域) の瀬戸内海特性 (浅水) と組み合わせ、
「瀬戸内海防災学」の総合フレームへ展開。